2011年11月25日

Les McCann & Eddie Harris『Swiss Movement』

ソウル・ファン要チェックのヒット曲「Compared to What」収録☆Les McCann & Eddie Harris『Swiss Movement』
Swiss Movement
発表年:1969年
ez的ジャンル:ソウルフル・ジャズ・ライブ
気分は... :どうする?

どうも気分が盛り上がらない・・・こんな時にどうする???

今回はジャズ・ピアニストLes McCannとジャズ・テナー・サックス奏者Eddie HarrisがMontreux Jazz Festivalで共演したライブ・アルバム『Swiss Movement』(1969年)です。

ニュー・ソウルの誕生にも大きく貢献したジャズ/ソウル・ピアニスト&ヴォーカリストLes McCannについては、以前に『Much Les』(1969年)を紹介しています。

もう一人の主役であるテナー・サックス奏者Eddie Harrisのアルバムは当ブログ初登場です。

Eddie Harrisは1934年シカゴ生まれ。

1961年に映画『Exodus(栄光への脱出)』のテーマ「Freedom Jazz Dance」を収録したアルバム『The In Sound』(1965年)をリリースしています。そして、ヒット曲「Listen Here」を含む『The Electrifying Eddie Harris』(1968年)あたりから電気サウンドやファンクを意識した作品をリリースするようになります。70年代以降も自由なアプローチでコンスタントにアルバムをリリースしていましたが1996年に死去。

僕の場合、Eddie Harrisと言えば、ダンス・クラシック「Freedom Jazz Dance」のイメージが強いですね。当ブログでもMiles Davis(アルバム『Miles Smiles』収録)、Woody Herman(アルバム『Giant Steps』収録)、Brian Auger's Oblivion Express(アルバム『Second Wind』収録)のヴァージョンを紹介済みの人気曲です。

Woody Herman「Freedom Jazz Dance」
 http://www.youtube.com/watch?v=iBnJXT4bzG8
Brian Auger's Oblivion Express「Freedom Jazz Dance」
 http://www.youtube.com/watch?v=e4r9Kl4e6YA
Miles Davis「Freedom Jazz Dance」
 http://www.youtube.com/watch?v=yJ11cArknek

さて、今日紹介する『Swiss Movement』(1969年)は、ジャズとソウルの橋渡し的作品として重要なライブ・アルバムですね。

レコーディング・メンバーは、Les McCann(p、vo)、Eddie Harris(ts)、Benny Bailey(tp)、Leroy Vinnegar(b)、Donald Dean(ds)の5名。元々はClark Terryが参加する予定であったのが、急遽Benny Baileyへ交代し、ぶっつけ本番状態でのライブだった模様です。

本作と言えば、何と言ってもヒットしたMcCannのヴォーカル入りファンキー・ソウル・ジャズ「Compared to What」ですね。

Eugene Mcdaniels作の本曲は、Les McCannが見出したRoberta Flackのデビュー・アルバム『First Take』でも歌われています。また、昨年リリースされたJohn Legend & The Rootsによるニュー・ソウル・カヴァー集『Wake Up!』で本曲を聴いたソウル/R&Bファンも多いのでは?

その意味で『Wake Up!』を気に入った方は、ぜひチェックして欲しい1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Compared to What」
Eugene Mcdaniels作。前述のRoberta FlackJohn Legend & The Rootsのカヴァーのイメージが強い曲ですが、本曲を有名にした本ヴァージョンはファンキーなヴォーカル入りソウル・ジャズです。ソウルフルなMcCannのハスキー・ヴォーカル&ピアノ・リフ、Eddie Harrisのファンキーなブロウがテンション上げてくれます。観客も相当盛り上がっているのがいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=MzvlivbptXk

前述のRoberta FlackJohn Legend & The Rootsのカヴァーと聴き比べるのも楽しいのでは?また、本曲はCypress Hill「Break It Up」のサンプリング・ソースにもなっています。

Roberta Flack「Compared to What」
 http://www.youtube.com/watch?v=XG_RvYTfDk8
John Legend & The Roots「Compared to What」
 http://www.youtube.com/watch?v=Ii-9toToBW8

