発表年:1975年
ez的ジャンル:センチメンタルMPB
気分は... :『Joia』はJohn、本作はPaul・・・
今回はブラジル音楽界の牽引者Caetano Velosoが1975年にリリースした『Qualquer Coisa』です。
これまで紹介したCaetano Veloso関連作品は以下の4枚。
『Tropicalia:Ou Panis Et Circencis』(1968年)
『Caetano Veloso』(1969年)
『Cores, Nomes』(1982年)
『Caetano』(1987年)
上記のように何故か70年代のCaetano作品を取り上げていない状態だったので、今回は70年代作品からセレクトしました。
『Qualquer Coisa』は同じ1975年にリリースされた『Joia』と同時期にレコーディングされた作品です。当初2枚組アルバムとしてリリースする予定でしたが、最終的に別々のアルバムとしてリリースされることになった経緯があります。
『Joia』(1975年)
そんな2枚の姉妹アルバムですが、『Joia』のジャケはJohn Lennon & Yoko Ono『Two Virgins』、『Qualquer Coisa』のジャケはThe Beatles『Let It Be』を意識したものになっています。The Beatlesから多大な影響を受けているCaetanoらしいですね。
そんなジャケのせいか、Beatlesメンバーに例えるならば、『Joia』はJohn Lennon、『Qualquer Coisa』はPaul McCartneyといったイメージですかね。実際、本作『Qualquer Coisa』には3曲のBeatlesカヴァーが収録されていますが、全てPaul主導の楽曲です。
『Joia』は70年代のCaetanoの音楽的ピークを示す作品として名盤の誉れが高いですが、それに比較すると『Qualquer Coisa』の方は地味な扱いかもしれませんね。
『Joia』は確かに名盤ですが、その世界観を堪能するためにはCaetano作品をある程度聴いてから入った方がいい作品のように思います。一方、『Qualquer Coisa』の方があまりCaetano作品を聴いたことがない人でも気軽に楽しめる1枚だと思います。
曲構成も『Joia』が全13曲11曲がオリジナルで占められているのに対し、『Qualquer Coisa』は全12曲中8曲がカヴァーです。
内省的かつシンプルな演奏でCaetanoらしさを満喫できる姉妹作品でありながら、上記のようにかなり印象の異なる2作品だと思います。
プロデュースは『Joia』と同じくCaetano Veloso自身とPerinho Albuquerqueの2人です。このコンビは年初に紹介したGal Costa『Cantar』(1974年)も手掛けています。
シンプルながらも味わい深いCaetanoワールドでセンチメンタル気分を堪能しましょう。
特に前述のBeatlesカヴァー3曲は最高ですよ!
全曲紹介しときやす。
「Qualquer Coisa」
Caetano Veloso作。タイトル曲は美しくも切ない名曲。哀愁モードの楽曲ですが、ジェントルなCaetanoのヴォーカルに救われる気分になります。Joao Donatoがピアノで参加しています。
http://www.youtube.com/watch?v=0fyvKjsAofY ※音質悪いです。
「Da Maior Importancia」
Caetano Veloso作。Gal Costaも『Índia』(1973年)で取り上げています。この時期のCaetanoらしいシンプルな仕上がりです。内省的ですが、サラっと聴かせるあたりがいいですね。
「Samba E Amor」
Chico Buarque作の名曲カヴァー。当ブログではBebel Gilbertoのカヴァーも紹介済みです。Caetanoヴァージョンは憂いを帯びたヴォーカル&ギターでシンプルに聴かせてます。これがなかなか味わい深い。
「Madrugada E Amor」
Jose Messias作。この曲もギター1本による弾き語りですが、ジェントル&メロウな仕上がりがたまりません。「For No One」、「Jorge De Capadocia」と並ぶ僕のお気に入り曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=9iUWWh6UcUA
「A Tua Presenca Morena」
Caetano Veloso作。不思議な雰囲気を醸し出す1曲。『Joia』に収録されていても違和感のない曲かもしれません。
「Drume Negrinha (Drume Negrita) 」
Eliseo Grenet作のラテン名曲をカヴァー。Joao Donatoもピアノで参加し、シンプルながらも小粋なカヴァーに仕上げています。
http://www.youtube.com/watch?v=NefaOhnBGKs
「Jorge De Capadocia」
Jorge Ben作品をカヴァー。アルバムで一番躍動感のある演奏がお気に入りです。個人的にはQuarteto Em Cyがバック・コーラスで参加しているのも嬉しいですね。静かなスタートから徐々に静から動へとシフトし、終盤にはかなりの加速状態になっています。
「Eleanor Rigby」
ここからはThe Beatlesカヴァー三連発。まず最初「Eleanor Rigby」。哀愁メロウな雰囲気にグッとくる好カヴァーに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=dl0dFv75wSI
「For No One」
The Beatlesカヴァー2曲目。「Eleanor Rigby」に続き『Revolver』からの選曲です。アルバムの中で一番のお気に入り。『Revolver』の中でも比較的地味な楽曲を、実にロマンティックな演奏で聴かせてくれます。イントロの口笛をはじめ、Caetanoのセンスの良さを随所に感じる名カヴァーだと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=8g3AZf-d9kM
「Lady Madonna」
The Beatlesカヴァー3曲目。このカヴァーもセンス抜群です。オリジナルの影響でピアノ演奏のイメージが強い楽曲ですが、ロマンティックなギター中心の演奏も素敵です。
「La Flor De La Canela」
ペルー人女性シンガーChabuca Grandaの作品。ラテン名曲を哀愁モードの味わい深い演奏で聴かせてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=s1rsgmLwV6E
「Nicinha」
Caetano Veloso作。ラストは短い弾き語りでしっとりと締め括ります。
Caetano Veloso関連作品の過去記事もご参照下さい。
『Tropicalia:Ou Panis Et Circencis』(1968年)
『Caetano Veloso』(1969年)
『Cores, Nomes』(1982年)
『Caetano』(1987年)