発表年:2011年
ez的ジャンル:北欧系ブラジリアン・グルーヴ
気分は... :十人十色
僕の場合、自分のブログを書くのに精一杯で、なかなか他の音楽ブロガーの方の記事を拝見することができていません。それでもたまに拝見すると、当ブログでも紹介した作品について、自分とはかなり異なる印象・評価の場合もあり、興味深く記事を読ませてもらいます。
自分が大絶賛した作品なのに他の方の評価は芳しくない、あるいは他の方が大絶賛でも自分の印象はいまいち・・・といったことは、よくあることです。当ブログの場合、"お気に入り作品を紹介するブログ"なので、いまいちな印象の作品であれば記事にすることはありませんが。
同じ作品について、さまざまな見解があるのは当たり前だと思いますし、そのどれもが妥当なものだと思います。音楽の聴き方なんて自由ですからね。そういった個人の嗜好が自由に反映されるからこそ音楽ブログは楽しいと思っています。
今回は"北欧のDeodato"ことRoman Andrenの新作『Lovin' You』です。
北欧らしいスタイリッシュなブラジリアン・グルーヴで日本でも大人気のスウェーデン出身のキーボード奏者、Roman Andrenの紹介は『Juanita』(2007年)、『Color Green』(2010年)に続き3回目となります。
本作は日本独自企画のカヴァー集であり、タワーレコードのみでの先行発売でしたが、6月になってそれ以外での発売も解禁となりました。僕はタワレコで発売直後に購入し愛聴していました。
いわゆる"女子ジャズ"系企画のカヴァー集です。
ベタな選曲が多いのは、そういった"女子ジャズ"ニーズに対応するため、日本の企画サイドからの意向が反映されているものと思われます。
本来、僕はこういう企画モノを毛嫌いするタイプなのですが、Roman Andren作品ということで目をつぶって購入しました。
ただし、そこはRoman Andren!安易なカヴァー演奏になっておらず、有名曲を敢えてカヴァーする意味合いを考え、よく練られた演奏を楽しむことができます。
レコーディング・メンバーはRoman Andren(p、vo)以下、Zoltan Csorsz jr.(ds)、Johnny Aman(b)、Joselo Orellana(per)、Magnus Lindeberg(g)、Ingrid Thulin(violin)、Diana Scarpati(viola)、Gosta Andren(tp)、Ingela Jansson(vo)、Harold Rolle(vo)、Deana Ekberg Nannskog(vo)、Inge Petersson-Lindback(fl、sax)といった構成です。当ブログでもソロ作『All These Choices』(2009年)を紹介したスウェーデン出身のシンガー・ソングライターIngela Janssonの参加が嬉しいですね。
"女子ジャズ"と敬遠せずに聴いてみて下さい。
全曲紹介しときやす。
「Happy Sad」
日本企画盤らしく、オープニングはピチカート・ファイヴ「ハッピー・サッド」をカヴァー。渋谷系大好きだった僕はオリジナル自体が大好きなので大歓迎です。実際、購入以来最も多く聴いている曲です。オリジナルの持つキュート&キャッチー感に、Roman Andrenらしい軽快なブラリジアン・フレイヴァーが加わり、実に魅力的なカヴァーに仕上がっています。
これを機会にオリジナルも再チェックを!
Pizzicato Five「Happy Sad」(1994年)
http://www.youtube.com/watch?v=AeZUZaLt0Fw
「Crickets Sing For Anamaria」
Marcos Valle作品をカヴァー。当ブログでも『Samba '68』のMarcosヴァージョンを紹介済みです。ここではIngela(Ingela Jansson)をフィーチャーした男女ヴォーカルで、ファンキー&へヴィ&リズミックなジャズ・サンバに仕上げています。
http://www.youtube.com/watch?v=d5dW3S6gj2U
「Lovin’You」
タイトル曲はMinnie Ripertonの永遠の名曲をカヴァー。女子ジャズ企画らしいベタな選曲ですが、それでも感動してしまう素晴らしいカヴァーに仕上がっています。Minnie RipertonのラブリーなメロディとRoman Andrenのライト&メロウなサウンド・センスがよくマッチしています。
「My Cherie Amour」
Stevie Wonderの名曲カヴァー。オリジナルとは一味異なる軽快なボッサ・テイストが心地好いインスト・カヴァーです。Roman Andrenの小粋なピアノタッチにグッときます。
「Let's Stay Together」
Al Greenの大ヒット・シングルをカヴァー。そう言えば、今年になってスウェーデン人女性ヴォーカリストCaroline Ekstromによるジャズ・プロジェクトThe Moleskinsによるボッサ・テイストの小粋なジャズ・カヴァーを紹介しましたね。Roman Andrenヴァージョンもかなり工夫された気の利いた秀逸カヴァーに仕上がっています。本カヴァーを聴けば、本作が安易な有名曲カヴァー集ではないと実感できるはずです。
http://www.youtube.com/watch?v=UMTgedsBgo0
「Wave」
Antonio Carlos Jobimの名曲カヴァー。前半は正攻法なカヴァーですが、中盤以降はラテンのエッセンスを散りばめてアクセントをつけています。
「Hymn A'Lamour」
Edith Piafの名唱で知られるシャンソン名曲「愛の讃歌」のカヴァー。少し意外な選曲ですが、シャンソン名曲をエレガントかつ小粋なブラジリアン・グルーヴに生まれ変わらせました。
「Rock With You」
Michael Jacksonの大ヒット曲カヴァー。「Happy Sad」に続き、聴く頻度が多いのが本曲です。オリジナルとは異なる雰囲気の軽快かつエレガントな演奏が新鮮な印象を与えてくれるグッド・カヴァーに仕上がっています。Roman Andrenのセンスの良さを実感できます。
「I Won't Last A Day Without You」
Carpentersのヒットで知られるPaul Williams/Roger Nichols作品。宇多田ヒカル&椎名林檎もカヴァーしていますね。Roman Andren自身はAndy Williamsヴァージョンの影響が大きいようです。ここではピアノを中心としたロマンティックなインスト・チューンで聴かせてくれます。
「I Want You」
Marvin Gayeの名曲カヴァー。オリジナルのセクシーな雰囲気とRoman Andrenらしいジャズ&ブラジリアン・フレイヴァーを上手く融合させています。
「Up, Up And Away」
The 5th Dimensionでお馴染みの「ビートでジャンプ」をカヴァー(Jimmy Webb作)。ソフト・ロック・テイストのさり気ない仕上がりが涼しげです。
「Den Jag Alskar Heter Orjan」
Jojje Wadenius作。この曲に関してはスウェーデンの子供向けの歌のようですがよくわかりません。Roman Andrenの優しさが反映された演奏なのでは?
「My Foolish Heart」
作詞Ned Washinton、作曲Victor Youngによるスタンダード。映画『My Foolish Heart』(1949年)の主題歌です。個人的には当ブログでも紹介したBill Evans Trio『Waltz For Debby』のヴァージョンの印象が強いですね。Roman Andrenヴァージョンは小粋なボッサ・チューンに仕上がっています。
「Moon River」
ラストは映画『ティファニーで朝食を』の主題歌としてお馴染みのHenry Mancini作品。Roman Andre自身は『ティファニーで朝食を』を観たことがないのだとか。美しくロマンティックな演奏でラストを締め括ってくれます。
『Juanita』(2007年)
『Juanita And Beyond: Live Studio Sessions』(2008年)
『Color Green』(2010年)