2012年03月15日

Alice Coltrane『Journey In Satchidananda』

インドへの思いが反映されたスピリチュアル・ジャズ作品。Pharoah Sandersが全面参加☆Alice Coltrane『Journey In Satchidananda』
Journey in Satchidananda
発表年:1970年
ez的ジャンル:東洋思想系スピリチュアル・ジャズ
気分は... :くたくた・・・

この1週間の激務で完全にガス欠気味です。
不覚にも昨夜のサッカー五輪予選最終戦「日本対バーレーン」戦も前半はうたた寝で見逃してしまいました。

1日おきに徹夜している状態で、このままではヤバい・・・まぁ、年度末なので仕方がありませんが。

そんな状況で聴きたくなったのがスピリチュアル・ジャズ・・・

今回はJohn Coltraneの妻としても知られる女性ジャズ・ミュージシャンAlice Coltraneの代表作『Journey In Satchidananda』(1970年)です。

Alice Coltrane(出生名:Alice McLeod)は1937年デトロイト生まれのピアノ/オルガン/ハープ奏者。

1960年代から本格的に活動を始め、1965年にMcCoy Tynerに代わり、
John Coltraneのグループに参加します。翌年にはColtraneと結婚し、Coltraneとの間に3人の子供を授かりますが、1967年にはColtraneと死別してしまいます。

『A Monastic Trio』(1968年)を皮切りに、60年代後半から70年代にかけて数多くのリーダー作をリリースしています。

インド哲学に傾倒し、サイ・ババの信者の信者としても知られていました。70年後半にはTuriyasangitanandaと改名しています。2007年に死去。

やはり、John Coltraneの妻、東洋思想といったイメージの強い人ですね。
"Coltraneの妻"という形容詞は彼女のジャズ・ミュージシャンとしての正当な評価に妨げになっていたのかもしれませんが・・・

僕もその形容詞のおかげで、ジャズを聴く以前のロック少年だった頃からAlice Coltraneの名前だけはインプットされていました。多分、Carlos Santanaとのコラボ作『Illuminations』(1974年)がきっかけだったと思います。

今日紹介する『Journey In Satchidananda』(1970年)は彼女の代表作と呼べる1枚であり、ジャケに"Featuring Pharoah Sanders"と記載されているように、Pharoah Sandersが全面参加しています。

全5曲中、4曲がスタジオ録音、1曲がライブ録音となっています。

スタジオ録音のメンバーは、Alice Coltrane(harp、p)、Pharoah Sanders(ss、per)、Cecil McBee(b)、Rashied Ali(ds)、Tulsi(tamboura)、Majid Shabazz (bells、tambourine)という編成です。

ライブ録音のメンバーは、Alice Coltrane(harp)、Pharoah Sanders(ss、per)、Charlie Haden(b)、Rashied Ali(ds)、Vishnu Wood(Oud)というメンバーです。

Pharoah Sanders大好きの僕にとっては、こういうスピリチュアル・ジャズ作品は結構ツボです。特にAliceのハープの調べが心を解き放ってくれる感じがいいですね。また、タンブーラ、ウードといった民族楽器が演奏全体のアクセントになっているのも僕好みです。さらに主役のAlice、準主役のPharoahと同じくらいに目立っているのがCecil McBeeのベースです。

全曲Alice Coltraneのオリジナルです。

日々の慌しさを忘れ、瞑想の中・・・

全曲紹介しときやす。

「Journey In Satchidananda」
オープニングは本作におけるインドへの傾倒が最も反映されたスピリチュアル・ジャズ。本作のハイライトと呼べるでしょう。Tulsiのタンブーラ、Cecil McBeeのベースがインド・モードを演出し、そこへAliceのハープの調べがミステリアスに響き渡り、さらにJohn Coltraneの遺志を継ぐPharoahのサックスがスピリチュアルな音世界へ誘ってくれます。タイトルはインド人のグルSwami Satchidananda に因んだものです。
http://www.youtube.com/watch?v=hFDiXszQeVY

「Shiva-Loka」
Pharoah Sandersのスピリチュアル・ジャズがお好きな人はグッとくる演奏なのでは、ここでもタンブーラが醸し出す空気感とCecil McBeeの太いベースの響きが、AliceのハープやPharoahのサックスを実によく引き立てています。

「Stopover Bombay」
この曲でのAliceはピアノをプレイ。そのせいか、この曲ではPharoaのサックスが目立っています。3分にも満たない短い演奏ながらも、コンパクトにスピリチュアル・ワールドを楽しめます。
http://www.youtube.com/watch?v=FUxl3DpEZ7w

「Something About John Coltrane」
Alice、Pharoah、Rashied AliとColtraneのグループの元メンバー3人が揃い、このタイトルですから何かを感じてしまいますよね。ここではAliceのピアノとCecil McBeeのベースの絡みがいいですね。特にMcBeeのベースが相当目立っています。ジャズ好きの方は一番の楽しめるのは本曲なのでは?

ここまでの4曲がスタジオ録音です。

「Isis And Osiris」
ラストはライブ録音です。前述のようにメンバーや楽器構成も変わります。特にVishnu Woodが演奏するアラブの弦楽器Oud(ウード)がアクセントになっています。そのせいかインドというよりも中東のエスニックを感じるスピリチュアル・ジャズに仕上がっています。AliceのハープとVishnu Woodのウードという異なる雰囲気の弦の響きが交差し、深遠な音世界を演出しています。PharoahのサックスとVishnu Woodのウードの組み合わせもなかなか興味深いです。スタジオ録音では控えめだったRashied Aliのドラムもいい感じ!
「Isis And Osiris」 1/2
http://www.youtube.com/watch?v=Dt0IlSPh5oE
「Isis And Osiris」 2/2
http://www.youtube.com/watch?v=L2HwbFLh5j0

ご興味のある方は他のAlice Coltrane作品もチェックを!
僕も未聴の作品が多いので地道にチェックし続けたいと思います。

『A Monastic Trio』(1968年)
ア・モナスティック・トリオ(紙ジャケット仕様)

『Huntington Ashram Monastery』(1969年)
ハンティントン・アシュラム・モナストリー(紙ジャケット仕様)

『Ptah, the El Daoud』(1970年)
Ptah, the El Daoud

『Universal Consciousness』(1972年)
Universal Consciousness

『World Galaxy』(1972年)
ワールド・ギャラクシー~至上の愛

『Lord of Lords』(1973年)
ロード・オブ・ローズ(紙ジャケット仕様)

『Illuminations 』(1974年) ※Carlos Santanaとのコラボ作
Illuminations

『The Elements』(1974年) ※Joe Hendersonとの共演
Elements

『Eternity』(1976年)
Eternity

『Radha-Krisna Nama Sankirtana』(1976年)
Radha-Krsna Nama Sankirtana

『Transcendence』(1977年)
Transcendence

『Transfiguration』(1978年)
Transfiguration
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2012年03月13日

Slapbak『Fast Food Funkateers』

Larry Blackmon、Bootsy Collins、George Clintonプロデュースのファンク作品☆Slapbak『Fast Food Funkateers』
Fast Food Funkateers
発表年:1992年
ez的ジャンル:B級ファンク/P-Funk
気分は... :隠れた才能・・・

今回はJara Harris率いるファンク・グループSlapbakのデビュー・アルバム『Fast Food Funkateers』(1992年)です。

Slapbakはマルチ・プレイヤーJara Harrisを中心にカリフォルニア州サンタアナで結成されたファンク・グループ。

これまで『Fast Food Funkateers』(1992年)、『If It Ain't Broke, Don't Funk wid It!』(1996年)、『The Return of the Fast Food Funkateers』(1999年)、『Ghetto Funkography』(2002年)、『The Key』(2006年)といったアルバムをリリースしています。

僕もすっかり忘れていたグループでしたが、先日我が家のCD棚の90年代R&Bコーナーを整理していたら今日紹介する『Fast Food Funkateers』を発掘し(笑)、多分15年ぶりくらいに聴くことになった次第です。

当時本作に興味を持った人の殆どが、"Larry BlackmonCameo)、Bootsy CollinsGeorge Clintonプロデュース"の情報に喰いついたではないかと思います。僕も当然そのパターンで購入した記憶があります。

実際、上記のビッグ・ネームがプロデュースに関与しているのは2曲のみですが、今回久々に聴いてみて、そうした部分を抜きにしても楽しめる1枚であると思いました。

本作時点のメンバーは、Jara Harris(vo、b、g、ds、key)、Janine Harris(vo)、Julie Harris(vo)、Greg "Skippy" Smith(g、vo)、Krank(key、vo)、Chainsaw(key、vo)、Joe Magnano(key、vo)、Scotty Bravo(ds)という8名。Jara Harrisが全てのヴォーカル&演奏を担当している曲もあり、実質はバンドというよりもJara Harrisのプロジェクトという色合いが強かったのではないかと推察します。

全体的にはP-Funkの影響を受けたB級ファンクといったところでしょうか。アルバム・タイトルやジャケにも、そのあたりのB級ファンク/P-Funk感がよく出ていると思います。

ただし、B級と侮るなかれ!今聴いてもパワフルなファンク作品であり、何よりJara Harrisというアーティストの才能に改めて感心してしまいました。おそらく彼はP-Funk以外に、Prince殿下から多大な影響を受けており、そうしたセクシャルな側面も本作の中で聴くことができます。

僕自身は本作以外の彼らをきちんとフォローできていませんでしたが、今回調べてみてその後もコンスタントに作品をリリースしていることに驚きました。

まぁ、本作を聴けば、Jara Harrisというアーティストの才能を埋もれたままにしておくのは勿体ないと思ってしまいます。

全曲紹介しときやす。

「Intro」
アルバムのイントロ。

「Cold-Blooded Slapback」
人を喰ったようなイントロに続き、ノリの良いファンク・チューンが展開されます。ミネアポリス・ファンクからの影響やブラック・ロックな側面も聴かれ、終盤はChainsawのラップも入ったHip-Hop的な展開飛び出します。このグループのゴッタ煮感がよく出ているのでは?

「24 Below」
シングルにもなったキャッチーなファンク・グルーヴ。P-Funkの香りも漂う濃縮なファンク・グルーヴがグッド!

「Too Cool」
女性コーラスを配した妖しげなムードがいい感じのミディアム・ファンク。

「If We Were Lovers」
セクシーなミディアム・スロウ。それまでの3曲の盛り上がりから意表を突かれた切ない美メロ・チューンにハッとさせられます。女性コーラス隊の絡みもグッド!

「Gimme That Funk」
Bootsy Collinsがヴォーカルで参加。タイトルからも想像できるようにP-Funkチューンです。特にBootsyの例の人を喰ったようなヴォーカルが入ると、気分は一気にP-Funkモードへ・・・
http://www.youtube.com/watch?v=48WIawUybP0

「True Confessions」
Larry Blackmonプロデュース。シングルにもなりました。パンチのあるファンク・チューンを期待する人も多かったかもしれませんが、意外にもセクシーなミディアム・グルーヴです。この時期のCameo作品のミディアム〜スロウ好きの人であれば気に入るのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=DyZ9OGx5RFk

「Crazy Women」
このグループらしいファンク・グルーヴを満喫できる1曲。ラップ・パートを大きくフィーチャーしているのもこの時代らしいですね。

「She Never Comes」
今回聴き直して一番気に入った曲。Jara Harrisのセクシャルな魅力を満喫できるダンサブル・チューン。ここでのJara Harrisはファルセット・ヴォーカルも含めて、まるでPrince殿下のようです。

「Love Story」
ガラッと雰囲気を変えたメロディアスな仕上り。Jara Harrisのシンガー・ソングライター的な側面も楽しめます。控えめながらもオルガン、コンガも入ったバックの演奏もグッド!
http://www.youtube.com/watch?v=zol3vtquTSI

「Kickin' The Do」
George ClintonBootsy Collinsプロデュース参加曲。Bootsyはギター&ベースも演奏し、さらにFred Wesleyがトロンボーンで参加しています。90年代仕様のP-Funkチューンを満喫できます。P-Funk好きであえば、間違いなく楽しめると思います。

「Don't Order My Heart To Go」
P-Funkの影響を受けつつも、セクシャル・モードで仕上げているのがJara Harrisらしいのかもしれませんね。
http://www.youtube.com/watch?v=Nx6fhkWqAJU

「Singles」
ハモンドを音色が印象的な本曲はSly & the Familyあたりの影響も感じます。

「Otro」
アルバムのアウトロはミネアポリス・ファンク調で締め括ってくれます。

興味がある方はSlapbakの他作品もチェックを!

『The Return of the Fast Food Funkateers』(1999年)
Return of the Fast Food Funkateers

『Ghetto Funkography』(2002年)
Ghetto Funkography

『The Key』(2006年)
Key
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2012年03月11日

Robert Glasper Experiment『Black Radio』

遂にExperimentの全貌が明らかに!Erykah Badu、Musiq Soulchild、Chrisette Michele、Lupe Fiasco等超豪華ゲスト陣も魅力!☆Robert Glasper Experiment『Black Radio』
ブラック・レディオ
発表年:2012年
ez的ジャンル:Hip-Hop/R&B+ジャズ系先鋭ジャズ・ユニット
気分は... :あの日を忘れない!

