2012年03月03日

Merry Clayton『Keep Your Eye On The Sparro』

Eugene McDanielsをプロデューサーに迎えた3rd☆Merry Clayton『Keep Your Eye On The Sparro』
キープ・ユア・アイ・オン・スパロウ(紙ジャケット仕様)
発表年:1975年
ez的ジャンル:名セッション・シンガー系レディ・ソウル
気分は... :雛祭生まれの雛子さん?

今回はロック・ファンにもお馴染みの女性ソウル・シンガーMerry Claytonが、Eugene McDanielsプロデュースの下で制作したアルバム『Keep Your Eye On The Sparro』(1975年)です。

Merry Claytonは1948年12月25日ニューオリンズ生まれ。クリスマスに生まれたのでMerryと名付けられたそうです。日本で言えば、今日3月3日に生まれた子に、「雛祭生まれだから雛子にしましょう!」みたいなノリでしょうか(笑)

ちなみに彼女の実弟はLittle Featのメンバーとして知られるパーカッション奏者Sam Claytonです。

1962年、Merry14歳の時にBobby Darinの「Who Can I Count On? (When I Can't Count On You)」でレコーディング・キャリアをスタートさせます。1964年には「The Shoop Shoop Song (It's in His Kiss)」をレコーディングしますが、同年に後からレコーディングしたBetty Everettヴァージョンの方がヒットすると結果となりました。

Ray Charlesのバック・グループRaeletsのメンバー(1967〜69年)をはじめ、シンガーとして数多くのキャリアを積んできたMerryに転機が訪れたのは1969年のことでした。The Rolling Stones「Gimme Shelter」のレコーディングです。当初はDelaney & BonnieのBonnie Bramlettが参加予定でしたが、体調不良でキャンセルとなり急遽Merryが代役となったようです。

The Rolling Stones『Let It Bleed』(1969年)
Let It Bleed

Stonesの代表曲となる「Gimme Shelter」で、Mick Jagger相手に圧倒的なヴォーカルで素晴らしいデュエット・パートナーを務め、Merry Claytonは一躍注目の女性シンガーとなります。

それが呼び水となったのか、その後も売れっ子セッション・シンガーとして、ジャンルを超えた数々のレコーディングに参加することになります。ロック・ファンはLynyrd Skynyrd「Sweet Home Alabama」等でもMerryのヴォーカルを楽しむことができます。

また、1960年代後半から70年代前半にはVermettya Royster、Jeannie Long、Lillie Fortと結成した女性ソウル・グループSisters Loveのメンバーとして作品をリリースしています。

ソロ名義では、『Gimme Shelter』(1970年)、『Merry Clayton』(1971年)、『Keep Your Eye On The Sparro』(1975年)、『Emotion』(1980年)、『Miracles』(1994年)といったアルバムをリリースしています。僕と同世代の方であれば、80年代サントラ・ブーム時の大ヒット作品の1枚、『Dirty Dancing』(1987年)にMerryの「Yes」が収録されていたのをご記憶の方も多いのでは?

今日紹介する『Keep Your Eye On The Sparro』
(1975年)は、彼女にとってのソロ3rdアルバムです。それ以前にリリースされた『Gimme Shelter』、(1970年)、『Merry Clayton』(1971年)の2枚は、良くも悪くも「Gimme Shelter」のイメージを重視した作品であり、楽曲のセレクトやサウンドにもそれらが反映されていました。

それと比較すると、Eugene McDanielsがプロデュースが本作『Keep Your Eye On The Sparro』
(1975年)は、過去のイメージに囚われないアルバムに仕上がっています。全体としては、よりソウル色が強くなっていると同時に、メリハリのあるアルバム構成になっていると思います。

レコーディングには、David Spinozza(g)、Hugh McCracken(g)、Gary King(b)、Idris Muhammed(ds)、Steve Gadd(ds)、Kenny Ascher(key)、Bob James(key)、Ralph MacDonald(per)、Ian Underwood(syn)、Tom Scott(horns)、Joe Farrell(sax)、Lloyd Michaels(tp)、Jim Gilstrap(back vo)、Julia Tillman(back vo)、Marti McCall(back vo)、Maxine Willard(back vo)、Stephanie Spruell(back vo)等が参加しています。