「Cold Duck Time」
Eddie Harris作。小気味よいリズム隊をバックにEddie Harris、Benny Baileyの二管がソウルフルなソロで楽しませてくれます。本曲はCasual「You Flunked」のサンプリング・ソースにもなっています。
http://www.youtube.com/watch?v=_Ago8dP4fFA

「Kathleen's Theme」
Les McCann作。ジャズ・フェスティバルらしく、ちゃんとジャズらしい演奏も披露しています(笑)。Eddie Harrisのフリーキーな演奏が印象的です。McCannのピアノが
当ブログでも紹介したBlack Sheep「Autobiographical」でサンプリングされています。

「You Got It in Your Soulness」
Les McCann作。小粋に躍動するMcCannのピアノにグッとくるソウル・ジャズ・チューン。ライブで聴いていたら、自然に手拍子してしまいそうです。実にライブ向けの曲だと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=9Fr_ENd1pCU

「The Generation Gap」
Les McCann作。タイトルが意味深ですね。
「You Got It in Your Soulness」同様、躍動するソウル・ジャズを満喫できます。

僕が保有するCDにはオリジナル5曲のみしか収録されていませんが、Leroy Vinnegar作の「Kaftan」が追加収録されている盤もあるようです。

Les McCannの他作品は『Much Les』のエントリーで挙げておいたので、ここではEddie Harrisの他作品を挙げておきます。

『Exodus to Jazz』(1961年)
Exodus to Jazz

『The In Sound』(1965年)
The In Sound

『Mean Greens』(1966年)
Mean Greens

『The Tender Storm』(1967年)
Tender Storm

『The Electrifying Eddie Harris』(1968年)
The Real Electrifying Eddie...

『Plug Me In』(1968年)
Plug Me In

『Come on Down』(1970年)
Come On Down!

『Free Speech』(1970年)
Free Speech

Les McCann & Eddie Harris『Second Movement』(1971年)
Second Movement

『Instant Death』(1972年)
Instant Death
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2011年11月24日

Saint Etienne『So Tough』

キュートで切ないSarah嬢のヴォーカルにグッとくるUKダンス・ミュージック☆Saint Etienne『So Tough』
So Tough (Remastered)
発表年:1993年
ez的ジャンル:UKポップ/ダンス・ミュージック
気分は... :この不安定さが逆に魅力かも...

今回はUKポップ/ダンス・ミュージック・ユニットSaint Etienneの3回目の登場です。

『Good Humor』(1998年)、『Foxbase Alpha』(1991年)に続いて紹介するのは、2ndアルバム『So Tough』(1993年)です。

紅一点のヴォーカルSarah CracknellBob StanleyPete Wiggsというポップ・オタク2人から成るロンドン出身の3人組Saint Etienneは、90年代前半のUKポップ/ダンス・ミュージック好きには外せないグループですね。

セカンド・サマー・オブ・ラヴ/アシッドハウス等のダンス・カルチャーを通過してきた彼らのポップ/ダンス・ミュージックは、日本の音楽好きの感性にマッチしていた気がします。特に"渋谷系"アーティストが好きだった人は、Saint Etienneあたりも好きだったのでは?

今回紹介する2ndアルバム『So Tough』(1993年)は、映画・ラジオ風のインタールードを多用し、アルバム全体の構成を練った1枚に仕上がっています。

改めて聴き直すと、いろいろ粗探しもできる内容です。一方で、キュートで切ないSarah嬢のヴォーカルも含めて危うく不安定な感じが、Saint Etienneの魅力なのかもしれないと思えてきました。

「Mario's Cafe」「You're in a Bad Way」あたりは今聴いてもグッときます。

本作を購入する際にはUKとUSおよび日本盤は、ビミョーに内容が異なる(同じ曲のヴァージョン違い)のでご注意ください。

全曲紹介しときやす。※US盤

「Mario's Cafe」
オススメその1。90年代前半のUKダンス・カルチャーと(英語ですが)フレンチ・ポップが融合したようなオープニング。Sarah嬢の少し寂しげなキュート・ヴォーカルにグッときます。初めて聴いた時には、出だしのメロディはボッサ名曲「The Girl from Ipanema(イパネマの娘)」のカヴァーかと思いました(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=MzxZzFfFbX8

「Railway Jam」
スウィンギーなSEに続き、クールなダンス・ビートが刻まれるインスト・チューン。

「Date With Spelman」
インタールード。

「Calico」
オススメその2。トリップ・ホップあたりも意識したダビーな仕上がり。UKの女性ラッパーQ-Teeをフィーチャー。ダビーなサウンドとキュートなのにダークなQ-Teeのラップ、切ないSarahのコーラスが絡みドープな世界が展開されます。
http://www.youtube.com/watch?v=7pfLryQwXzc

「Avenue」
アルバムのリード・シングル。Sarahの寂しげなヴォーカルが印象的な哀愁ポップ・チューン。僕もアルバムを待ちきれず当時Maxiシングルを購入しました。今聴き直すと必ずしも僕のど真ん中ではないのですが、それだけSaint Etienneというグループに対する期待度が大きかったのかもしれません。
http://www.youtube.com/watch?v=DIm8lp1R6-k

「You're in a Bad Way」
オススメその3。アルバムからの2ndシングル。昔も今も僕の一番のお気に入り。60年代ガールズ・ポップを90年代に復活させたかのようなキュートなポップ・チューン。僕が保有するUS盤にはシングル・ヴァージョンが収録されています。
http://www.youtube.com/watch?v=4szHXagmryo

「Memo to Pricey」
インタールード。

「Hobart Paving」
アルバムからの3rdシングル。Jigsawの1974年のヒット曲をカヴァーした「Who Do You Think You Are」との両A面でリリースされました。僕が保有するUS盤にはアメリカ音楽界の鬼才Van Dyke Parksがアレンジを担当したヴァージョンが収録されています。美しく感動的なポップ・バラードに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=SrKvw1Xx3UA

「Leafhound」
オススメその4。Saint Etienneらしいキュート&ポップなダンス・チューン。ポップなのにクールなところがSaint Etienneらしいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=-S82HIiEjrc

「Clock Milk」
インタールード。

「Conchita Martinez」
サウンド・コラージュのようなインスト・チューン。ロッキン・ギターの音色が印象的です。

「No Rainbows for Me」
タイトルからして悲しげ・・・。切なく消え入りそうなSarahのヴォーカルにグッときます。ダビーなサウンドもマッチしています。

「Here Come Clown Feet」
インタールード。

「Junk the Morgue」
ハウス調のな仕上がり。Saint Etienneらしからぬ仕上がりですが・・・
http://www.youtube.com/watch?v=4QlRFpSylzM

「Chicken Soup」
アウトロ。

「Join Our Club」
オススメその6。US盤のボーナス・トラック。1992年にリリースされたシングルです。ハウス調のポップなダンス・チューン。Saint Etienneらしいポップ&クールなサウンドを満喫できます。

国内盤には「Join Our Club」に加え、「Archway People」も追加収録されています。

Saint Etienneの過去記事もご参照下さい。

『Foxbase Alpha』(1991年)
フォックスベース・アルファ

『Good Humor』(1998年)
Good Humor
posted by ez at 02:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月23日

Joyce『Bossa Duets』

Joyceと5人のミュージシャンとのデュエット☆Joyce『Bossa Duets』
ボッサ・デュエッツ
発表年:2003年
ez的ジャンル:三世代ボッサ・デュエット
気分は... :結果オーライですが・・・

男子サッカーのロンドン五輪アジア最終予選「バーレーン対日本」は日本が敵地で2対0で勝利しました。

まぁ、結果オーライですが、相手のミスに助けられた危なっかしい試合でしたね。グランドが難しいコンディションであったことは事実ですが、まだまだ課題が山積だと思います。

フル代表との兼ね合いや怪我でベスト・メンバーを組めない状況ももどかしいですね。また、欧州組をフル活用できないのも残念ですね。指宿、宇佐美、宮市が合流したU-22を観てみたいものです。

今回の出場メンバーで言えば、MF扇原に期待しています。
ロンドン経由ブラジル行きの切符を目指して頑張って欲しいですね。

今回は人気ブラジル人女性シンガー・ソングライターJoyceの4回目の登場です。

これまで当ブログで紹介したJoyce作品は以下の3枚。

 『Feminina』(1980年)
 『Tardes Cariocas』(1983年)
 『Hard Bossa』(1999年)

4枚目に紹介するのは、『Bossa Duets』(2003年)です。

本作はタイトルのとおり、全曲デュエットで占められたボッサ・アルバムであり、日本人ファン向けにJoyce自身が企画・プロデュースした作品です。

デュエット・パートナーとして選ばれたのは、年齢順にJohnny AlfJoao DonatoWanda SaToninho HortaAna Martinsの5名。いずれもブラジル音楽ファンにはお馴染みの5名ですね。

Johnny AlfJoao Donatoというブラジル音楽界の大物2人に、Joyceと同世代のWanda SaToninho Horta、そしてJoyceの娘Ana MartinsClara Morenoの妹)という3世代のミュージシャンをセレクトしたあたりが絶妙の人選ですね。

収録曲はJoyceやデュエット・パートナーでお馴染みの楽曲が殆どです。
ただし、単純なデュエット・カヴァーではなく、一部に有名曲の引用を挿入するなど一工夫しているのが聴いていて楽しい作品です。

公私のパートナーである夫のTutty Moreno(ds)、Joyceと共同でプロデューサーを務めるRodolfo Stroeter(b)、Teco Cardoso(ss、fl)らがバックを務めています。

祝日をのんびり過ごしたい気分にピッタリな1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Voce E Eu」
Toninho Hortaとの共演1曲目。Carlos Lyra/Vinicius de Moraes作の名曲カヴァーです。当ブログではNara LeaoRoberto MenescalPaul Winter With Carlos LyraAdam Dunningのヴァージョンを紹介済みです。個人的に大好きな曲なので、それをこの二人のデュエットで聴けるのは嬉しいですね。美しいギターの音色と優しい歌声で心が浄化されます。後半にはAntonio Carlos Jobimの名曲「Aguas De Marco(三月の水)」を引用し、アクセントをつけています。

「Lugar Comum」
Joao Donatoとの共演1曲目。Donatoの楽曲にGilberto Gilが詞をつけたものです。Donatoのピアノ&ヴォーカルに、Joyceのギター&ヴォーカルが寄り添う感じがいいですね。

「Receita De Samba」
Ana Martinsとの共演。Joyce/Paulo Cesar Pinheiro作。息の合った母娘共演を楽しめます。さすが親子だけに声質も似ていますね。Teco Cardosoのフルートに導かれる軽快な演奏もグッド!

「Plexus」
Johnny Alfとの共演1曲目。Alfのインスト曲にJoyceが詞をつけたもの。Alfの歌う後半のパートは同じくAlf作の「Rapaz de Bem」からのものです。シブめの仕上がりがいい感じです。

「Yarabela」
Toninho Hortaとの共演2曲目。当ブログでは『Moonstone』(1989年)に収録されたToninho Horta自身のヴァージョンを紹介済みです。『Moonstone』ヴァージョンが大好きなので、この共演ヴァージョンにもグッときます。Teco Cardosoがサックス・ソロで盛り上げてくれます。軽快なサンバ・グルーヴは最高です!

「Crianca」
Wanda Saとの共演1曲目。Joyce作のオリジナルは当ブログで紹介した『Hard Bossa』(1999年)に収録されています。シンプルだった『Hard Bossa』ヴァージョンと比較すると、華やかな雰囲気ですね。

「London Samba」
Toninho Hortaとの共演3曲目。本曲もオリジナルは『Hard Bossa』(1999年)に収録されています。クラブ世代にも人気のブラジリアン・アコースティック・グルーヴですが、『Hard Bossa』ヴァージョンからにスケール・アップした印象の共演ヴァージョンに仕上がっています。

「O Sapo (The Frog)」
Joao Donatoとの共演2曲目。お馴染みDonatoの名曲「The Flog」です。当ブログでもJoao Donato自身のヴァージョンをはじめ、Sergio Mendes & Brasil '66Joao GilbertoGal Costaのカヴァーを紹介済みです。Joyceカエルの鳴き声は爽やかです(笑)

「Fa Da Bahia」
Wanda Saとの共演2曲目。Joyce作。
Ary Barroso作「Na Baixa do Sapateiro」を引用したイントロでスタートします。軽快アコースティック・グルーヴが実に心地好いですね。
後半にはBaden Powell/Vinicius De Moraes作の名曲「Samba Da Bencao」の引用もあり、1曲で2度美味しい作りになっているのが心憎いですな。

「Ceu E Mar」
Johnny Alfとの共演2曲目。Alfの名曲を実にリラックスした雰囲気のデュエットで聴かせてくれます。

「E Vamos La」
ラストはJoao DonatoAna Martinsとの共演。終盤には日本語も聴こえてくる本曲は、2001年の来日時にDonatoとJoyceの二人が楽屋で共作した曲なのだとか。落ち着いた雰囲気で締め括ってくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=1piSBWiwitQ

Joyceの過去記事もご参照下さい。

『Feminina』(1980年)
フェミニーナ、そして水と光

『Tardes Cariocas』(1983年)
Tardes Cariocas

『Hard Bossa』(1999年)
Hard Bossa
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2011年11月22日

Directions『Directions』

Brunswickレーベルからリリースされたマイナー・ソウル☆Directions『Directions』
ダイレクションズ(紙ジャケット仕様)
発表年:1975年
ez的ジャンル:Brunswick系シカゴ・ソウル
気分は... :ドルフィンズ3連勝!

NFLでは我がドルフィンズが開幕7連敗の後に3連勝。

今週は前半の台風の目であったビルズを相手に完勝しました。
ビルズをTDゼロに抑え込み、自らは5TDをあげる完璧な試合運び!とても開幕7連敗のチームとは思えません。プレーオフ進出は難しい状況ですが、この調子で上位チームを撃破して欲しいですね。

今回はシカゴ・ソウルの名門レーベルBrunswickの作品から、Directions『Directions』(1975年)です。

ソウル・ファンにはお馴染みの作品ですね。かつてはコレクターズ・アイテムとしてレアな作品でしたが、CD化されて入手しやすくなりました。僕は2002年にCD化された際に購入しましたが、今ならば2008年にソウル・ウォーカー・シリーズとして再発されたCDを購入できると思います。

本作の主役Directionsですが、詳しいプロフィールは不明です。

メンバーはEarl HaskinHoward HopgoodKenneth PerryLawrence WoodenWillie Morrisonの5名。今回紹介する『Directions』(1975年)が唯一のアルバムです。

さて、その『Directions』ですが、厳密にはDirectionsおよびバックバンドであるDirections Bandの作品と呼ぶのが適切かもしれません。アルバムにはヴォーカルなしのインスト曲も3曲含まれています。その意味では、Directions本体のスウィート・コーラスとDirections Bandのメロウ&ファンキー・サウンドを楽しむアルバムと言えると思います。プロデュース&アレンジはBenny Clark & Willy Bridges。

フリーソウルのコンピにも収録されている人気曲「We Need Love (Vocal)」がお目当ての方が多いと思いますが、「I Want To Be Your Special Man」あたりも引けをとらない良い曲ですよ!

大騒ぎするほどの名盤だとは思いませんが、Brunswick好きの方であれば楽しめる1枚です。

全曲紹介しときやす。

「I Want To Be Your Special Man」
アコギとエレピのメロウ・サウンドをバックに、バリトン・ヴォーカルのリードとスウィート・コーラスで魅了してくれる爽快メロウ・ソウル。個人的には「We Need Love」以上にお気に入りの1曲です。Col Chet Fisher作。
http://www.youtube.com/watch?v=u2p6yBSj87k

「We Need Love (Vocal)」
本作のハイライト。シカゴ・マナーのスウィートなファルセットのリード・ヴォーカルと適度にグルーヴ感のあるメロウ・サウンドが心地好いです。また、リードに絡むベース・ヴォーカルも耳に残り、思わずマネしてしまいます(笑)。Directions Band作。
http://www.youtube.com/watch?v=o-94hdgygks

「Too Many Secrets (Vocal)」
ファンキー・サウンド&気合いの入ったコーラスで盛り上げるアゲアゲな1曲。特に終盤はハイ・テンションです。Howard Hopgood/Directions Band作。

「Copy Cat」
Directions Bandによるジャズ・ファンクなインスト・チューン。グループ本体のみならずDirections Bandも魅力的であることを実感できます。

「She'll Never Say It」
Benny Clark作。エモーショナルなソウル・チューン。この曲のみ録音状態が悪く聴こえるのは気のせいでしょうか・・・

「I Love You So」
しっとりとしたスウィート・バラード。コーラスなしのファルセットのリード・ヴォーカル一本で聴かせてくれます。Directions Band作。

「Soup Line」
DirectionsおよびDirections Bandが一体となって盛り上げるファンキー・グルーヴ。B級感たっぷりですが好きです!

「We Need Love (Inst)」
「Too Many Love (Inst)」
「We Need Love」と「Too Many Love」のインスト・ヴァージョン。楽曲とDirections Bandの演奏の魅力を再認識できます。

「If You Ever」
最後はスウィートなバラードで締め括ってくれます。Willie Morrison/Directions Band作。

ご興味のある方は、この時期の他のBrunswick作品もチェックを!

The Eliminators『Loving Explosion』(1974年)
Loving Explosion

Maryann Farra & Satin Soul『Never Gonna Leave You』(1975年)
Never Gonna Leave You

Strutt『Time Moves On』(1975年)
タイム・ムーヴス・オン

Exit 9『Straight Up』(1975年)
ストレイト・アップ(紙ジャケット仕様)

Step by Step『I Always Wanted to Be in the Band』(1976年)
アイ・オールウェイズ・ウォンテッド・トゥ・ビー・イン・ザ・バンド(紙ジャケット仕様)
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2011年11月21日

Todd Rundgren『Healing』

Todd屈指の名バラード「Compassion」収録!☆Todd Rundgren『Healing』
ヒーリング(トッドの音楽療法)(紙ジャケット仕様)
発表年:1981年
ez的ジャンル:世界を救う系偏屈ポップ
気分は... :癒し系アルバムではありません!

久々にTodd Rundgrenのソロ・アルバムの紹介です。
今回紹介するのは1981年にリリースされた『Healing』です。

これまで紹介してきたTodd関連作品(ソロ、Nazz、Utopia)は以下の8枚です(発表年順)。

 Nazz『Nazz』(1968年)
 Nazz『Nazz III』(1970年)
 『Runt:The Ballad Of Todd Rundgren』(1971年)
 『Something/Anything』(1972年)
 『Hermit Of Mink Hollow』(1977年)
 Utopia『Swing to the Right』(1982年)
 『The Ever Popular Tortured Artist Effect』(1983年)
 『Nearly Human』(1989年)

以前にも書いたことがありますが、未知のアーティストの作品に接する場合、"作品を聴く順番"が非常に大事だと思います。

その意味で今日紹介する『Healing』は、Todd入門編とは言い難いアルバムだと思います。私見ですが、『Something/Anything』『Runt:The Ballad Of Todd Rundgren』あたりの70年代作品を中心にToddのアルバムを4、5枚聴いた後に聴くと楽しめる作品だと思います。

『トッドの音楽療法』という邦題のせいもあって、所謂"ヒーリング・ミュージック"をテーマにした作品だと誤解されることも多いですね。本作における"ヒーリング"とは、(一般的な意味での)"癒し"ではなく、危機に瀕した世界を救うための"治療"という意味合いだと思います。

精神に問い掛けるメッセージが多く、神からの啓示を意識した歌詞も目立ちます。その意味では精神的・宗教的色彩の強いアルバムと言えるかもしれません。

プロデュース、ソングライティング、ヴォーカル&演奏、エンジニアリング全てをTodd一人でこなしたワンマン・レコーディングであり、サウンド的にはシンセ・サウンドや民族音楽を匂わせる音が印象的です。

このように書くと、少しとっつきにくいアルバムを連想される方もいるかもしれませんが、実際に聴いてみると意外に聴きやすいと思います。

特に屈指の名バラード「Compassion」は、Todd好きにはマストな1曲ですね。

なお、オリジナルでは「Time Heals」「Tiny Demons」はLP本体とは別のボーナス・シングルでしたが、再発時に本体と一緒に収録されるようになりました。

必ずしも華のあるアルバムではありませんが、Toddファンであれば楽しめる1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Healer」
民族音楽風のコブシの利いたToddのヴォーカルと共にスタートするオープニング。本作のテーマである"世界の治癒"という壮大なテーマが歌われます。壮大なテーマとシンセ・サウンドが案外マッチしています。
http://www.youtube.com/watch?v=xVsPUIFKtJM

「Pulse」
新しい変化の波を"パルス"として歌ったものです。前半はまさにパルスのようなシンセ・サウンドが印象的です。後半にはマリンバ風の軽快な打楽器音がToddのヴォーカルと絡みます。
http://www.youtube.com/watch?v=MkbOq15vxT8

「Flesh」
精神に問い掛けるメッセージや壮大なシンセ・サウンドは多少仰々しい気もしますが、Toddらしいと言えばそうかもしれません。
http://www.youtube.com/watch?v=_-u6tMfLC_c

「Golden Goose」
Toddのお決まり!意図してコミカルに外した仕上がりです。シンセ音がガチョウの鳴き声のように聴こえます。
http://www.youtube.com/watch?v=20cfbT0lktw

「Compassion」
本作のハイライト。Todd屈指の名バラード。個人的に青春時代の思い出が詰まった1曲でもあり、聴いているだけで目がウルウルしてきます。生きていくためには慈悲を感じないとね!
http://www.youtube.com/watch?v=8C8V5Ia-XOU

「Shine」
救世主を讃える宗教色の強い1曲。サウンド的にはTodd流シンセ・ポップ全開といった雰囲気のドラマティックな展開です。
http://www.youtube.com/watch?v=L5w97jIjmt0

ここまではオリジナルLPのA面です。
オリジナルLPのB面は三部構成のタイトル曲で占められていました。

「Healing, Part I」
Part Iでは、心の鼓動、心の声に耳を傾けよ!と説きます。そういったメッセージを抜きにしても、親しみやすいメロディと心地好いサウンドに魅了されます。
http://www.youtube.com/watch?v=ILeuZcTrYgI

「Healing, Part II」
Part IIでは、暗黒の過去が去り、新しい人生が始まったことを告げます。途中、ガムラン風のエスニック・サウンドも聴こえてきます。
http://www.youtube.com/watch?v=ILhBmiXKb_w

「Healing, Part III」
Part IIIでは、再び心の声に耳を傾ける大切さを説き、"汝自身を知ることがすべてを知ること"と歌います。Part Iをさらに発展させたシンセ・サウンドがいい感じ!
http://www.youtube.com/watch?v=xlG6_Ai2dKo

ここからの2曲は当初LP本体とは別にボーナスEPとして付けれていたものです。

「Time Heals」
シングル・カット曲。Todd節を満喫できるキャッチーな楽曲です。シンセのみならずToddのギターも満喫できます。有名絵画をモチーフにしたPVも秀逸ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=Ih2Krw2f88M

「Tiny Demons」
ラストは少しダークな雰囲気が漂う哀愁モードのミッド・チューン。心の中に住む小さな悪魔たちが歌われます。
http://www.youtube.com/watch?v=ofkUjSm8HYw

Todd Rundgren関連作品の過去記事もご参照下さい。

『Runt:The Ballad Of Todd Rundgren』(1971年)
ラント:ザ・バラッド・オブ・トッド・ラングレン(紙ジャケット仕様)

『Something/Anything』(1972年)
Something/Anything

『Hermit Of Mink Hollow』(1977年)
ミンク・ホロウの世捨て人(紙ジャケット仕様)

『The Ever Popular Tortured Artist Effect』(1983年)
トッドのモダン・ポップ黄金狂時代(紙ジャケット仕様)

『Nearly Human』(1989年)
Nearly Human

Nazz『Nazz』(1968年)
The Nazz

Nazz『Nazz III』(1970年)
ナッズ・サード(紙ジャケット仕様)

Utopia『Swing to the Right』(1982年)
Swing to the Right
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