2012年03月31日

Richard Natto『Not Just Another Pretty Face』

Toma/NattoのRichard Nattoの1stソロ☆Richard Natto『Not Just Another Pretty Face』
Not Just Another Pretty Face(ノット・ジャスト・アナザー・プリティ・フェイス)
発表年:1980年
ez的ジャンル:ハワイアンAOR系メロウ・アコースティック
気分は... :とりあえず休養

今日で3月も終わり・・・個人的にはモーレツに忙しい1ヶ月間でしたが、何とか年度末を乗り切ることができ安堵しています。しかし、その解放感からか疲れが一気に出てきました。この週末はしっかり休養に充てて新年度に備えたいと思います。

ハワイアンAOR好きには外せないアーティストとしてお馴染みのToma/Natto
今回はそのToma/NattoのメンバーRichard Nattoの1stソロ『Not Just Another Pretty Fac』(1980年)です。

休養モードに相応しい1枚としてセレクトしました(笑)

Richard Nattoは1956年ニューヨーク州ウエストポイント生まれ。

陸軍士官学校に勤務していた父親の影響で全米各地を転々としていましたが、1971年に両親の出身地であるハワイに移住します。そこで本格的に音楽活動を始め、プロのミュージシャンを目指すようになります。

1973年に日系ハワイ人のDave Tomaと出会い、意気投合した二人はDave Toma & Richard Nattoとしてデュオ活動を開始します。

そして、1978年にToma/Natto名義のアルバム『Zoomin' Away』をリリースします。その後、2人は『Hot Nights』(1985年)、『3XO/Third Time Around』(1988年)、『Revisited』(1995年)、『All My Love To You』(2002年)といったアルバムをリリースしています。

また、Richard Nattoのソロ名義で『Not Just Another Pretty Fac』(1980年)、『Richard's Street』(1990年)、『Won't Take No For An Answer』(1994年)という3枚のアルバムをリリースしています。

今日紹介する『Not Just Another Pretty Fac』(1980年)は、Richard Nattoの1stソロですが、元々はToma/Nattoの2ndアルバムとしてレコーディングを開始したものの、途中でケンカ別れしてしまい、結果としてRichardのソロ作品となったという経緯のようです。

基本的にはアコースティック・ギター1本の弾き語りアルバムですが、アコギと彼のヴォーカルによる甘く切ないソフト&メロウな音世界に魅了されます。また、ジャズ、ロックなどのエッセンスも取り入れてアルバムが単調にならないように配慮されています。

本作に関して、Jack JohnsonJoao Gilbertoをお好き方もぜひ!・・・みたい説明も見かけますが、個人的にはちょっと違うかな、という気がします。

ハワイならではの甘く切ないソフト&メロウ・アコースティックをお楽しみ下さい。

全曲紹介しときやす。

「Bish's Hideaway」
オープニングはStephen Bishopのカヴァー。オリジナルは『Bish』(1978年)に収録されています。ソフト&メロウなアコースティック・ワールドを満喫できる1曲。センチメンタル気分になりたい時にぴったりな1曲。
http://www.youtube.com/watch?v=H-ZOoEK7uZE

「Typical High School Romance」
Richard Natto作。青春時代の甘酸っぱい想い出が懐かしく思いだされるようなソフト&メロウ・アコースティック。Toma/Natto『Revisited』でも再録しています。
http://www.youtube.com/watch?v=IT4_AMvePSY

「Waited For Your Love」
Dave Toma/Richard Natto作。美しくも何処か切ないメロディ&ヴォーカルがじんわりと伝わってくるアコースティック・チューン。終盤のテンポアップに思わずグッときます。

「Passin' Thing」
Richard Natto作。ファルセットも交えてRichard Nattoのヴォーカルの魅力を楽しめる爽快な仕上がり。

「Got To Be Somebody」
Richard Natto作。ジャズ・テイストの小粋な演奏でアルバム全体の中でいいアクセントになっています。

「Whatcha Doing To My Heart」
Richard Natto作。ライトなブルージー感がいいですね。週末、ボーッと過ごしながら聴きたい気分の曲です。

「There's Only You」
Dave Toma/Richard Natto作。切なる思いを歌い上げるラブソング。

「Teenage Love Affair」
Rick Derringerのカヴァー。オリジナルは『All American Boy』(1973年)に収録されています。意外な選曲のようにも思えますが、Rick Derringerは彼のお気に入りアーティストなのだとか。アコギながらもドライブ感を重視したカヴァーに仕上がっています。

「Prisoner Of Rock 'N' Roll」
Richard Natto作。前曲の流れでこの曲もアコースティック・ロックン・ロールに仕上がっています。

「It's Crazy」
Richard Natto作。甘く切ない雰囲気にグッとくるラブソング。

「House Is Not A Home」
Hal David/Burt Bacharach作の名曲をカヴァー。オリジナルはDionne Warwickです。当ブログではLuther VandrossCheryl "Pepsii" Rileyのカヴァーも紹介済みです。お馴染みの曲ですが、メロウ・アコースティックなカヴァーもなかなか味わい深いです。

外は物凄い雨風です。激動の4月の前兆か・・・
posted by ez at 12:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月30日

Yo Yo Honey『Voodoo Soul』

スタイリッシュなダンス・ビートと重厚なストリングスが印象的なUKソウルの男女ユニット☆Yo Yo Honey『Voodoo Soul』
Voodoo Soul
発表年:1992年
ez的ジャンル:グラウンドビート系UKソウル
気分は... :何とか乗り切ったか?

何とかラストスパートで年度末を乗り切ることができそうです。
寝不足で気力・体力ともに限界ギリギリですが・・・

今回はUKソウルの男女2人組Yo Yo Honeyの唯一のアルバム『Voodoo Soul』(1992年)です。

Yo Yo Honeyは、ジンバブエ出身のソングライターMani Shoniwa(Emanuel Shoniwa)と女性シンガーAnna Rossから成る男女2人組ユニット。

今日紹介する『Voodoo Soul』(1992年)が唯一のアルバムです。

アルバムは元The ChimesMichael Pedenがプロデュースしており、60年代から今日まで数多くの作品でストリングスを手掛けてきたUKの重鎮Nick Ingmanがストリングス・アレンジを担当しています。

The Chimesは、当ブログで彼らの唯一のアルバム『The Chimes』(1990年)を紹介しましたが、Soul II Soulが火をつけたグラウンドビートのムーヴメントに乗り、「1-2-3」「I Still Haven't Found What I'm Looking For」「True Love」「Heaven」といったシングルを送り出したユニットです。

そのThe ChimesMichael Pedenプロデュースということで、本作もグラウンドビート系サウンドを楽しめるUKソウル作品に仕上がっています。さらに、Nick Ingmanが手掛けた重厚なストリングスが加わり、独特の美意識のある音世界を構築しています。

改めて聴いてみて、実に完成度の高い1枚だったなぁ・・・と再認識している次第です。
グループの個性とMichael Pedenのスタイリッシュなセンス、Nick Ingmanの壮大なオーケストレーション・ワールドが見事に三位一体となった完璧なアルバムという気もします。

これだけやって売れなかったのだから、諦めもついたのでは(笑)

「Don't Change Your Love」以外は全てMani Shoniwaのオリジナルです(Michael Pedenとの共作含む)。

全曲紹介しときやす。

「Voodoo Soul」
7分超の聴き応えのあるオープニング。ダンサブルなUKソウルなのですが、タイトルも含めて妖気漂う独特のダークな空気感があります。その重厚感で圧倒されるタイトル曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=nr2WcHDjwGU

「What's On Your Mind」
壮大なストリングスとダンサブルなビートの組み合わせが、美しくも儚い音世界を演出します。このクールネスがこの時期のUKソウルの魅力ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=Vr9wYVZ6Xps

「Groove On」
本作のハイライト。Soul II Soul、グラウンドビート好きの人は要チェックの1曲。Michael Pedenのサウンド・センスの良さを実感できるクールなグルーヴ感がたまりません。当時の僕が最も好んで聴いていたのはこんな音でした。ストリングスやフルートもいい感じです。
http://www.youtube.com/watch?v=p5Aq4dbTxto

「Yo Yo」
妖しげなフルートが誘うミッド・グルーヴ。Anita Jarrettの艶やかなのにどこか悲しげなヴォーカルを聴いていると、Caron Wheelerあたりも一緒に聴きたくなりますね。

「Inside This Love」
Mani ShoniwaとMichael Pedenの共作曲。この曲はまさにVoodoo Soulって雰囲気がしますね。UKらしくトリップ・ホップ的まダビー・エッセンスも上手く取り込んでいます。
http://www.youtube.com/watch?v=8eGjW2sQZiQ

「Get It On」
「Groove On」と並ぶ人気曲。流麗なストリングス&美しいメロディがクールなダンス・ビートにのって爽快に響き渡ります。今聴くと改めてクラシック感のある名曲だと実感できます。
http://www.youtube.com/watch?v=jFPi0EuFA8I

「So So Soft」
当時はあまり感じませんでしたが、改めて聴くとかなりグッドなUKグルーヴです。Michael PedenのセンスとNick Ingmanのセンスが上手く噛み合っている感じがサイコー!
http://www.youtube.com/watch?v=g-7f7KCPG0Q

「Don't Change Your Love」
本作唯一のカヴァーはCurtis MayfieldがThe Five Stairstepsへ提供した「Don't Change Your Love」です。意外にオリジナルの雰囲気を上手く受け継ぎつつ、少しGo-Go的なエッセンスも加えた好カヴァーです。
http://www.youtube.com/watch?v=t8bGnTGSnVk

Curtis作品らしいファンキー感を堪能できるオリジナルも格好良いですね。
The Five Stairsteps「Don't Change Your Love」
 http://www.youtube.com/watch?v=VQu1hUQnCeQ

「Don't Come To Leave」
この曲もMani ShoniwaとMichael Pedenの共作。この曲がYo Yo Honeyらしいかは???ですが、個人的にはアルバムで一番好きな曲です。UKソウルらしいスタイリッシュ感がたまりません。この曲聴いていたら、当時大好きだったAlison Limerickが聴きたくなってきました。
http://www.youtube.com/watch?v=Ffqsjt9lqSk

「Circle On You」
憂いを帯びた妖艶な哀愁UKソウル。Anita Jarrettの声質の魅力を最も実感できる曲かもしれませんね。
http://www.youtube.com/watch?v=Z-r_5YbbLEs

「Voodoo Soul (Reprise)」
ラストは「Voodoo Soul」のリプライズ。妖気を漂わせながらアルバムは幕を閉じます。

他の忘れ去られたUKグラウンドビート系作品の過去記事もご参照下さい。

The Chimes『The Chimes』(1990年)
The Chimes

Innocence『Build』(1992年)
Build
posted by ez at 12:34| Comment(2) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月29日

Willie Hutch『Fully Exposed』

人気作『The Mack』に続くMotown第2弾も絶好調!☆Willie Hutch『Fully Exposed』
FULLY EXPOSED
発表年:1973年
ez的ジャンル:グルーヴィー・ニューソウル
気分は... :いよいよ大詰め...あとは気合いだ!

いよいよ年度末も大詰めですね。

ここ数日で「何とか年度末(金曜)までに・・・」といった類の依頼が増え、だんだん収拾つかなくなってきています。

もう「風邪で熱あります」なんて言っていられません。風邪薬とドリンク剤を頻繁に摂取しながら何とか凌ぎたいのですが・・・どうなることやら。まぁ、焦ってもロクなことにならないので、目前のタスクを1つずつ着実に完了させていくのみです。

さて、今回はWillie Hutchが1973年にリリースした『Fully Exposed』(1973年)です。

Jackson 5「I'll Be There」等の作者としても知られるL.A.出身のR&Bシンガー/ソングライター/アレンジャー/プロデューサーWillie Hutchの紹介は、人気のサントラ盤『The Mack』(1973年)に続き2回目となります。

本作『Fully Exposed』は、前述のサントラ『The Mack』に続き、彼にとってのMotown第2弾アルバムとなります。

Willie自身がプロデュース&アレンジを手掛け、レコーディングにはTim Lawson(g)、Lawrence "Slim" Dickens(b)、Fred White(ds)、Joe Sample(p)、King Errisson(congas)、Sam Clayton(congas)、Alan Estes(per)、Gene Estes(per)、Tommy Myles(fl、sax)、Richard Hutch(back vo)、Julia Tillman(back vo)等が参加しています。

良くも悪くもファンキーなグルーヴ感、壮大なストリングス、ヴォーカル・スタイル等、この時期のニューソウルの美味しいところ上手くつまみ食いした作品に仕上がっています。そうした内容に批判的な意見をお持ちの方もいるかもしれませんが、結果、最高にファンキー&グルーヴィー&メロウな作品が出来上がったわけですから僕は大満足です。

『The Mack』と同様に、「I Wanna Be Where You Are」「Tell Me Why Has Our Love Turned Cold」「Sunshine Lady」といったサンプリング・ソースになっている曲も収録されています。

オープニングの「I Wanna Be Where You Are」以外はWillie Hutchのオリジナルです(共作含む)。

全9曲捨て曲ナシの充実作です。
もっと評価されてしかるべきの1枚という気がします。

全曲紹介しときやす。

「I Wanna Be Where You Are」
オープニングはMichael JacksonやMarvin Gayeヴァージョン等でお馴染みのLeon Ware作品のカヴァーです(Arthur Ross/Leon Ware作)。当ブログではMarvin Gayeヴァージョン(アルバム『I Want You』収録)や、その兄弟ヴァージョンとも呼ぶべき作者Leon Wareのヴァージョン(アルバム『Musical Massage』のボートラ収録)を紹介済みです。そう言えば、少し前にMelissa Manchesterヴァージョンも紹介ましたね。Willie Hutchヴァージョンは壮大なストリングスを配したニューソウルな仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=N3nqp5sSQjI

MJBファンならば、Willie Hutchヴァージョンは『The Breakthrough』(2005年)収録曲でJay-Zを客演に迎えた「Can't Hide From Luv」のサンプリング・ソースとしてお馴染みですね。久々に「Can't Hide From Luv」が聴きたくなりました・・・
Mary J. Blige feat. Jay-Z「Can't Hide From Luv」
 http://www.youtube.com/watch?v=8JugnKpUnps

「Can't Get Ready For Losing You」
Willieの兄弟Richard Hutchとの共作。本曲もJackson 5が1972年にレコーディングしていた曲です。軽やかなJackson 5ヴァージョンと比較すると、大人の哀愁グルーヴィー・ソウルに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=Z6T4BUIbnE0

「I Just Wanted To Make Her Happy」
切なる思いが伝わってくるWillieのヴォーカルにグッとくるメロウ・バラード。
http://www.youtube.com/watch?v=_pYkwkIoRJk

「California My Way」
よく言われるように、ヴォーカル、グルーヴィーなリズム、ストリングス・アレンジと全てがMarvin Gaye調のグルーヴィー・ソウル。二番煎じと揶揄する人もいるのかもしれませんが、この高揚感は何度聴いてもたまりません。僕は大好きです。The Main Ingredientがカヴァーしています。
http://www.youtube.com/watch?v=jWAPn5yCDIk

「Tell Me Why Has Our Love Turned Cold」
Curtis Mayfieldやブラック・ムーヴィー・サントラあたりを思わせる緊張感のあるグルーヴにグッとくる1曲。格好良さで言えば、アルバム随一かもしれませんね。
http://www.youtube.com/watch?v=p1mzMaS-rfY

そんなカッチョ良い曲なので当然サンプリング・ソースとしても人気です。Three 6 Mafia feat. Young Buck, 8 Ball & MJG「Stay Fly」、Hezekiah feat. Bilal「Looking Up」、Pretty Lights「Pop Quiz」、Myke Deanz「Money Make the World Go Round」等の元ネタになっています。

Three 6 Mafia feat. Young Buck, 8 Ball & MJG「Stay Fly」
 http://www.youtube.com/watch?v=k_dJLgr0H9s
Hezekiah feat. Bilal「Looking Up」
 http://www.youtube.com/watch?v=teGpxtMIJ_o
Pretty Lights「Pop Quiz」
 http://www.youtube.com/watch?v=kJBx2ZmCNrI
Myke Deanz「Money Make the World Go Round」
 http://www.youtube.com/watch?v=2MnyAAFsh9A

「Sunshine Lady」
ビューティフルなメロウ・ソウル。シングルにもなりました。めくるめくハープの音色がメロウ・モードを盛り上げてくれます。独特の雰囲気の高揚感がたまりません。
http://www.youtube.com/watch?v=DMkpFbd3Ef4

Three 6 Mafia feat. Lil' Flip & Mr. Bigg「Don't Cha Get Mad」等のサンプリング・ソースにもなっています。前述の「Tell Me Why Has Our Love Turned Cold」をサンプリングした「Stay Fly」も含めてThree 6 Mafiaのメンバーのお気に入り作品なのかもしれませんね。
Three 6 Mafia feat. Lil' Flip & Mr. Bigg「Don't Cha Get Mad」
 http://www.youtube.com/watch?v=E4JiAJTpe_Q

「I'll Be There」
Berry Gordy/Bob West/Hal Davis/Willie Hutch作。Jackson 5へ提供したお馴染みの全米No.1ヒットのセルフカヴァー。Jackson 5ヴァージョンはいささか聴き飽きた感がありますが、味わい深い本ヴァージョンは「I'll Be There」の別の魅力を伝えてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=ZWngkbdq0Ew

「If You Ain't Got No Money (You Can't Get No Honey)」
クラヴィネットとワウワウ・ギターが絡むグルーヴにグッとくるファンク・チューン。シングルになりました。この曲もサイコーに格好良いですね。もっと長尺で聴きたい気分です。
http://www.youtube.com/watch?v=lpXePD3189Y

「Ain't Nothing Like Togetherness」
ラストもファンキー・グルーヴで締め括ってくれます。うねるグルーブでファンキー&セクシーに高揚しましょう!
http://www.youtube.com/watch?v=jNKSDhPHhgc

本作と『The Mack』(1973年)、
『Foxy Brown』(1974年)は三点セットで揃ええおきたいですね。

『The Mack』(1973年)
The Mack

『Foxy Brown』(1974年)
フォクシー・ブラウン
posted by ez at 09:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月28日

Roman Andren『Cabra Negra』

"北欧のDeodato"の最新作はラテン・ジャズ!☆Roman Andren『Cabra Negra』
カブラ・ネグラ
発表年:2012年
ez的ジャンル:北欧系ラテン・ジャズ
気分は... :最初は戸惑いましたが・・・

今回は"北欧のDeodato"ことRoman Andrenの最新作『Cabra Negra』です。

新作は毎週日曜に紹介するパターンですが、最近個人的に要注目の新作が多いのでイレギュラーに週中での新作紹介です。

当ブログで紹介したRoman Andren作品は以下の3枚。

 『Juanita』(2007年)
 『Color Green』(2010年)
 『Lovin' You』(2011年)

北欧らしいスタイリッシュなブラジリアン・グルーヴで日本でも大人気のスウェーデン出身のキーボード奏者Roman Andrenですが、最新作『Cabra Negra』は意外にもラテン・ジャズ、しかも全曲インストです。

前作『Lovin' You』(2011年)が日本企画のカヴァー集だったので、次の作品はどのような展開になるのか興味がありましたが、インストのラテン・ジャズと聞いて最初は少し肩透かしを喰ったような思いもありました(笑)

ラテン・ジャズといっても当ブログでも紹介したSunlightsquare『Sunlightsquare Presents: Britannia Shing-A-Ling』(2011年)のようなダンサブルで激しいラテン・ジャズではなく、Roman Andrenらしいライト・グルーヴなラテン・ジャズに仕上がっています。Cal Tjaderばりのラウンジ・テイストな演奏もあります。

レコーディングにはRoman Andren(p)、Johnny Aman(b)、Joselo Orellana(per)、Martin Buono(g)、Staffan Hallgren(fl)、 Daniel Hanson(sax、fl)、 Diana Scarpati(viola)、Ingrid Thulin(violin)というメンバーが参加しています。

基本はアコースティック・ピアノ、ダブルベース、パーカッションというトリオ編成であり、そこにギター、フルート、サックス、ビオラ、バイオリンを加えています。

最初は物足りなさを感じるかもしれませんが、アルバム全体をきちんと聴けばRoman Andrenらしさを楽しめる1枚になっています。また、本作を聴くと『Lovin' You』の中に本作への伏線があったことに気付かされ、興味深かったです。

「We've Only Just Begun」「Where Is The Love」というカヴァー2曲以外はすべてRoman Andrenのオリジナルです。個人的には終盤の「Orejas De Midas」「Puerta De Felicidad」「Cuervo Y Lagarto」「En Mi Corazon, Vive un Sueno」という4曲のオリジナルに相当グッときました。

メイン・ディッシュになりづらい作品なのかもしれませんが、決して箸休め的な作品でもありません。
インスト作品という点が気にならない方であれば"買い"だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Cabra Negra」
タイトル曲がオープニング。ダブルベースとパーカッションが織り成すミステリアスなグルーヴは中南米の古代文明へと進む道中のような気分にさせてくれます。そこにピアノやギター、フルート、サックス、ストリングスが加わると一気に目前に古代王朝の全貌が姿を現したかのような高揚感に包まれる壮大なオープニングです。

「Chihuahua」
ラウンジ気分のラテン・ジャズ。寛いだ雰囲気でソファに腰掛けながら、ウィスキーでも嗜みたくなる気分にさせてくれます。Cal Tjaderあたりのヴァイヴの音色が聴こえてきても全く違和感ない感じです。個人的にはこういう音大好きです。

「I Will Be Leaving In Summer」
メロディアスなRoman Andrenのピアノを満喫できる、美しくもちょっぴり切ないムードのラテン・ジャズ。夏のサンセット・モードにピッタリです。

「Instante De Anoranza」
抑え気味ながらもパーカッシヴな疾走感がグッド!ティンバレス乱れ打ちも含めて僕の好きなラテン・グルーヴのりです。

「Zapata」
美しいストリングスと軽快なリズムに美しいピアノが絡む様は前作『Lovin' You』を思わせます。

「Plaza La Glorieta」
ラテン・リズムが強調されていますが、全体は実にソフィスティケートされた演奏にまとめられているのがいいですね。

「Orejas De Midas」
僕の一番のお気に入り。ラテン・フィリーリングとブラジリアン・フィーリングを上手く掛け合わせたような雰囲気が心地好い1曲。本作では珍しくコーラス入りなのもグッド。ストリングスも含めて"北欧のDeodato"らしい仕上りなのでは?

「Puerta De Felicidad」
徐々に音の表情が豊かになり、高揚していく感じがたまりません。終盤になって知らぬ間に感動で胸一杯になっている自分に気づきます。素晴らしい!

「Cuervo Y Lagarto」
前曲からさらに畳み掛けるような1曲。こちらもジワジワと高揚させてくれます。軽快なラテン・リズムをバックに壮大で美しいメロディをRoman Andrenのピアノが奏でます。感動映画のエンディング曲あたりにピッタリな雰囲気です。余韻に浸りたい気分にさせてくれます。

「We've Only Just Begun」
Carpentersの大ヒットでお馴染みのPaul Williams/Roger Nichols作品をカヴァー。当ブログではCurtis MayfieldThe Wooden GlassGrant Greenのカヴァーも紹介済みです。有名曲カヴァー集であった前作『Lovin' You』の延長線上にあるような軽快な演奏を満喫できます。Roman Andrenらしい素敵なグッド・カヴァーだと思います。

「En Mi Corazon, Vive un Sueno」
フルートの音色が似合う爽快かつエレガントな疾走感に魅了されます。後半の「Orejas De Midas」、「Puerta De Felicidad」、「Cuervo Y Lagarto」、そして本曲という4曲のオリジナルの出来栄えが秀逸ですね。この4曲が僕の本作に対する好感度を一気にアップさせてくれました。

「Where Is The Love」
Roberta Flack & Donny Hathawayのデュエットでお馴染みのヒット曲をカヴァー(Ralph MacDonald/William Salter作)。ラストはラウンジ・モードの「Where Is The Love」で締め括ってくれます。

Roman Andrenの過去記事もご参照下さい。

『Juanita』(2007年)
ファニータ

『Color Green』(2010年)
カラー・グリーン

『Lovin' You』(2011年)
ラヴィン・ユー
posted by ez at 07:16| Comment(2) | TrackBack(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月27日

Harpers Bizarre『The Secret Life Of Harpers Bizarre』

ソフトロック好きにはお馴染みの名盤☆Harpers Bizarre『The Secret Life Of Harpers Bizarre』
シークレット・ライフ・オブ・ハーパース・ビザール(紙ジャケット仕様)
発表年:1968年
ez的ジャンル:バーバンク系ソフトロック
気分は... :夢か現実か???

ここ数日間は風邪で朦朧としながら、一人巣篭り状態で仕事をしています。
こんなとき個人事業主は辛いですな。かなり回復してきましたが・・・

さて、こんな気分のときに似合うのはストレンジなソフトロックかもしれません。
ということでセレクトしたのは60年代バーバンク・サウンドを代表するグループHarpers Bizarreの3rdアルバム『The Secret Life Of Harpers Bizarre』です。

ソフトロック好きには名盤としてお馴染みの1枚ですね。

Harpers Bizarreは、カリフォルニア州サンタ・クルスで結成されたThe Tikisを前身とするグループです。後の名プロデューサーLenny WaronkerがThe Tikisを手掛けることになり、その際にテコ入れでメンバーの入れ替えを行い、The Beau BrummelsのドラマーJohn Petersenを迎え入れます。こうしてTed Templeman(vo、g、ds)、Dick Scoppettone(vo、g、b)、Eddie James(g)、Dick Yount(b、vo)、John Petersen(ds)という5名のラインナップでバンド名もHarpers Bizarreへと一新しました。グループ名は有名なファッション誌Harper's Bazaarももじったものです。

グループのデビュー・シングルはSimon & Garfunkelの名曲カヴァー「The 59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy)」でした。Lenny Waronkerがプロデュースし、Leon Russellがアレンジを手掛けたデビュー・シングルは全米チャート第13位となり、上々のデビューを飾りました。

その後グループは、『Feelin' Groovy』(1967年)、『Anything Goes』(1968年)、『The Secret Life of Harpers Bizarre』(1968年)、『Harpers Bizarre 4』(1969年)という4枚のアルバムを残してグループは解散します。皆さんご存知のとおり、その後Ted Templemanは売れっ子プロデューサーとして数多くの人気作品を手掛けることになります。

また、グループは1976年にリユニオン・アルバム『As Time Goes By』をリリースしています(Ted Templemanは不参加)。

どうしても「The 59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy)」のイメージが強いグループでもありますが、アルバム単位でいえば『The Secret Life of Harpers Bizarre』が一番充実したグループの姿を反映しているのでは?

『The Secret Life of Harpers Bizarre』(1968年)はグループの3rdアルバム。前作『Anything Goes』の後にEddie Jamesが抜け、本作からメンバーは4人になっています(正直、このあたり詳しくありません。間違っていたらゴメンナサイ)。

タイトルから察しがつくように、James Thurber原作、Danny Kaye主演のアメリカ映画『The Secret Life Of Walter Mitty(虹をつかむ男 ウォルター・ミティの秘密の生活)』(1947年)にインスパイアされたアルバムです。映画は夢想癖のある主人公ウォルター・ミティが「ポケタ・ポケタ・ポケタ」という音をきっかけに白昼夢に耽り、その中での活躍をユーモラスに描いたものです。

本作『The Secret Life of Harpers Bizarre』も白昼夢の世界を描いた架空のサントラといった作りになっています。そんなコンセプトは不思議なムードが漂うジャケにも反映されています。このコンセプトやジャケだけでもソフトロック名盤といった感じですよね。

当然プロデュースはLenny Waronker。さらにBob Thompson、Eddie Karam、Kirby Johnson、Nick DeCaro、Perry Botkin Jr.、Ron Elliottがアレンジを担当しています。

オリジナルは数曲で殆どがカヴァー曲にも関わらず、架空のサントラとして統一感のあるアルバムに仕上がっているが凄いですね。カヴァーが多い分、逆に多彩なアレンジャー陣のいい仕事ぶりをしっかり確認できるのが魅力かもしれません。

「The Drifter」「Me, Japanese Boy」「Mad」あたりが特にオススメです。

ストレンジ&ユーモラスな白昼夢の世界をお楽しみ下さい。

全曲紹介しときやす。

「Look to the Rainbow」
オープニングは映画『Finian's Rainbow』(1968年)のテーマ曲のカヴァー(E.Y. Harburg/Burton Lane作)。1分強の小曲ですが、夢の世界へ誘うオープニングとしてはサイコーです。

「Battle of New Orleans」
Johnny Hortonの1959年のヒット曲をカヴァー(Jimmy Driftwood作)。タイトルの通り、南北戦争の有名な戦い"ニューオーリンズの戦い"を歌ったものです。ノスタルジックな味わいの中に、本作らしいユーモラスな雰囲気を上手く織り込んでいるのが心憎いですね。
http://www.youtube.com/watch?v=I6RT0LyNP-o

「When I Was a Cowboy/Interlude」
南北戦争に続き、西部劇のカウボーイの世界へ・・・カナダのカントリー・フォーク・デュオIan & Sylviaのカヴァー。オリジナルは『Play One More』(1966年)に収録されています。銃声のSEも聴こえるなかなか小粋なカウボーイ・チューンに仕上がっています。続くインタールードでは「The 59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy)」のコーラスのコラージュが聴こえてきます。

「Sentimental Journey」
Doris Dayのヴォーカルで知られるスタンダードをカヴァー(Arthur Green/Les Brown/Ben Homer作)。ムーディーなオリジナルに対して、ちょっぴり切ない雰囲気のアレンジが絶妙です(アレンジはRon Elliott)。

「Las Mananitas」
この曲について、CDのライナーノーツやネットでメンバーのオリジナルと記載されているものがありますが、本曲はメキシコの伝統的なバースデー・ソングのカヴァーだと思います。まぁ、スパニッシュなタイトルからしてオリジナルっぽくないですよね。

「Medley: Bye, Bye, Bye/Vine Street」
Ted Templeman/Dick Scoppettone作のオリジナルとRandy Newman作「Vine Street」のメドレー。「Vine Street」はVan Dyke Parks『Song Cycle』、Nilsson『Nilsson Sings Newman』のヴァージョンでもお馴染みの曲ですね。「Vine Street」ではHarpers Bizarreらしいコーラス・ワークを満喫できます。
http://www.youtube.com/watch?v=oNXhZLNjBbI

「Me, Japanese Boy/Interlude」
Hal David/Burt Bacharach作品のカヴァー。オリジナルはBobby Goldsboro『Little Things』(1965年)に収録されています。アルバムの内ジャケにもお辞儀をしたヘンテコなサムライに扮したメンバーの写真があります(笑)そんなヘンテコ写真とは対照的に甘酸っぱい香りがたまらない絶品カヴァーに仕上がっています。オリエンタル・テイストも入っていますが滑稽になっていないのがグッド!本曲はPizzicato Fiveもカヴァーしていますね。ちなみに僕の保有する国内盤CDのライナーは小西さんです。ピチカートのヴァージョンで本曲を知った方もいるのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=_zHqtGwcQFY

「I'll Build a Stairway to Paradise」
映画『An American in Paris』でお馴染みのGershwin作品をカヴァー(Buddy DeSylva/George Gershwin/Ira Gershwin作)。スタンダード然としながらソフトロックしているのが素晴らしいですね。まさに天国への階段ですな。

「Green Apple Tree」
Dick Scoppettone/Ted Templeman作。ギターはRy Cooderっぽくも聴こえますが、どうなんでしょうか?

「Sit Down, You're Rocking the Boat/Interlude」
ブロードウェイ・ミュージカル『Guys and Dolls』のために書かれた作品(Frank Loesser作)。ミュージカル・チックな序盤から一気にユーモラス&オールド・タイミーな展開へ・・・

「I Love You, Mama」
Ron Elliott作。フォーキーながらもどこかストレンジな雰囲気が漂います。

「Funny How Love Can Be」
The Ivy Leagueのヒット曲のカヴァー(L. Bowman作)。オリジナルとはかなり異なる雰囲気の軽快なアレンジが印象的です。 晴れモードのホーン・アレンジがいいですね。

「Mad」
Dick Scoppettone/Ted Templeman作。個人的には一番のお気に入り。ソフトロック好きならば、歓喜の雄叫びを上げたくなる爽快チューンです。80年代UKポップ好きならばThe King Of Luxembourgのカヴァーでお聴きの方もいるのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=vPyAIf9Wbj8

The King of Luxembourg「Mad」
 http://www.youtube.com/watch?v=idV92A37d10

「Look to the Rainbow」
再び「Look to the Rainbow」のリプライズ。

「The Drifter/Reprise」
ラストはRoger Nichols/Paul Williams作品のカヴァー。Roger Nichols & The Small Circle Of FriendsやThe Sandpipersのヴァージョンでもお馴染みの名曲。この三者のヴァージョンはどれも素晴らしいですね。そして幻想的なRepriseと共に白昼夢は幕を閉じます。
http://www.youtube.com/watch?v=l-HFMwYxloA

Roger Nichols & The Small Circle Of Friends「The Drifter」
 http://www.youtube.com/watch?v=79KVAO8dfmI
The Sandpipers「The Drifter」
 http://www.youtube.com/watch?v=PB542KL92qs

Harpers Bizarreの他作品もチェックを!

『Feelin' Groovy』(1967年)
Feelin' Groovy ~ Deluxe Expanded Mono Edition

『Anything Goes』(1968年)
Anything Goes ~ Deluxe Expanded Mono Edition

『Harpers Bizarre 4』(1969年)
4

『As Time Goes By』(1976年)
アズ・タイム・ゴーズ・バイ(紙ジャケット仕様)
posted by ez at 22:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする