発表年:1975年
ez的ジャンル:ウィスパー・ヴォイス系女性ジャズ・シンガー
気分は... :今日は"女子ジャズ"がいいんじゃない!
今日はグラミー賞&バレンタイン・デーですね。
そんなお日柄に相応しい1枚としてセレクトしたのは女性ジャズ・シンガーBlossom Dearieの『1975:From The Meticulous to the Sublime』(1975年)です。
流行の"女子ジャズ"に興味がある方にもぜひ聴いて欲しい1枚です。
昨日のAmber Ojeda『Here I Am』の記事で、"女子ジャズ"に対して否定的見解を持っているとの誤解を招きかねないような文章を書いてしまいましたが、"女子ジャズ"的作品も嫌いじゃありませんよ。ただし、それに便乗しすぎのプロモや企画アルバムにはウンザリしていますが。
その点、Blossom Dearieは"女子ジャズ"に相応しいジャズ・シンガーなのでは?
Blossom Dearie(1926-2009年)はN.Y.出身のジャズ・シンガー/ピアニスト。
1940年代からWoody Herman OrchestraやAlvino Rey's bandで参加していましたが、1952年に渡仏してChristiane Legrand(Michel Legrandの姉)らとコーラス・グループLes Blue Starsを結成し、パリを舞台に活躍します。
1956年には初のリーダー作『Blossom Dearie Plays "April in Paris"』(1956年)を録音しましたが、ピアノのみでヴォーカルは披露していませんでした。
その後Verve Recordsと契約し、ヴォーカル入りのリーダー作『Blossom Dearie』(1957年)を録音します。60年代はアメリカと欧州を行き来しながら活動を続けていました。
1974年にはBlossomの兄Walter W. Birchettを社長に据えた自主レーベルDaffodil Recordsを設立します。また、子供向け教育番組『Schoolhouse Rock!』に出演し、Bob Doroughによる「Figure Eight」を歌っています(アルバム『Multiplication Rock』収録)。
その後もマイペースで活動を続けていましたが、2009年2月7日に老衰のためN.Y.で死去します。
キュートな容姿と個性的なウィスパー・ヴォイスのイメージが強いアーティストですね。
長いキャリアの中で多くの作品を録音しているBlossom Dearieですが、僕が気になる作品は『Blossom Dearie』(1956年)、『Give Him the Ooh-La-La』(1957年)、『Once Upon a Summertime 』(1958年)、『May I Come In?』(1964年)、『Sweet Blossom Dearie』(1967年)、『That's Just the Way I Want to Be』(1970年)、『Blossom Dearie Sings』(1973年)、『1975:From The Meticulous to the Sublime』(1975年)あたりになりますかね。
今日紹介する『1975:From The Meticulous to the Sublime』(1975年)は、自主レーベルDaffodil Recordsからの第2弾アルバムであり、サバービアでもセレクトされた今日人気の高い1枚です。
ジャケの通り、しっとりと落ち着いた雰囲気の大人のジャズ・ヴォーカル作品に仕上がっています。ただし、Blossomのキュートなウィスパー・ヴォイスを健在であり、その意味では年齢不詳のヴォーカルを堪能できます。
また、本作ではBlossomのエレピを多用しており、エレピによるメロウ・サウンドとBlossomのウィスパー・ヴォイスの組み合わせが最高に素敵な音世界を創り出しています。
惜しくも2009年に逝去したBlossom Dearieですが、彼女の若々しいウィスパー・ヴォイスはこれからも多くの音楽ファンを魅了し続けることでしょう。
全曲紹介しときやす。
「I'm Hip」
Dave Frishberg作詞、Bob Dorough作曲。Blossomの代表曲でもあるヒップなオープニング。個性的なウィスパー・ヴォイスと小粋なスウィング感が見事にハマった名演だと思います。聴いているだけで楽しくウキウキ・モードになりますよね。サイコー!
http://www.youtube.com/watch?v=QbVft-fJ3g4
「Saving My Feeling For You」
Len Saltzberg作詞、Blossom Dearie作曲。彼への愛しい思いを歌う切ないラブ・ソング。前作『Blossom Dearie Sings』でも取り上げていた楽曲ですが、ここではエレピが加わったメロウな仕上がりが印象的です。
「Sweet Georgie Fame」
Sandra Harris作詞、Blossom Dearie作曲。ラジオから流れてきたGeorgie Fameの楽曲を聴いてインスパイアされた作品。本曲をきっかけにGeorgie Fameと交流を持つようになったようです。正直、Georgie Fameのイメージとは異なる雰囲気の楽曲ですが、Blossomの優しい歌声とメロウ・サウンドに魅了される素敵な1曲に仕上がっています。
「A Face Like Yours」
Tommy Wolf作詞、Victor Feldman作曲。どこへ行っても別れた恋人の面影を追いかけてしまう切ない恋心を歌っています。胸を締めつけるような切なさにグッとくる1曲。
http://www.youtube.com/watch?v=rqhVNRFjq7w
「Hey John」
Jim Council作詞、Blossom Dearie作曲。John Lennonへのトリビュート・ソング。英国のラジオ番組でJohnと共演したことがきっかけで作られた曲。Johnへのトリビュート云々よりもBlossomのキュートな魅力を満喫できる1曲として楽しめます。
「I'm Shadowing You」
Johnny Mercer作詞、Blossom Dearie作曲。前作『Blossom Dearie Sings』でも取り上げていた楽曲ですが、メロウなエレピ・グルーヴとして魅力的な1曲に仕上がっています。
「Many's The Time」
Len Saltzberg作詞、Blossom Dearie作曲。Blossomの優しい歌声がしみじみと胸に染み入ってくるバラード。心が癒されます。
http://www.youtube.com/watch?v=iuJfojUOZC4
「Send In The Clowns」
1973年のミュージカル『A Little Night Music』のために書かれたStephen Sondheim作品。僕の場合、Barbra Streisand『The Broadway Album』(1985年)でのBarbraの堂々とした歌いっぷりが印象深い楽曲ですが、Blossomヴァージョンはしっとりと聴かせてくれます。
「Isn't That The Thing To Do?」
Len Saltzberg作詞、Blossom Dearie作曲。ロマンティック・アレンジが素敵な1曲。相手の気持ちが知りたい恋心を恋人へ語りかけるように歌います。
「Feeling Groovy-The 59th St.Bridge Song」
ご存知Simon & Garfunkelの名曲カヴァー。小粋なアレンジで一味違う「Feeling Groovy」を聴かせてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=zdiFmvbfGF4
「How Do You Say Auf Wiedersehn?」
Johnny Mercer作詞、Tony Scibetta作曲。ラストはジャズ・ヴォーカル然としたオーセンティックなバラードです。
http://www.youtube.com/watch?v=keOrmK8C8OM
興味のある方は他のBlossom Dearie作品もチェックしてみて下さい。
『Blossom Dearie』(1956年)
『Give Him the Ooh-La-La』(1957年)
『Once Upon a Summertime 』(1958年)
『May I Come In?』(1964年)
『Sweet Blossom Dearie』(1967年)
『That's Just the Way I Want to Be』(1970年)
『My New Celebrity Is You』(1975年)
『Winchester in Apple Blossom Time』(1977年)