発表年:2011年
ez的ジャンル:最新現代女性ジャズ・ヴォーカル
気分は... :超オススメです!
今回はHerbie Hancock、Wayne Shorterらも絶賛する注目の女性ジャズ・ヴォーカリストGretchen Parlatoの最新作『The Lost And Found』です。
個人的には超オススメの新作です。
今年購入した新作の中で一番お気に入りの1枚かもしれません。
(もう1枚、当ブログでは未紹介のTamy『Tamy』と同点1位といったところです・・・)
Gretchen ParlatoはN.Y.を拠点に活躍する女性ジャズ・シンガー(多分1976年生まれ)。トランペット奏者の祖父、ベース奏者の父を持つジャズ一家に生まれた彼女はL.A.で育ち、UCLAで学士号を取得後、南カリフォルニア大学内のThe Thelonious Monk Institute of Jazzで学びます。
2004年にThe Thelonious Monk International Jazz Vocals Competitionで優勝し、期待の女性ジャズ・ヴォーカリストとして注目されるようになります。そして、N.Y.に拠点を移し、2005年にデビュー・アルバム『Gretchen Parlato』をリリースします。
さらに2009年にリリースした2ndアルバム『In a Dream』は各方面で高い評価を得ました。
最近ではグラミー受賞のEsperanza Spalding『Chamber Music Society』(2010年)やアルト・サックス奏者David Binneyの最新作『Graylen Epicenter』でフィーチャーされています。
今回紹介する最新作『The Lost And Found』はGretchen Parlatoの3rdアルバムとなります。
レコーディング・メンバーはGretchen Parlato(vo、per)、Taylor Eigsti(p、el-p、org)、Derrick Hodge (b)、Kendrick Scott(ds)、Dayna Stephens(ts)、Alan Hampton(vo、g)、Robert Glasper(el-p)です。
前作まで参加していたThelonious Monk Institute of Jazz時代の同期で天才ギタリストのLionel Louekeが不在なのは残念ですが、本作では若手実力派かつ先鋭的ピアニストRobert Glasperが参加し、Gretchen Parlatoと共にプロデュースを手掛けています。
最近のメインストリーム・ジャズにはあまり明るくない僕ですが、Robert GlasperはQ-Tipの復帰作『The Renaissance』(2008年)にも参加していたので、その時に名前がインプットされました。彼のアルバム『Double-Booked』(2009年)でもHip-Hop的なアプローチをしていましたね。
話を『The Lost And Found』に戻すと、ウィスパー気味の魅惑のヴォイスを変幻自在に駆使した表情豊かなヴォーカルを聴かせてくれます。ヴォーカルに雰囲気と存在感があるのがいいですねぇ!
また、オリジナル、新進アーティストのカヴァー、ジャズ・スタンダード、ブラジル・カヴァー、R&B/ロック・カヴァーと曲構成が実にバラエティに富んでいます。サウンド的にはブラジリアン・フレイヴァーの演奏が多いのも僕好みです。
1stではBjork、2ndではMichael Jacksonのカヴァーで楽しませてくれましたが、今回はMary J. Blige、Simply Redのカヴァーを披露しています。
女性ジャズ・ヴォーカル作品を探しつつも、いわゆる"女子ジャズ"的作品に物足りなさを感じている方にはピッタリな1枚だと思います。
きっと、長く愛聴できる1枚になるはずです!
全曲紹介しときやす。
「Holding Back the Years」
Simply Redの大ヒット曲をカヴァー(Mick Hucknall/Neil Moss作)。憂いを帯びたヴォーカルで情感たっぷりに、Gretchenらしい「Holding Back the Years」を聴かせてくれます。全体の雰囲気が実にいいですね。
「Winter Wind」
Gretchenのオリジナル。Gretchenらしいブラジリアン・フレイヴァーの1曲。現代ジャズ・ヴォーカルらしいエレガントかつスタイリッシュな仕上がりにグッときます。バックの演奏も素晴らしい!
http://www.youtube.com/watch?v=vy5N_42FFrw
「How We Love」
Gretchenのオリジナル。フェンダーロースのメロウな響きをバックに、Gretchenが魅惑のウィスパー・ヴォーカルで音空間を無邪気に駆け巡ります。しばらくは僕のiPodのヘビロテになりそうです。
「Juju」
Wayne Shorter作品のカヴァー。1stでは「Juju/Footprints」、2ndでは「E.S.P.」とWayne Shorter作品を取り上げていますが、今回は1stでも取り上げていた「Juju」の再演です。Shorterの名曲をミステリアスな雰囲気で聴かせてくれます。こういった曲・演奏を収録するあたりにGretchenのジャズ・シンガーとしてのスピリットを感じます。テナー・サックスのDayna Stephensも大活躍です。
「Still」
Alan HamptonとGretchen Parlatoの共作。作者のAlan Hamptonはジャズ・ベーシストとしてお馴染みですが、ここではギター&ヴォーカルで参加しています。SSW的な味わいのアコースティック・チューンです。リラックスした雰囲気がグッド!
http://www.youtube.com/watch?v=QsRrQw0CHQ8
「Better Than」
Gretchenのオリジナル。情感豊かな感動のジャズ・バラード。曲、ヴォーカル、演奏全てが揃った素晴らしい1曲です。感動が心の奥まで届いてきます。
http://www.youtube.com/watch?v=vBTfvkvy4tM
「Alo, Alo」
毎作ブラジル音楽の名曲を取り上げるGretchenですが、今回は偉大なサンビスタPaulinho Da Violaのカヴァー。2分足らずの短い演奏ですが、ポルトガル語で素晴らしい歌を聴かせてくれます。
「Circling」
Gretchenのオリジナル。ブラジリアン・フレイヴァーのメロウ・チューン。「Winter Wind」と並ぶ僕のお気に入り。フェンダー・ローズのメロウな響きとGretchenのウィスパー・ヴォーカルは相性抜群です。
http://www.youtube.com/watch?v=vftbRCwFriI
「Henya」
N.Y.の若き天才トランペッターAmbrose Akinmusireの曲にGretchenが歌詞をつけたもの。Ambrose Akinmusireは2007年のThe Thelonious Monk International Jazz Competitionの優勝者です。
昨年リリースされたThe Thelonious Monk Institute of Jazz出身のミュージシャンが参加したアルバム『The Brother Thelonious Quintet』にも収録されていました。同作にはAmbrose Akinmusire以外にGretchen Parlato、Alan Hamptonも参加しており、そんな流れでカヴァーされたのかもしれません。少ない音数のミステリアスなバラードに仕上がっています。
Ambrose Akinmusireのヴァージョンは、最近発売された彼のアルバム『When The Heart Emerges Glistening』にも収録されています。
『The Brother Thelonious Quintet』(2010年)
Ambrose Akinmusire『When The Heart Emerges Glistening』(2011年)
「In A Dream (Remix)」
2ndアルバム『In a Dream』のタイトル曲のリミックス。後半戦に向けたインタールードといった感じでしょうか。
「All That I Can Say」
当ブログでも紹介済みのMary J. Bligeのヒット曲(Lauryn Hill作)をカヴァー。MJBをカヴァーするあたりが新世代ジャズ・ヴォーカルらしくていいですね。このR&Bファンにはお馴染みの1曲を実にしなやかなジャズ・チューンに仕上げています。前作でMichael Jackson「I Can't Help It」をカヴァーしており、本作で「I Can't Help It」ネタの本曲を取り上げるあたりも心憎いですね。お見事!
「Me and You」
N.Y.在住のシンガーソングライターJosh Mease作品のカヴァー。Robert Glasperのフェンダーローズのみをバックに、少しレイジーな雰囲気で魅惑のヴォーカルを聴かせてくれます。
「Blue In Green」
Miles Davis/Bill Evans作。Milesの名盤『Kind Of Blue』(1959年)の収録曲としてお馴染みですね。当ブログではのBill Evans Trio(『Portrait In Jazz』収録)、Cassandra Wilsonのヴァージョンを紹介済みです。小粋なバックとGretchenの変幻自在のヴォーカルが印象的です。
「The Lost and Found」
タイトル曲はDayna StephensとGretchenの共作。作者Dayna Stephensのテナー・サックスとGretchenの憂いを帯びたヴォーカルがスモーキーな雰囲気を醸し出します。
「Without A Sound」
本作で大活躍のピアニストTaylor EigstiとGretchenの共作。吐息のような妖艶ヴォーカルで最後は締め括ってくれます。
1st『Gretchen Parlato』(2005年)、2nd『In a Dream』(2009年)も要チェックです!
『Gretchen Parlato』(2005年)
『In a Dream』(2009年)