ソウル・シンガーMerry Claytonの魅力が上手くパッケージされた1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Keep Your Eye On The Sparrow」
オープニングはタイトル曲(Dave Grusin/Morgan Ames作)。人気TVドラマ『Baretta(刑事バレッタ)』の主題曲のカヴァーです。Sammy Davis Jr.、Ron Carter、El Chicano、Rhythm Heritage等もカヴァーしています。Merryヴァージョンはシングルにもなり、全米チャート第45位、同R&Bチャート第42位となります。エキサイティングながも軽やかなファンキー・チューンに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=xGox3g9wUTE

「Gets Hard Sometimes」
Eugene McDaniels作。オリジナルはEugene McDanielsがプロデュースしたRichard Roundtree『The Man From Shaft』(1972年)に収録されたヴァージョンです。Richard Roundtreeと聞いてもピンと来ない方もいるかもしれませんが、ブラック・ムーヴィーの金字塔『Shaft(黒いジャガー)』(1971年)の主演男優と書けば顔が思い浮かぶのでは?個人的にはアルバムで一番のお気に入りのファンキー・グルーヴ。ホーン・アレンジを担当したTom Scottのサックスが冴え渡ります。
http://www.youtube.com/watch?v=6Kevhj9TjRg

「Sink Or Swim」
Eugene McDaniels/Dennis Collins Johnson作。ギターのHugh McCrackenがアレンジを担当したパワフルながらもゆとりのあるグルーヴ感にニンマリする1曲。パワフルなMerryのヴォーカルとソウルフルな女性バック・コーラスが織り成す歌世界がサイコーです。
http://www.youtube.com/watch?v=cpv585bc9dc

「How'd I Know」
Clarence McDonald/June Williams/Lani Groves作。ここでは都会的なメロウ・サウンドをバックに少し抑えた大人のヴォーカルを聴かせてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=e6W6nHhY5CI

「Gold Fever」
Eugene McDaniels作。この曲は"1975年版「Gimme Shelter」"といった趣のある仕上がりですね。ベタな仕掛けですが、嬉しくなってしまいます(笑)。Ralph MacDonaldのパーカッションが効果的です。
http://www.youtube.com/watch?v=Gmd29fEzQpU

「One More Ride」
Jon Mayer/Marcia Hillman作。アルバムの中でも最も爽快な印象を受けるジャジー・メロウ・チューン。ヴォーカル・アレンジにはJerry Petersも参加しています。
http://www.youtube.com/watch?v=GRQaD4dusIM

「Room 205」
Bill Hayes作。Merryの味わい深いヴォーカルを満喫できるバラード。心の奥にジワジワ響いてきます。セッション・ミュージシャンとしての豊富なキャリアに裏打ちされた仕上がりです。素晴らしい!

「Loving Grows Up Slow」
Morgan Ames作。Sylvesterのカヴァー(アルバム『Sylvester』収録)でご存知の方もいるのでは?メロウな味わいのミディアム・候は格別です。
http://www.youtube.com/watch?v=9IZfa2rgOF8

「Rainy Day Women #12 & 35」
Bob Dylan名曲「雨の日の女」のカヴァー。オリジナルは名盤『Blonde on Blonde』(1966年)に収録されています。ここではブルージー&ファンキーなアレンジで聴かせてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=QSLFJzW9azg

「If I Lose」
Eugene McDaniels作。今日再評価が高まっている曲です。Melba Moore『Peach Melba』(1975年)でも歌われています。大人のメロウネスでしっとりと聴かせてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=RnjuLIRMRe4

「Do What You Know」
ラストはEugene McDaniels、Morgan Amesに加え、元Earth,Wind & FireのRoland Bautistaも共作者としてクレジットに名を連ねる曲です。ファンキー・チューンで締め括ってくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=kFZpwyzN03M

Merry Claytonの他作品もチェックを!

『Gimme Shelter』(1970年)
ギミー・シェルター(紙ジャケット仕様)

『Merry Clayton』(1971年)
Merry Clayton

『Emotion』(1980年)
EMOTION

『Miracles』(1994年)
Miracles

『Dirty Dancing』(Soundtrack)(1987年)
Dirty Dancing: Original Soundtrack From The Vestron Motion Picture
posted by ez at 08:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする