2012年01月09日

Delaney & Bonnie『Accept No Substitute』

夫婦デュオによるスワンプ・ロックの先駆的アルバム☆Delaney & Bonnie『Accept No Substitute』
Original Delaney & Bonnie: Accept No Substitute
発表年:1969年
ez的ジャンル:元祖スワンプ・ロック
気分は... :Claptonがご執心だったのがわかる!

今回はスワンプ・ロックの先駆者としてロック・ファンから高い支持を得ているデュオDelaney & Bonnie『Accept No Substitute』(1969年)です。

Delaney & Bonnieは、1939年ミシシッピ州生まれのミュージシャンDelaney Bramlettと1944年イリノイ州生まれの女性シンガーBonnie Bramlettによる夫婦デュオ。

Delaney Bramlettは1950年代末よりL.A.でセッション・ミュージシャンとして活動し、60年代半ばにはLeon Russellらと共にABCのTVシリーズ『Shindig!』のハウスバンドThe Shindogsのメンバーとして活動していました。

一方のBonnie Bramlett(本名Bonnie Lynn O'Farrell)は10代からバック・シンガーとして活動するようになり、一時はIke & Tina Turnerのバック・ヴォーカル・グループIketteのメンバーとして活動していました(Ikette初の白人メンバー)。

二人はL.A.で出会い、結婚することになります。そして、夫婦デュオDelaney & Bonnieが結成されました。

1968年にStaxと契約し、Donald "Duck" Dunn、Steve Cropper、Booker T. JonesIsaac Hayes等も参加した1stアルバム『Home』をレコーディングします。参考までに『Home』以前の音源として、1967-68年にDelaney Bramlettが録音した音源を後にDelaney & Bonnie名義のアルバム『Genesis』としてリリースしています。

そして、1969年にデビュー・シングル「It's Been a Long Time Coming」をリリースします。同曲はR&B専門ラジオでも好意的に受け入れられますが、白人デュオであることが判明すると敬遠されてしまいます。この事態を憂慮したStax側は『Home』の発売を見合わせることになります(同作はデュオが注目された後に発売されました)。

そうした事情からStaxを離れ、Elektraと契約したデュオは2ndとなる『Accept No Substitute』(1969年)をレコーディングし、リリースにこぎ着けます。

同年にはEric ClaptonSteve Winwood擁する当時のスーパー・ロック・ユニット
Blind Faithのアメリカ・ツアーのオープニング・アクトを担当します。そこで彼らに惚れ込んだEric Claptonは、そのままDelaney & Bonnieのサポート・メンバーとなり、Blind Faithは解散することになります。

1969年にはAtcoと契約し、シングル「Coming Home/Groupie (Superstar)」をリリースします。「Coming Home」はDelaneyとClaptonの共作、「Groupie (Superstar)」はBonnieとLeon Russellの共作です。後者はご存知のようにCarpentersが1971年に「Superstar」のタイトルで大ヒットさせています。

さらに1969年末に行われたイギリス・ツアーはEric ClaptonDave Masonらも参加した大所帯ツアーとなり、この模様はDelaney & Bonnie & Friends名義のライブ・アルバム『On Tour With Eric Clapton』(1970年)として発売されました。また、このツアーを契機にEric Claptonは同ツアーの参加メンバーであったBobby WhitlockCarl RadleJim GordonDerek & The Dominosを結成することになります。

そのAtcoから『To Bonnie From Delaney』(1970年)、『Motel Shot』(1971年)という2枚のアルバムをリリースしています。これらのアルバムにはThe Allman Brothers BandDuane Allmanが参加しています。

1972年にColumbiaからリリースした『D&B Together』を最後にデュオは解消、私生活でも夫婦生活にピリオドを打ちます。

その後の二人はソロ・アーティストとして活動するようになります。2008年にDelaney Bramlettは死去しています。

どうしてもEric ClaptonDerek & The Dominos絡みで語られることが多い夫婦デュオですよね。僕もそんな影響でClaptonのアルバムの1枚として捉えていた『On Tour With Eric Clapton』(1970年)は10代の頃に聴きましたが、それ以外の彼らのアルバムに注目するようになったのは30代後半過ぎてからですね。

今日紹介する『Accept No Substitute』(1969年)は、前述のように1st『Home』が当初お蔵入りになっていたことから、Delaney & Bonnieという夫婦デュオの存在が知られるようになった最初のアルバムということになります。

商業的成功には縁遠かったものの、ミュージシャンズ・ミュージシャンとして音楽シーンに影響をもたらした彼らですが、本作で提示されたブルース、ゴスペル、カントリーといったアメリカ南部に起源を持つルーツ・ミュージックを消化した土臭いロック・サウンドは、前述のようにイギリスのミュージシャンにも多大な影響を与え、スワンプ・ロック・ブームの到来に一役買うことになります。

レコーディングはスタジオ・ライブ録音というかたちで行われ、レコーディングには、Bonnie Bramlett(vo)、Delaney Bramlett(g、vo)をはじめ、Leon Russell(g、p)、Jerry McGee(g)、Carl Radle(b)、Bobby Whitlock(org、key、vo)、Bobby Keys(sax)、Jim Price(tb、tp)、Rita Coolidge(vo)、Jim Keltner(ds、per)の8名がFriendsとして参加しています。いずれのメンバーも今日ではお馴染みの顔ぶれですね。

本作を聴いてからDerek & The Dominos『Layla & Other Assorted Love Songs』を聴くと、Eric Claptonがいかに彼らにご執心であったかが実感できると思います。

60年代後半から70年代前半のスワンプ・ブームを語る上で欠かせない1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Get Ourselves Together」
Delaney Bramlett/Bonnie Bramlett/Carl Radle作。『Home』のセッションでもレコーディングされていた楽曲です(今日ではボーナス・トラックとして『Home』に追加収録)。R&B感覚のソウルフルな夫婦ヴォーカルと土臭いカントリー・サウンドは、深いコクがあっていいですね。

「Someday」
Delaney Bramlett/Jerry Allison/Bonnie Bramlett/Doug Gilmore作。息の合った夫婦ヴォーカルのスワンプ・ロック。後半はシャッフル・ビートで盛り上げてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=B93vUYfhDRk

「Ghetto」
Delaney Bramlett/Bettye Crutcher/Homer Banks/Bonnie Bramlett作。ストリングスも入ったゴスペル調の仕上がり。Delaneyのヴォーカルがシブくてグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=IiPAFCJmTiU

「When the Battle is Over」
Mac Rebennack(Dr. John)/Jessie Hill作。メンバーが一体となったアーシー&ソウルフルなロック・サウンドの格好良さにグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=FJpAP1aV69k

「Dirty Old Man」
Delaney Bramlett/Mac Davis作。Delaneyを前面に打ち出したソウルフル・チューン。バック・コーラスのRita Coolidgeとの息もピッタリです。

「Love Me a Little Longer」
Delaney Bramlett/Bonnie Bramlett作。聴いていると、Derek & The Dominosの某曲を思い出してしまいます(笑)。Claptonがいかに彼らから影響を受けたかを実感できる1曲です。ホーン隊が大いに盛り上げてくれます。

「I Can't Take It Much Longer」
Delaney Bramlett/Joey Coopers作。開放的なブルージー感にグッとくる1曲。適度にユルい感じがいいですね。

「Do Right Woman, Do Right Man」
Aretha Franklinヴァージョンでお馴染みのDan Penn/Chips Moman作品。Arethaヴァージョンは当ブログでも紹介した『I Never Loved a Man the Way I Love You』(1967年)に収録されています。ストリングスとカントリー・フレイヴァーの効いたソウルフル・チューンに仕上がっています。

「Soldiers of the Cross」
トラッディショナルのカヴァー。ハイテンションな演奏で盛り上げてくれます。

「Gift of Love」
Delaney Bramlett/Mac Davis作。アーシーな賑わい感が心に沁みてくる演奏で締め括ってくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=MC3qvySk3IM

ご興味のある方はDelaney & Bonnieの他作品もチェックを!

『Home』(1969年)
Home

Delaney & Bonnie & Friends『On Tour With Eric Clapton』(1970年)
Delaney & Bonnie On Tour With Eric Clapton

『To Bonnie From Delaney』(1970年)
デラニーよりボニーへ

『Motel Shot』(1971年)
モーテル・ショット(SHM-CD)

『D&B Together』(1972年)
D&B Together
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2012年01月08日

Common『The Dreamer, The Believer』

コズミック&エモーショナルな最新作☆Common『The Dreamer, The Believer』
Dreamer the Believer
発表年:2011年
ez的ジャンル:シカゴHip-Hop
気分は... :Commonの快心作!

昨年末にリリースされたシカゴ出身の人気ラッパーCommonの最新作『The Dreamer, The Believer』です。

これまで当ブログで紹介してきたCommon作品は以下の6枚(発売順)。

 『Resurrection』(1994年)
 『One Day It'll All Make Sense』(1997年)
 『Like Water For Chocolate』(2000年)
 『Be』(2005年)
 『Finding Forever』(2007年)
 『Universal Mind Control』(2008年)

本当は昨年中に紹介したかった1枚ですが、購入直後で聴き込みが足りなかったので年明けの紹介になってしまいました。

『Universal Mind Control』(2008年)以来、3年ぶりの新作となる『The Dreamer, The Believer』ですが、僕の中ではかなりジャスト・フィットな1枚になっています。

自身のレーベル自身のThink Common Musicを立ち上げてのリリースとなった本作『The Dreamer, The Believer』は、初期Common作品でお馴染みのNo I.D.が全曲プロデュースしています。

アルバム全体としては、コズミック&ドリーミーな音世界とエモーショナルなラップ&ヴォーカルが印象的ですね。

特にJames Fauntleroy IIMakeba Riddickをはじめとするヴォーカル陣が目立つ楽曲が多く、歌心のある1枚に仕上がっています。

アルバムにはNasJohn Legend、女流詩人Maya Angelouがゲスト参加しています。また、Derrick Hodge(b)、James Poyser(key)、Kevin Randolph(key)等のミュージシャンがバックを務めています。

芳しくはないチャート・アクションの本作ですが、個人的には『Be』(2005年)以来の快心作という気がします。

年末の『ezが選ぶ2011年の10枚』では選外でしたが、もう少しリリースが早く、しっかり聴き込んでいたらセレクトしていたかもしれません。

Commonファンは納得の1枚なのでは。

全曲紹介しときやす。

「The Dreamer」
ジャケットのイメージそのままのコズミック・ワールド展開されるオープニング。No I.D.によるトラックに加え、James Fauntleroy IIの男性ヴォーカル、Kaye Foxによる女性コーラス、James Poyserのピアノが夢の中のコズミックな浮遊感を上手く醸し出しています。公民権運動にも深く関わった女流詩人Maya Angelouによるポエトリー・リーディングで締め括られます。
http://www.youtube.com/watch?v=db6F8DgWL4o

「Ghetto Dreams」
Nasをフィーチャーしたリード・シングル。90年代Hip-Hopファンを歓喜させる大物2人の共演らしい手応えのある1曲に仕上がっています。The Twilight Toneのスクラッチが盛り上げてくれます。The Fellows「Let's Make It Last」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=Qiudw2Rg2v4

「Blue Sky」
ポップ&コズミックなHip-Hopワールドを楽しめる1曲。ELO「Mr. Blue Sky」ネタを使ったトラックとMakeba Riddickによる女性ヴォーカルが印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=6ZkkFYfh8V0

「Sweet」
Doris & Kelley「You Don't Have To Worry」ネタのミステリアスなコーラスが印象的なトラックに乗って、ビート同様にズシリとしたCommonらしいフロウを満喫できます。
http://www.youtube.com/watch?v=fAo6s94X2sk

「Gold」
定番ドラム・ブレイクGraham Central StationとJames Fauntleroy IIのヴォーカルをフィーチャーしたHarold Melvin & The Blue Notes「To Be True」ネタのメロディが印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=5-59v9k8cWY

「Lovin' I Lost」
The Impressions「I Loved And I Lost」ネタのトラックを使ったソウルフル・チューン。
http://www.youtube.com/watch?v=z6Undk2Vwks

「Raw (How You Like It)」
Hannah Sidibeのセクシーな女性ヴォーカルがいい感じです。The Aynsley Dunbar Retaliation「Memory Pain」ネタ。「Gold」〜「Lovin' I Lost」〜本曲への流れは『Be』あたりのソウルフルなCommonがお好きな人にオススメ!
http://www.youtube.com/watch?v=KZPemwc-Qrg

「Cloth」
James Fauntleroy IIのオートー・チューン・ヴォーカルも入ったコズミック&ソウルフルな仕上がり。本作らしくて好きです。
http://www.youtube.com/watch?v=1SWSEJM0c-c

「Celebrate」
アルバムで最もキャッチー&メロディアスな仕上がり。晴れモードのCommonを満喫できます。James Fauntleroy II & Makeba Riddickによる男女ヴォーカルが曲全体を華やかな雰囲気にしてくれます。Kenny Loggins「Celebrate Me Home」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=8efjQGCfClc

「Windows」
James Fauntleroy IIの哀愁ヴォーカルも含めて歌心のある1曲に仕上がっています。クレジットを見ると、ヴォーカルでCommonの一人娘Omoyeの名もあります。
http://www.youtube.com/watch?v=SsOp4W0wtXo

「The Believer」
John Legendをフィーチャー。躍動するスケール感の大きなR&Bチューンに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=BIdUG8TUTN0

「Pops Belief」
ラストはCommon作品でお馴染みの父親Lonnie "Pops" Lynnのポエトリー・リーディングで締め括られます。

Common作品の過去記事もご参照下さい。

『Resurrection』(1994年)
レザレクション(紙ジャケット仕様)

『One Day It'll All Make Sense』(1997年)
ワン・デイ・イトゥル・オール・メイク・センス

『Like Water For Chocolate』(2000年)
Like Water For Chocolate

『Be』(2005年)
Be

『Finding Forever』(2007年)
Finding Forever

『Universal Mind Control』(2008年)
Universal Mind Control
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2012年01月07日

Caetano Veloso『Caetano Veloso』

亡命先のロンドンでレコーディングした作品☆Caetano Veloso『Caetano Veloso』
Caetano Veloso (A Little More Blue)
発表年:1971年
ez的ジャンル:亡命系MPB
気分は... :懐かしき故郷よ・・・

今回はブラジル音楽界の牽引者Caetano Velosoが1971年にリリースした『Caetano Veloso』です。Caetanoの場合、セルフタイトルのアルバムが多くてややこしいのですが、本作は『イン・ロンドン』という邦題で親しまれている作品です。最近はオープニング曲「A Little More Blue」をサブ・タイトルに付して区別できるようになっています。

これまで紹介したCaetano Veloso関連作品は以下の5枚。

 『Tropicalia:Ou Panis Et Circencis』(1968年)
 『Caetano Veloso』(1969年)
 『Qualquer Coisa』(1975年)
 『Cores, Nomes』(1982年)
 『Caetano』(1987年)

ファンはご存知の通り、Gilberto Gilと共にトロピカリズモのリーダーと目されたCaetanoは、当時のブラジル軍事政権からは危険分子と見なされます。そして、1968年末にナイトクラブで騒いでいたところを"政治的集会"という理由で逮捕され、約半年拘束されることになります。

遂には国外退去を命じられたCaetanoとGilberto Gilはイギリス、ロンドンへの亡命を余儀なくされます(1972年にブラジルへ帰国)。

そんなロンドン亡命中にレコーディングされた作品が本作『Caetano Veloso』(1971年)です。

ロンドン録音ということで全7曲中6曲が英語で歌われています(英詞曲は全てCaetanoのオリジナル)。望郷の想いや母国ブラジルの現状を憂う歌詞が綴られており、聴いているとそんなCaetanoの心情が胸に沁みてきます。

サウンド的にはロンドン録音らしいフォーキー&ロックなテイストで統一されています。その意味ではMPB作品というよりもロック/フォーク作品として聴いても違和感ないと思います。

プロデュースはLou ReiznerとRalph Mace。Phil Ryanがストリングス・アレンジを担当しています。

郷愁のブラジリアン・フォーキー&ロックをじみじみ聴き入りましょう!

全曲紹介しときやす。

「A Little More Blue」
Caetano Veloso作。やむを得ず母国を出国することになった思いを綴ったオープニング。シンプルな演奏が寂しげなCaetanoのヴォーカルを際立たせます。

「London, London」
Caetano Veloso作。タイトルの通り、亡命先のロンドンでの生活を歌ったもの。ロンドンらしく少し曇った爽やかさ(?)といったところでしょうか。Caetanoのヴォーカルは穏やかですが、寂しさが見え隠れします。前曲「A Little More Blue」とセットで聴くと、当時のCaetanoの心情がよく伝わってきますね。
https://www.youtube.com/watch?v=hVtV45TXhqc

「Maria Bethania」
Caetano Veloso作。タイトルの通り、母国に止まった妹Maria Bethaniaについて歌ったもの。妹の名前と英語のbetterを掛けています。ストリングス・アレンジも含めて惹き込まれる1曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=SvsAOZv-QYY

「If You Hold A Stone」
Caetano Veloso作。ブラジルを代表する女性芸術家Lygia Clark(1920-1988年)に捧げられた1曲。60年代後半から70年代前半らしい香りがするフォーキー・ロックに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=TYRcKaXw6EQ

「Shoot Me Dead」
Caetano Veloso作。亡命したCaetanoの状況を考えるとドキッとするタイトルですね。ブラジル人SSWらしいフォーキー・グルーヴに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=5R2T4oHyhHo

「In The Hot Sun Of A Christmas Day」
Caetano Veloso/Gilberto Gil作。共に亡命したGilberto Gilとの共作です。クリスマスをテーマに母国ブラジルの現状を皮肉っぽく歌ったものだと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=rvctrCWrjMk

「Asa Branca」
Humberto Teixeira/Luiz Gonzaga作。ラストは本作唯一のカヴァー。望郷の想いがひしひしと伝わってきます。ブラジルの民族楽器ビリンバウをまねた擬声を織り交ぜるあたりに、その想いの強さが感じられます。
http://www.youtube.com/watch?v=opHYK75J7jQ

Caetano Veloso関連作品の過去記事もご参照下さい。

『Tropicalia:Ou Panis Et Circencis』(1968年)
Ou Panis Et Circensis

『Caetano Veloso』(1969年)
Caetano Veloso (Irene)

『Qualquer Coisa』(1975年)
Qualquer Coisa

『Cores, Nomes』(1982年)
Cores & Nomes

『Caetano』(1987年)
Caetano (Jose)
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2012年01月06日

Mico Wave『Cookin' From The Inside Out !!!』

Bootsy Collinプロデュース!Prince、Rogerにも影響されたP-Funk作品☆Mico Wave『Cookin' From The Inside Out !!!』
mico wave cookin' from the inside out.jpg
発表年:1987年
ez的ジャンル:Bootsy+Prince+Roger系P-Funk
気分は... :トークボックス好きにはグッとくる・・・

今回はBootsy CollinsがプロデュースしたP-Funk作品Mico Wave『Cookin' From The Inside Out !!!』(1987年)です。

本作の主役Mico Wave(本名Michael Kerry Lane)のプロフィールについては、1961年イリノイ州シャンペーン生まれ、80年代後半に主にBootsy Collins絡みのP-Funk作品に参加し、今日紹介する『Cookin' From The Inside Out !!!』(1987年)が唯一のリーダー・アルバムということくらいしか知りません。

しかしながら、Bootsyが一部の曲をプロデュースしたTrouble Funk『Trouble Over Here Trouble Over There』(1987年)、 賛否両論が巻き起こったハイパー・ファンク作品Bootsy Collins『What's Bootsy Doin' ?』(1988年)、総帥George Clintonがプロデュースし、BootsyをはじめP-Funk軍団が大挙参加したP-FunkアルバムIncorporated Thang Band『Lifestyles Of The Roach And Famous』(1988年)、George ClintonがプロデュースしたP-FunKアルバム『George Clinton Presents Our Gang Funky』(1989年)といった80年代後半にMico Waveが参加したアルバムは、どれも当時愛聴していた作品です。その意味でMico Waveとは相性がいいのかもしれません。

どの作品も商業的成功とは程遠い作品ばかりですが、ちょうど僕がP-Funkにハマりはじめていた時期にリリースされた新作アルバムであり、それなりに愛着のある作品です。

Mico Wave『Cookin' From The Inside Out !!!』(1987年)については、まずリアルタイムでアナログLPを購入し、1994年にCD化された際に買い直しました。僕の場合、1988年リリースの新作アルバムからCDを購入するようになったので、アナログLPを購入していた一番最後の時期のアルバムになります。

どういう経緯でアナログLPを購入したのかあまり覚えていませんが、多分輸入レコード店の店内で流れているのを聴き、さらにBootsyプロデュースということを知って購入したような???

それで実際にアルバム全体を聴いた印象はPrinceRoger Troutmanからの影響を大きく受けたP-Funk作品という印象でしたね。

特にZapp/Roger大好きだった僕としては、トークボックスを使った楽曲が多い点を気に入りました。まぁ、全体としてはPrince色の方が強いかもしれませんが・・・随所にロック的なエッセンスも散りばめられています。

Mico Wave(vo、g、key、ds、prog)、Bootsy Collins(vo、b、g、key)以外にBernie Worrell(p)、Maceo Parker(sax)、Catfish Collins(g)、Mark Woerpel(g)、Ron Jennings(g)等がレコーディングに参加しています。

P-Funk好き、Booty好き、Prince好き、Zapp/Roger好きの人は結構楽しめる1枚だと思います

全曲紹介しときやす。

「Star Search」
オススメその1。Princeやミネアポリス・ファンクの影響を感じるオープニング。シングルにもなりました。Prince的な妖しいセクシー・ヴォーカルも好きです。控えめなトークボックスもいいアクセントになっています。
http://www.youtube.com/watch?v=xl2LFsrj_Wo

「Misunderstood」
オススメその2。アルバムからのリード・シングル。この曲はZapp/Roger的なトークボックス&ファンク・サウンドが印象的です。ヴォーカルはあくまでPrinceっぽいですが。ハーモニカの音色とVicky Veeのセクシー女性コーラスが長尺ファンクにありがちな単調さを回避するのに一役買っています。
http://www.youtube.com/watch?v=5msSP4mwkYQ

「First Impression」
Prince的なセクシーさで迫る1曲。ロック的エッセンスも強すぎない程度に上手く取り入れています。

「It Happens Everytime」
ややもすれば単調になりそうなエレクトリック・ファンクですが、Vicky Veeのセクシー女性コーラスに救われている気がします。

「Instant Replay」
オススメその3。僕の一番のお気に入り。本曲目当てで本作を購入した人は案外多いのでは?この年大ヒットしたRoger「I Want To Be Your Man」と同路線のトークボックス全開のスロウ・チューンです。シングルにもなりました。何とも言えない哀愁感にグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=I7uDKd5Ohk8

「Sleeping Single」
オススメその4。Zapp/Roger路線のファンク・チューン。トークボックスで押しまくりの曲ですが、一瞬生声セクシー・ヴォーカルへ切り替わるパートにグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=ofN6IDlPlfc

「Can We Love Again」
哀愁ヴォーカル&メロディが印象的なラブ・ソング。Prince好きの人はグッとくる雰囲気なのでは?

「American Dream」
アルバム中、最もロック・テイストの強い楽曲。僕の好みではありませんが・・・

「Kiss」
ラストは哀愁バラードです。美しさの中に孤独を感じさせるのはPrince殿下的ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=gm-G7UMLEpU

本作の延長線上にある作品としてBootsy Collins『What's Bootsy Doin' ? 』(1988年)あたりをチェックするのも楽しいと思います。

Bootsy Collins『What's Bootsy Doin' ?』(1988年)
What's Bootsy Doin'
posted by ez at 08:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月05日

Ron Sexsmith『Ron Sexsmith』

静かなる衝撃作!Elvis Costelloが“今後20年は聴き続けられる”と絶賛したデビュー作☆Ron Sexsmith『Ron Sexsmith』
Ron Sexsmith
発表年:1995年
ez的ジャンル:魔法のメロディ系カナディアンSSW
気分は... :やはり年初はRon Sexsmith・・・

今日は大好きなカナディアン・シンガー・ソングライターRon Sexsmithのデビュー作『Ron Sexsmith』(1995年)です。

これまで当ブログで紹介してきたRon Sexsmith作品は以下の4枚。

 『Other Songs』(1997年)
 『Whereabouts』(1999年)
 『Blue Boy』 (2001年)
 『Retriever』 (2004年)

上記4枚のうち、2005年12月にエントリーした『Other Songs』以外は全て年初にエントリーしています。僕の中で新年になるとRon Sexsmithを聴きたくなる何かがあるんでしょうね。Ronの実直そうなヴォーカルを聴きながら、今年の抱負でも思い描きたい気分なのかもしれませんね・・・ここ数年毎年同じようなことを書いているような(汗)

そんなRon Sexsmithとの出会いが今日紹介するデビュー作『Ron Sexsmith』(1995年)です。

厳密には本作以前にも自主制作盤やRon Sexsmith & The Uncool名義でのアルバム『Grand Opera Lane』(1991年)をリリースしていますが、Interscopeからリリースされた『Ron Sexsmith』が実質的なデビュー・アルバムとなります。

郵便配達などの仕事をしながらコツコツと曲をストックし、30歳過ぎてようやくデビュー作をリリースした遅咲きのSSWという背景や、ジャケを観てもわかるとおり、イケメンには程遠いさえない風貌に親近感を覚え、思わず応援してしまった音楽ファンも多かったのでは?

とにかく各方面から絶賛され、Ron Sexsmithという才能を世界中の音楽ファンに知らしめたアルバムです。かのElvis Costelloが“今後20年は聴き続けられる”と本作を絶賛し、自らのライブのオープニング・アクトに起用したのは有名な話ですね。

Ron Sexsmithのエントリーで毎回書いていますが、僕の場合はRonの実直そうなヴォーカルと魔法のメロディを聴いていると、大好きなJackson Browneと共通する何かを感じてしまいます。Ron Sexsmith自身はJackson Browneからの影響は否定していますが。

僕にとっては"静かなる衝撃作!"といったところですね。
振り返れば、本作『Ron Sexsmith』を聴いたのを契機に、Ron Sexsmith以外の男性SSWの新作はあまり聴かなくなったような気がします。"男性SSWが聴きたい時はRon Sexsmithを聴けば良い"といった心境になっているのかもしれませんね。

また、Ron Sexsmithの初期作品では90年代を代表するプロデューサー&エンジニアMitchell Froom & Tchad Blakeの貢献も忘れてはいけませんね。本作ではMitchell Froomがプロデュース、Tchad Blakeがミックスを担当していますが、2nd『Other Songs』、3rd『Whereabouts』は2人でプロデュースしています。

本作を改めて聴き直すと、Ron SexsmithとMitchell Froom & Tchad Blakeの相性の良さを実感できます。Mitchell Froom & Tchad Blakeによるローファイな音世界がRonの書く歌詞&メロディに上手くハマっています。

レコーディングにはJerry Scheff(b)、Jerry Marotta(ds、per)といった名うてのミュージシャンも参加しています。

Leonard Cohenのカヴァー「Heart With No Companion」以外はRonのオリジナルです。

"静かなる衝撃作!"をご堪能下さい。

全曲紹介しときやす。

「Secret Heart」
本作を聴いた多くの人の心をつかんだ名曲がオープニングです。さえない男が秘めた恋心を歌うラブソングというのがグッときます(笑)。何気なさの中に切なる思いが込められている感じがサイコーです。本曲を初めて聴いた時、"90年代のJackson Browneが遂に現れた"と思ったものです。
http://www.youtube.com/watch?v=S4X_l8PIobc

Rod Stewart(アルバム『When We Were the New Boys』収録)やカナディアン女性SSW Feist(アルバム『Let It Die』収録)等がカヴァーしています。

Feist「Secret Heart」
 http://www.youtube.com/watch?v=QP1nnMyaQ5o

「There's A Rhythm」
決してリズミカルな曲ではありませんが、この曲の中には確かなリズムが流れています。こういう曲はMitchell Froom & Tchad Blakeの手腕が発揮されます。
http://www.youtube.com/watch?v=IsEZPvipd2U

「Words We Never Use」
初期Ron Sexsmith作品らしいジワジワと感動が広がってくる1曲。Ronの優しい歌声&メロディを満喫できます。
http://www.youtube.com/watch?v=YuNzfhFG8iQ

「Summer Blowin' Town」
この曲はロック調サウンドです。こういったシンプルなロック・サウンドにもRonのヴォーカル&楽曲はよくマッチしますね。極寒の中で夏の訪れを待つ・・・冬ですなぁ(笑)

「Lebanon, Tennessee」
Ronの魔法のメロディとジェントル・ヴォーカルが全開の1曲。孤独を求める歌詞も含めてRon Sexsmithらしさを満喫できる1曲です。

「Speaking With The Angel」
前述のRon Sexsmith & The Uncool『Grand Opera Lane』にも収録されていた楽曲です。Ronの子供に向けて歌った曲だと思います。本ヴァージョンも『Grand Opera Lane』ヴァージョン同様にシンプルな仕上りですが、後半にチェロが入り感動が深まります。『Grand Opera Lane』ヴァージョンと聴き比べると、Mitchell Froom & Tchad Blakeの手腕による本作ならではの音響感が実感できると思います。
http://www.youtube.com/watch?v=0udEeDCHapY

「Speaking With The Angel」(From 『Grand Opera Lane』)
 http://www.youtube.com/watch?v=Pxnjwr8_tdw

「In Place Of You」
RonのSSWとしての才能とMitchell Froom & Tchad Blakeによるローファイ・サウンドが上手く噛み合った1曲に仕上がっています。

「Heart With No Companion」
カナディアンSSWの先輩Leonard Cohenのカヴァー。オリジナルは名作『Various Positions』(1984年)に収録されています。飾り気のない低音ヴォーカルでしみじみ歌うオリジナルを聴き慣れていると、Ronヴァージョンはサラッとした印象かもしれませんね。チカーノ・テイストのローファイ感はMitchell Froom & Tchad Blakeらしさが出ていますね。

Leonard Cohen「Heart With No Companion」
 http://www.youtube.com/watch?v=Mz27b4lrbeo

「Several Miles」
この曲もRon SexsmithとMitchell Froom & Tchad Blakeの相性の良さを実感できる1曲です。ロード・ムーヴィーのBGMなんかにピッタリなのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=RAe4DGcEY_o

「From A Few Streets Over」
シンプルな演奏ですが、逆に本作らしい音空間を楽しめる1曲となっています。
http://www.youtube.com/watch?v=J8VCzQPNGx4

「First Chance I Get」
本作で最もロックしている楽曲。Ronのロック魂を垣間見ることができます。

「Wastin' Time」
しみじみと心に沁み渡る1曲。ふと立ち止まり、自分を見つめ直したくなる時に聴きたくなります。聴いていると自然と涙腺が緩くなってきますね・・・
http://www.youtube.com/watch?v=kt8PpLtIctc

「Galbraith Street」
淡々とした語り口にヤラれてしまう1曲。Ronらしいメロディをシンプルな演奏で満喫できます。

「There's A Rhythm (Reprise)」
ラストは2曲目の「There's A Rhythm」のリプライズ。この曲のみU2作品尚等で知られる売れっ子プロデューサーDaniel Lanoisがプロデュースしています。共に独特の音響感を持つMitchell Froom & Tchad Blakeとの対比で聴くと面白いと思います。

Ron Sexsmithの過去記事もご参照下さい。

『Other Songs』(1997年)
Other Songs

『Whereabouts』(1999年)
Whereabouts

『Blue Boy』 (2001年)
Blue Boy

『Retriever』(2004年)
Retriever
posted by ez at 04:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする