2012年02月18日

Melba Moore『Closer』

80年代N.Y.サウンドを代表する女性R&Bシンガーの隠れた逸品☆Melba Moore『Closer』
CLOSER
発表年:1980年
ez的ジャンル:N.Y.アーバン・ダンサー
気分は... :再評価されてしかるべき!

Melba Mooreは1945年N.Y.生まれ。

父はサックス奏者のTeddy Hill、母はR&BシンガーのBonnie Davisです。

1960年代後半に大ヒットしたブロードウェイ・ミュージカル『Hair』への出演で注目され、続いて出演したミュージカル『Purlie』ではトニー賞を受賞しています。

シンガーとしてのデビュー・アルバムは1970年にMercuryリリースした『I Got Love』です。その後Mercuryから2枚のアルバムをリリースしています。

R&Bシンガーとしての彼女に追い風が吹くのはBuddahへ移籍してからです。 Van McCoyがプロデュースしたアルバム『This Is It』からタイトル曲がダンス・チャートでヒットとなり、注目を浴びます。その後もBee Geesのカヴァー「You Stepped Into My Life」(1978年)をダンス・チャートでヒットさせています。

1980年代に入ると彼女の黄金期を迎えます。1982年には「Love's Comin' At Ya」が全米R&Bチャート第5位のヒットとなり、さらに1986年には「A Little Bit More」(Freddie Jacksonとのデュエット)、「Falling」という2曲の全米R&BチャートNo.1ヒットをチャートに送り込んでいます。

さらに夫のCharles Hugginsと設立したHush Productionsは、80年代前半〜半ばに隆盛を極め、Freddie Jackson、Lillo Thomas、Meli'sa Morgan、Najee等数多くのアーティストを送り出し、N.Y.サウンドを代表する"ハッシュ・サウンド"と持てはされました。

ちょうど僕の音楽嗜好がロック中心からブラック・ミュージック中心へ移行していた時期に、"ハッシュ・サウンド"が流行っていました。ただし、僕はFreddie Jacksonがどうも好きになれなかったので、それ程ハッシュ・サウンドにハマりませんでしたが・・・。

そんなこともあってMelba Mooreも名前やヒット・シングルは知っていても、アルバム単位で聴くということはありませんでした。また、ジャケ買い好きの僕にとって、80年代のMelba Mooreの主要アルバムってジャケのセンスが悪すぎたのも縁遠くさせた要因かもしれません。

そんな感じで、Melba Mooreというアーティストにきちんと向かい合ったのも、かなり後年のことです。

さて、今日紹介する『Closer』(1980年)は、『What a Woman Needs』(1981年)、『The Other Side of the Rainbow』(1982年)、『Never Say Never』(1982年)、『Read My Lips』(1985年)、『A Lot of Love』(1986年)、『I'm in Love』(1988年)といった80年代の彼女のアルバムの中でも最も忘れられがちなアルバムかもしれません。

実際、本作『Closer』はチャート・アクションも全く不発で、ファンの評価も低調です。

しかし、僕のように後追いで何の先入観もなく聴くと、これがなかなかダンス・アルバムとして楽しめます。むしろ、ハッシュ全盛期の作品以上に、今でもスンナリ聴けるアルバムのような気がします。

プロデューサーにはBruce Hawes、Victor Carstarphenというフィリー・サウンドを支えた2人が起用されています。また、McFadden & Whiteheadがリミックスやソングライティングで関与しています。さらに、バック・コーラスにはTawatha AgeeLuther Vandross等の名前もあります。

全体としてアップのダンス・チューンが充実しています。フィリー・サウンド+N.Y.サウンドといった感じがいいですね。特にアルバム前半の構成はサイコーですね。後半のミディアム〜スロウ系が弱いのが残念ですが、前半のダンス・チューンのみで十分元が取れる1枚だと思います。

これだけの充実作なので、もっと再評価されてしかるべき1枚だと思います。

ジャケもMelba Mooreらしからぬ感じでよくありませんか(笑)

全曲紹介しときやす。

「Everything So Good About You」
オススメその1。Bruce Hawes/Victor Carstarphen/Melba Moore作。McFadden & Whiteheadがリミックスしています。ダンス・クラシック好きの人であれば、グッとくる躍動するフィリー・ダンサーに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=2tX7NN_1AKs

「You Got Me Loving You」
オススメその2。John Whitehead/Gene McFadden/Jerry Cohen作。この曲もMcFadden & Whitehead絡み。僕の一番お気に入り曲デス。週末の夜に聴くにはピッタリのアーバン・ダンサーに胸が高鳴ります。
http://www.youtube.com/watch?v=UyZmUOSFbX4

「Closer」
オススメその3。Bruce Hawes/Victor Carstarphen/Melba Moore作。アーバン・メロウなタイトル曲も今日的には受け入れやすい1曲なのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=bGR6NDwDM1w

「Something On Your Mind」
オススメその4。Bruce Hawes/Victor Carstarphen/Melba Moore作。伸びやかなMelbaのヴォーカルが見事にハマっている軽快なアーバン・ダンサー。バック・コーラスとの絡みもグッド!

「Shame」
オススメその5。Bruce Hawes/Victor Carstarphen/Melba Moore作。Melbaのヴォーカルが躍動するダンス・チューン。週末の夜遊びモードにピッタリです!
http://www.youtube.com/watch?v=2YF6fNHd24c

「Never Gonna Let You Get Away」
オススメその5。T.D. Robinson/C.B. Brice作。思わず体が動き出すフィリー・ダンサー!アドレナリンが自然にわき立ってきます。

「Rest Inside My Love」
Rodney Massey/Lawrence Hanks/Jesse Butler作。Melba Moore以前にBlack Ivoryが1979年に本曲を取り上げています。ここではしっとりとしたバラードを披露してくれます。ソウルフルというよりはミュージカル調なのがMelbaらしいかもしれませんね。
http://www.youtube.com/watch?v=07-z4xAYKec

「I Could Never Miss You More」
Neil Harrison作。1981年にLuluがカヴァーして全米Top40入りのヒットとなったので、そちらでご存知の方もいるかもしれませんね。ポップで親しみやすい仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=M72mpzd5flA

「Next To You」
P. Pugh/J. Gugliuzza作。堂々と歌い上げるミディアム・スロウです。
http://www.youtube.com/watch?v=04nn4v5g44U

「You Don't Know What You Do To Me」
Bruce Hawes/Victor Carstarphen/Melba Moore作。ラストは軽快なアップ・チューンで締め括ってくれます。

ご興味がある方は他のMelba Moore作品もチェックを!

『Melba '78』(1978年)
Melba

『What a Woman Needs』(1981年)
WHAT A WOMAN NEEDS(EXPANDED)

『The Other Side of the Rainbow』(1982年)
OTHER SIDE OF THE RAINBOW

『Never Say Never』(1982年)
NEVER SAY NEVER(PLUS BONUS)

『Read My Lips』(1985年)
READ MY LIPS (EXPANDED)

『A Lot of Love』(1986年)
A LOT OF LOVE (EXPANDED)

70年代の代表曲も含めてお手軽にゲットしたいのであれば、ベスト盤をどうぞ!

『This Is It: The Best of Melba Moore』(1995年)
This Is It
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2012年02月17日

Donald Byrd『Mustang』

Hank Mobley、Sonny Redによる三管、McCoy Tynerも参加☆Donald Byrd『Mustang』
ムスタング+2(紙)
録音年:1966年
ez的ジャンル:ファンキー系三管フロント・ジャズ
気分は... :スカイ・ハイ以外のByrdもどうぞ!

今回はジャズ・トランペット奏者Donald Byrd『Mustang』(1966年)です。

これまで当ブログで紹介したDonald Byrd作品は以下の3枚です。

 『Black Byrd』(1972年)
 『Street Lady』(1973年)
 『Places and Spaces』(1975年)

いずれもMizell兄弟が率いるSky High Production(以下スカイ・ハイ)絡みの作品ばかりでしてた。

レア・グルーヴ好きは、どうしても『Black Byrd』(1972年)、『Street Lady』(1973年)、『Stepping into Tomorrow』(1974年)、『Places and Spaces』(1975年)、『Caricatures』(1976年)というスカイ・ハイ作品のイメージが強いかもしれませんね。

確かに、一連のスカイ・ハイ作品はDonald Byrdのキャリアのハイライトの1つかもしれませんが、それ以外にも聴くべき作品は多数あると思います。そんな中から今回は『Mustang』(1966年)をセレクト。『Fuego』(1959年)、『A New Perspective』(1963年)の3枚からどれにするか迷ったのですが、最後に決め手となったのはジャケでしょうか(笑)

レコーディング・メンバーは、Donald Byrd(tp)、Hank Mobley(ts)、Sonny Red(as)、McCoy Tyner(p)、Walter Booker(b)、Freddie Waits(ds)という編成です。

やはり、Donald Byrd、Hank Mobley、Sonny Redによる三管フロントに注目ですね。あとは前年にJohn Coltraneのグループを離れたMcCoy Tynerがさすがのプレイを聴かせてくれます。

ジャズ・ロックな「Mustang」「Dixie Lee」、疾走感にグッとくる「Fly Little Bird Fly」「I'm So Excited By You」、美しい「I Got It Bad And That Ain't Good」、小粋な「On The Trail」とバラエティに富んだ構成で楽しめる1枚になっています。

セクシー・ジャケにグッときた人は、ぜひ演奏もチェックを!

全曲紹介しときやす。

「Mustang」
ヒットしたタイトル曲はSonny Red作品。キャッチーなジャズ・ロック・チューンです。ボッサ・ビートを取り入れたファンキーな仕上がりがいいですね。三管のソロもいいですが、McCoy Tynerのピアノがいい味出していると思います。
http://www.youtube.com/watch?v=WUAIvNrtCsE

「Fly Little Bird Fly」
Donald Byrd作。McCoy Tynerのピアノが牽引するスピード感溢れる演奏にグッときます。そんなTynerのピアノに続き、三管も格好良いソロをそれぞれ聴かせてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=B8kJ43O1-0U

「I Got It Bad And That Ain't Good」
Paul Francis Webster/Duke Ellington作。Duke Ellington作のジャズ・スタンダードをカヴァー。美しくも味わい深いバラード、 ByrdのトランペットやMobleyのテナーがリリカルに響きます。
http://www.youtube.com/watch?v=KbEvw6FME0k

「Dixie Lee」
Donald Byrd作。タイトル曲同様、ファンキーなジャズ・ロックです。思わずハンドクラップしたくなるキャッチーさです。三管のソロも痛快でグッド!
http://www.youtube.com/watch?v=EmB4KBzf-3U

「On The Trail」
Ferde Grofe作。「Grand Canyon Suite(グランド・キャニオン組曲)」の中の1曲で、多くにジャズ・ミュージシャンによって演奏されているスタンダード。ここでは小粋なセンスの演奏を聴かせてくれます。Byrdは控えめですが、Red、Mobleyが快調なプレイを聴かせてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=kRmzHva0Zyc

「I'm So Excited By You」
Donald Byrd作。ストレート・アヘッドなハードバップ・チューン。Byrd〜Mobley〜Redとカッチョ良いソロが受け継がれていくのがたまりません。クラブジャズ好きであれば、気に入る疾走感のある演奏だと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=XXkaF2sH8A0

CDには「Gingerbread Boy」(Jimmy Heath作)、「I'm So Excited By You」 (First Version)の2曲が追加収録されています。

この2曲は1964年のレコーディングであり、メンバーはDonald Byrd(tp)、Jimmy Heath(ts)、McCoy Tyner(p)、Walter Booker(b)、Joe Chambers(ds)という構成です。

Donald Byrd作品の過去記事もご参照下さい。

『Black Byrd』(1972年)
Black Byrd

『Street Lady』(1973年)
Street Lady

『Places and Spaces』(1975年)
Places and Spaces
posted by ez at 02:22| Comment(2) | TrackBack(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月15日

Brian Auger's Oblivion Express『A Better Land』

2ndはフォーキーな異色作!☆Brian Auger's Oblivion Express『A Better Land』
ア・ベター・ランド(紙ジャケット仕様)
発表年:1971年
ez的ジャンル:フォーキー系ジャズ・ロック
気分は... :天使か悪魔か?

最近、さまざまな二者択一で悩むことが多いです。

その中で「やらなかった」ことを後悔しないように、できる限る「やる」ことを優先するようにしています。やるだけやって失敗したら、それはそれで納得するようにします。

こんな気分の時には、霧のかかったUK作品が聴きたい気分です。

今回はBrian Auger率いるBrian Auger's Oblivion Expressの5回目の登場です。
セレクトしたのは『A Better Land』(1971年)です。

これまで当ブログで紹介したBrian Auger関連作品は以下の6枚です(発売年順)。

Julie Driscoll, Brian Auger & The Trinity
 『Open』(1967年)
 『Streetnoise』(1969年)
Brian Auger's Oblivion Express
 『Second Wind』(1972年)
 『Closer to It!』(1973年)
 『Straight Ahead』(1975年)
 『Reinforcements』(1975年)

今回紹介する『A Better Land』は、『Brian Auger's Oblivion Express』(1971年)に続く、Oblivion Express名義の2ndアルバムとなります。

本作におけるメンバーは前作に続き、Brian Auger(org、p、el-p、vo)、Jim Mullen(g、vo)、Barry Dean(b、vo)、Robbie McIntosh(ds、per)の4名です。

本作の特徴は、全曲ヴォーカル入りである点と、フォーキーな味わいの楽曲がアルバムを支配している点です。その意味でBrian Auger以上に、ギターのJim Mullenが目立っているアルバムです。

Jim Mullenの貢献は楽曲提供面でも顕著であり、アルバムに収録されたオリジナル8曲のうち、7曲のソングライティングにMullen絡みです(共作含む)。一方、Auger絡みの作品は4曲です(共作含む)。

Oblivion Express作品の中では異色作であり、地味な印象を受けるアルバムかもしれません。それでも聴き重ねるほどに味わいが増してくる芳醇な作品です。

フォーキー系フリーソウルが好きな人であれば、気に入る1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Dawn Of Another Day」
オススメその1。タイトルの通り、夜明けモードのオープニング。特に冬の寒々とした日の明け方にフィットするフォーキーな仕上がりです。徹夜明けのどんよりとした気分で聴くとグッときます(笑)。終盤なパーカッシヴな展開が僕好み。
http://www.youtube.com/watch?v=8lh6vC1oqKY

「Marai's Wedding」
トラッドをJim Mullenがアレンジ。とてもBrian Auger作品と思えない、アーシー&フォーキーな仕上がり。ある意味、1971年らしい音なのかもしれませんが。素朴ながらも爽快なヴォーカル&コーラスを聴かせてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=aeGchnAexNs

「Trouble」
ブルージーな中にも親しみやすさを感じる仕上がり。Brian Auger's Oblivion Expressってこんなにポップだっけ?と思ってしまいます(笑)

「Women Of The Seasons」
控えめな演奏でヴォーカル&メロディを重視した仕上り。そんな中で中盤のJim Mullenのギターは印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=xFmpoUq9m4c

「Fill Your Head With Laughter」
オススメその2。Brian Augerrらしいハモンド・オルガンが飛び出す格好良いロック・チューン。やはりBrian Augerrのアルバムはこういうのを聴きたいですよね。
http://www.youtube.com/watch?v=RG3N3x3MuXE

「On Thinking It Over」
オススメその3。アルバムの中でも最も美しい1曲。美しさの中に寂しさや、それを振り切ろうとするかのようなサウンドが交錯する感じが好きです。
http://www.youtube.com/watch?v=VHCCA8RwNis

「Tomorrow City」
オススメその4。アルバムで一番の人気曲かもしれません。アルバムの中で最も通常のBrian Auger's Oblivion Expressらしい演奏を聴くことができます。本作ならではの抑えたテイストになっていますが、なかなかグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=AWCjpfDwyuo

「All The Time There Is」
オススメその5。素朴な味わいの仕上がりはBrian Auger's Oblivion Express作品というよりも、この時期の男性SSW作品として聴いた方が楽しめると思います。
http://www.youtube.com/watch?v=2shlrYBKs-4

「A Better Land」
オススメその6。オルガン好きならば、幻想的なジャズ・ロック・チューンのタイトル曲が一番グッとくるのではないかと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=cWiVKjSpjAk

僕の所有するCDはオリジナルの全9曲のみの収録ですが、最近のCDでは「Marai's Wedding」のライヴ・ヴァージョンがボーナス・トラックで追加収録されているものもあるようです。

Brian Auger関連作品の過去記事もご参照下さい。

Julie Driscoll,Brian Auger & The Trinity『Open』(1967年)
Open

Julie Driscoll,Brian Auger & The Trinity『Streetnoise』(1969年)
Streetnoise

Brian Auger's Oblivion Express『Second Wind』(1972年)
Second Wind

Brian Auger's Oblivion Express『Closer to It!』(1973年)
Closer to It (Dlx)

Brian Auger's Oblivion Express『Straight Ahead』(1975年)
ストレイト・アヘッド(紙ジャケット仕様)

Brian Auger's Oblivion Express『Reinforcements』(1975年)
Reinforcements

(日本時間の)月曜日にグラミー授賞式を生放送で観ていましたが、個人的には盛り上がりに欠けるものでした。最大の要因はAdeleが大の苦手だったからだと思います。多分、楽曲とサウンドが僕的にはダメなんでしょうね。なので、結果的にパワー・ヴォーカルが浮いて聴こえてきてNGなのだと思います。

ゲスト・パフォーマンスもイマイチでしたね。唯一、Jennifer HudsonによるWhitney Houstonトリビュート「I Will Always Love You」には感動しましたが・・・。ちなみ、ここ数日の間に洋画専門チャンネルでJenniferがアカデミー助演女優賞を受賞した『Dreamgirls』を2回観たので、余計にJenniferのパフォーマンスにグッときました。
posted by ez at 04:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月13日

Soulstance『En Route』

Schemaを代表する人気ユニットのデビュー作☆Soulstance『En Route』
En Route
発表年:1999年
ez的ジャンル:Schema系クラブジャズ
気分は... :やっぱりSchemaはオシャレね!

クラブジャズ・ファンにはお馴染みのユニットSoulstanceの1stアルバム『En Route』(1999年)です。

SoulstanceGianni Lo GrecoEnzo Lo GrecoLo Greco兄弟によるクラブジャズ・ユニットであり、これまで『En Route』(1999年)、『Act On!』(2000年)、『Life Size』(2003年)、『Lead the Way』(2006年)という4枚のアルバムをSchemaからリリースしています。

Nicola ConteGerardo FrisinaS-Tone Inc.あたりと並び、Schemaでクラブジャズを牽引してきた人気ユニットです。

当ブログでSoulstanceのアルバムを紹介するのは初めてですが、以前にLo Greco兄弟がプロデューサー&メンバーとして参加したMilano Jazz Dance Combo『Milano Jazz Dance Combo』(2009年)を紹介しています。

また、当ブログで紹介したGerardo FrisinaNu BrazのアルバムにもSoulstanceが参加しています。

このユニットは生音とプログラミングを巧みに融合したスタイリッシュかつエレクトロなブラジリアン/ラテン・フレイヴァーのクラブジャズを聴かせてくれます。S-Tone Inc.あたりと同じ系統かもしれませんが、こちらの方がよりラウンジ感のある仕上がりになっています。

基本的にはGianni Lo Greco(ds、per)、Enzo Lo Greco(b、fl、g、key、prog)の二人によるレコーディングですが、一部の曲でAntonella Mazzaの女声スキャット&ベースが加わっています。

基本的には(女声スキャット曲はありますが)インスト作品なのですが、全体として非常にキャッチーなので、歌モノ作品を聴いているのと同じような満足感を得ることができる不思議なアルバムです。そのあたりは各種コンピ収録の人気曲が目白押しである点からも確認できます。

歌ナシということで不安な方は、とりあえず「Circle」「Ritual」「Check Into Your Record Bag」「Touchstone」あたりを聴いてみて下さい。

改めてSchemaのセンスの良さを再認識できる1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Theme From "Abbadesse's Street"」
各種コンピでお馴染みのオープニング。生音ベースの響きにエレクトロ・サウンドが重なり、幻想的なフルートが浮遊するクール&スタイリッシュなエレクトロ・ボッサ・チューン。聴いていると、夜明け前の大都会の景色が思い浮かんできます。
http://www.youtube.com/watch?v=K5f0GtXBNew

「En Route」
タイトル曲はエレクトロ・ブラジリアン・クラブジャズといった雰囲気ですね。ハウス好きの人が聴いても楽しめる1曲だと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=4E0bm7WIYqc

「Circle」
アルバムからのシングル曲であり、各種コンピでも引っ張りだこの人気曲。アルバムのハイライト曲かもしれませんね。女声スキャットが入った幻想的なボッサ・グルーヴです。アコースティックとエレクトロを巧みに融合させたSoulstanceのセンスの良さを満喫できる1曲です。Tom & Joyceあたりと一緒に聴きたくなりますね。
http://www.youtube.com/watch?v=JsIVGjEP6d4

「We Go Our's Own Way」
クール&ミステリアスなボッサ・ラウンジ・チューン。近未来的なカフェ・ミュージックといった感じですね。
http://www.youtube.com/watch?v=NCc2E5MMIWo

「Uma Estrela Cadente」
クールに疾走するクロスオーヴァー・チューン。何故だか続けてPat Methenyを聴きたくなるのが不思議です。
http://www.youtube.com/watch?v=jJphF2v5zZY

「Ritual」
アルバムの中でもかなりキャッチーな1曲。アフロ・サンバなリズムと幻想的なエレクトロ・サウンドに女声スキャットが絡む、スタイリッシュかつ爽快なブラジリアン・クラブジャズです。
http://www.youtube.com/watch?v=9c8veGe2Xrs

「Check Into Your Record Bag」
個人的には「Circle」、「Ritual」、「Touchstone」と並ぶお気に入り。心地好いラテン・リズムと幻想的なフルートにグッとくる1曲です。聴いていると、別世界へ誘ってくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=lBCJnrnHQFg

「Life Time」
この曲もいくつのコンピに収録されています。フルートの響きに誘われ、美しくエレガントな音世界を満喫できます。夢の世界のクラブジャズといった趣です。
http://www.youtube.com/watch?v=5yrmX7ZFrvI

「Truth, Simplicity & Love」
この曲もいくつのコンピに収録されています。近未来リゾートのチルアウトといった雰囲気がいいですね。Antonella Mazzaがベースで参加しています。
http://www.youtube.com/watch?v=KVfSiMKoegE

「Touchstone」
カフェ・ミュージックに最適!ボッサなラウンジ・チューン。60〜70年代ヨーロッパ映画サントラのスタイリッシュな雰囲気をエレクトロ・テイストで再現した感じが僕のツボです。
http://www.youtube.com/watch?v=P6AMUiN-toc

「Friend Of Long Standing」
ラストはパーカッシヴながらも落ちついた雰囲気で締め括ってくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=0dPZhjxb6-A

興味のある方はSoulstanceの他作品もチェックしてみて下さい。

『Act On!』(2000年)
Act On!

『Life Size』(2003年)
Life Size

『Lead the Way』(2006年)
Lead the Way
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2012年02月12日

Joy Denalane『Maureen』

ドイツのクイーン・オブ・ソウル、約5年ぶりの3rd☆Joy Denalane『Maureen』
Maureen
発表年:2011年
ez的ジャンル:ジャーマン・ソウル・ディーヴァ
気分は... :現行USソウル/R&B以上に雰囲気あります!

今回はドイツのクイーン・オブ・ソウルJoy Denalaneの3rdアルバム『Maureen』(2011年)です。

ベルリンを拠点に活動するアフリカ系ドイツ人のR&Bシンガー。Joy Denalaneの紹介は、2nd『Born & Raised』(2006年)に続き2回目となります。

『Born & Raised』はモロに僕好みのソウル作品であり、『ezが選ぶ2006年の10枚』でセレクトしたほどのお気に入りでした。

そんな中で約5年ぶりの新作リリースに期待が高まったものです。

リリースされたのは昨年5月だったのですが、日本への流通状況があまり良くなった分、価格も若干高めだったため、しばらく購入を控えていました。内容が僕好みであることはわかっていたため、もどかしい状況が続きましたが、価格が落ち着いた昨年後半にようやくゲットすることができました。

前作『Born & Raised』は、全曲英語で歌われ、Lupe FiascoRaekwonといった大物USアーティストがゲスト参加していました。

それに対して、本作『Maureen』は1曲の除きドイツ語で歌われ、有名USアーティストのゲスト参加もありません。しかしながら、ドイツのクイーン・オブ・ソウルの名に恥じない極上のレディ・ソウル作品に仕上がっています。

前作『Born & Raised』もそうでしたが、70年代ソウルとネオ・ソウルを上手くバランスさせたソウル・テイストが実にいい雰囲気を醸し出してくれます。

Joyの旦那様でもあるドイツ人アーティストMax Herreらのプロデュース・ユニットKAHEDI、Jill ScottJazmine SullivanVikter Duplaix等を手掛けたAnthony Bell、Jill ScottEstelle等を手掛けたSteve McKieらがプロデュースを務めています。さらに前作に続きLarry Goldがストリングス・アレンジを担当しています。

実にいい雰囲気のソウル作品だと思います。
たまにはドイツ語ソウルも良いですよ!

全曲紹介しときやす。

「Niemand (Was Wir Nicht Tun)」
アルバムのリード・シングルにもなったオープニング。Curtis Mayfield風ファルセットがソウル好きの心をくすぐるソウル・チューンです。本作を貫くソウル愛を象徴する1曲です。KAHEDIプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=rgHBV7AonEg

「Frei」
哀愁モードの仕上がり。ジャジー感覚も含めてヨーロピアン・テイストのソウル・チューンに仕上がっています。KAHEDIプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=lEai93xS79I

「Der Tag Ist Nah」
アルバムの中でも屈指の1曲。最近のUSソウル/R&B作品でもなかなか聴けない、懐かしいけど古めかしくない雰囲気のあるソウル・チューンに仕上がっています。Joy Denalaneというシンガーの魅力が存分に伝わってきます。Larry Goldによるストリングス・アレンジもグッド!Steve McKieプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=cMY4ziK6Eyg

「Nie Wieder, Nie Mehr」
J-Luvの名でも知られるドイツ人男性シンガーJulian Williamsとのデュエットによる哀愁ソウル。Curtis Mayfield作のThe Five Stairsteps「Danger! She's A Stranger」を引用したトラックに思わずニンマリしてしまいます。KAHEDIプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=s6v4gewNEbQ

「Bin Und Bleib Dein」
印象的なピアノラインと美しいメロディとエモーショナルなヴォーカルが琴線に触れる素晴らしいバラード。Alicia Keys「You Don't Know My Name」が好きな人であれば気に入ると思います。Anthony Bellプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=NuGwpcPcKNU

「Wo Wollen Wir Hin Von Hier?」
イントロとアウトロでThe Momentsの名バラード「Love On A Two Way Street」が流れてくるネオ・ソウル・チューン。Steve McKieプロデュース。70年代ソウルとネオ・ソウルを上手く融合させているのがいいですね。このあたりはSteve McKieの手腕でしょうか。
http://www.youtube.com/watch?v=Pb0anhhTzYw

「Siehst Du Mich」
サラッとした感触のネオ・ソウル・チューン。アルバムの中のブリッジ的な1曲かもしれません。Steve McKieプロデュース。

「Lass Es Liebe Sein」
密かにお気に入りのネオ・ソウルなメロウ・チューン。Diana Rossがネオ・ソウルを歌っているような雰囲気が僕好みです。Steve McKie & Dan Raafプロデュース。

「Happiness」
当ブログでも紹介したHeatwave「Happiness Togetherness」(アルバム『Central Heating』収録)のカヴァー。オリジナルと同様にワルツ調リズムのエレガント&ソフトリーな仕上りです。Paul "Gooch" Cantorプロデュース。

「Rosen」
ラテン・フレイヴァーのグルーヴィー・ソウル。じっくりと聴かせる曲が多い本作ですが、本曲はグルーヴィーに盛り上げてくれます。気分はマイアミといった感じですね。KAHEDIプロデュース。

「Du Allein」
Love Unlimited「Share A Little Love In Your Heart」をサンプリングした哀愁ソウル・バラード。Paul "Gooch" Cantorプロデュース。

「Mehr Als Wir」
ラストは重厚のある曲で締め括ってくれます。Larry Goldによるドラマティックなストリングス・アレンジが印象的です。Steve McKieプロデュース。

1st『Mamani』(2003年)、2nd『Born & Raised』(2006年)も素晴らしい作品なので、ぜひチェックを!

『Mamani』(2002年)
Mamani

『Born & Raised』(2006年)
ボーン&レイズド
posted by ez at 01:02| Comment(2) | TrackBack(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする