Michel Legrandの実姉によるフレンチ・ボッサ作品☆
Christiane Legrand『Of Smiles And Tears』♪
発表年:1972年
ez的ジャンル:フレンチ・ボッサ系女性ヴォーカル
気分は... :大胆に乗り切るべし!
いろいろな事が重なり、プチ・パニック状態・・・
1つ1つは些細な事でもそれが重なるとそれなりにへヴィな気分になってしまいます。
冷静に大胆に乗り切らないと・・・
今回は昨年11月に惜しくも亡くなったフランス人女性ジャズ・シンガー
Christiane Legrandが1972年にリリースした
『Of Smiles And Tears』です。
Christiane Legrandは1930年フランス、エクスレバン生まれ。2歳下の実弟は後の映画音楽の巨匠
Michel Legrandです。
1950年代前半からプロのシンガーとして活動するようになったChristianeは、フランスにおけるジャズ・コーラス・グループの草分け
Les Blue Starsにオリジナル・メンバーとして参加します。Les Blue Starsには当時パリで活動していた
Blossom Dearieも参加していました。Les Blue Starsの1stアルバム
『Lullaby of Birdland』(1957年)は今でも人気の1枚ですね。
Les Blue Stars『Lullaby of Birdland』(1957年)
その後、Christianeは
Quincy Jonesが仕掛けたグループ
Les Double Sixへの参加を経て、1960年代に入るとWard Swingleらと
The Swingle Singersを結成します。その後、1973年にグループが解散するまでThe Swingle Singersのメンバーとして活動しています。
また、50年代後半から60年代にかけては映画音楽のサントラにも数多く参加し、弟
Michel Legrandが音楽を担当した
『Les Parapluies de Cherbourg(シェルブールの雨傘)』(1964年)、
『Les Demoiselles De Rochefort(ロシュフォールの恋人たち)』(1967年)をはじめ、
『Les Aventuriers(冒険者たち)』(1967年)などで彼女の歌声を聴くことができます。
The Swingle Singers解散後は音楽学校で指導者として活動していた時期などもあったようですが、断続的にレコーディングに参加したり、ステージに立っていた模様です。2011年11月永眠。
The Swingle Singersでの活動が彼女のキャリアのハイライトだと思いますが、クラシック系のレパートリーで人気を博したグループであり、僕の嗜好とは少し距離があるのかもしれません。僕が唯一保有するThe Swingle Singers作品は
Modern Jazz Quartetと共演した
『Place Vendome』(1966年)です。
The Swingle Singers and The Modern Jazz Quartet『Place Vendome』(1966年)
長いキャリアで数多くのレコーディングに参加してきた
Christiane Legrandですが、自身の名義でのアルバムは数えるほどしかリリースしていない模様です。そんなChristiane Legrand名義の代表作が今日紹介する
『Of Smiles And Tears』(1972年)です。
『Of Smiles And Tears』はフレンチ・ボッサ作品として今日人気の高い作品です。フレンチ・ボッサ作品がChristiane Legrandらしいアルバムなのかはビミョーかもしれませんが、僕のようなボッサ作品好きには嬉しい1枚に仕上がっています。
Antonio Carlos Jobim、
Carlos Lyra、
Marcos Valle、
Milton Nascimento、Baden Powell等人気ブラジル人コンポーザーの作品をフランス語で歌っています。
特に
Milton Nascimentoの1stアルバム
『Milton Nascimento(Travessia)』(1967年)から6曲もセレクトしているのが興味深いですね。
レコーディングには、当ブログでも紹介したフレンチ・ボッサの最高峰
Les Masques『Brasilian Sound』(1969年)にも参加したブラジルのジャズ・ボッサ・トリオ
Le Trio CamaraのFernando Martins(p)も参加している模様です。
サバービア・ファンに人気の
「Hlm et Cine Roman」、
「Catavento」をはじめ、爽やかで気品のあるフレンチ・ボッサを楽しめる1枚に仕上がっています。
全曲紹介しときやす。
「Rome (Children's Games)」Antonio Carlos Jobim作。オープニングはJobim作品。オリジナルは映画『The Adventurers』(1970年)のために書かれた楽曲。ここでは美しいピアノ&オーケストレーションをバックにしたエレガントなボッサ・ワルツ調の仕上がりです。
「Avec Des Je Avec Des Ja (Voce E Eu) 」Carlos Lyra/Vinicius de Moraes作の名曲カヴァー。当ブログでは
Nara Leao、
Roberto Menescal、
Paul Winter With Carlos Lyra、
Adam Dunning、
Joyceのヴァージョンを紹介済みであり、お馴染みの1曲になっています。個人的にも大好きな曲ですが、フレンチ・ボッサ・ヴァージョンで聴く『Voce E Eu』もまた新鮮です!
「Cent Mille Poissons Dans Ton Filet (O Cafona)」 Paulo Sergio Valle/
Marcos Valle作。オリジナルはテレビドラマ『O Cafona』の主題歌として書かれたものです。開放的で楽しげなフレンチ・ボッサ・チューンに仕上がっています。
「La Riziere (Cancao Do Sal) 」Milton Nascimento作品のカヴァー1曲目。名曲「Cancao Do Sal(塩の歌)」のカヴァーです。女王
Elis Reginaのヴァージョンで有名な曲ですね。当ブログでは
Bossa Rio、
Ronald Mesquitaのカヴァーも紹介済みです。フレンチ・ボッサらしいソフトリーな雰囲気のカヴァーに仕上がっています。
「Ta Maison N'est Plus La Mienne (Travessia)」Milton Nascimento作品のカヴァー2曲目。この曲も名曲ですね。当ブログでは
Elis Regina、
Flora Purimのカヴァーを紹介済みです。個人的には
Elis Reginaヴァージョンが大好きなのですが、こちらはもう少しソフトな仕上がりです。
「Hlm et Cine Roman (Shirley Sex)」Fred Falcao/Arnoldo Medeiros作。オリジナルは「O Cafona」と同じく、テレビドラマ『O Cafona』のサントラに収録されています。「Catavento」と並ぶ本作のハイライト曲なのでは?ラウンジ調の華やいだフレンチ・ボッサ・チューン。まるで映画の台詞を発しているかのようなChristianeのヴォーカルが印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=6thbocs_Mro「Maria Endormie (Maria Minha Fe)」Milton Nascimento作品のカヴァー3曲目。オーケストレーションをバックに、少し憂いのあるヴォーカルを聴かせてくれます。
「Vai (Canto De Ossanha)」Vinicius de Moraes/Baden Powell作の名曲カヴァー。この曲も当ブログではお馴染みであり、これまで
Tamba 4、
Quarteto Em Cy、
Lill Lindfors、
Elis Regina、
Toots Thielemans & Elis Regina、
Agustin Pereyra Lucena、
Rosalia De Souzaのカヴァーを紹介済みです。この曲も僕は
Elis Reginaのイメージが強いのですが、Christianeヴァージョンはフレンチらしい語感の響きが印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=AIaRNc4qDd0「Deux Cmarades (Morro Velho)」Milton Nascimento作品のカヴァー4曲目。ギターとオーケストレーション&ホーン隊による雄大なバッキングがいいですね。
「Catavento」Milton Nascimento作品のカヴァー5曲目。「Hlm et Cine Roman」と並ぶ本作のハイライト曲。フルート&ギターの軽やかな音色に導かれ、Christianeが透明感のあるスキャットを聴かせてくれます。個人的にも一番のお気に入りです。
「Tant De Gens (Outubro)」Milton Nascimento作品のカヴァー6曲目。ラストもMiltonのカヴァーで締め括ります。憂いを帯びたヴォーカルと美しくエレガントなバッキングが実にマッチしています。フランス映画のサントラあたりにぴったりな雰囲気です。個人的には「Catavento」と並ぶお気に入りです。
興味がある方は、1960年代前半の録音作品を集めた
『Elle et Ils』あたりもチェックしてみては?
『Elle et Ils』