2011年03月31日

A Taste Of Honey『Twice As Sweet』

「Rescue Me」、「Sukiyaki」収録。George Dukeプロデュースの3rd。☆A Taste Of Honey『Twice As Sweet』
シーズ・ア・ダンサー
発表年:1980年
ez的ジャンル:女性フロント系ディスコ/ソウル
気分は... :上を向いて歩こう!

今回は大ヒット「Boogie Oogie Oogie」でお馴染みのディスコ/ソウル・グループA Taste of Honeyの3rdアルバム『Twice As Sweet』(1980年)です。

A Taste of Honeyは1971年にPerry Kibble(key)、Donald Johnson(ds)、Janice Marie Johnson(vo、b)らがL.A.で結成したグループ。1976年にHazel Payne(g、vo)が加わり、Janice、Hazelの女性2人、Perry、Donaldの男性2人というデビュー・アルバム時のラインナップが揃います。

1978年にリリースしたデビュー・アルバム『A Taste of Honey』からのディスコ・チューン「Boogie Oogie Oogie」が、シングルとして全米チャート及び同R&Bチャート第1位となり、一躍人気グループとなりました。

しかし、『A Taste of Honey』のジャケに写っていたのがJanice、Hazelの女性メンバー2名のみであったため、女性2人組ユニットといったイメージが定着してしまいます。そのため、男性メンバーは縁の下の力持ち的な存在でしたが、3rdアルバム『Twice As Sweet』(1980年)からはメンバーのクレジットからも外されてしまい、名実ともにJanice、Hazelの女性ユニットとなりました。

整理すると、アルバムとしては『A Taste of Honey』(1978年)、『Another Taste』(1979年)、『Twice As Sweet』(1980年)、『Ladies of the Eighties』(1982年)の4枚をリリースしています。1st、2ndはMizell Brothers、3rdはGeorge Duke、4thはAl McKayがプロデュースしています。

個人的には名曲「I Love You」収録のSky High Productions作品である2nd『Another Taste』(1979年)がイチオシなのですが、今の日本の状況や季節を考えると、「Boogie Oogie Oogie」に次ぐグループの大ヒット・シングル「Sukiyaki」を聴くべきだと思い、同曲が収録された3rd『Twice As Sweet』(1980年)をセレクトしました。

ご存知のとおり、「Sukiyaki」は坂本九の全米No.1ヒット「上を向いて歩こう(英題:Sukiyaki)」の英語カヴァーです。

前向きなメッセージに美しいメロディ・・・今の日本に必要なものがぎっしりと詰まった名曲が「上を向いて歩こう」だと思います。

そんな名曲の英語カヴァーですが、ヒットしていた当時は映画の間違った日本人像を観ているのと同じ感覚で正直あまり好きになれませんでした。でも今このような状況で聴くと、英語であっても和の心が伝わり、しみじみ胸に沁みてきます。昔はわざとらしいと感じていた琴の音色も、(花見のできない)桜の季節に聴くと感慨深いものがあります。

「Sukiyaki」を抜きにしても、本作は十分に楽しめるディスコ/ソウル作品です。むしろ、「Sukiyaki」は異質な曲であり、残りはGeorge Dukeプロデュースらしい、サウンド・プロダクションを満喫できます。

特にダンス・クラシック「Rescue Me」は今でも人気の高い1曲ですね。アルバム全体の構成にもメリハリがあって楽しめると思います。

♪上を向いて歩こう
♪涙がこぼれないように・・・

全曲紹介しときやす。

「Ain't Nothin' But A Party」
オススメその1。オープニングはいかにもGeorge Dukeプロデュースらしい軽快な80年代ディスコ・ファンクです。聴いているだけで気分が高揚してきます!なぜ、この曲がシングルにならなかったのか?と思うくらいキャッチーな仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=2ypl05BaMV0