今日は3月11日。あの日から1年になります。

都内で忙しなく生活していると、日常が戻っているかのような錯覚に陥ってしまいます。しかし、未だ原発事故は(真の意味での)収束せず、被災地の復興も歩みはじめたばかりなんですよね。

改めてあの日やあの日以降のことを思い出し、いろいろと自問自答しないといけないと思う次第です。

いろいろ思うところはある一方で、軽々しい発言は控えるべきだとも思いますので、この程度に止めておきます。

今回は先鋭ジャズ・ピアニストRobert GlasperRobert Glasper Experiment名義で発表した最新作『Black Radio』です。

Robert Glasperは1978年テキサス州ヒューストン生まれのジャズ・ピアニスト/プロデューサー。

ジャズ・ピアノの学ぶ傍らでHip-Hop/R&B等も耳にする若者であり、大学ではネオ・ソウル・シンガーBilalとクラスメイトとなり、親交を深めていきます。さらにBilalを介してCommonErykah BaduQ-TipJ DillaMos Def?uestloveKanye West、Jay-Z等との人脈を築いていきます。

このような経緯から、正統派ジャズ・ピアニストであると同時に、Hip-Hop/R&Bアーティストとの交流を通じたクロスオーヴァーな側面も持つ先鋭的アーティストがRobert Glasperです。

これまで2003年のデビュー作『Mood』を皮切りに、『Canvas』(2005年)、『In My Element』(2007年)、『Double-Booked』(2009年)といったアルバムをリリースしています。

例えば、『In My Element』(2007年)では、故J Dillaへのトリビュート「J Dillalude」Herbie Hancock「Maiden Voyage」Radiohead「Everything in Its Right Place」の生演奏マッシュ・アップなど先鋭的ジャズ・ピアニストとしてのセンスを発揮しています。

Robert Glasper「J Dillalude」(From 『In My Element』)
http://www.youtube.com/watch?v=MXqlEnOMUJI
Robert Glasper「Medley: Maiden Voyage/Everything in Its Right Place」(From 『In My Element』)
http://www.youtube.com/watch?v=TPre5d3ME4E

また、当ブログで紹介した作品でいえば、Q-Tip『The Renaissance』(2008年)、Gretchen Parlato『The Lost And Found』(2011年)といった作品に参加しています。特に後者では共同プロデュースも務めています。

さて、本作『Black Radio』Robert Glasper Experiment名義でのリリースとなっています。

Robert Glasper Experimentは、Glasperが自身のピアノ・トリオとは別に結成したユニットであり、主にクロスーヴァー路線のユニットと位置づけられると思います。メンバーはRobert Glasper(p)、Casey Benjamin(sax、fl、vo)、Chris Dave(ds)、Derrick Hodge(el-b)の4名。

Robert Glasper Experimen名義の初リリース作品は、Blue Noteの企画アルバム『Blue Note Street』(2007年)に収録されたWayne Shorter「Oriental Folk Song」のカヴァー「Oriental Folk Song Rework (Me N U)」となります。

Glasperの前作『Double-Booked』(2009年)では、全12曲中、前半6曲がRobert Glasper Trio名義でオーソドックスなピアノ・トリオでの演奏、後半6曲でRobert Glasper ExperimentがHip-Hop/R&B等のエッセンスを採り入れたクロスオーヴァーな演奏を行っています。

そして、Robert Glasper Experiment名義での初フル・アルバムが本作『Black Radio』(2012年)です。

Experiment名義の初フル・アルバムというだけでも期待値が相当高まりますが、さらに超豪華ゲスト陣が本作への興味を倍増させてくれます。

主なゲスト陣を挙げると、Shafiq HusaynSa-Ra Creative Partners)、Erykah BaduLupe FiascoBilalLalah HathawayLedisiMusiq SoulchildChrisette MicheleMeshell NdegeocelloStokley WilliamsMint Condition)、Mos Def等です。凄すぎるメンツですよね。

全13曲(国内盤ボーナス・トラック1曲を含む)のうち、7曲がオリジナル、6曲がカヴァーです。カヴァーの6曲の選曲センスも実に興味深いです。

全体として、Hip-Hop/R&Bなどジャンルを超えたクロスオーヴァー作品ですが、根底ではしっかりジャズしているのが印象的です。他のクロスオーヴァー系作品にはないサムシングがありますね。

さらに本作ではJahi Sundance(ジャズ・サックス奏者Oliver Lakeの息子)のターンテーブルやメンバーであるCasey Benjaminのヴォコーダーも大活躍しています。

プロデュースはRobert Glasper本人が務めています。

内容、参加メンバー、選曲、Glasper等メンバーのピープル・ツリー、様々な意味で僕にとって興味の尽きない1枚です。

記事書いているだけで興奮してきてしまいました・・・
個人的には大傑作だと勝手に思っています。

全曲紹介しときやす。

「Lift Off/Mic Check」
Shafiq Husayn(Sa-Ra Creative Partners)をフィーチャー。先鋭的なプロデューサー/クリエイター・ユニットSa-Ra Creative PartnersのShafiqとGlasperの顔合わせは個人的に興味があります。アコースティックな演奏にJahi SundanceのターンテーブルやCasey Benjaminのヴォコーダーが散りばめられ、ミステリアスなコズミック・ワールドが展開されます。

「Afro Blue」
Erykah Baduをフィーチャーし、Mongo Santamaria作の人気アフロ・キューバン・クラシックをカヴァー。John ColtraneやDee Dee Bridgewater等のカヴァーでもお馴染みの名曲ですが、ここではErykah様の持ち味を十二分に活かした浮遊感のあるネオ・ソウル調のカヴァーを聴かせてくれます。Hip-HopモードのChris Daveのリズムもグッド!逸品カヴァーです。
http://www.youtube.com/watch?v=3-0JZlrk4xA

「Cherish The Day」
Lalah HathawayをフィーチャーしたSadeのカヴァー。オリジナルは当ブログでも紹介した『Love Deluxe』に収録されています。深い霧の中をさ迷うようなオリジナルの雰囲気を受け継いでいますが、Lalahのヴォーカルも含めてクロスオーヴァーなエッセンスをうっすらと加えているあたりが心憎いですな。Casey Benjaminのサックスも盛り上げてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=5MCyBHZkwJY

「Always Shine」
BilalとLupe Fiascoをフィーチャー。Glasperの盟友とも呼べるBilalは『Mood』、『Canvas』、『Double-Booked』にも参加しており、Glasper作品の常連といったところでしょうか。さらHip-Hop界の救世主Lupeも加わり、ジャズ、ネオソウル、Hip-Hopが三位一体となったファンタスティックな1曲に仕上がっています。このバランス感覚は素晴らしいですね。ジャジーなピアノHip-Hop好きの人は要チェックだと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=qOj_90wYK8Y

「Gonna Be Alright (F.T.B.)」
大好きな女性ネオ・ソウル・シンガーLedisiをフィーチャー。Ledisi本人の作品に劣らない素晴らしいジャジー・ソウルに仕上がっています。Erykah Baduもそうですが、ネオソウル系女性シンガーとの相性は抜群ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=8lcKsgrOvzQ

「Move Love」
KINGをフィーチャー・・・と書いても知らない人が多いでしょうね。KINGは双子姉妹Paris Strother、Amber Strother、Anita Biasによる女性ソウル・グループ。昨年デビューEP『The Story』をリリースした有望株です。彼女たちの透明感のあるコーラスを活かした浮遊感のあるジャジー&メロウ・グルーヴ。大物ゲスト参加の楽曲に混じり、大健闘しています。
http://www.youtube.com/watch?v=-PPxEWkLiAs

KINGは要注目グループだと思います。『The Story』もチェックを!特に「Hey」はGilles Petersonもイチオシの注目曲です。
KING「The Story」(From 『The Story』)
 http://www.youtube.com/watch?v=7qYSIw_x8Mk
KING「Supernatural」(From 『The Story』)
 http://www.youtube.com/watch?v=ttT78mf0gKY
KING「Hey」(From 『The Story』)
 http://www.youtube.com/watch?v=Itl3BgEUNW0

「Ah Yeah」
Musiq SoulchildChrisette Micheleという超大物2人をフィーチャー。個人的に大好きな男女R&Bシンガーなので期待値大の1曲です。2人の作品では聴けない、しっとり&ミステリアスなジャジー・チューンに仕上がっています。2人の新しい側面を聴けた気分がします。本曲のみBryan-Michael Coxが共同プロデュースしています。
http://www.youtube.com/watch?v=oN0tFgLcp4g

「The Consequences Of Jealousy」
Meshell Ndegeocelloをフィーチャー。クール&ミステリアスな哀愁ジャジー・チューンです。「Lift Off/Mic Check」同様、Jahi SundanceのターンテーブルやCasey Benjaminのヴォコーダーがいいアクセントになっています。
http://www.youtube.com/watch?v=8dA7ODYmtYU

