発表年:1980年
ez的ジャンル:N.Y.アーバン・ダンサー
気分は... :再評価されてしかるべき!
Melba Mooreは1945年N.Y.生まれ。
父はサックス奏者のTeddy Hill、母はR&BシンガーのBonnie Davisです。
1960年代後半に大ヒットしたブロードウェイ・ミュージカル『Hair』への出演で注目され、続いて出演したミュージカル『Purlie』ではトニー賞を受賞しています。
シンガーとしてのデビュー・アルバムは1970年にMercuryリリースした『I Got Love』です。その後Mercuryから2枚のアルバムをリリースしています。
R&Bシンガーとしての彼女に追い風が吹くのはBuddahへ移籍してからです。 Van McCoyがプロデュースしたアルバム『This Is It』からタイトル曲がダンス・チャートでヒットとなり、注目を浴びます。その後もBee Geesのカヴァー「You Stepped Into My Life」(1978年)をダンス・チャートでヒットさせています。
1980年代に入ると彼女の黄金期を迎えます。1982年には「Love's Comin' At Ya」が全米R&Bチャート第5位のヒットとなり、さらに1986年には「A Little Bit More」(Freddie Jacksonとのデュエット)、「Falling」という2曲の全米R&BチャートNo.1ヒットをチャートに送り込んでいます。
さらに夫のCharles Hugginsと設立したHush Productionsは、80年代前半〜半ばに隆盛を極め、Freddie Jackson、Lillo Thomas、Meli'sa Morgan、Najee等数多くのアーティストを送り出し、N.Y.サウンドを代表する"ハッシュ・サウンド"と持てはされました。
ちょうど僕の音楽嗜好がロック中心からブラック・ミュージック中心へ移行していた時期に、"ハッシュ・サウンド"が流行っていました。ただし、僕はFreddie Jacksonがどうも好きになれなかったので、それ程ハッシュ・サウンドにハマりませんでしたが・・・。
そんなこともあってMelba Mooreも名前やヒット・シングルは知っていても、アルバム単位で聴くということはありませんでした。また、ジャケ買い好きの僕にとって、80年代のMelba Mooreの主要アルバムってジャケのセンスが悪すぎたのも縁遠くさせた要因かもしれません。
そんな感じで、Melba Mooreというアーティストにきちんと向かい合ったのも、かなり後年のことです。
さて、今日紹介する『Closer』(1980年)は、『What a Woman Needs』(1981年)、『The Other Side of the Rainbow』(1982年)、『Never Say Never』(1982年)、『Read My Lips』(1985年)、『A Lot of Love』(1986年)、『I'm in Love』(1988年)といった80年代の彼女のアルバムの中でも最も忘れられがちなアルバムかもしれません。
実際、本作『Closer』はチャート・アクションも全く不発で、ファンの評価も低調です。
しかし、僕のように後追いで何の先入観もなく聴くと、これがなかなかダンス・アルバムとして楽しめます。むしろ、ハッシュ全盛期の作品以上に、今でもスンナリ聴けるアルバムのような気がします。
プロデューサーにはBruce Hawes、Victor Carstarphenというフィリー・サウンドを支えた2人が起用されています。また、McFadden & Whiteheadがリミックスやソングライティングで関与しています。さらに、バック・コーラスにはTawatha Agee、Luther Vandross等の名前もあります。
全体としてアップのダンス・チューンが充実しています。フィリー・サウンド+N.Y.サウンドといった感じがいいですね。特にアルバム前半の構成はサイコーですね。後半のミディアム〜スロウ系が弱いのが残念ですが、前半のダンス・チューンのみで十分元が取れる1枚だと思います。
これだけの充実作なので、もっと再評価されてしかるべき1枚だと思います。
ジャケもMelba Mooreらしからぬ感じでよくありませんか(笑)
全曲紹介しときやす。
「Everything So Good About You」
オススメその1。Bruce Hawes/Victor Carstarphen/Melba Moore作。McFadden & Whiteheadがリミックスしています。ダンス・クラシック好きの人であれば、グッとくる躍動するフィリー・ダンサーに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=2tX7NN_1AKs
「You Got Me Loving You」
オススメその2。John Whitehead/Gene McFadden/Jerry Cohen作。この曲もMcFadden & Whitehead絡み。僕の一番お気に入り曲デス。週末の夜に聴くにはピッタリのアーバン・ダンサーに胸が高鳴ります。
http://www.youtube.com/watch?v=UyZmUOSFbX4
「Closer」
オススメその3。Bruce Hawes/Victor Carstarphen/Melba Moore作。アーバン・メロウなタイトル曲も今日的には受け入れやすい1曲なのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=bGR6NDwDM1w
「Something On Your Mind」
オススメその4。Bruce Hawes/Victor Carstarphen/Melba Moore作。伸びやかなMelbaのヴォーカルが見事にハマっている軽快なアーバン・ダンサー。バック・コーラスとの絡みもグッド!
「Shame」
オススメその5。Bruce Hawes/Victor Carstarphen/Melba Moore作。Melbaのヴォーカルが躍動するダンス・チューン。週末の夜遊びモードにピッタリです!
http://www.youtube.com/watch?v=2YF6fNHd24c
「Never Gonna Let You Get Away」
オススメその5。T.D. Robinson/C.B. Brice作。思わず体が動き出すフィリー・ダンサー!アドレナリンが自然にわき立ってきます。
「Rest Inside My Love」
Rodney Massey/Lawrence Hanks/Jesse Butler作。Melba Moore以前にBlack Ivoryが1979年に本曲を取り上げています。ここではしっとりとしたバラードを披露してくれます。ソウルフルというよりはミュージカル調なのがMelbaらしいかもしれませんね。
http://www.youtube.com/watch?v=07-z4xAYKec
「I Could Never Miss You More」
Neil Harrison作。1981年にLuluがカヴァーして全米Top40入りのヒットとなったので、そちらでご存知の方もいるかもしれませんね。ポップで親しみやすい仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=M72mpzd5flA
「Next To You」
P. Pugh/J. Gugliuzza作。堂々と歌い上げるミディアム・スロウです。
http://www.youtube.com/watch?v=04nn4v5g44U
「You Don't Know What You Do To Me」
Bruce Hawes/Victor Carstarphen/Melba Moore作。ラストは軽快なアップ・チューンで締め括ってくれます。
ご興味がある方は他のMelba Moore作品もチェックを!
『Melba '78』(1978年)
『What a Woman Needs』(1981年)
『The Other Side of the Rainbow』(1982年)
『Never Say Never』(1982年)
『Read My Lips』(1985年)
『A Lot of Love』(1986年)
70年代の代表曲も含めてお手軽にゲットしたいのであれば、ベスト盤をどうぞ!
『This Is It: The Best of Melba Moore』(1995年)