2010年12月03日

Astrud Gilberto『The Shadow Of Your Smile』

ボサノヴァ名曲やスタンダードをエレガントにカヴァーした2nd☆Astrud Gilberto『The Shadow Of Your Smile』
いそしぎ
発表年:1965年
ez的ジャンル:ボサノヴァの女王
気分は... :ゆったり気分で・・・

今回は"ボサノヴァの女王"Astrud Gilbertoの2ndアルバム『The Shadow Of Your Smile』(1965年)です。

Astrud Gilbertoの紹介は、Verve時代のベスト盤『Talkin' Verve』Walter Wanderley Trioとの共演作『A Certain Smile A Certain Sadness』(1966年)に続き3回目となります。

今回紹介する『The Shadow Of Your Smile』は、永遠の名曲「The Girl From Ipanema(イパネマの娘)」『Getz/Gilberto』収録)の勢いに乗ってリリースされたデビュー・アルバム『The Astrud Gilberto Album』に続く2ndアルバムです。

『The Astrud Gilberto Album』は、Antonio Carlos Jobim作品で固められていましたが、本作にはJobim作品は1曲もありません。その代わりお馴染みのボサノヴァ名曲やスタンダードがカヴァーされています。特に、ボサノヴァを代表するギタリスト/作曲家Luiz Bonfaの作品が5曲収録されているのが目立ちますね。

そして、本作ではClaus OgermanDon SebeskyJoao Donatoという3人のアレンジャーの素晴らしいアレンジ&オーケストレーションが冴え渡っています。

アルバム全体に漂うエレガントな雰囲気に魅了されます。
ゆったりと時間を過ごしたいときにピッタリな1枚だと思います。

全曲を紹介しときやす。

「Love Theme from "The Sandpiper"(Shadow of Your Smile)」
タイトル曲は、アカデミー賞歌曲賞も受賞した映画「いそしぎ」の主題歌(Paul Francis Webster/Johnny Mandel作品)をカヴァー。当ブログでもJohn PattonLou DonaldsonJohnny LytleThe Oscar Peterson Trio + The Singers UnlimitedAnn BurtonPucho & The Latin Soul Brothersのカヴァーを紹介済みの名曲です。オリジナルの持つエレガントな雰囲気を受け継いだDon Sebeskyのアレンジが素晴らしいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=Fx2o8kLBWNc

「(Take Me To) Aruanda」
Carlos Lyra/Geraldo Vandre作品。当ブログではWanda De Sahのカヴァーも紹介済みです。奴隷生活を強いられた人々が夢の楽園を思い描く社会派ソングですが、Wanda De Sahヴァージョン同様に軽やかでチャーミングです。Joao Donatoがいい仕事していますね。Bob Brookmeyerのトロンボーン・ソロもグッド!
http://www.youtube.com/watch?v=Sp_72yfzrXA

「Manha De Carnaval」
フランス映画『Orfeu Negro(黒いオルフェ)』の主題歌「Manha de Carnaval(邦題:カーニバルの朝)」のカヴァー。Antonio Maria/Luiz Bonfa作の名曲です。当ブログではDexter GordonGerry MulliganBalancoのカヴァーを紹介済みです。Luiz Bonfaの少しクラシカルなギターをバックに歌うAstrudの哀愁ヴォーカルにグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=Vgo9av539gU

「Fly Me to the Moon」
個人的には本作のハイライト。Bart Howard作のスタンダードのカヴァー。『新世紀エヴァンゲリオン』のエンディング・テーマとしてもお馴染みですね。当ブログではThe Quiet Nights Orchestraのカヴァーを紹介済みです。Claus OgermanによるロマンティックなアレンジにAstrudのクール・ヴォーカルがばっちりハマっています。
http://www.youtube.com/watch?v=ldt_ylbAqe4

「The Gentle Rain」
Matt Duby/Luiz Bonfa作。当ブログではThe Oscar Peterson Trio + The Singers UnlimitedDiana Krallのカヴァーを紹介済みです。Don Sebeskyの素晴らしいアレンジにグッとくる哀愁チューンです。
http://www.youtube.com/watch?v=s6ndU7GKpjI

「Non-Stop to Brazil」
「Fly Me to the Moon」と並ぶ僕のお気に入り。Matt Duby/Luiz Bonfa作。Don Sebeskyのアレンジが冴え渡るボッサ・チューンに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=roC0z8ij5_A

「O Ganso」
Luiz Bonfa作。爽快なAstrudのスキャットを聴くことができる、軽やかなボッサ・チューンです。アレンジはJoao Donato
http://www.youtube.com/watch?v=9l7A2jmKgtI

「Who Can I Turn To? (When Nobody Needs Me)」
Leslie Bricusse/Anthony Newley作のスタンダード。Claus Ogermanのアレンジによる、優しく包まれるようなロマンティック・チューンに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=FnQWGq7YdnU

「Day by Day」
Sammy Cahn/Alex Stordahl/Paul Weston作のスタンダード。エレガントなストリングスも入っていますが、意外にサラッとした仕上がりです。Urbie Greenのトロンボーンがいいアクセントになっています。
http://www.youtube.com/watch?v=3avvsWEzrx8

「Tristeza」
Maria Toledo/Luiz Bonfa作。淡々とした演奏が印象的です。トロンボーンはBob Brookmeyer。
http://www.youtube.com/watch?v=oZkHuC7X0MM

「Funny World (Theme from "Malamondo")」
ラストはAlan Brandt/Ennio Morricone作のスタンダード。Claus Ogermanのアレンジによるエレガントなバラードで締め括ってくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=pnRUMkXyTVQ

他のVerve時代のアルバムもチェックを!

『The Astrud Gilberto Album』(1965年)
おいしい水

『Look To The Rainbow』(1966年)
ルック・トゥ・ザ・レインボウ

『A Certain Smile A Certain Sadness』(1966年)
A Certain Smile, A Certain Sadness

『Beach Samba』(1967年)
ビーチ・サンバ

『Windy』(1968年)
ウィンディ(紙ジャケット仕様)

『September 17, 1969』(1969年)
ジルベルト・イン・セプテンバー

『I Haven't Got Anything Better To Do』(1970年)
あなたと夜を

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2010年12月02日

Dalindeo『Open Scenes』

フィンランドのクラブジャズ・ユニットのブラジリアンなデビュー作☆Dalindeo『Open Scenes』
オープン・シーンズ
発表年:2006年
ez的ジャンル:北欧クラブジャズ
気分は... :気を引き締めなおして...

昨日はプチ開放感に浸って酒を飲みすぎ・・・
いかん、いかん、気を引き締めなおさねば!

こんな時には格好良いクラブジャズで気分を盛り上げマ〜ス!

フィンランドのクラブジャズ・ユニットDalindeoのデビュー・アルバム『Open Scenes』(2006年)の紹介です。

Valtteri Poyhonenを中心にフィンランドのヘルシンキで結成されたDalindeoの紹介は、2ndアルバム『Soundtrack for the Sound Eye』(2009年)に続き、2回目となります。

フィンランドを代表するクラブジャズ・ユニットThe Five Corners Quintet(FCQ)と同じレーベルRicky Tickに所属し、FCQ作品も手掛けるTuomas Kallioが1stアルバムをプロデュースしたことでFCQの弟分バンドという説明も多いグループですよね。

以前に紹介した2nd『Soundtrack for the Sound Eye』は、映画音楽的アプローチとアフロ・ジャズ色を強く打ち出したディープな作品でしたが、デビュー・アルバムとなる本作『Open Scenes』はブラジル/ラテン色の強い仕上がりとなっています。

メンバーはValtteri Poyhonen(g、el-p)、Jose Maenpaa(tp)、Pope Puolitaival(fl、s)、Pekka Lehti(b)、Rasmus Pailos(per)、Jaska Lukkarinen(ds)の6名。さらに本作では日本人女性ヴォーカリストMichikoが3曲でフィーチャーされています。Michikoのミステリアスなヴォーカルがアルバムにいいアクセントをもたらしています。

オリジナルな個性という点では、ディープな『Soundtrack for the Sound Eye』の方がインパクト大ですが、洗練された格好良いクラブジャズという点では『Open Scenes』の方が聴きやすいと思います。個人的に異なる魅力の2枚は共に外せない作品ですが・・・

上記に示したのは国内盤ですが、輸入盤はジャケの色が異なりますのでご注意を!

