2011年11月15日

O.S.T.(Bob Dorough)『Multiplication Rock』

エデュテイメント・ポップの最高峰。フリーソウル・クラシック「Three Is A Magic Number」収録☆O.S.T.(Bob Dorough)『Multiplication Rock』
マルティプリケイション・ロック
発表年:1973年
ez的ジャンル:フリーソウル系エデュテイメント・ポップ
気分は... :魔法の数字は・・・

今回はアメリカの子供向け番組『Schoolhouse Rock!』のサウンド・トラック『Multiplication Rock』(1973年)です。

『Schoolhouse Rock!』は1973年から1985年まで米ABCテレビで放送されていた人気子供向け番組です。シリーズ第1弾となる『Multiplication Rock』は、子供に掛け算をわかりやすく教えるシリーズです。『Multiplication Rock』以降も文法版『Grammar Rock』、科学版『Science Rock』、歴史版『America Rock』等のシリーズが放送されたようです。

今日紹介するシリーズ第1弾『Multiplication Rock』(1973年)のサントラは、全曲Bob Doroughの作詞/作曲を手掛けており、実質はBob Doroughのアルバムと呼んで良いと思います。

アメリカ人であれば多くの人が知っている子供番組ですが、そのサントラが音楽ファンに注目されるきっかけとなったのは、本作でもお馴染みのHip-HopグループDe La Soulの歴史的名盤『3 Feet High And Rising』(1989年)です。同アルバムに収録された「Three Is A Magic Number」の元ネタとして本作収録の「Three Is A Magic Number」への注目が集まりました。

引用というよりもリメイクと呼ぶ方が相応しいDe La Soul「Three Is A Magic Number」は僕もよく聴きました。こんなユルユルなHip-Hopがあることに当時は感動したものです。

De La Soul「Three Is A Magic Number」
 http://www.youtube.com/watch?v=0irL1M15DH8

さて、本作『Multiplication Rock』の主役であるBob Doroughについて簡単に説明しておきましょう。

Bob Doroughは1923年アーカンソー生まれのジャズ・ピアニスト/コンポーザー/シンガー。1950年代からサイドメンやコンポーザーとして活躍しながら、自身のリーダー作もリリースしています。

ジャズ・ファンには本作にもゲスト参加しているBlossom Dearieとの共演や、Miles Davis『Sorcerer』に収録された「Nothing Like You」のヴォーカル/楽曲提供で有名ですね。特に後者については、帝王Milesのアルバムにヴォーカリストとして迎えられた数少ない存在として特筆されるべきと思います。まぁ、「Nothing Like You」について賛否両論あると思いますが・・・

Miles Davis「Nothing Like You」(1967年)
 http://www.youtube.com/watch?v=LdZTKvNXxPA

また、ロック・ファンにはSpanky & Our GangAlzoのプロデュースで知られていますね。これらの作品を通じて、彼の持つソフトロック/ポップス・センスの高さを実感できます。

そんな彼が手掛けた『Multiplication Rock』ですが、子供向け番組のサントラと侮れないBob Doroughらしいジャズ・センスの溢れたソフトロック/ポップス・ワールドを展開しています。特にBobの中性的なフニャフニャ・ヴォーカルが子供達の愛らしい歌声とマッチしているのがいいですね。

殆どの曲Bob Dorough自身がヴォーカルを務めていますが、ゲスト・ヴォーカルとしてジャズ・ドラマーGrady Tateとキュートな女性ジャズ・シンガーBlossom Dearieが参加しています。

やはり、「Three Is A Magic Number」がハイライトですが、それ以外の楽曲も十分に楽しめます。

現在は入手しづらい状況のアルバムかもしれませんね。
エデュテイメント・ポップの最高峰ですので、ぜひ手元に置いてご堪能してください。

全曲紹介しときやす。

「Elementary, My Dear」
オープニングは2の段。ノアの方舟の話をモチーフしたソフト・ジャズ・ポップです。Bob Doroughの小粋なソフト・ヴォーカルが軽快に響きます
http://www.youtube.com/watch?v=Ku13NIjgYWs

「Three Is A Magic Number」
3の段は前述のように本作のハイライト。フリーソウル・クラシックとしても定番ですね。僕の場合、De La Soul「Three Is A Magic Number」を先に聴いていたのですが、元ネタの本曲も同様のユルさがあって嬉しく思った記憶があります。まさに魔法のエデュテイメント・ポップですね。
http://www.youtube.com/watch?v=LDbeVB4admk

De La Soul「Three Is A Magic Number」以外にも、Jack Johnsonが環境配慮の3R(Reduce,Reuse,Recycle)をテーマにした歌詞に改変した「The 3 R's」などもあります。また、トリビュート・アルバム『Schoolhouse Rock! Rocks』ではロック・バンドBlind Melonが本曲をカヴァーしています。

Jack Johnson「The 3 R's」
 http://www.youtube.com/watch?v=USo_vH1Jz7E
Blind Melon「Three Is A Magic Number」
 http://www.youtube.com/watch?v=yPzAjiLr5Zw

「The Four Legged Zoo」
4の段は動物の4本足について歌ったもの。Hip-Hopなどない時代なのに、Bob Doroughや子供たちの歌は実にラップのりです。
http://www.youtube.com/watch?v=LrNHOHOx6As

「Ready Or Not, Here I Come」
5の段は、スウィンギーに疾走するジャズ・チューン。ジャズ・ピアニストであるBob Dorough本来の姿を確認できる1曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=DkLmt7e2NIA

「My Hero, Zero」
ここで何故か0に戻ります。爽快なフォーキー・サウンドが印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=4WlVNKkMw0I

「I Got Six」
6の段はジャズ・ドラマーGrady Tateがヴォーカルをとるファンキー・チューン。ソウルフルな女性コーラスとファンキー・ホーンが盛り上げてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=cwkgNf69ihY

「Lucky Seven Sampson」
7の段はカントリー調。本来、カントリーは苦手な僕ですが、Bob Doroughのユル・ヴォーカルがカントリーの芋臭さを中和してくれているので大丈夫です。
http://www.youtube.com/watch?v=bkGTCMNvB3Q

「Figure Eight」
8の段はBlossom Dearieをゲスト・ヴォーカルに迎えています。メルヘンチックなサウンドとBlossom Dearieのキュートなブリっ子ヴォーカルがいい雰囲気です。
http://www.youtube.com/watch?v=Jeq5a8bBh8c

「Naughty Number Nine」
9の段では再びGrady Tateがヴォーカルをとります。ブルージーに迫るこの曲は子供向けという感じではありませんが(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=H5fgzFzRmuM

「The Good Eleven」
九九では終わらず、11の段に突入します。グッドなカントリー・ポップに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=8GtVZDFwZU4

「Little Twelvetoes」
ラストは12の段。最後はロック調でキメてくれます。何の予備知識もなく聴くと、Lou Leedっぽく聴こえたりもします。
http://www.youtube.com/watch?v=kd2EhOeOJ3s

興味のある方は、『Schoolhouse Rock!』の他シリーズのサントラもチェックを!

『Grammar Rock』
Grammar Rock (Schoolhouse Rock 1973)

『Science Rock』
Schoolhouse Rock: Science Rock

『America Rock』
Schoolhouse Rock: America Rock
posted by ez at 01:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする