発表年:2012年
ez的ジャンル:北欧系ラテン・ジャズ
気分は... :最初は戸惑いましたが・・・
今回は"北欧のDeodato"ことRoman Andrenの最新作『Cabra Negra』です。
新作は毎週日曜に紹介するパターンですが、最近個人的に要注目の新作が多いのでイレギュラーに週中での新作紹介です。
当ブログで紹介したRoman Andren作品は以下の3枚。
『Juanita』(2007年)
『Color Green』(2010年)
『Lovin' You』(2011年)
北欧らしいスタイリッシュなブラジリアン・グルーヴで日本でも大人気のスウェーデン出身のキーボード奏者Roman Andrenですが、最新作『Cabra Negra』は意外にもラテン・ジャズ、しかも全曲インストです。
前作『Lovin' You』(2011年)が日本企画のカヴァー集だったので、次の作品はどのような展開になるのか興味がありましたが、インストのラテン・ジャズと聞いて最初は少し肩透かしを喰ったような思いもありました(笑)
ラテン・ジャズといっても当ブログでも紹介したSunlightsquare『Sunlightsquare Presents: Britannia Shing-A-Ling』(2011年)のようなダンサブルで激しいラテン・ジャズではなく、Roman Andrenらしいライト・グルーヴなラテン・ジャズに仕上がっています。Cal Tjaderばりのラウンジ・テイストな演奏もあります。
レコーディングにはRoman Andren(p)、Johnny Aman(b)、Joselo Orellana(per)、Martin Buono(g)、Staffan Hallgren(fl)、 Daniel Hanson(sax、fl)、 Diana Scarpati(viola)、Ingrid Thulin(violin)というメンバーが参加しています。
基本はアコースティック・ピアノ、ダブルベース、パーカッションというトリオ編成であり、そこにギター、フルート、サックス、ビオラ、バイオリンを加えています。
最初は物足りなさを感じるかもしれませんが、アルバム全体をきちんと聴けばRoman Andrenらしさを楽しめる1枚になっています。また、本作を聴くと『Lovin' You』の中に本作への伏線があったことに気付かされ、興味深かったです。
「We've Only Just Begun」、「Where Is The Love」というカヴァー2曲以外はすべてRoman Andrenのオリジナルです。個人的には終盤の「Orejas De Midas」、「Puerta De Felicidad」、「Cuervo Y Lagarto」、「En Mi Corazon, Vive un Sueno」という4曲のオリジナルに相当グッときました。
メイン・ディッシュになりづらい作品なのかもしれませんが、決して箸休め的な作品でもありません。
インスト作品という点が気にならない方であれば"買い"だと思います。
全曲紹介しときやす。
「Cabra Negra」
タイトル曲がオープニング。ダブルベースとパーカッションが織り成すミステリアスなグルーヴは中南米の古代文明へと進む道中のような気分にさせてくれます。そこにピアノやギター、フルート、サックス、ストリングスが加わると一気に目前に古代王朝の全貌が姿を現したかのような高揚感に包まれる壮大なオープニングです。
「Chihuahua」
ラウンジ気分のラテン・ジャズ。寛いだ雰囲気でソファに腰掛けながら、ウィスキーでも嗜みたくなる気分にさせてくれます。Cal Tjaderあたりのヴァイヴの音色が聴こえてきても全く違和感ない感じです。個人的にはこういう音大好きです。
「I Will Be Leaving In Summer」
メロディアスなRoman Andrenのピアノを満喫できる、美しくもちょっぴり切ないムードのラテン・ジャズ。夏のサンセット・モードにピッタリです。
「Instante De Anoranza」
抑え気味ながらもパーカッシヴな疾走感がグッド!ティンバレス乱れ打ちも含めて僕の好きなラテン・グルーヴのりです。
「Zapata」
美しいストリングスと軽快なリズムに美しいピアノが絡む様は前作『Lovin' You』を思わせます。
「Plaza La Glorieta」
ラテン・リズムが強調されていますが、全体は実にソフィスティケートされた演奏にまとめられているのがいいですね。
「Orejas De Midas」
僕の一番のお気に入り。ラテン・フィリーリングとブラジリアン・フィーリングを上手く掛け合わせたような雰囲気が心地好い1曲。本作では珍しくコーラス入りなのもグッド。ストリングスも含めて"北欧のDeodato"らしい仕上りなのでは?
「Puerta De Felicidad」
徐々に音の表情が豊かになり、高揚していく感じがたまりません。終盤になって知らぬ間に感動で胸一杯になっている自分に気づきます。素晴らしい!
「Cuervo Y Lagarto」
前曲からさらに畳み掛けるような1曲。こちらもジワジワと高揚させてくれます。軽快なラテン・リズムをバックに壮大で美しいメロディをRoman Andrenのピアノが奏でます。感動映画のエンディング曲あたりにピッタリな雰囲気です。余韻に浸りたい気分にさせてくれます。
「We've Only Just Begun」
Carpentersの大ヒットでお馴染みのPaul Williams/Roger Nichols作品をカヴァー。当ブログではCurtis Mayfield、The Wooden Glass、Grant Greenのカヴァーも紹介済みです。有名曲カヴァー集であった前作『Lovin' You』の延長線上にあるような軽快な演奏を満喫できます。Roman Andrenらしい素敵なグッド・カヴァーだと思います。
「En Mi Corazon, Vive un Sueno」
フルートの音色が似合う爽快かつエレガントな疾走感に魅了されます。後半の「Orejas De Midas」、「Puerta De Felicidad」、「Cuervo Y Lagarto」、そして本曲という4曲のオリジナルの出来栄えが秀逸ですね。この4曲が僕の本作に対する好感度を一気にアップさせてくれました。
「Where Is The Love」
Roberta Flack & Donny Hathawayのデュエットでお馴染みのヒット曲をカヴァー(Ralph MacDonald/William Salter作)。ラストはラウンジ・モードの「Where Is The Love」で締め括ってくれます。
Roman Andrenの過去記事もご参照下さい。
『Juanita』(2007年)
『Color Green』(2010年)
『Lovin' You』(2011年)