「Why Do We Try」
Stokley Williams(Mint Condition)をフィーチャー。Chris DaveがMint Conditionとの関わりが深く、Experimentの日本公演にもStokley Williamsが同行していた模様です。ATCQのAli Shaheed MuhammadをフィーチャーしたMint Conditionのオリジナルは『E-Life』(2008年)に収録されています。アルバムの中でも最もリズミック&ダンサブルな仕上がりです。ある意味、アルバムで最もキャッチーかもしれません。クロスオーヴァー好きの人は要チェックだと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=GekMtAxxYjI

「Black Radio」
タイトル曲はMos Defをフィーチャー。Mos Defのセッションでメンバーが意気投合したのがExperiment結成のきっかけだったようであり、Experimentとは深い縁のMos Defです。Mos Defの硬派なHip-HopワールドとExperimentのジャズ・ワールドががっぷり組んでお互い一歩も引かない感じがいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=IcIuGl1_3w8

「Letter To Hermione」
Bilalをフィーチャーし、David Bowieをカヴァーしています。オリジナルは『Space Oddity』に収録されています。フォーキーな味わいのオリジナルの印象が強いので、エレガントながらも何処か寂しげな哀愁ジャジー・チューンに仕上がったカヴァーは新鮮に聴こえます。
http://www.youtube.com/watch?v=Yc0TmmmMlZs

「Smells Like Teen Spirit」
ラストはNirvanaの名曲をカヴァー。意外な選曲に思われるかもしれませんが、ライブ・レパートリーとしても演奏されている楽曲です。アコースティックな演奏にCasey Benjaminのヴォコーダーが響き渡るExperimentらしいカヴァーに仕上がっています。Jahi Sundanceのターンテーブルも効果的です。終盤にはLalah Hathawayのヴォーカルも加わります。
http://www.youtube.com/watch?v=onXoreYFMhU

「Twice」
僕が持っているのは国内盤ですが、国内盤にはボーナス・トラックとしてLittle Dragonのカヴァー「Twice」が収録されています。日系スウェーデン人の女性シンガーYukimi Naganoが率いるLittle Dragonについては、以前にStateless『Art Of No State』の記事で紹介したことがあります。本曲「Twice」はデビュー・アルバム『Little Dragon』(2007年)に収録されています。この曲もライブ・レパートリーのようです。Little Dragonをカヴァーするというだけで只者ではありませんよね。そのセンスに脱帽です。

興味のある方はRobert Glasperの他作品もチェックを!

『Mood』(2003年)
MOOD

『Canvas』(2005年)
Canvas

『In My Element』(2007年)
In My Element

『Double-Booked』(2009年)
Double Booked
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2012年03月10日

Jo Mama『J Is For Jump』

シブく洗練された2nd☆Jo Mama『J Is For Jump』
ジャンプ
発表年:1971年
ez的ジャンル:アーシー&ソウルフル&ブルージー&ジャジー・ロック
気分は... :ユル〜く構えましょ!

70年代フォーク/ロック好きから高い支持を得ているJo Mamaの2ndアルバム『J Is for Jump』(1971年)です。

Jo Mamaの紹介は1st『Jo Mama』(1970年)に続き2回目となります。

Jo Mamaは、Carole KingDanny KortchmarCharles Larkeyの3人で組んでいたグループThe City解散後に、Danny KortchmarCharles Larkeyの二人がが女性ヴォーカリストAbigail Hanessらのメンバーを集めて結成したグループです。

今日紹介する2nd『J Is for Jump』も、1st同様にAbigail Haness(vo)、Danny Kootch(g、vo、congas)、Charles Larkey(b)、Ralph Shuckett(key、vo)Joel Bishop O'Brian(ds)というラインナップです。

結局グループは、『Jo Mama』『J Is for Jump』という2枚のアルバムを発表して解散してしまいますが、1stと2ndのどちらが好きかは意見が分かれるかもしれませんね。キャッチーさをとれば1stという気がするし、洗練をとれば2ndという気がします。

僕の好みは1stなのですが・・・人気曲「Love'll Get You High」や、個人的な大名曲「Sailing」、モロに僕好みのラテン・フレイヴァー「Venga Venga」のような楽曲が収録されているのが理由です。

しかしながら、今日紹介する2nd『J Is for Jump』も大好きな作品であることには変わりありません。こちらの方がシブい通好みの作品という雰囲気ですね。

アーシー/ソウルフル/ブルージー/ジャジーが程よくブレンドされ、ユル〜くまとめられている感じがいいですね。

前作『Jo Mama』ではPeter Asherがプロデュースしていましたが、本作ではTom Dowd/Albhy Galutenがプロデュースしています。

また、ゲストとしてCarole Kingもコーラスで参加しています。

より洗練されたJo Mamaを満喫しましょう。

つくづくアルバム2枚だけで解散してしまったのが惜しいグループだと思います。

全曲紹介しときやす。

「Keep On Truckin'」
このオープニングが僕の一番のお気に入り(Danny Kortchmar作)。ソウル・フィーリング溢れるグルーヴィー・チューン。フリーソウル系の音が好きな人であれば気に入るであろう1曲。Abigail Hanessの躍動するヴォーカルやDanny Kootchのギターも絶好調です。このタイトルを見ると、Eddie Kendricksの大ヒット・シングルを思い出す方もいるかもしれませんが、同名異曲です。

「Back On The Street Again」
Danny Kortchmar作。James Taylorヴァージョン(アルバム『One Man Dog』収録)でもお馴染みの1曲ですね。アーシーなユルさに魅了されます。コクのあるオリジナルを聴いてしまうと、JTヴァージョンには何処か物足りなさを感じてしまいます。口笛もいいアクセントになっています。

「Smack Water Jack」
Carole Kingのモンスター・ヒット・アルバム『Tapestry』(1971年)の収録曲としてお馴染みの曲をカヴァー(Gerry Goffin/Carole King作品)。Carole King本人もコーラスで参加しています。当ブログではQuincy Jonesのカヴァーも紹介済みです。Jo Mamaのメンバー自体が『Tapestry』レコーディング・メンバーであり、ヴォーカルがCarole Kingか、Abigail Hanessかといった違いですかね。逆にAbigail Hanessのパンチの効いたヴォーカルの特徴がよくわかると思います。

「If I Had A Billion Dollars」
Danny Kortchmar作。洗練されたブルージーな味わいが魅力です。一人酒でも飲みながら、宝くじでも当たった自分を妄想しながら聴くとよいのでは(笑)

「My Long Time」
Danny Kortchmar作。Abigail Hanessのヴォーカルにマッチしたアーシー&ファンキー・チューン。演奏全体に余裕があって、その分小粋なセンスが効いている感じがいいですね。

「When The Lights Are Way Down Low」
Mac Rabenack(Dr. John)作。軽やかにニューオリンズR&Bをこなしてしまうあたりに、このバンドの達者ぶりが現れているのでは?ファンキー・ホーンも盛り上げてくれます。

「Love Is Blind」
Danny Kortchmar作。素晴らしいブルー・アイド・ソウルなミディアム・スロウ。ストリングスも配したソウル・チューンは、Jo Mamaのイメージをいい意味で裏切ってくれた1曲なのでは?

「3 A.M. In L.A.」
Danny Kortchmar作。前半はジャズ・ロック/クロスオーヴァー作品を聴いているような錯覚に陥ります。スタートから2分近く経って、ようやくAbigailが歌い始めます。本編はブルージー&ジャジーなバラードです。そして、終盤は再びジャズ・ロック・モードの演奏で加速します。

「Sweet And Slow」
Al Dubin/Harry Warren作のスタンダードをカヴァー。 そんなスタンダードに合わせて、ブルージー&ジャジーな演奏を聴かせてくれます。

「Have You Ever Been To Pittsburgh」
D. Simon作。かなり激シブのブルージー・チューンに仕上がっています。聴き込むほど芳醇な味わいが増してきます。

「Sho’Bout To Drive Me Wild」
ラストはAl Robinson/Jessie Hill/King Floyd/Mac Rabenack(Dr. John)作。作者Al Robinsonもシングルを出しているニューオリンズR&Bチューンのカヴァー。ビターな仕上がりですが、ニューオリンズR&Bスタイルのコクのある仕上がりにグッときます。

未聴の方は1st『Jo Mama』(1970年)もぜひチェックを!

『Jo Mama』(1970年)
ジョー・ママ(紙ジャケット仕様)

現在であれば、『Jo Mama』『J Is for Jump』の2in1がお買得だと思います。
ジョー・ママ+J・イズ・フォー・ジャンプ
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2012年03月09日

Starpoint『It's All Yours』

捨て難いB級な魅力!本作はスロウが充実!☆Starpoint『It's All Yours』
It's All Yours
発表年:1984年
ez的ジャンル:3大"スター"・ブラコン
気分は... :少し熱っぽい!

気づくと少し熱っぽいです。
風邪の初期症状かもしれません。こういう時は風邪薬とドリンク剤で早めに封じ込めねば・・・

メリーランド出身のPhillips兄弟を中心に結成されたファンク・グループStarpointの3回目の紹介です。

『Wanting You』(1981年)、『It's So Delicious』(1983年)に続いて紹介するのは、1984年リリースの6thアルバム『It's All Yours』です。

Midnight StarAtlantic Starrと並ぶ3大"スター"ブラコン・グループの中では一番地味なグループですが、捨て難いB級な魅力があるのも事実です。僕の場合、3組の中で一番聴く頻度が多いのがStarpointです。ふとCD棚を眺めたとき、Starpointのアルバムって手を伸ばしやすいんですよね。

僕は(大衆的な)中華料理店でメニューに迷ったら、とりあえずレバニラ炒め定食か回鍋肉定食を注文するのですが、Starpointのアルバムもそんな感覚に近いのかもしれません。よくわからん喩えですが・・・

本作でもメンバーは、Ernesto Phillips(g、vo、key)、George Phillips(vo、key)、Orlando Phillips(b、vo、key)、Gregory Phillips(ds、vo)、Kayode Adeyemo(back vo)、Renee Diggs(vo)という不動の6名です。プロデューサーも彼らの作品ではお馴染みLionel Jobが務めています。

特に目立ったヒット曲やクラシックが収録されているわけではありませんが、全8曲コンパクトに楽しめます。特に本作はスロウが充実しており、紅一点の看板ヴォーカルだった故Renee Diggs(2005年没)がお好きな方は絶品スロウで彼女の素晴らしい歌声を満喫できます。

Bill Withersの名曲「Use Me」のカヴァー以外はメンバーおよびLionel Jobによるオリジナルです。

Starpointの場合、ジャケのReneeのファッション・センスが気になるアルバムが多いのですが、本作もビミョーですな・・・でも他のアルバムと比較したらマシかもしれませんね(笑)

全曲紹介しときやす。

「It's All Yours」
オススメその1。オープニングを飾るタイトル曲はシングル・カットされ、全米R&Bチャーチ第17位となりました。アップ・チューンならば、この曲が一番好きですね。B級ブラコンらしい魅力が凝縮された軽快なダンス・チューンです。Renee Diggsのヴォーカルにも躍動感が漲っています。この時代らしいスクラッチ音にもグッときてしまいます(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=zFUbQpX26OI

「Am I Still The One」
オススメその2。この曲もシングルになりました。男女ヴォーカルにグッとくるロマンティック・バラードです。このグループのヴォーカル・グループとしての素晴らしさを認識できると思います。
http://www.youtube.com/watch?v=OJUW7Z_Xz4A

「Satisfy My Lover」
この時代らしいダンサブルなエレクトリック・ファンク・チューン。B級感が漂いますが、80年代好きの人であれば楽しめるのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=lVq4yvq2-XA

「Send Me A Letter」
いきなりレゲエ調のトロピカル・チューンです。南国気分も悪くはないですが、アルバムの中で完全に浮いています(笑)

「Break Out」
オススメその3。シングルにもなったファンク・チューン。グルーヴィーな格好良さで言えば、この曲かもしれませんね。この時期のダンサブルなブラコン好きの人であれば気に入るはず!
http://www.youtube.com/watch?v=CEt9vwx4Lqg

「This Is So Right」
オススメその4。「Am I Still The One」と並ぶ絶品スロウ。僕の一番のお気に入り。Reneeの素晴らしいヴォーカルで胸キュン・メーターが一気に上昇していきます。
https://www.youtube.com/watch?v=OvzDP547ozs

「Use Me」
オススメその5。Bill Withersの名曲カヴァー。オリジナルは当ブログでも紹介済みの『Still Bill』(1972年)に収録されています。このあたりは好みが分かれるかもしれませんが、僕はなかなかパンチがあっていいカヴァーだとと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=exwPfdxIKNY

「Always On My Mind」
ラストはReneeのヴォーカルが栄える感動バラードで締め括ってくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=glVWhSY5Ygo

Starpointの過去記事もご参照下さい。

『Wanting You』(1981年)
Wanting You

『It's So Delicious』(1983年)
It's So Delicious
posted by ez at 07:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする