発表年:1970年
ez的ジャンル:インド音楽+ロック
気分は... :コズミックな音世界は今聴いても刺激的!
今回はインド人シタール奏者Ananda Shankarの1stアルバム『Ananda Shankar』(1970年)です。
Ananda Shankarは1942年、インド北部のウッタル・プラデーシュ州アルモラ生まれ。
父Uday、母Amalaというを両親はインドの人気ダンサーであり、叔父Ravi Shankarは世界中にシタール演奏の魅力を広めたミュージシャンとしてあまりに有名ですね。しかしながら、Anandaは叔父のRaviからシタールを習ったことは無いそうです。意外ですねぇ。
このように書いていて初めて気づきましたが、Ananda ShankarとRavi Shankarの娘Norah Jonesは従兄妹の関係になるんですね。
1960年代後半にL.A.に渡り、Jimi HendrixらとセッションしたAnandaはReprise Recordsと契約し、1970年に今日紹介する1stアルバム『Ananda Shankar』をリリースします。
その後、『Ananda Shankar and His Music』(1975年)、『A Musical Discovery of India』(1978年)、『Sa-re-ga Machan』(1981年)、『2001』(1984年)といったアルバムをリリースしますが、1999年に死去しています。
Ananda Shankarのアルバムを聴いたことがない人の中には、"Ravi Shankarの二番煎じだろ!"というイメージをお持ちの方もいるかもしれませんね。
しかしながら、同じシタール奏者であり、親族であってもRavi ShankarとAnanda Shankarでは方向性が大きく異なります。叔父Ravi Shankarがあくまでインド音楽の伝統を守りながら、西洋ミュージシャンとの交流を深めていったのに対して、甥Ananda Shankarは積極的にインド音楽と西洋音楽の融合を推進していきました。実際に音を聴けば一発でわかりますが、ロック等に慣れ親しんでいる人であれば、Ananda Shankarの作品の方が明らかにしっくりくると思います。
我が家のマイ・コレクションにもRavi ShankarとAnanda Shankarのアルバムは並んで置いていますが、僕が聴く頻度は明らかにAnanda作品が多いですね。というか、Raviのアルバムは何度か聴けば、"これがアノRavi Shankarの音ね!"と完結してしまいます。まぁ、真剣にインド音楽に興味を持てば、それはそれで面白いのでしょうが・・・。ちなみに僕も90年代前半のワールド・ミュージック・ブームの頃にはインド人アーティストの作品を結構購入したりもしていたのですが、三日坊主で終わってしまいました(泣)
さて、今日紹介する1stアルバム『Ananda Shankar』(1970年)は、前述のAnanda Shankarというアーティストの志向が明確に実感できる1枚だと思います。今日の知名度では2nd『Ananda Shankar and His Music』(1975年)の方が高いと思いますが、Ananda Shankarに興味を持った人であれば、ぜひ押さえて欲しい1枚です。
本作の参加ミュージシャンは、Ananda Shankar(sitar)、Paul Lewinson(syn、key)、Dick Rosmini(g)、Drake Levin(g)、Jerry Scheff(b)、Mark Tulin(b)、Joe Pollard(ds)、Michael Botts(ds)、Pranish Khan(tabla)という構成です。Michael Bottsは後にアメリカン・ロック/ポップス好きにはお馴染みのグループBreadに参加しているのでご存知の方もいるのでは?
本作で大きく貢献しているのがシンセ等を担当するPaul Lewinsonです。多くの楽曲をAnandaと共作し、アレンジも担当しています。
改めて聴いてみると、シタールとムーグ・シンセを強調した音世界は当時として、かなりエッジの効いたサウンドであったような気がします。
「Jumpin' Jack Flash」、「Light My Fire」というロック・クラシックのカヴァー2曲が強烈ですが、オリジナルやトラディショナルのカヴァーも聴きどころ満載です。
サイケでコズミックでメディテーショナルでグルーヴィーなサウンドは今聴いても実に刺激的です。
全曲紹介しときやす。
「Jumpin' Jack Flash」
The Rolling Stonesの大ヒット曲をカヴァー(Mick Jagger/Keith Richards作)。シタールとムーグ・シンセが織り成すコズミック・サウンドに女性コーラスが絡む音世界は、数十年後のクラブミュージックを予見していたかのような斬新さがありますね!この1曲を聴いただけでヤラれてしまう人も多いはず!
http://www.youtube.com/watch?v=GnFci5UQKuU
「Snow Flower」
Paul Lewinson/Ananda Shankar作。オリエンタルなシタールにシンセが絡むチル・アウトな音世界に惹きこまれます。
http://www.youtube.com/watch?v=VTZ9ICy1Zkk
「Light My Fire」
ご存知Doorsの大ヒット曲「ハートに火をつけて」をカヴァー。シタールが醸し出すサイケ感にスペイシーなシンセが加わり、アシッド・ワールドへ一気にトリップしてしまいます。
http://www.youtube.com/watch?v=9K37e9i_98M
「Mamata (Affection)」
Paul Lewinson/Ananda Shankar作。シタールによるボッサ・サウンドという意外な展開です。ブラジル音楽好きの僕にとっては意表を突かれたシタール・ボッサに鼻血ブーです。
「Metamorphosis」
Paul Lewinson/Ananda Shankar作。瞑想の中でサウンドがウネリまくるメディテーション・グルーヴ。タブラが絡む中盤のドラム・ブレイクにもグッときます。
「Sagar (The Ocean)」
Paul Lewinson/Ananda Shankar作。13分超の大作です。きっとテクノ系のクラブミュージック好きは興味深く聴くことができる1曲なのでは?今から40年以上前にこんなコズミックな音楽が演奏されていたんですね!
http://www.youtube.com/watch?v=UjKZCzqMmRE
「Dance Indra」
トラディショナル作品ですが、いきなりシンセ・サウンドでトリップさせられてしまいます。インド音楽とシンセが出会った音世界は当時としてかなりブッ飛んだサウンドであったのでは?
「Raghupati」
ラストは子供達のコーラスも加わったヴォーカル・チューン。インド音楽にフォーキー・サウンドとピースフルなコーラスな加わり、Ananda Shankarならではの音楽が展開されます。
http://www.youtube.com/watch?v=fWsLZfDrChE
ご興味がある方は他のAnanda Shankar作品もチェックを!
『Ananda Shankar and His Music』(1975年)
『Missing You/A Musical Discovery of India』
※『Missing You』(1977年)と『A Musical Discovery of India』(1978年)の2in1CD
『Sa-Re-Ga Machan』(1981年)
『2001』(1984年)