発表年:1964年
ez的ジャンル:プロテスタント・ボサノヴァ?
気分は... :なかなか手強い!
今回はボサノヴァのミューズ???Nara Leaoのデビュー・アルバム『Nara』(1964年)です。
Nara Leaoの紹介は、『Dez Anos Depois』(1971年)、『Vento De Maio』(1967年)に続き3回目となります。
12歳の時、Carlos Lyra、Roberto Menescalのギター教室に通うようになり、その後彼女のマンションにはボサノヴァ・ミュージシャンの集うようになりました。こうして「Nara Leao=ボサノヴァのミューズ」というイメージが形成されます。
1963年にはCarlos Lyra/Vinicius de Moraesによるミュージカル『Pobre Menina Rica(哀れな金持ち娘)』に出演し、さらにCarlos Lyraのアルバムへの参加を経て、デビュー・アルバム『Nara』のレコーディングに入ります。
よく知られているように、プロデューサーAloysio de Oliveiraは正統派ボサノヴァ・アルバムを制作したい意向でしたが、当のNara本人はこの頃には(中産階級の都会的でお洒落な音楽への反発という意味で)反ボサノヴァ的なスタンスを強めていました。この両者の思惑の違いが交錯しながらアルバム『Nara』は制作された模様です。
この時期からプロテスト・ソングへ傾倒していく師匠Carlos Lyraや、Cartola、Nelson Cavaquinhoといった偉大なるサンビスタ、さらにはEdu Lobo、Baden Powellといった個性派ソングライター/ミュージシャン等の作品を取り上げ、およそボサノヴァのミューズらしからぬ選曲となっています。
ボサノヴァであってボサノヴァではない・・・そんなアルバムが本作『Nara』の面白さだと思います。
その意味で結構手強いアルバム(?)という気がします。
全曲紹介しときやす。
「Marcha Da Quarta Feira De Cinzas」
Carlos Lyra/Vinicius de Moraes作。師匠Carlos Lyra作品がオープニングを飾ります。
「Diz Que Fui Por Ai」
H. Rocha/Ze Keti作。Geraldo Vesparの小粋なギターとNaraのナチュラル・ヴォーカルが絶妙のコンビネーションを魅せるボッサ・チューン。
http://www.youtube.com/watch?v=9_VigUedYVI
「Feio Nao E Bonito」
Carlos Lyra/Gianfrancesco Guarnieri作。ホーン隊&ストリングスも入ったノスタルジックな哀愁モードにグッときます。
「Cancao Da Terra」
Edu Lobo/Ruy Guerra作。Edu Lobo自身のヴァージョンはアルバム『A Musica De Edu Lobo Por Edu Lobo』(1965年)に収録されています。ボサノヴァらしからぬダークなサウンドとエレガントなボッサ・サウンドが同居しているのが本作らしいかもしれませんね。
「O Sol Nascera (A Sorrir)」
Elton Medeiros/Cartola作。Cartolaの名曲「日は昇る」のカヴァー。Cartolaの店Zicartolaに出入りしていたNaraだけあって、Cartolaの哀愁サンバとの相性は抜群です!
「Luz Negra」
Hirai Barros/Nelson Cavaquinho作。Cartolaに続き、またしても偉大なるサンビスタNelson Cavaquinhoの作品をカヴァー。Naraのクールな哀愁ヴォーカルにグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=xqtGGdXyum0
「Berimbau」
Vinicius de Moraes/Baden Powell作の名曲。当ブログではLennie Dale、Diane Denoir/Eduardo Mateo、Agustin Pereyra Lucena、Sambalanco Trioのカヴァーも紹介済みです。ボサノヴァのミューズを期待して聴くと、クセのあるアフロ・サンバ・チューンに戸惑うかもしれませんね(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=ZJZFiA-KW8M
「Vou Por A」
Aloysio de Oliveira/Baden Powell作。作者Baden Powellの愁いを帯びたギターをバックに、Naraが情感たっぷりに歌います。
「Maria Moita」
Carlos Lyra/Vinicius de Moraes作。当ブログではRosalia De Souzaのカヴァーを紹介済みです。僕の場合、Rosalia De Souzaのドラムン・ベース調のヴァージョンが沁みついているので、このNaraヴァージョンを聴くと逆に新鮮な感じがします。
http://www.youtube.com/watch?v=Y-jqtsyHHWs
「Requiem Por Um Amor」
Edu Lobo/Ruy Guerra作。Edu Lobo自身のヴァージョンはアルバム
『A Musica De Edu Lobo Por Edu Lobo』(1965年)に収録されています。しみじみとした哀愁バラードに仕上がっています。
「Consolacao」
Vinicius de Moraes/Baden Powell作の名曲。当ブログではTamba 4、Tenorio Jr.、Celso Fonseca、A Bossa Eletrica、Agustin Pereyra Lucena、Sambalanco Trio、Sirius Bのカヴァーを紹介済みです。個人的にはA Bossa Eletricaのヴァージョンを聴く頻度が高いのですが、ノスタルジックなNaraヴァージョンには別の味わいがありますね。
「Nana」
Moacir Santos/Mario Telles作。当ブログではBossa Rioのカヴァーを紹介済みです。ラストもボサノヴァのミューズというイメージからかけ離れたひとクセある演奏で締め括ります。
Nara Leaoの過去記事もご参照下さい。
『Vento De Maio』(1967年)
『Dez Anos Depois』(1971年)