「Rescue Me」
オススメその2。本作のハイライト。ダンス・クラシック/フリーソウル・クラシック/定番サンプリング・ソースとして大人気のダンス・チューン。シングルとして全米R&Bチャート第16位のヒット。イントロを聴いただけで胸トキメキます。ビート良し、メロディ良し、サウンド良し!全てが完璧ですね。この曲聴いていると、セットでB.T. Express「Have Some Fun」を聴きたくなります。
http://www.youtube.com/watch?v=8yKUHb38liY

本曲を有名にしたFunky 4+1「That's the Joint」をはじめ、Nice & Nasty 3「The Ultimate Rap」、Positive K「I Got A Man」、Two Kings In A Cipher「Movin' on 'Em (The Resurrection) 」、Carboo「You Are the One」等のサンプリング・ネタになっています。

Funky 4+1「That's the Joint」
 http://www.youtube.com/watch?v=rno1xupfhVs
Nice & Nasty 3「The Ultimate Rap」
 http://www.youtube.com/watch?v=ZYiwSFT5xJ8
Positive K「I Got A Man」
 http://www.youtube.com/watch?v=VvYIpa1Ulvw

「Superstar Superman」
オススメその3。Janiceのキュートなヴォーカルと爽快サウンドで気持ちが晴れやかになります。前の2曲のインパクトが強すぎて若干損をしていますが、素晴らしい出来栄えの1曲だと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=Xdw67TbriRc

「I'm Talkin' 'Bout You」
この曲もシングルになりました。ベースがブリブリ響き渡るダンス・チューンです。この時代らしいと言えば、らしい音ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=v7AymYbDW5c

「She's A Dancer」
哀愁メロディから一気にテンポ・アップするダンス・チューン。僕好みの楽曲ではありませんが・・・
http://www.youtube.com/watch?v=JCYmOKJ_HOM

「Don't You Lead Me On」
オススメその4。思わせぶりのJaniceのヴォーカルが印象的なメロウ・ダンサー。サビの♪Don't You Lead Me On〜♪部分はかなりグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=JjU4S7KxIzs

「Good-Bye Baby」
オススメその5。胸キュンのスロウ。AOR好きの人であればかなりグッとくるはずです。
http://www.youtube.com/watch?v=9x9NTyR9oFI

「Say That You'll Stay」
セクシーなミディアム・スロウでジワジワと高揚させた後、一気にテンポアップして終盤になだれ込みます。
http://www.youtube.com/watch?v=V8FgVpJraME

「Sukiyaki」
オススメその6。前述のように坂本九の名曲「上を向いて歩こう」のカヴァー。シングルとして全米チャート第3位、同R&Bチャート第1位の大ヒットとなりました。印象的な琴の音色は日系3世バンドHiroshimaのメンバーによるもの。Slick Rick & Doug E. Fresh 「La Di Da Di」、Mary J. Blige「Everything」等でも引用されていますね。
http://www.youtube.com/watch?v=xqFkUNqBwMw

A Taste of Honeyの他作品もチェックを!

『A Taste of Honey』(1978年)
A Taste of Honey

『Another Taste』(1979年)
Another Taste

『Ladies of the Eighties』(1982年)
Ladies Of The Eighties
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2011年03月30日

Rodrigo Del Arc『A Kind of Bossa』

サンパウロ出身の男性SSWの"新感覚ネオアコ・ボッサ"☆Rodrigo Del Arc『A Kind of Bossa』
Kind of Bossa
発表年:2009年
ez的ジャンル:21世紀ネオアコ・ボッサ
気分は... :元気だよー!

世の中は自粛ムードが支配的です。
東京はお花見もできないようですね。

確かに被災地の方の心情や収束する気配のない原発事故、節電対策も含めて考慮すべき点は多々あると思います。一方、首都圏が日常を取り戻し、経済活動を正常化しないと日本全体が元気になりませんよね。

その意味では昨日のサッカー・チャリティー・マッチは大阪での開催でしたが、日常を取り戻すための良いきっかけになった気がします。特にカズのゴールは勇気を与えてくれましたね。

さて、今回は若手ブラジル人アーティストRodrigo Del Arcのデビュー・アルバム『A Kind of Bossa』(2009年)です。

Rodrigo Del Arcはブラジル、サンパウロ出身の男性シンガー・ソングライター。

ジャケからもわかる通り、かなりのイケメンです。その甘いマスクで実際有名企業の広告キャンペーンにも起用され、一時期日本のCMにも出演していたことがあるのだとか。また、タイやスイス、米国にも住んでいた経験があり、本作『A Kind of Bossa』は全編英語で歌われています。

デビュー・アルバムとなる『A Kind of Bossa』(2009年)ですが、タイトルだけみるとボサノヴァ・アルバムを想像するかもしれませんが、聴いてみるとモロにブラジル人のボサノヴァ・アルバムという感じはせず、ハイブリッドなボッサという印象です。

全編英語歌詞ということもありますが、ネオアコ/ギターポップのエッセンスもあるサウンド感覚がそうした印象を与えるのだと思います。

"ネオアコ・ボッサ"ということでBen Watt『North Marine Drive』が引き合いに出されてることが多いようですが、個人的には当ブログでも紹介した北欧ボッサJohan Christher Schutz『Passion』あたりがお好きな人にマッチする作品という気がします。

甘いマスク、甘いヴォーカル、甘いメロディ・・・特に女性ファンは相当グッとくるはずですよ!

全曲紹介しときやす。

「Slip Into Precision」
僕の一番のお気に入り曲。RodrigoのSSWとしてのメロディ・センスを満喫できる1曲です。程好いサンバのリズムがいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=EptDlLBybYA ※ギターのみのスタジオ・ライヴ

「The Question Song」
甘く妖しいボッサ・チューン。甘いマスクのイケメン・キャラともマッチしています。
http://www.youtube.com/watch?v=NuTxcqPuCrI

「That Morning」
"ネオアコ・ボッサ"という名に相応しい1曲。80年代ネオアコに胸ときめいた方にはグッとくる1曲だと思います。美しいピアノの響きがいい感じです。
http://www.youtube.com/watch?v=R7_3r5HsbJ0

「Under The Sea」
不思議な音響感覚で独特の音世界へと誘います。

「Trip」
リラックスした爽快感と小技の効いたハイブリッド・サウンドを堪能できる1曲。聴けば聴くほど面白いですね。
http://www.youtube.com/watch?v=nP35sfNXg9g

「Candlelight」
ロマンティックなボッサ・チューン。イケメンがこんな甘い歌声で囁くと女性ファンはたまわないのでは?

「Sometimes」
シンプルながらも哀愁のメロディにグッとくるボッサ・チューン。

「A Place To Remind」
サンパウロのミュージシャンらしいハイブリッド感覚のサウンドを堪能できる1曲です。この1曲のみでちょっとした音の小宇宙を旅してきた気分になります。
http://www.youtube.com/watch?v=9cZeSgL9pZ4 ※ギターのみのスタジオ・ライヴ

「Summer Is On The Way」
美しいボッサ・チューン。この曲なんか聴いてると、この人のメロディ・センスはやはり欧米のポップ・ミュージックの影響を強く感じますね。
http://www.youtube.com/watch?v=vniwDNwxeuM

「Together(Live)」
ラストはライブ・レコーディングです。シンプルな中にもジェントルな雰囲気が溢れています。

本作がお好きな方は以下のアルバムもどうぞ!

Johan Christher Schutz『Passion』(2004年)
パッション

Paulo Muniz『Trying To Fool Destiny』(2007年)
トライング・トゥ・フール・デスティニィ(ジャパニーズ・エディション・デジパック仕様)
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2011年03月29日

Grant Green『Alive!』

ソウルフル&ファンキーなライブ・アルバム☆Grant Green『Alive!』
アライヴ
録音年:1970年
ez的ジャンル:ソウルフル&グルーヴィー系Jazzギター
気分は... :そろそろかな・・・

昨日は震災以来初めて渋谷のCDショップへ立ち寄ってみました。

いつも行くショップを何軒か回ってきましたが、節電等のせいもあってかどのショップもいまいち活気がありませんでしたね。まだまだ試運転といった感じで、通常モードに戻るにはもう少し時間が掛かるのかもしれませんね。

と言いつつ、安価で掘り出し物を何枚かゲットでき、まずまずの成果で満足しています。

ソウルフル&グルーヴィーなジャズ・ギタリストGrant Greenの4回目の紹介です。

これまで当ブログで紹介したGrant Green作品は以下の3枚。

 『Carryin' On』(1969年)
 『Visions』(1971年)
 『Live at the Lighthouse』(1972年)

今回は1970年リリースのライブ・アルバム『Alive!』です。
紹介するのが4番目になってしまいましたが、僕が最も頻繁に聴くGrant Green作品が本作『Alive!』です。

70年代前半のライブ盤ということであれば、以前に紹介した『Live at the Lighthouse』(1972年)も傑作ライブ作品です。『Live at the Lighthouse』と比較した場合、『Alive!』『Live at the Lighthouse』ほど洗練されていませんが、ずっしりとした重量感があります。

特に「Sookie, Sookie」「Let the Music Take Your Mind」のファンキーなグルーヴ感には相当グッときます。

メンバーは、Grant Green(g)、Claude Bartee(ts)、Earl Neal Creque(org)、Ronnie Foster(org)、Idris Muhammad(ds)、Joseph Armstrong (congas)、William Bivens(vibe)という構成です。特に、Idris MuhammadRonnie Fosterのプレイがアルバムを盛り上げてくれます。

オリジナルは全4曲と少なめですが、そんなことは気にならないソウルフル&ファンキーな演奏です。

全曲紹介しときやす。

「Let the Music Take Your Mind」
オープニングはKool & The Gangのファンキー・チューンをカヴァー。オリジナルは『Kool and the Gang』(1970年)に収録されています。もちろん本ヴァージョンもファンキーなグルーヴが炸裂します。Idris Muhammadが叩き出すリズムが演奏全体のテンションを上げ、ソウルフルなGreenのギター・プレイを盛り上げてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=lTKCE1vpST8

「Time To Remember」
Earl Neal Creque作。オリジナル収録4曲の中では一番地味な存在かもしれません。抑えた演奏が哀愁モードを醸し出します。こういう曲だからなのか、Claude Barteeのサックス、William Bivensのヴァイヴが目立っています(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=6poc-OS58lY

「Band introduction by Buddy Green」
最近のCDではバンド・メンバーの紹介部分が独立しているようです。僕の所有CDでは「Time To Remember」の最後に収録されています。

「Sookie, Sookie」
僕の一番のお気に入り。最も良く聴くGrant Greenの演奏かもしれません。Don Covay/Steve Cropper作。Don Covayの名曲カヴァー。これぞGrant Green節といった感じのフレーズを満喫できるファンキー・チューン。Idris MuhammadのドラムとRonnie Fosterのオルガンが生み出す黒いグルーヴも最高です!Us3「Tukka Yoot's Riddim」でサンプリングされていましたね。
http://www.youtube.com/watch?v=KwraMRAM_9Q

Us3「Tukka Yoot's Riddim」
 http://www.youtube.com/watch?v=ju0PyyqWqHM

「Down Here on the Ground」
Gale Garnett/Lalo Schifrin作。Wes Montgomeryも演奏していましたね。ソウルフルなGrant Greenのプレイにグッとくる演奏です。
http://www.youtube.com/watch?v=_RKw7-BY5eM

90年代Hip-Hop好きの方にとっては本作のハイライトかもしれませんね。A Tribe Called Quest「Vibes and Stuff」Pete Rock & C.L. Smooth「Act Like You Know」Cypress Hill「Stoned Is The Way Of The Walk」Madonna「Forbidden Love」(『Confessions On A Dance Floor』収録の同名曲ではなく、『Bedtime Stories』収録曲の方です)、Tung Twista「Say What」等でサンプリングされています。

A Tribe Called Quest「Vibes and Stuff」
 http://www.youtube.com/watch?v=CRr6W-zVCdw
Pete Rock & C.L. Smooth「Act Like You Know」
 http://www.youtube.com/watch?v=5Mes12ZikPw
Cypress Hill「Stoned Is The Way Of The Walk」
 http://www.youtube.com/watch?v=1TxgXmNpSN8
Madonna「Forbidden Love」
 http://www.youtube.com/watch?v=jFATvVeUTco
Tung Twista「Say What」
 http://www.youtube.com/watch?v=Es8NRFDKbXs

僕の保有するCDにはオリジナル4曲のみの収録ですが、最近のCDには「Hey, Western Union Man」(Jerry Butlerのヒット曲カヴァー)、「It's Your Thing」The Isley Brothersのヒット曲カヴァー)、「Maiden Voyage」Herbie Hancockの名曲カヴァー)の3曲がボーナス・トラックが追加収録されています。

「Maiden Voyage」(Bonus Track)
http://www.youtube.com/watch?v=cMWHNY292F0

Grant Greenの過去記事もご参照下さい。

『Carryin' On』(1969年)
Carryin' On

『Visions』(1971年)
ヴィジョンズ

『Live at the Lighthouse』(1972年)
Live at the Lighthouse
posted by ez at 02:49| Comment(2) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月28日

Joni Mitchell『Clouds』

名曲「Both Sides, Now」を収録した初期作品☆Joni Mitchell『Clouds』(♪
青春の光と影
発表年:1969年
ez的ジャンル:独創系女性SSW
気分は... :人生を両側から眺めてみる・・・

独創的で研ぎ澄まされた感性を持つ女性シンガー・ソングライターJoni Mitchellの6回目の登場です。

これまで当ブログ紹介してきたJoni作品は以下の5枚(発売順)。

 『Blue』(1971年)
 『For The Roses』(1972年)
 『Court and Spark』(1974年)
 『Hejira』(1976年)
 『Don Juan's Reckless Daughter』(1977年)

今回は2ndアルバム『Clouds(邦題:青春の光と影)』(1969年)です。

何といっても名曲「Both Sides, Now(邦題:青春の光と影)」が収録されていることでお馴染みのアルバムですね。

時代を超えた普遍性を持つ名曲だと思います。

美しいメロディが老若男女を問わず感動させるのは勿論のこと、本曲の「人生を両側から眺める」という視点が多くの人に何かを強く訴えるのだと思います。

自分の立場しか考慮していない一方的な正義や、目先ばかりで本質を見落とす近視眼的な物の眺め方が良くないことはわかっていても、いざ自分のこととなるとそれを実践できないのが人間ですからね。

現在のような苦境の中で大きな決断をせねばならない時代においては、本曲の持つメッセージが心に刺さります。今、改めてじっくり向き合うべき名曲だと思います。

さて、アルバム『Clouds』(1969年)の話に戻すと、本作はデビュー・アルバム『Song to a Seagull』(1968年)に続く2ndアルバムです。

殆どの曲がギターの弾き語りであり、Joniの全作品の中でも最もシンプルな演奏で占められたフォーク・アルバムです。L.A.でレコーディングされた作品ですが、東海岸の雰囲気が漂います。

収録曲にはstrong>「Both Sides Now」以外にも、「Chelsea Morning」「I Don't Know Where I Stand」「Songs to Aging Children Come」等の名曲も収録されています。

本作は1970年グラミーのBest Folk Performanceを受賞しています。また、Judy Collinsヴァージョンの「Both Sides Now」が1969年のグラミーBest Folk Performanceを受賞しています。

研ぎ澄まされた感性のJoniの歌の向こうに、人生において大切なものが見えてくる・・・

全曲紹介しときやす。

「Tin Angel」
グリニッチ・ヴィレッジの有名な通りブリーカー・ストリートのカフェで見つけた、(ブリキでできた天使のような)悲しい瞳の愛しい人について歌ったもの。新しい恋なのに全くバラ色ではないのがJoniらしくていいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=4FOHCJvcSME

フォーク・シンガーTom Rushがアルバム『The Circle Game』(1968年)の中で取り上げています。同作には「Urge for Going」、「The Circle Game」といったJoni作品も収録されています。

Tom Rush「Tin Angel」
 http://www.youtube.com/watch?v=KMK5lYTYEMk

「Chelsea Morning」
「Both Sides, Now」と並ぶ本作のハイライト曲。Judy Collinsがカヴァー・シングルをリリースし、Joni自身もシングル化しています。Fairport Convention 等もカヴァーしていますね。一聴すると、何の変哲もないフォーク・ソングに聴こえますが、歌詞にはJoniらしい世界観が存分に描かれています。カーテンを開けていれば、チェルシーの朝のように虹が差し込むかも・・・
http://www.youtube.com/watch?v=c5DYLYHlKvk

Judy Collins「Chelsea Morning」
 http://www.youtube.com/watch?v=v5-NlLLes1c

「I Don't Know Where I Stand」
僕のお気に入り曲。美しく澄み切ったメロディとJoniらしい歌いまわしがマッチした名曲だと思います。Fairport Convention、Barbra Streisand等もカヴァーしています。
http://www.youtube.com/watch?v=78GCasX3_A4

Fairport Convention「I Don't Know Where I Stand」
 http://www.youtube.com/watch?v=g-1hH0rqeRA
Barbra Streisand「I Don't Know Where I Stand」
 http://www.youtube.com/watch?v=sxnAC4KgIqc

「That Song About the Midway」
味わい深いフォーキー・チューン。本曲に関して、個人的には『Streetlights』(1974年)に収録されたBonnie Raittのカヴァーが格好良いと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=2zzNyIFst8Q

Bonnie Raitt「That Song About The Midway」
 http://www.youtube.com/watch?v=F7eqsCml48I

「Roses Blue」
マンドリンの音色も加わったメランコリック・モードの仕上がり。
http://www.youtube.com/watch?v=aZiBUcZZvAY

「The Gallery」
画家でもあるJoniらしい視点の歌です。曲&ヴォーカルもJoniらしくていいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=QZ5cqtnb8Ws

「I Think I Understand」
本作らしい(良い意味での)青臭さを堪能できます。ギター一本の弾き語りですが、静かな語り口の中に漲るパワーを感じます。
http://www.youtube.com/watch?v=9NWUJoik-MA

「Songs to Aging Children Come」
名曲の佇まいがあります。美しくもミステリアスなJoniワールドへ誘われていきます。Arthur Penn監督の映画『Alice's Restaurant(邦題:アリスのレストラン)』でも曲が使われていました。
http://www.youtube.com/watch?v=PElvpNvh6n8

「The Fiddle and the Drum」
感動的なア・カペラ。Joni Mitchellの出身地アルバータのバレエ団がJoniの音楽に振付けたバレエの演目タイトルにもなりました。また、アメリカのロック・グループA Perfect Circleがカヴァーしています。
http://www.youtube.com/watch?v=RezVPRHV5n8

「Both Sides, Now」
ラストは本作のハイライト「青春の光と影」。誰もが胸打たれる説明不要の名曲です。Joni自身のヴァージョンに先駆け、Judy Collinsのヴァージョンが1968年に映画『Changes(邦題:青春の光と影)』の挿入歌として全米シングル・チャート第8位のヒットとなっています。その後も数多くのアーティストがカヴァーしています。日本では一時期JTの喫煙マナーCMで使われていましたね。先に書いたように本曲のメッセージは、無意識のうちに僕の思考・行動に影響を与えているのかもしれません。聴いていると、冷静に自分を振り返ることができる1曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=tbNWJ9Ed82g

本曲を有名にしたポップなJudy CollinsヴァージョンはJoniヴァージョンとは異なる本曲の魅力を伝えてくれます。

Judy Collins「Both Sides Now」
 http://www.youtube.com/watch?v=z8jGFu7ys64

Joni Mitchellの過去記事もご参照下さい。

『Blue』(1971年)
Blue

『For The Roses』(1972年)
バラにおくる

『Court and Spark』(1974年)
Court and Spark

『Hejira』(1976年)
Hejira

『Don Juan's Reckless Daughter』(1977年)
ドンファンのじゃじゃ馬娘
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2011年03月27日

Lupe Fiasco『Lasers』

遂にリリースされたHip-Hop界の救世主Lupeの3rdアルバム☆Lupe Fiasco『Lasers』
Lasers
発表年:2011年
ez的ジャンル:Hip-Hop界の救世主
気分は... :少しの変化が大きな変化をもたらす!

遂にリリースされたLupe Fiascoの3rdアルバム『Lasers』(2011年)です。
多くのHip-Hopファンが待ち望んでいでいた3rdアルバムですね。

Hip-Hop界の救世主Lupe Fiascoの紹介は2nd『Lupe Fiasco's The Cool』(2007年)に続き2回目となります。

前作『Lupe Fiasco's The Cool』のリリース直後に、"次作は『LupE.N.D』とのタイトルとなり、デビュー作『Lupe Fiasco's Food & Liquor』、2nd『Lupe Fiasco's The Cool』に続く三部作の最終作となる。そして、『LupE.N.D』のリリースを以って引退する"と言われていたLupe Fiascoですが、実際に作品がリリースされることはありませんでした。

その間にはセールスにこだわるレーベル側との間に軋轢があったようです。結果として、新たなコンセプトのもと『Lasers』のアルバムの制作に取り掛かったようです。しかし、作品が完成に近づいたものの、またもやレーベル側と意見が食い違いリリースが見送られます。その後、ファンによる署名活動や抗議集会なども起こった末、ようやくリリースされる運びとなりました。

アルバム・タイトル『Lasers』には、「Love always shine, everytime remember to smile(愛はいつも輝く、笑顔を忘れるな)」という意味が込められているようです。

また、LOSERS(敗者)のOの上にAを重ねてLASERSとしているアルバム・ジャケには、「1文字変えるだけで全く反対の意味にすることができる。転じて、世界を少し変えるだけで大きな変化を生み出すことができる」という思いが込められています。

その意味では、大きな困難に直面する私達にとってもシンクロしてくるテーマ、コンセプトを持った作品だと思います。

アルバムにはSarah Green、Skylar Grey、MDMA(Pooh Bear)、Trey Songz、Matt Mahaffey、Sway、Eric Turner、John Legendがゲストとして参加しています。

プロデューサーも多用なメンバーが起用されていますが、新進プロデューサーKing David "The Future"、ヒット連発のAlex Da Kidあたりが目立っています。

個人的には「The Show Goes On」「Words I Never Said」というシングル曲よりも、それ以外の曲の方に惹かれました。1曲1曲にずっしりとした手応えを感じることができます。その意味では、とてもストロングな印象を受けるアルバムです。

最近のHip-Hop作品では、Kanye West『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』と同じように、格の違いを感じたアルバムでした。

アルバムは見事、全米アルバム・チャート第1位、全米R&Bアルバム・チャート第1位に輝きました。

全曲紹介しときやす。

「Letting Go」
オススメその1。オープニングはLupe Fiasco作品でお馴染みの女性シンガーSarah Greenをフィーチャー。美しくも儚いトラックが醸し出す少しダークな音世界がアルバム全体の空気を作り出します。King David "The Future"プロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=xuUu6UrweWQ

「Words I Never Said」
アルバムからの2ndシングル。B.o.B「Airplanes」、Eminem feat. Rihanna「Love the Way You Lie」、Dr. Dre feat. Eminem & Skylar Grey「I Need a Doctor」といったヒット連発のAlex Da Kidがプロデュースし、「I Need a Doctor」にも参加していた女性シンガーSkylar Greyをフィーチャーしています。前述のAlex Da Kidプロデュース作がお気に入りの方であれば間違いない哀愁モードのスケールの大きな1曲です。残念ながら、僕はこのタイプの曲は得意ではありませんが・・・支持政党や宗教についても言及している議論を巻き起こしそうな内容です。
http://www.youtube.com/watch?v=btQKGvVRnZ8

「Till I Get There」
オススメその2。僕の一番のお気に入り曲。ATCQDe La Soul好きの僕にとって、こうしたリラックスした雰囲気はど真ん中です。Needlzプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=J0HQz6GRppc

「I Don't Wanna Care Right Now」
オススメその3。Lupe Fiasco作品でお馴染みMDMA(Pooh Bear)をフィーチャー。彼はいろいろな意味でLupeに深く関わっているようですね。The Audiblesプロデュース。Lupeにはこうしたエレクトロなダンサブル・トラックが似合うと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=WKgJJwF6xmc

「Out of My Head」
オススメその4。レーベル・メイトTrey Songzをフィーチャー。メロディアスでキャッチーな哀愁チューンに仕上がっています。一緒にツアーを回ったり、苦労を分かち合った仲だけあって息もピッタリといった感じですね。Miykal Snoddyプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=ZCeMMsAY5UE

「The Show Goes On」
アルバムに先駆けて昨年リリースされたシングル。Modest Mouse「Float On」ネタを使ったシングル向きの軽快な1曲。Lupeが力強く畳み掛けるライムとキャッチーなフックがいいですね。Kane Beatzプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=Rmp6zIr5y4U

「Beautiful Lasers (2 Ways)」
MDMAをフィーチャー。King David "The Future"プロデュース。鬱を乗り越えたLupe自身の体験をもとに書かれたアルバム中最もパーソナルな1曲。
http://www.youtube.com/watch?v=PFSnnnvIPl4

「Coming Up」
オススメその5。MDMAをフィーチャー。King David "The Future"プロデュース。本作で最も多くの曲でプロデュースしている新進プロデューサーKing Davidですが、個人的には彼のプロデュース曲で最も好きです。自然と体を揺らしながらハンドクラップしてしまう程好いトラックが僕好みです。
http://www.youtube.com/watch?v=nR68g7WbVGQ

「State Run Radio」
オススメその6。Matt Mahaffeyをフィーチャー。Right Or WrongやSelfといったロック・バンドで活躍するMatt MahaffeyをLupeが気に入り、一緒に仕事したいとオファーしたようです。正直、ラッパーとロック・アーティストの共演ってあまり好きではないのですが、そんな僕でもこの曲の仕上がりには大満足です。King David "The Future"プロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=2QKYUtemTs0

「Break the Chain」
UKのラッパーSwayとスウェーデンを拠点にするロック・バンドStreet Fighting Man のヴォーカルEric Turner(Eric自身はボストン出身)をフィーチャー。同じくスウェーデン出身のIshiがプロデュースを務めています。そんなメンツのせいか、サウンドはヨーロピアンなエレクトロ・サウンドになっています。
http://www.youtube.com/watch?v=MRUVa2OJsj4

「All Black Everything」
オススメその7。客観的に聴けば、本曲がアルバムのハイライトという気がします。Lupe自身もアルバムのフェイバリットに挙げているようです。タイトルから想像がつくようにリリックにもサウンドにもスケールの大きさと感じる感動的かつ完璧な仕上がりだと思います。Wizzo Buchananプロデュース。Jimmy Durante「I'll Be Seeing You」をサンプリング。
http://www.youtube.com/watch?v=71McnVwWPwU

「Never Forget You」
オススメその8。John Legendとの共演。John Legend好きの僕としては嬉しい共演です。Jerry "Wonda" Duplessis/Syience/Arden Altinoプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=ye5npKxUjSI

国内盤には「I'm Beamin」「Shining Down」 (Feat. Matthew Santos) の2曲がボーナス・トラックとして追加収録されています。

何故か未紹介のままになっている『Lupe Fiasco's Food & Liquor』(2006年)についても、そのうち取り上げたいと思います。

『Lupe Fiasco's Food & Liquor』(2006年)
フード&リカー(初回限定盤)

『Lupe Fiasco's The Cool』(2007年)
The Cool
posted by ez at 02:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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