発表年:1968年
ez的ジャンル:トロピカリアMPB
気分は... :さすが文化大臣!
今回はMPBを代表する大物アーティストGilberto Gilの2nd『Gilberto Gil』(1968年)です。
Gilberto Gilは1942年ブラジル、バイーア州サルヴァドール生まれ。
バイーア連邦大学に進学した時に盟友Caetano Velosoと出会い、1963年には初レコーディングも経験しています。
一度は石鹸製造会社へ就職しますが、1966年にElis Reginaからの依頼で楽曲提供した「Louvacao」がヒットしたの機に音楽活動へ専念し、1967年にはデビュー・アルバム『Louvacao』をリリースしています。
さらには、Caetano Velosoらと音楽を中心としたカウンター・カルチャー運動トロピカリア(トロピカリズモ)を牽引し、1968年にはCaetano Veloso、Tom Ze、Nara Leao、Gal Costa、Os Mutantesと共にブラジル音楽シーンに衝撃を与えたトロピカリアの金字塔的アルバム『Tropicalia: ou Panis Et Circencis』をリリースしています。
しかし、当時のブラジル軍事政権から反体制分子と見なされていたCaetano VelosoとGilberto Gilは1968年末に逮捕され、1969年に二人はロンドンへ亡命します。
1972年にブラジル帰国後もMPBの中心としてコンスタントに作品をリリースし、1986年には初の来日公演も行っています。
1980年代後半からは政治家としても活動するようになり、2003〜2008年にはブラジルの文化大臣も務めています。
60年代から今日までCaetano Velosoと共にブラジル音楽界を牽引する功労者ですね。
Caetano Velosoなんかと同じで、アルバム数が非常に多いのでどの作品から紹介すべきか迷うアーティストですが、最もトロピカリア(トロピカリズモ)の色合いが強い2nd『Gilberto Gil(邦題:日曜日の公園で)』(1968年)をセレクトしました。
この時期のGilberto Gil作品は、『Gilberto Gil(邦題:日曜日の公園で)』(1968年)、『Gilberto Gil(邦題:セレブロ・エレトローニコ)』(1969年)、『Gilberto Gil(邦題:イン・ロンドン)』(1971年)とセルフ・タイトル作が続くのでジャケで区別しておくのが良いかもしれません。
『Gilberto Gil(邦題:セレブロ・エレトローニコ)』(1969年)
『Gilberto Gil(邦題:イン・ロンドン)』(1971年)
さて、2nd『Gilberto Gil(邦題:日曜日の公園で)』(1968年)ですが、ジャケからしてThe Beatles『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』から影響を受けているのがわかりますよね。
『Tropicalia: ou Panis Et Circencis』(1968年)、Caetano Veloso『Caetano Veloso』(1968年)、Os Mutantes『Os Mutantes』(1968年)、Gal Costa『Gal』(1969年)あたりとセットで聴きたくなる1枚です。どれもジャケに雰囲気があって、新しい音楽が生まれてくるパワーを感じます。
『Tropicalia: ou Panis Et Circencis』(1968年)
Caetano Veloso『Caetano Veloso』(1968年)
Os Mutantes『Os Mutantes』(1968年)
Gal Costa『Gal』(1969年)
本作ではOs Mutantesをバックに、伝統的なブラジル音楽と英米のロック/サイケを融合させたGilならではのサイケ・ロック作品に仕上がっています。アレンジを担当するのはRogerio Dupratです。
ブラジル音楽ファンは勿論のこと、Sgt. Pepper's的な英米ロック好きの方も楽しめる1枚だと思います。
全曲紹介しときやす。
「Frevo Rasgado」
Bruno Ferreira/Gilberto Gil作。開放的なホーンの音色と軽快なリズムと共にスタートするオープニング。フットワーク軽い感じがいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=indp_ht6oHU
「Coragem pra Suportar」
Gilberto Gil作。サイケ・フォークなテイストがいいですね。ブラジル版"Donovan"といった雰囲気でしょうか。
http://www.youtube.com/watch?v=NxiAuQO05Ec
「Domingou」
Torquato Neto/Gilberto Gil作。Gilberto Gil+Os Mutantesのコラボらしいポップなロック・チューンにグッときます。密かに大好きな1曲。
「Marginalia Il」
Torquato Neto/Gilberto Gil作。Sgt. Pepper's的な音世界とブラジル音楽を見事に融合させた素晴らしい1曲だと思います。この時期のブラジル音楽の面白さが凝縮された1曲だと思います。トロピカリアならではのカラフルな音世界を堪能できます。Maria Bethanial『Recital na Boite Barrocoshortcut』(1968年)でも取り上げられています。
http://www.youtube.com/watch?v=SYsPP87fD7s
「Pega a Voga, Cabeludo」
Juan Arcon/Gilberto Gil作。Gilらしいリズミックな躍動感とOs Mutantesらしいロック・サウンドが上手くミックスしたエキサイティングな演奏がサイコーです。
http://www.youtube.com/watch?v=fPSmKr_utPw
「Ele Falava Nisso Todo Dia」
Gilberto Gil作。軽快なアコースティック・サウンドと雄大なストリングスが絡む本作らしい仕上がりの1曲。本曲もMaria Bethanial『Recital na Boite Barrocoshortcut』(1968年)で取り上げられています。こちらはオリジナルよりもゆったりとした仕上がりです。
「Procissao」
Gilberto Gil作。この曲も大好き!リズミックでサイケなロック・チューン。英米サイケ・ロックでは聴けないブラジルならではのサイケ・ロックに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=sxW5tG87i5o
「Luzia Luluza」
Gilberto Gil作。ブラジルならではのSgt. Pepper'sワールドですね。雄大なメロディと巧みなストリングス&ホーン・アレンジが印象的です。
「Pe da Roseira」
Gilberto Gil作。ブラジルならではのリズムと哀愁メロディを堪能したいのであれば本曲がオススメ。トロピカリア云々に関係なくグッとくる1曲です。この曲もMaria Bethanial『Recital na Boite Barrocoshortcut』(1968年)で取り上げられています。
http://www.youtube.com/watch?v=dq6OkVZfbxc
「Domingo no Parque」
Gilberto Gil作。邦題「日曜日の公園で」。一聴するとトロピカリア作品ならではの派手なサウンドが印象に残りますが、何度も聴くとトロピカリア云々に関係ない普遍的な魅力を持った名曲で締め括ってくれます。楽曲自体が素晴らしいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=pW9OD57dDwU
CDにはボーナス・トラックとして、「Barca Grande」、「A Coisa Mais Linda Que Existe」、「Questão de Ordem」、「A Luta Contra a Lata ou a Falencia do Cafe」の4曲が追加収録されています。
他のGilberto Gil作品もチェックを!とりあえず60〜70年代の作品をピックアップしておきます。
『Louvacao』(1967年)
『Expresso 2222』(1972年)
Caetano Veloso e Gilberto Gil『Barra 69 - Caetano e Gil Ao Vivo na Bahia』(1972年)
『Gilberto Gil Ao Vivo』(1974年)
『Refazenda』(1975年)
Gilberto Gil & Jorge Ben『Gil & Jorge - Ogum - Xango』(1975年)
『Refavela』(1977年)
Gilberto Gil & Rita Lee『Refestanca』(1977年)
『Gilberto Gil Ao Vivo Em Montreux』(1978年)
『Realce』(1979年)
『Nightingale』(1979年)