『Open Scenes』 ※輸入盤
Open Scenes

クラブジャズ好きの人であれば間違いない1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Empty Fruits」
Michikoをフィーチャーした1曲目。美しくも切ない音世界へと誘ってくれるワルツ・チューン。
http://www.youtube.com/watch?v=RjbxopPoLes

「Leviathan」
リラックス・ムードの中にも彼らの小粋なセンスを感じる1曲。

「Non-Stop Flight」
Michikoをフィーチャーした2曲目。ミステリアスなボッサ・チューンに仕上がっています。浮遊感のあるMichikoのヴォーカルが不思議な音空間をクリエイトしてくれます。

「Poseidon」
デビュー・シングル。須永辰緒氏のMIX CDにも収録された話題曲。ダンサブルなジャズ・サンバ・チューンはひたすら心地好く踊れそうな仕上がり!

「Vedenneito」
Valtteri Poyhonenのギターを前面にフィーチャーした1曲。アルペジオの音色に心が癒されます。そんな曲であってもリズムはブロークン・ビーツ的なところがクラブジャズ・ユニットらしいですね。

「Voodoo」
2ndシングル「Go Ahead, Float」のカップリング曲。哀愁モードのサンバ・フュージョン。Pope Puolitaivalのフルートが印象的です。

「Open」
インタールード的な小曲。

「Tsunami」
Michikoをフィーチャーした3曲目。軽快でパーカッシヴなグルーヴ感とミステリアスなMichikoのヴォーカルがよくマッチしています。後半にはMichikoの日本語ラップも飛び出します。これが結構いい感じ!
http://www.youtube.com/watch?v=WsIhUztLaU8

「Samba Da-Li」
デビュー・シングル「Poseidon」のカップリング曲。クラブジャズ好きはグッとくる軽快なジャズ・サンバ・チューン。夕陽を眺めながら聴きたくなる1曲。透明感のあるギターの響きや素晴らしいストリングスにもウットリです。

「Helium」
エレガントな中にも軽快なビート感があって心地好い1曲。さり気なさが逆にグッときます。

「Sold Out」
ゲスト参加のGiorgios Kontrafourisのオルガンも加わったグルーヴィー・ジャズ。Pekka Lehtiのベースがグループをグイグイと引っ張ります。

「Solifer-Lento」
ホーン隊によるロマンティックなメロディとボッサ・リズムの組み合わせがバッチリの1曲。

「Go Ahead, Float」
国内盤のボーナス・トラックとして、2ndシングル「Go Ahead, Float」が収録されています。スキャット・コーラスも加わったファンキー・サンバ・チューン。黒いグルーヴ感がサイコーに格好良いです。この曲は外せない1曲なので、個人的には国内盤をオススメします。

『Soundtrack for the Sound Eye』(2009年)
サウンドトラック・フォー・ザ・サウンド・アイ
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2010年12月01日

Terry Callier『Fire on Ice』

Elektra移籍第1弾アルバム。メロウからディスコまで!☆Terry Callier『Fire on Ice』
Fire on Ice
発表年:1978年
ez的ジャンル:フォーキー・ソウル系黒人SSW
気分は... :バルサ完勝!

サッカー・ファン注目の一戦「バルセロナ対レアル・マドリー」のクラシコは、5対0でバルサの歴史的大勝という結果に終わりました。最後の方はバルサ・ファンの僕でさえ、マドリーの選手たちやモウリーニョ監督に同情してしまいました。バルサ・サッカーの素晴らしさを堪能したと同時に、サッカーの怖さを実感した試合でした。

スポーツの怖さと言えば、NFLの「コルツ対チャージャース」戦でQBマニング率いるコルツがホームで22点の大差をつけられて大敗したのも印象的でした。精密機械のようなスーパーQBマニングでさえ、一度歯車が狂ってしまうと立て直すことは難しいんですね。コルツ・ファンではない僕でも何か衝撃的でした。

サッカーもアメフトもたった1つの些細なプレーで大きく流れが変わってしまうんですね。何事も手を抜いてはいけませんな。

さて、90年代の再評価以降、世代を超えた支持を集める黒人シンガー・ソングライターTerry Callierの3回目の紹介です。

『Occasional Rain』(1972年)、『What Color Is Love』(1973年)に続いて紹介するのは、1978年リリースの『Fire on Ice』です。

『I Just Cant Help Myself』(1974年)あたりを紹介したい気分もありますが、ジャケが今の時期らしい『Fire on Ice』の方をセレクトしました。

Terry Callierと言えば、『Occasional Rain』(1972年)、『What Color Is Love』(1973年)、『I Just Cant Help Myself』(1974年)というCadet時代の3枚の印象が強いですよね。

一方、今日紹介する『Fire on Ice』(1978年)や『Turn You To Love』(1979年)というElektraからの2枚は、時代の要請に応じたディスコ路線の作品としてビミョーな扱いですよね。確かに、ヒット狙いで作られたディスコ・テイストの曲はイマイチな印象を受けます。

しかしながら、『Fire on Ice』はアルバム全体がディスコ路線というわけではありません。「Street Fever」「Disco In The Sky」の2曲のみがディスコ路線であり、それ以外はCadet時代の延長線上にある楽曲です。

人気メロウ・ソウル「Holdin' On (To Your Love) 」、同じくメロウ・グルーヴ「I Been Doin' Alright Part II (Everythings Gonna Be Alright)」、感動バラード「Butterfly」、Minnie Riperton参加のソフトリーな「Love Two Love」 、アフリカン・アメリカンとしてのアイデンティティを歌った「African Violet」といったスピリチュアルな楽曲、故Martin Luther Kingへのオマージュ「Martin St. Martin」といった社会派ソングなど、楽曲は粒揃いです。

Don Mizellがエグゼクティヴ・プロデューサー、Richard Evansがプロデューサーを務めています。レコーディングには、Phillip Upchurch(g)、James Gadson(ds)、Paul Humphrey(ds)、Minnie Riperton(vo)、 Sidney Barnes(vo)等が参加しています。

今までスルーしていた人はぜひチェックしてみて下さい。

全曲紹介しときやす。

「Be A Believer」
オープニングはハートウォームなフォーキー・ソウル。ストリングスが盛り上げてくれます。つかみはOK!
http://www.youtube.com/watch?v=IeE63YIMMII

「Holdin' On (To Your Love) 」
フリーソウル好きをはじめ、本作の中では最も人気が高いであろう哀愁メロウ・ソウル。激シブのCallierのヴォーカルが胸に迫ってきます。
http://www.youtube.com/watch?v=HRUfVWMaDzQ

「Street Fever」
問題のディスコ・チューン。確かにこの曲は苦笑するしかありません。黙ってスキップしましょう(笑)

「Butterfly」
「Street Fever」から気を取り直して、美しい感動バラードです。ジワジワと込み上げてくるものがありますね。
http://www.youtube.com/watch?v=slbdo4n3lBg

「I Been Doin' Alright Part II (Everythings Gonna Be Alright)」
個人的には一番のお気に入りのメロウ・グルーヴ。スマートなアレンジもグッドですね!
http://www.youtube.com/watch?v=_kYVoLG3l-U

「Disco In The Sky」
ディスコ路線の2曲目。ただし、コチラは「Street Fever」ほど酷くはないと思います。

「African Violet」
アフリカン・アメリカンとしてのアイデンティティを歌ったスピリチュアルな仕上がり。こういう曲は彼にマッチしますね。崇高な気分になれる1曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=bnyphR7_xj8

「Love Two Love」
Minnie Riperton参加のキュートな本曲も本作の聴きものですね。優しい気持ちになれるソフトリーなメロウ・チューンに仕上がっています。

「Martin St. Martin」
故Martin Luther Kingへのオマージュ。神妙な面持ちになる社会派ソング。これもTerry Callierらしい1曲ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=MSPLel4OrFo

Terry Callierの過去記事もご参照下さい。

『Occasional Rain』(1972年)
Occasional Rain

『What Color Is Love』(1973年)
ホワット・カラー・イズ・ラヴ

今、WOWOW『洋楽ライブ伝説』でCreamのイギリスでのフェアウエル・コンサートを放送していますが格好良いですね。この番組、いつもイマイチなライブばかりだなぁと思っていたのですが、今回はかなりグッときています。
posted by ez at 01:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする