発表年:1969年
ez的ジャンル:トロピカリズモの女神
気分は... :気付けばGalの歌声がある・・・
今回はMPBの歌姫Gal Costaの1stソロ・アルバム『Gal Costa』です。
これまで当ブログで紹介したGal Costa作品は以下の3枚。
『Cantar』(1974年)
『Minha Voz』(1982年)
『Lua De Mel Como O Diabo Gosta』(1987年)
もしかしたら、今年僕が最もコンスタントに聴いたアーティストはGal Costaだったかもしれません。特定のアルバムを集中的に聴くというよりも、いろいろな作品を聴いていた気がします。ブラジル音楽のウェイトが年々高まっている僕の音楽嗜好を象徴するアーティストの一人がGal Costaなのかもしれません。
当ブログにおいて初期Gal Costa作品を紹介するのは初めてになります。
本作以前にもCaetano Velosoとの共演アルバム『Domingo』(1967年)、Caetano Veloso、Gilberto Gil、Tom Ze、Nara Leao、Os Mutantesらと参加したブラジル音楽史に残る歴史的名盤『Tropicalia: ou Panis Et Circencis』といったアルバムをリリースしていたGalでしたが、ソロ名義では今回紹介する『Gal Costa』(1969年)が1stソロ・アルバムとなります。
まずはアフロ・ヘアーなジャケがインパクトありますよね。
このジャケが象徴するように、1stソロにおけるGalは、ブラジル伝統音楽にロック、サイケデリック・ロック、ソウルミュージック等の欧米の最新音楽スタイルを取り入れたトロピカリア(トロピカリズモ)の中心的な女性シンガーとしてアルバムを制作しています。
ただし、サイケ路線に突き進んだ2ndソロ『Gal』(1969年)と比較すれば、『Domingo』で聴かれるようなボッサ・チューンもあり、初々しいGalとトロピカリズモなGalが入り混じっているのが本作の魅力だと思います。
アルバムにはトロピカリアの同志であるCaetano Veloso、Gilberto Gilの2人が参加しています。この2人は楽曲提供でも大きく貢献しています。その意味では2人の影響が色濃く反映されたアルバムでもあります。特にサウンド面でGilberto Gil色が結構目立ちます。
60年代後半のブラジル音楽の面白さが1枚に凝縮されたアルバムだと思います。
初々しくもサイケなトロピカリズモの女神にウットリです!
全曲を紹介しときやす。
「Nao Identificado」
オープニングはCaetano Veloso作品。Caetano自身のヴァージョンは当ブログでも紹介した『Caetano Veloso』(1969年)に収録されています。初々しいGalとトロピカリズモなGalが交錯する本作を象徴するオープニング。Caetanoヴァージョンとは雰囲気が異なるので聴き比べるのも楽しいです。
http://www.youtube.com/watch?v=krtsVGCoK5k
「Sebastiana」
Gilberto Gilがゲスト参加。ブラジルらしい軽快なリズムの中にトロピカリズモな隠し味が効いたGil参加曲らしい仕上がりです。特に終盤の危うい感じが好きです。Rosil Cavalcanti作。
http://www.youtube.com/watch?v=HcwwlhXyq0M
「Lost In The Paradise」
Caetano Veloso作品。「Nao Identificado」同様にCaetano自身のヴァージョンは『Caetano Veloso』(1969年)に収録されています。Galヴァージョンはエレガントな雰囲気が印象的です。本曲もCaetanoヴァージョンとは雰囲気が異なるので聴き比べてみてください。
http://www.youtube.com/watch?v=sgaqLe_8KUw
「Namorinho De Portao」
Gilberto Gilとの共演。鬼才Tom Ze作品を取り上げています。冒頭のGilの奇声(?)とファズ・ギターが思い切りトロピカリズモしていますが、Galのヴォーカルが入ると軽快かつ心地好いブラジリアン・グルーヴを満喫できます。
http://www.youtube.com/watch?v=5Nc_d5qLJWA
「Saudosismo」
Caetano Veloso作品。当ブログではRosalia De Souzaのカヴァーも紹介済みの曲です。ここではボッサなGalを聴くことができます。哀愁メロディと寂しげなGalのヴォーカルがよくマッチしています。最後にトロピカリズモなサイケ・サウンドも聴こえてきます。
http://www.youtube.com/watch?v=cVqgNrt_Y1A
「Se Voce Pensa」
Erasmo Carlos/Roberto Carlos作。本作と同じ1969年にリリースされた女王Elis Reginaの『Elis Regina in London』収録ヴァージョンでもお馴染みの曲ですね。軽快なElisヴァージョンとは全く異なる、少しテンポを落とし、ファズ・ギターを効かせたトロピカリズモな仕上がりが印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=TYgc65GOj4M
「Vou Recomecar」
Erasmo Carlos/Roberto Carlos作。ブラジルらしいファンキー・ロック・チューンに仕上がっています。トロピカリズモ気分に浸れる1曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=cik5yeTIWqI
「Divino, Maravilhoso」
Caetano Veloso/Gilberto Gil作。パーカッシヴなアコースティック・グルーヴにサイケ・ギターも絡んでくる僕好みの仕上がり。
http://www.youtube.com/watch?v=AdB604BKO6A
「Que Pena (Ela Ja Nao Gosta Mais De Mim)」
Caetano Veloso参加曲。Jorge Ben作の本曲は、Cafe Apres-midiのコンピにも収録されたラブリーなボッサ・チューンです。初々しいGalをご堪能下さい。当ブログではBossa Rioのカヴァーも紹介済みです。
http://www.youtube.com/watch?v=sYHTwcpHlxY
「Baby」
Caetano Veloso作の本曲はGalを代表する名曲ですね。以前にも紹介したトロピカリズモの金字塔アルバム『Tropicalia: ou Panis Et Circencis』にもGal & Caetanoヴァージョンが収録されています。また、当ブログではOs Mutantesヴァージョンも紹介済みです。Galのヴォーカルが実に愛おしく感じます。聴いているだけで胸がギュッとなってしまいます(笑)。終盤にPaul Anka「Diana」のフレーズを重ねるCaetanoが心憎いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=b7d6wnaRm2E
「A Coisa Mais Linda Que Existe」
Gilberto Gil/ Torquato Neto作。当ブログではGilberto Gil自身のヴァージョンも紹介済みです。GilワールドにGalが上手く乗っている感じがいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=H50QliB-eGY
「Deus E O Amor」
ラストはJorge Ben作品。軽快なアコースティック・グルーヴで締め括ってくれます。普段聴くのであれば、本曲が一番好きですね。
http://www.youtube.com/watch?v=M6oUUVbF4CM
本作とセットで『Domingo』>(1967年)、『Gal』(1969年)もぜひチェックを!
Gal Costa & Caetano Veloso『Domingo』>(1967年)
『Gal』(1969年)
Gal Costaの過去記事もご参照下さい。
『Cantar』(1974年)
『Minha Voz』(1982年)
『Lua De Mel Como O Diabo Gosta』(1987年)