2011年11月15日

O.S.T.(Bob Dorough)『Multiplication Rock』

エデュテイメント・ポップの最高峰。フリーソウル・クラシック「Three Is A Magic Number」収録☆O.S.T.(Bob Dorough)『Multiplication Rock』
マルティプリケイション・ロック
発表年:1973年
ez的ジャンル:フリーソウル系エデュテイメント・ポップ
気分は... :魔法の数字は・・・

今回はアメリカの子供向け番組『Schoolhouse Rock!』のサウンド・トラック『Multiplication Rock』(1973年)です。

『Schoolhouse Rock!』は1973年から1985年まで米ABCテレビで放送されていた人気子供向け番組です。シリーズ第1弾となる『Multiplication Rock』は、子供に掛け算をわかりやすく教えるシリーズです。『Multiplication Rock』以降も文法版『Grammar Rock』、科学版『Science Rock』、歴史版『America Rock』等のシリーズが放送されたようです。

今日紹介するシリーズ第1弾『Multiplication Rock』(1973年)のサントラは、全曲Bob Doroughの作詞/作曲を手掛けており、実質はBob Doroughのアルバムと呼んで良いと思います。

アメリカ人であれば多くの人が知っている子供番組ですが、そのサントラが音楽ファンに注目されるきっかけとなったのは、本作でもお馴染みのHip-HopグループDe La Soulの歴史的名盤『3 Feet High And Rising』(1989年)です。同アルバムに収録された「Three Is A Magic Number」の元ネタとして本作収録の「Three Is A Magic Number」への注目が集まりました。

引用というよりもリメイクと呼ぶ方が相応しいDe La Soul「Three Is A Magic Number」は僕もよく聴きました。こんなユルユルなHip-Hopがあることに当時は感動したものです。

De La Soul「Three Is A Magic Number」
 http://www.youtube.com/watch?v=0irL1M15DH8

さて、本作『Multiplication Rock』の主役であるBob Doroughについて簡単に説明しておきましょう。

Bob Doroughは1923年アーカンソー生まれのジャズ・ピアニスト/コンポーザー/シンガー。1950年代からサイドメンやコンポーザーとして活躍しながら、自身のリーダー作もリリースしています。

ジャズ・ファンには本作にもゲスト参加しているBlossom Dearieとの共演や、Miles Davis『Sorcerer』に収録された「Nothing Like You」のヴォーカル/楽曲提供で有名ですね。特に後者については、帝王Milesのアルバムにヴォーカリストとして迎えられた数少ない存在として特筆されるべきと思います。まぁ、「Nothing Like You」について賛否両論あると思いますが・・・

Miles Davis「Nothing Like You」(1967年)
 http://www.youtube.com/watch?v=LdZTKvNXxPA

また、ロック・ファンにはSpanky & Our GangAlzoのプロデュースで知られていますね。これらの作品を通じて、彼の持つソフトロック/ポップス・センスの高さを実感できます。

そんな彼が手掛けた『Multiplication Rock』ですが、子供向け番組のサントラと侮れないBob Doroughらしいジャズ・センスの溢れたソフトロック/ポップス・ワールドを展開しています。特にBobの中性的なフニャフニャ・ヴォーカルが子供達の愛らしい歌声とマッチしているのがいいですね。

殆どの曲Bob Dorough自身がヴォーカルを務めていますが、ゲスト・ヴォーカルとしてジャズ・ドラマーGrady Tateとキュートな女性ジャズ・シンガーBlossom Dearieが参加しています。

やはり、「Three Is A Magic Number」がハイライトですが、それ以外の楽曲も十分に楽しめます。

現在は入手しづらい状況のアルバムかもしれませんね。
エデュテイメント・ポップの最高峰ですので、ぜひ手元に置いてご堪能してください。

全曲紹介しときやす。

「Elementary, My Dear」
オープニングは2の段。ノアの方舟の話をモチーフしたソフト・ジャズ・ポップです。Bob Doroughの小粋なソフト・ヴォーカルが軽快に響きます
http://www.youtube.com/watch?v=Ku13NIjgYWs

「Three Is A Magic Number」
3の段は前述のように本作のハイライト。フリーソウル・クラシックとしても定番ですね。僕の場合、De La Soul「Three Is A Magic Number」を先に聴いていたのですが、元ネタの本曲も同様のユルさがあって嬉しく思った記憶があります。まさに魔法のエデュテイメント・ポップですね。
http://www.youtube.com/watch?v=LDbeVB4admk

De La Soul「Three Is A Magic Number」以外にも、Jack Johnsonが環境配慮の3R(Reduce,Reuse,Recycle)をテーマにした歌詞に改変した「The 3 R's」などもあります。また、トリビュート・アルバム『Schoolhouse Rock! Rocks』ではロック・バンドBlind Melonが本曲をカヴァーしています。

Jack Johnson「The 3 R's」
 http://www.youtube.com/watch?v=USo_vH1Jz7E
Blind Melon「Three Is A Magic Number」
 http://www.youtube.com/watch?v=yPzAjiLr5Zw

「The Four Legged Zoo」
4の段は動物の4本足について歌ったもの。Hip-Hopなどない時代なのに、Bob Doroughや子供たちの歌は実にラップのりです。
http://www.youtube.com/watch?v=LrNHOHOx6As

「Ready Or Not, Here I Come」
5の段は、スウィンギーに疾走するジャズ・チューン。ジャズ・ピアニストであるBob Dorough本来の姿を確認できる1曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=DkLmt7e2NIA

「My Hero, Zero」
ここで何故か0に戻ります。爽快なフォーキー・サウンドが印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=4WlVNKkMw0I

「I Got Six」
6の段はジャズ・ドラマーGrady Tateがヴォーカルをとるファンキー・チューン。ソウルフルな女性コーラスとファンキー・ホーンが盛り上げてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=cwkgNf69ihY

「Lucky Seven Sampson」
7の段はカントリー調。本来、カントリーは苦手な僕ですが、Bob Doroughのユル・ヴォーカルがカントリーの芋臭さを中和してくれているので大丈夫です。
http://www.youtube.com/watch?v=bkGTCMNvB3Q

「Figure Eight」
8の段はBlossom Dearieをゲスト・ヴォーカルに迎えています。メルヘンチックなサウンドとBlossom Dearieのキュートなブリっ子ヴォーカルがいい雰囲気です。
http://www.youtube.com/watch?v=Jeq5a8bBh8c

「Naughty Number Nine」
9の段では再びGrady Tateがヴォーカルをとります。ブルージーに迫るこの曲は子供向けという感じではありませんが(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=H5fgzFzRmuM

「The Good Eleven」
九九では終わらず、11の段に突入します。グッドなカントリー・ポップに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=8GtVZDFwZU4

「Little Twelvetoes」
ラストは12の段。最後はロック調でキメてくれます。何の予備知識もなく聴くと、Lou Leedっぽく聴こえたりもします。
http://www.youtube.com/watch?v=kd2EhOeOJ3s

興味のある方は、『Schoolhouse Rock!』の他シリーズのサントラもチェックを!

『Grammar Rock』
Grammar Rock (Schoolhouse Rock 1973)

『Science Rock』
Schoolhouse Rock: Science Rock

『America Rock』
Schoolhouse Rock: America Rock
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2011年11月13日

Maria Rita『Elo』

新世代MPBを代表する女性シンガー、待望の新作!☆Maria Rita『Elo』
maria rita elo.jpg
発表年:2011年
ez的ジャンル:新世代MPB
気分は... :エロくはありません(笑)

新世代MPBを代表する女性シンガーMaria Ritaの待望の新作『Elo』です。

これまで当ブログではMaria Ritaのオリジナル・アルバムを全て紹介済みです。

 『Maria Rita』(2003年)
 『Segundo』(2005年)
 『Samba Meu』(2007年)

MPBの女王であった故Elis Reginaの娘Maria Ritaは、僕にとって特別なアーティストです。

彼女の3rdアルバムである前作『Samba Meu』(2007年)は、ここ数年の僕のブラジル志向のきっかけとなるアルバムでした。この作品をきっかけに、ブラジルもの新作をこまめにチェックするようになり、母Elis Reginaのアルバムも集中的に聴くようになり・・・と新旧ブラジル作品に接する機会が急増しました。

前作『Samba Meu』ではルーツ・サンバへのアプローチを強めていましたが、4年ぶりの新作となる『Elo』は1st『Maria Rita』、2nd『Segundo』に近い印象を受けます。

Thiago Costa(p)、Sylvinho Mazzucca (b)、Cuca Teixeira(ds)というMaria Rita作品ではお馴染みのメンバーがバックを務めています。

愁いを帯びた陰影のあるヴォーカルが、シンプルな編成のバックと一体化し、Maria Ritaらしい音世界を届けてくれます。

一聴すると地味な印象を受けるかもしれませんが、聴き重ねるほどに味わいが増してくる1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Conceicao dos Coqueiros」
Lula Queiroga/Lulu Oliveira/Alexandre Bicudo作。オープニングはLenineとの共作アルバム『Baque Solto』でも知られるLula Queirogaの作品。Lula Queirogaのオリジナルは『Azul Invisivel Vermelho Cruel』(2004年) に収録されています。ミステリアスな雰囲気はアルゼンチン系アーティストあたりと一緒に聴きたくなります。
http://www.youtube.com/watch?v=r1HE0j9LiFA

「Santana」
Junio Barreto/Joao Carlos Araujo作。Gal Costaもアルバム『Hoje』(2004年)で取り上げています。シンプルな編成ながらも、引き締まったヴォーカル&演奏になかなかグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=J2lgvoqLu7c

「Perfeitamente」
Fred Martins/Francisco Bosco作品。Fransisco Boscoはブラジル音楽の大物アーティストJoao Boscoの息子です。2nd『Segundo』でも、このコンビの作品「Sem Aviso」を取り上げていました。Thiago Costaの美しいピアノが、愁いを帯びたMariaのヴォーカルを引き立てます。
http://www.youtube.com/watch?v=Vag2KQ-xM6U

「Coracao a Batucar」
Davi Moraes作。Davi Moraesについては、Arto Lindsay作品の記事で何度か紹介しています。小粋なアレンジのサンバ・チューン。やはり、僕はこういうのが好きだなぁ。Thiago Costaのメロウ・エレピがグッド!
http://www.youtube.com/watch?v=Fflh96TS1ik

「Menino do Rio」
Caetano Veloso作品のカヴァー。オリジナルは『Cinema Transcendental』(1979年)に収録されています。また、当ブログではMariana Meleroのカヴァーも紹介済みです。ここでは抑えたヴォーカルとシンプルなアレンジで聴かせてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=jH1ca5lf_xM

「Pra Matar meu Coracao」
Pedro Baby/Daniel Jobim作。Antonio Carlos Jobimの孫、Daniel Jobimの作品です。少し寂しげなMariaのヴォーカルとボッサ・サウンドがマッチしています。
http://www.youtube.com/watch?v=2GCqMS8fZLA

「A Historia de Lily Braun」
Chico Buarque/Edu Lobo作。オリジナルは二人が手掛けた『O Grande Circo Mistico』(1983年)の中でGal Costaが歌っていました。オリジナルはジャズ色が強かったですが、ここではThiago Costaのピアノが様々な表情でMariaのヴォーカルをサポートしているのがいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=GIDhNLglyfA

「Nem Um Dia」
Djavan作品のカヴァー。オリジナルは『Malasia』(1996年)に収録されています。メリハリのヴォーカル&演奏が冴える哀愁チューン。
http://www.youtube.com/watch?v=95ivQfWP2VA

「A Outra」
Maria Ritaのアルバムでは定番のMarcelo Camelo作品。オリジナルは彼が率いていたリオ出身の人気ロックバンドLos Hermanosによるものです。雰囲気のある哀愁バラードです。
http://www.youtube.com/watch?v=0AYSO5gqMAM

「So de Voce」
Rita Lee/Roberto de Carvalho作。母Elis Reginaとも親交の深かったブラジル・ロック界の女王Rita Leeの作品です。オリジナルはRoberto de Carvalhoとの共演作『Rita Lee E Roberto de Carvalho』(1982年)に収録されています。オリジナルの小粋な雰囲気を残しつつ、Mariaらしい少しレイジーな感じが加味されています。
http://www.youtube.com/watch?v=Yffu4BsJ93E

「Coracao em Desalinho」
Mauro Diniz/Ratinho作。ボーナス・トラック扱いの本曲はカヴァキーニョの名手Mauro Dinizの作品です。本編とは異なる雰囲気の軽快なサンバ・チューンに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=wa4IvbVhv7k

Maria Ritaの過去記事もご参照下さい。

『Maria Rita』(2003年)
Maria Rita

『Segundo』(2005年)
Segundo

『Samba Meu』(2007年)
Samba Meu
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2011年11月12日

Cheryl Lynn『It's Gonna Be Right』

前作に続きJam & Lewisを迎えた6thアルバム☆Cheryl Lynn『It's Gonna Be Right』
ゴナ・ビー・ライト(紙ジャケット仕様)
発表年:1985年
ez的ジャンル:アーバン・ファンク系ディスコ/ソウル
気分は... :きっとすべてはうまくいく...

今回は女性ディスコ/ソウル・シンガーCheryl Lynnの6thアルバム『It's Gonna Be Right』(1985年)です。

ダンス・クラシック「Got To Be Real」でお馴染みのディスコ/ソウル・シンガーCheryl Lynnの紹介は、『In The Night』(1981年)に続き2回目です。

前作『Preppie』(1983年)からシングルカットされた「Encore」は、大ヒット・デビュー・シングル「Got To Be Real」以来の全米R&Bチャート第1位となりました。

その「Encore」をプロデュースしていたのが後の大物プロデューサー・チームJam & Lewis(Jimmy Jam & Terry Lewis)でした。

「Encore」
 http://www.youtube.com/watch?v=3L5OJzCj4g0

そのJam & Lewisを引き続きプロデューサーに起用して制作されたアルバムが『It's Gonna Be Right』(1985年)です。

Jam & Lewis以外にも、Jam & Lewisと同じくThe Timeの元メンバーであり、Flyte Tyme ProductionsのプロデューサーであるMonte Moirや、D-Trainでの活躍でお馴染みのHubert Eaves IIIがプロデューサーに起用されています。また、Cheryl自身もTodd Cochranと共同でプロデュースを手掛けています。

結果として、商業的には不発に終わってしまった本作ですが、内容的にはアーバンなダンス・チューンを満喫できる充実の1枚だと思います。特にタイトル曲「It's Gonna Be Right」は「Got To Be Real」好きの人には涙モノですね。

きっとすべてはうまくいく!

全曲紹介しときやす。

「Fidelity」
Jimmy Jam & Terry Lewisプロデュース。アルバムからの1stシングル。100%Jam & Lewis印のアーバンなダンス・チューン。同じくJam & Lewisが手掛けたThe S.O.S. Band『Just the Way You Like It』(1984年)あたりと一緒に聴くとフィットします。
http://www.youtube.com/watch?v=P4dE-MuUCdw

「Fade To Black」
Cheryl Lynn/Todd Cochranプロデュース。アルバムからの2ndシングル。アーバン・ナイトな雰囲気にグッとくるブラコン・チューン。Jam & Lewis効果が別の曲にも表れているのかもしれません。
http://www.youtube.com/watch?v=OoNIfQ-pyec

「Love's Been Here Before」
Monte Moirプロデュース。切ないラブ・バラード。Cherylの素晴らしい歌唱力を満喫できます。

「It's Gonna Be Right」
Jimmy Jam & Terry Lewisプロデュース。"Jam & Lewis版「Got To Be Real」"と呼べるタイトル曲が本作のハイライト。Cheryl自身もかなりノリノリですね。誰しも盛り上がることができるダンス・チューンです。Jam & Lewisによるスウェイビートを満喫しましょう!

「Let Me Love You」
Hubert Eaves IIIプロデュース。Flyte Tyme勢とは異なるN.Y.アーバン・ファンクを聴くことができます。Hubert Eaves IIIはJames "D-Train" Williams『Miracles of the Heart』(1986年)でも本曲を取り上げています。
http://www.youtube.com/watch?v=O5EbY4UDNzk

「Find Somebody New」
Hubert Eaves IIIプロデュース。ロッキン・テイストのダンス・チューン。個人的にはこの手のロッキン・ダンスな曲は苦手なのですが・・・

「Loafin'」
Cheryl Lynn/Todd Cochranプロデュース。哀愁エレポップな雰囲気も漂うミディアム・ダンス・チューン。

「Slipped Me A MIckey」
Cheryl Lynn/Todd Cochranプロデュース。ポップ・マーケット向けのダンス・チューン。僕の嗜好にはマッチしていません。

「Tug O' War」
Cheryl Lynn/Todd Cochranプロデュース。シンセ・サウンドが心地好いミッド・グルーヴ。

CDにはボーナス・トラックとして、「Fidelity」の12"ヴァージョンが追加収録されています。

本作を最後にCheryは長年在籍してきたCBSを離れることになります。やはりCheryl Lynnの全盛はCBS時代ということになりますね。

『Cheryl Lynn』(1978年)
シェリル・リン(紙ジャケット仕様)

『In Love』(1979年)、
イン・ラヴ(紙ジャケット仕様)

『In The Night』(1981年)
イン・ザ・ナイト(紙ジャケット仕様)

『Instant Love』(1982年)
インスタント・ラヴ(紙ジャケット仕様)

『Preppie』(1983年)
プレッピー(紙ジャケット仕様)
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2011年11月10日

Vikter Duplaix『International Affairs』

ネオ・フィリー+クロスオーヴァーなR&B作品☆Vikter Duplaix『International Affairs』
International Affairs
発表年:2002年
ez的ジャンル:ネオ・フィリー+クロスオーヴァー系男性R&B
気分は... :このセンスに脱帽です!

今回はR&Bからクラブジャズ/クラブ・ミュージックまで幅広い音楽性が魅力のアーティストVikter Duplaixの1stアルバム『International Affairs』(2002年)です。

Vikter Duplaixは、フィラデルフィア出身のシンガー・ソングライター/プロデューサー/DJ。

彼のキャリアはJazzy Jeffが設立したA Touch Of Jazzでのスタジオワークからスタートしました。そこで人気プロデューサー/ソングライターJames Poyserとも出会っています。

そうした中でプロデューサー/ソングライターといった裏方として、Erykah BaduMusiq SoulchildJaguar WrightEric Benet等のネオ・フィリー/ネオ・ソウル作品を手掛けています。

また、Vikterは人気DJ/プロデューサーKing Brittと高校の同級生であり、彼を通じてDJ/クラブ・ミュージックへもアプローチしていきます。例えば、King Brittのコンピ作品やクロスオーヴァー・ジャズの人気ユニットJazzanova作品でヴォーカリストとしてフィーチャーされています。さらにはDJ-Kicksとしてリミックス・アルバム『DJ Kicks: Vikter Duplaix』(2002年)をリリースしています。

そんな幅広い音楽性を持つVikterの1stアルバムが『International Affairs』(2002年)です。

アルバムの大半はVikterとJames Poyserの共同プロデュースであり、そこだけに着目するとネオ・フィリー全開な作品をイメージしてしまうかもしれません。しかしながら、アルバム全体としてはR&Bとクロスオーヴァー/Nu Jazzが融合した作品という印象が強いですね。それを裏付けるように、数曲で4HeroMarc Macがプロデューサーとして参加しています。

改めて聴き直すと、2002年の時点でネオ・フィリーとクロスオーヴァー/Nu Jazzを違和感なく融合させてしまうセンスに脱帽してしまいます。

なかなか有りそうで無いスタイルの1枚だと思います。

全曲紹介しときやす(Vl.0収録曲)。

「Departure」
Vikter Duplaix/James Poyserプロデュース。オープニングはアフリカン・リズムによる小曲。

「What We Want」
オススメその1。Vikter Duplaix/James Poyserプロデュース。前曲の流れを受けたリズミックなR&Bチューン。クールなR&Bサウンドとアフリカンなリズムの組み合わせは意外に格好良いです。

「Lust For Life」
オススメその2。Vikter Duplaix/Marc Mac(4Hero)プロデュース。フィリーから一気に西ロンドンへトリップしたクロスオーヴァー/Nu Jazzなダンス・チューンです。
http://www.youtube.com/watch?v=G9DTSXndTJ0

「I Got You」
オススメその3。Vikter Duplaix/James Poyserプロデュース。大人のR&B好きにはイチオシの1曲。Vikterのセクシーな魅力を堪能できるアーバンなR&Bチューンに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=8AtXUyodplA

「Looking For Love (Critical Point 58th Street Mix)」
後述する「Looking For Love」のリミックス。オリジナルはVikter Duplaix/Marc Macプロデュースですが、本リミックスはVikter Duplaix本人とJames Poyserが手掛けています。DJ Kicksとしても活躍するVikterのリミックスのセンスを楽しみましょう。

「Morena」
オススメその4。Vikter Duplaix/James Poyserプロデュース。スパニッシュ・ヴォーカルも入ったラテン・テイストのクロスオーヴァー・チューン。パーカッシヴなのにクールな感じにグッときます。

オリジナル音源が見つからなかったのでリミックス音源を紹介しておきます。

「Morena (Remix)」
http://www.youtube.com/watch?v=CXUx2SjzhjI

「Yesterday's Pain」
Vikter Duplaix/James Poyserプロデュース。ロッキンなギターも聴くことができる哀愁ミッド・グルーヴ。アルバムの中でアクセントになっています。

「Can We Be Lovers」
オススメその5。Vikter Duplaixプロデュース。ネオ・フィリーにVikterらしいクロスオーヴァーなスパイスを効かせたセクシーR&Bチューン。今聴いてもセンス抜群ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=sI-n_qmPZUI

「Morning Fun」
オススメその6。なんとプロデュースはSoulquarians/Vikter Duplaix名義。ソングライティングには Vikter Duplaix、James Poyserに加え、The Roots?uestloveも加わっています。当時のネオ・フィリーらしい浮遊感のあるR&Bチューンに仕上がっています。

アルバム未収録ですが、本曲にはCommonのラップをフィーチャーしたヴァージョンもあります。
Vikter Duplaix feat. Common「Morning Fun」
http://www.youtube.com/watch?v=CX1ZkAfKOXU

「Tropical Girl」
オススメその7。Vikter Duplaix/James Poyserプロデュース。当ブログではお馴染みの新世代ブラジル人アーティストBebel Gilbertoの作品です。クラブ系リスナーからの支持が高いBebel Gilbertoの楽曲を取り上げること自体にVikterのセンスを感じますよね。クラブ系ブラジリアン・グルーヴがお好きな人は間違いなく気に入る1曲だと思います。個人的にも一番のお気に入りです。

「Desperately」
Vikter Duplaix/Anthony Bellプロデュース。Jill ScottJazmine Sullivanでお馴染みのプロデューサーですね。幻想的なR&Bチューンに仕上がっています。バック・コーラスは元ZhaneのJean Norrisです。
http://www.youtube.com/watch?v=IAwQxVz1x2s

「Late Night Rendezvous」
Vikter Duplaix/James Poyserプロデュース。Nou-Raの女性ヴォーカルも加わり、セクシー・モード全開のエロR&Bチューン。

「Looking For Love (Original)」
オススメその8。Vikter Duplaix/Marc Macプロデュースによる「Looking For Love」のオリジナル。オリジナルは西ロンドンらしいクロスオーヴァーな疾走感が心地好いです。
http://www.youtube.com/watch?v=R2w_X4nwDtM

「Transition/Critical Point」
ラストはWadudをフィーチャーしたアウトロ。

僕が保有するCDは2002年にリリースされたVl.0ですが、2003年に収録曲を一部差し替えたV2.0もリリースされています。

V2.0では「Can We Be Lovers」「Morning Fun」「Transition/Critical Point」の3曲がカットされ、 「Fahmina Speaks」「Wherever You Are」「Come See Me」の3曲が代わりに収録されています。

ご購入する場合、ヴァージョンの違いにご注意下さい。

ご興味がある方は、他のVikter Duplaix作品もチェックを!

『Bold and Beautiful』(2006年) ※本作に続く2ndアルバム
Bold & Beautiful


『Bold and Beautiful』(2004年) ※シングル集
Singles


『DJ Kicks: Vikter Duplaix』(2002年) ※リミックス作品
DJ Kicks
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2011年11月09日

Volker Kriegel『Spectrum』

シタール人気曲「Zoom」収録☆Volker Kriegel『Spectrum』
Spectrum
発表年:1971年
ez的ジャンル:ジャーマン・ジャズ/ジャズ・ロック
気分は... :やっとドルフィンズ初勝利!

NFLは第9週にして、我がマイアミ・ドルフィンズが今シーズン初勝利を飾りました。しかも、完勝と呼べる勝ちっぷりにようやく胸の支えが取れた思いです。

それにしても今シーズンは各地区かなりの混戦模様ですね。
NFCは唯一全勝を守っている昨シーズンの王者パッカーズのいるNFC北地区と、2位以下を大きく引き離している49ersのいるNFC西地区以外は、どのチームが優勝するのか全く予想できません。これからも楽しみです。

今回はドイツ人ギタリストVolker Kriegelのソロ・アルバム『Spectrum』(1971年)です。

Volker Kriegelは1943年、ドイツ、ダルムシュタット生まれ。

1969年にVolker Kriegel Trio名義でアルバム『With a Little Help From My Friends』をリリースしたのをきっかけに、Volker KriegelVolker Kriegel & SpectrumVolker Kriegel & Mild Maniac Orches等の名義でリーダー作をリリースしています。

さらに、The Dave Pike SetThe Kuhn Brothers & The Mad RockersCurt Cress ClanThe United Jazz+Rock Ensembleのメンバーとしてもアルバムをリリースしています。

2003年にスペインにて死去。

僕の場合、The Dave Pike Setのシタール・グルーヴ人気曲「Mathar」Volker Kriegelの存在を知ったので、シタールのイメージが強い人ですが、基本的には(ジャズ・サイドからの)ジャズ・ロック系ギタリストという位置づけの人なのでしょうね。

The Dave Pike Set「Mathar」
http://www.youtube.com/watch?v=hOgysRqbLDY

本作『Spectrum』(1971年)は、シタール・グルーヴ、ジャズ・ロック、ジャズを楽しめる作品です。

レコーディング・メンバーは、Volker Kriegel(g、sitar)、John Taylor(el-p)、Peter Trunk(b、cello)、Cees See(per)、Peter Baumeister(ds、per)です。

本作のハイライトは、何と言ってもThe Dave Pike Set「Mathar」と双璧を成すシタール・グルーヴ人気曲「Zoom」になります。僕も「Zoom」1曲狙いで本作をゲットしました。

「Zoom」以外の曲は、ジャズ/ジャズ・ロックな仕上がりで、このあたりは好みが分かれるかもしれませんが・・・

まぁ、「Zoom」狙いでゲットする手もアリなのでは?

全曲紹介しときやす。

「Zoom」
前述のように本作のハイライトとなるシタール・グルーヴ。シタール系のグルーヴィー・サウンドがお好きな人でれば、「Mathar」とセットで揃えておきたい1曲ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=gFFL7M4IChg

「So Long, For Now」
ジャズ・ギタリストらしいKriegelの演奏を楽しめます。なかなか小粋な仕上がりです。

「More About D」
フリー・ジャズな仕上がり。テンション高いインプロヴィゼーションがスリリングです。

「Suspicious Child, Growing Up」
アーシーな味わいのジャズ(何じゃそりゃ?)といった雰囲気です。

「Instant Judgement」
超高速で突っ走るジャズ・ロック・チューン。フリーキーなKriegelのギターと全体のスピード感にグッときます。

「Ach Kina」
前半は美しいバラード、後半は軽やかなテンポで聴かせてくれます。

「Strings Revisited」
「Zoom」に続く僕のお気に入り。サイケな雰囲気も漂うスリリングかつパーカッシヴな演奏に惹かれます。

ご興味のある方は他のVolker Kriegel作品やThe Dave Pike Set時代の作品もチェックを!

Volker Kriegel『Inside/Missing Link』(1972年)
Inside/Missing Link

Volker Kriegel『Lift!』(1973年)
Lift!

Volker Kriegel『Topical Harvest』(1976年)
Topical Harvest

The Dave Pike Set『Noisy Silence-Gentle Noise』(1969年)
ノイジー・サイレンス-ジェントル・ノイズ(紙ジャケット仕様)
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