2012年04月30日

Gangway『Happy Ever After』

デンマーク産、至極のポップ・サウンド☆Gangway『Happy Ever After』
Happy Ever After
発表年:1992年
ez的ジャンル:デンマーク産シンセ・ポップ
気分は... :北欧ポップが優しく包んでくれる

今回はデンマークのポップ・グループGangwayが1992年にリリースしたアルバム『Happy Ever After』(1992年)

Gangwayは、1982年にデンマーク、コペンハーゲンで結成されたグループ。

結成時のメンバーは、Henrik Balling(g)、Torben Johansen(key)、Allan Jensen(vo)、Jan Christensen(ds)の4名。その後ドラムはGorm Ravn-JonsenCai Bojsen-Mollerとメンバー・チェンジを繰り返すことになります。

グループは、『The Twist』(1984年)、『Sitting in the Park』(1986年)という2枚のネオ・アコギター・ポップ・アルバムをリリースした後、リメイク・アルバム『Sitting in the Park(Again)』(1988年)でシンセ・ポップ路線を打ち出し、『The Quiet Boy Ate the Whole Cake』(1991年)、『Happy Ever After』(1992年)、『Optimism』(1994年)、『That's Life』(1996年)といったアルバムをリリースした後、1998年に解散しています。

僕がGangwayを聴くようになったのは、シンセ・ポップ路線の『The Quiet Boy Ate the Whole Cake』(1991年)以降です。Pet Shop BoysのNeil Tennantを思わせるAllan Jensenのヴォーカルと北欧ポップらしいエッセンスが加わったポップ感覚にグッときました。それ以降はラスト作『That's Life』(1996年)までリアルタイムでアルバムを愛聴していました。

『The Quiet Boy Ate the Whole Cake』以降の作品の中でも一番のお気に入り作が今日紹介する『Happy Ever After』(1992年)です。どちらかと言えば、僕の中で秋〜冬のイメージが強いGangwayですが、本作『Happy Ever After』だけは春に聴きたくなるアルバムです。青空の写るジャケのイメージもあるのかもしれませんね。

プロデュース&アレンジはHenrik Ballingが務めています。楽曲は全てオリジナルであり、Henrik Ballingが9曲、Torben Johansenが3曲のソングライティングを手掛けています。

至極のデンマーク・ポップ・サウンドを満喫しましょう。

全曲紹介しときやす。

「No Need To Be Afraid」
シンフォニックなシンセ・サウンドが印象的なオープニング。前向きな気持ちを鼓舞してくれるような感じが大好きです。
http://www.youtube.com/watch?v=qAXLgStYqGc

「You And Yours」
ギター・ポップとシンセ・ポップの美味しいところ取りがいいですね。後期Prefab Sproutあたりと一緒に聴きたくなる魔法のメロディ感にもグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=NpSqF31eA5o

「Didn't I Make You Laugh」
男のモヤモヤ感が漂う哀愁ポップ。小粋なサウンド・センスが心憎いですな。

「Once In A While」
イントロを聴くと、Wham! 「Last Christmas」かと思ってしまいます(笑)。Gangwayらしいヴォーカル&メロディが不安な気持ちを優しく包み込んでくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=ZKuHVvmviis

「Hey Little Darling」
ギター・カッティングとシンセ・サウンドで疾走感を演出します。淡々とした中にも徐々にサウンドの表情が変化していく感じが好きです。

「Never Say Goodbye」
北欧ポップらしい澄み切ったエレガント・サウンドが素敵なワンダー・ランドへ誘ってくれます。

「Mountain Song」
グループを代表する1曲。イントロのピアノの音色が印象的です。アコースティック・サウンドを強調した童心に戻れるポップ・ソングです。
http://www.youtube.com/watch?v=QSwI1xzawWs

「Blessed By A Lesser God」
お祈りモードの哀愁ポップ。オルガン・サウンドが哀愁モードを盛り上げてくれます。

「Manic Days」
少しミステリアスなダンサブル・ポップ。リズムの跳ね方が90年代前半らしいですね。

「Don't Go」
美しいシンセ・サウンドをバックに切なる思いが歌われます。

「The Glad Hatter」
シンフォニックなシンセによるインタールード的なインスト。

「No Matter What」
ラストはスタジオ・ライブ。優しいヴォーカルと素敵なメロディによりGangwayサウンドの魅力をダイレクトに満喫できます。
http://www.youtube.com/watch?v=t4kO7xtRPlw

他のGangway作品もチェックを!

『The Twist』(1984年)
THE TWIST

『Sitting in the Park』(1984年)
Sitting In The Park

『The Quiet Boy Ate the Whole Cake』(1991年)
The Quiet Boy Ate The Whole Cake

『Optimism』(1994年)
Optimism

『That's Life』(1996年)
That's Life
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2012年04月29日

Eric Benet『The One』

絶好調であった前作『Lost In Time』に劣らぬ最新作☆Eric Benet『The One』
ザ・ワン
発表年:2012年
ez的ジャンル:セクシー&ロマンティック系男性R&Bシンガー
気分は... :たった一人の君、たった一つの喜び・・・

今回は大好きな男性R&BシンガーEric Benetの新作『The One』です。
輸入盤に先立ち、国内盤が先行リリースされました。国内盤はオリジナル12曲に加えて、3曲のボーナス・トラックが追加収録されています。

良質なR&B作品をリリースし続けるかつてのニュークラシック・ソウルの旗手の一人Eric Benetに関して、これまで当ブログで紹介した作品は以下の3枚。

 『True to Myself』(1996年)
 『Love & Life』(2008年)
 『Lost In Time』(2010年)

前作『Lost In Time』(2010年)は、当ブログ年末恒例の『ezが選ぶ2010年の10枚』でセレクトしたお気に入りR&B作品でした。70年代ソウルへの愛情に溢れ、作品全編から胸を熱くするヴァイヴが伝わってきたアルバムでした。

そのため、新作『The One』への期待も相当高いものでしたが、その期待を裏切らない正統派R&B/ソウル作品に仕上がっています。本作でも70年代ソウルへのリスペクトに溢れています。ただし、それ一辺倒ではなく美メロR&Bを上手く織り交ぜた大人のセクシー&ロマンティックなR&B/ソウル作品に仕上がっています。

プロデュースはEric Benet本人と長年のパートナーGeorge Nash, Jr.Demonte Poseyが務めています。目立ったゲスト陣もLil Wayneと娘India Benet程度であり、話題よりも中身で勝負!というEric Benetの心意気が伝わってきます。

『The One』というアルバム・タイトルが象徴するように、たった一人の大切な人に向けたロマンティックなラブソング集といったアルバムになっています。愛の伝道師Eric Benetの面目躍如といったところなのでは。

前作同様、ヴォーカル良し!メロディ良し!捨て曲ナシの充実作だと思います。個人的には、今年聴いた男性R&B作品の中でNo.1の出来栄えです。

全曲紹介しときやす。

「Harriet Jones」
このオープニングを聴き、本作も間違いなしの傑作であることを確信しました。恋人へもう一度をチャンス!と懇願する哀愁メロウR&B。ヴォーカルよし!メロディよし!前作からの好調ぶりが本作でも健在であることを実感できます。
http://www.youtube.com/watch?v=Ixkpupw1JR8

「News For You」
愛の伝道師Eric Benetらしい壮大なスケールのラブソング。爽快な中にも男の色気が漂う大人のセクシーR&Bに仕上がっています。

「Real Love」
アルバムからのリード・シングル。本物の愛を熱唱する正統派ソウル・バラード。セクシー・ファルセットも交えたEric Benetの素晴らしいヴォーカルを満喫できます。
http://www.youtube.com/watch?v=xhWumqmCveY

「Runnin」
運命の人と巡り合った喜びを歌うラブソング。♪たった一人、たった一つの心、一つの喜び、一つの場所♪という歌詞はアルバム・タイトル『The One』へつながっています。

「Redbone Girl」
Lil Wayneをフィーチャーした甘く危険な香りのするR&Bチューン。Eric BenetとLil Wayneの組み合わせってどうなんだろう?と思っていましたが、70年代ソウル・モードにLil Wayneの癖のあるラップを加えることで、全体に上手くメリハリをつけています。

「Waiting」
70年代ソウルへのリスペクトを感じる正統派ソウル・チューン。リラックスした雰囲気ながらも味わい深いヴォーカルを聴かせてくれます。

「I Hope That It's You」
アルバムの中では少し異質なレゲエ・チューン。Eric Benet版ラヴァーズ・ロックといった趣です。少しチープなサウンドが逆にラヴァーズ・ロックらしくていいですね。

「Gonna Be My Girl」
舞い降りてきた天使へ捧げるラブソングといった雰囲気です。感動的なヴォーカル&メロディ&サウンドは、ラブ・ロマンス映画のハイライト・シーンに流れるとピッタリな感じです。

「Come Together」
関係がぎくしゃくしてきた恋人へ、やり直そうと呼びかける1曲。サラッとした中にも男の切なる哀愁モードがにじみ出ています。終盤はかなりエロいです(笑)

「Muzik」
最近のEric Benet作品でお馴染み娘India Benetとのデュエット。80年代の香りが漂うシングル向きのキャッチーなR&Bチューンです。

「Lay It Down」
軽くエレクトリックな味付けでアクセントをつけたR&Bバラード。個人的にはクロスオーヴァー・テイストのアッパー・チューンにリミックスするとピッタリな気がします。

「Here In My Arms」
本編のラストは、感動的かつ厳かなラブソングで締め括ってくれます。素敵なストリングスをバックに、愛する人が今時分の腕の中にいる奇跡を歌い上げます。

国内盤には「Come Home To Me」(Featuring Jewl Anguay)、「Touching Again」「That's My Lady」といった3曲のボーナス・トラックが収録されています。

Eric Benetの過去記事もご参照下さい。

『True to Myself』(1996年)
True to Myself

『Love & Life』(2008年)
愛すること、生きること。

『Lost In Time』(2010年)
Lost in Time
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2012年04月28日

Pockets『Take It On Up』

EW&Fの弟分的グループ。スケール感の大きくなった2nd☆Pockets『Take It On Up』
戦士の凱旋(紙ジャケット仕様)
発表年:1978年
ez的ジャンル:ライト&メロウ系ファンク/ソウル
気分は... :That's the Way of the World!

昨日、Earth,Wind & Fireがサントラを手掛け、出演もしている映画『That's the Way of the World』(1975年)を観ました。

映画自体は当時のレコード業界の裏側を描いたC級作品ですが、サントラ『That's the Way of the World』はEW&F初の全米アルバム・チャートNo.1に輝き、グループの黄金期の幕開けを飾った名盤としてお馴染みですね。

EW&F自身も新進気鋭のR&BバンドThe Groupのメンバー役で出演し、演奏シーンも観ることができます。全盛期のEW&Fの演奏シーンを観ることができるのが映画の唯一の見どころかもしれません(笑)。また、映画の中に登場する時代遅れのファミリー・グループの名称がPagesというのが、(Richard Pageの)Pages好きの僕には複雑な思いがしたのですが(笑)

そんな流れで今日はEW&Fの弟分的グループPocketsの2ndアルバム『Take It On Up』(1978年)です。

Pocketsは1975年のボルティモアで結成されたグループ。

Verdine White & Robert Wrightのプロデュースにより、Kalimba Productionから『Come Go With Us』(1977年)、『Take It On Up』(1978年)、『So Delicious』(1979年)をリリースしています。

今回紹介する2ndアルバム『Take It On Up』時点のメンバーは、Albert McKinney(key、vo)、Gary Grainger(b、vo)、Larry Jacobs(vo、per)、 Charles Williams(tp、vo、per)、 Irving Madison(sax、vo、per)、 Kevin Barnes(tb、vo、per)、 Jacob Sheffer(g、per)、George Gray(ds、vo、per)という編成です。

Tom Tom 84がホーン&ストリングス・アレンジを担当し、Larry Dunn(syn)、Paulinho da Costa(per)、Steve Lukather(g)、Dean Gant(p)、Louis Satterfield(tb)、Don Myrick(sax)等がゲストで参加しています。

基本的にはEW&Fの弟分的グループといったサウンドですが、Pocketsならではの味わいもあって、ポップ・フィールドに寄り過ぎてしまったこの時期のEW&Fよりもグッとくる部分があったりします。ヴォーカル・グループとしてもなかなか魅力的だと思います。

特に、この2ndはスケール感が増したのと同時に、楽曲も充実しており、アルバム全体の完成度はかなり高い気がします。

アップのダンス・チューンよし!メロウなミディアム〜スロウよし!
個人的には言うことん無しの1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Heaven Only Knows」
Leroy M. Bell/Casey James作。オープニングはディスコ/ソウル・デュオBell & Jamesの二人による作品。後にTeddy Pendergrassも取り上げていますね。軽快なギター・カッティングをバックに甘味のあるヴォーカルと爽快コーラスにグッとくるダンス・チューン。ティンバレスによるアクセントもいい感じです。Tom Tom 84のアレンジも冴えています。

「Take It On Up」
Kevin Barnes /Louis Satterfield/Verdine White/Robert Wright作。タイトル曲はEW&Fの弟分グループらしい、ポップかつ爽快なダンス・チューン。アルバムからの1stシングルとして全米R&Bチャート第24位となっています。開放的なホーン・セクションが盛り上げてくれるEW&F好きの人であれば、間違いなく気に入る1曲なのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=kEiVYZauBiY

「Tell Me Why」
James Burke/Keni Burke作。前作でもStairsteps『2nd Resurrection』収録の「Pasado」をカヴァーしていましたが、それに続き『2nd Resurrection』収録曲をカヴァーしています。ヴォーカル・グループとしての魅力を堪能できます。Stairstepsのオリジナルとは異なるキャッチーなメロウネスで聴かせてくれます。

「Got To Find My Way」
Albert McKinney/Gary Grainger/Jacob Sheffer/Louis Satterfield/Robert Wright作。ハッピー・フィーリングなダンス・チューンです。軽快なホーン・アンサンブルと共にスタート。心地好いギター・カッティングが牽引し、一気にコーラス隊がスパークルする感じがたまりません。
http://www.youtube.com/watch?v=Voq2D6RV-jE

「Happy For Love」
Verdine White/Robert Wright作。アルバムからの2ndシングル。個人的にはアルバムで一番のお気に入り。ロマンティックなメロウ・グルーヴは2人だけのサンセット・モードにぴったりだと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=algbB3AQ8MI

「Funk It Over」
Dorian Holley/Pockets/Verdine White/Robert Wright作。ファンキー・モード全開のファンク・チューン。ゴリゴリと押しまくります。ホーン・サウンドが高らかに鳴り響きます。
http://www.youtube.com/watch?v=ZuCHhW8MjWQ

「You And Only You」
Ray Parker, Jr.作。メロウ・モードがお好きな方には、「Happy For Love」と並ぶオススメ曲。こちらもサンセット・モードにぴったり!ひたすら2人だけの世界へ。
http://www.youtube.com/watch?v=jsKE3phS90U

「Sphinx」
Gary Grainger作。フュージョン・テイストのインスト・チューン。Dean Gantが小粋なピアノ・ソロを聴かせてくれます。

「Lay Your Head (On My Shoulder)」
Allee Willis/Verdine White/Robert Wright作。ヴォーカル・グループとしての魅力を堪能できる素敵なスウィート・バラード。ギター・ソロはSteve Lukatherです。
http://www.youtube.com/watch?v=4gMkt3rcb_U

「In Your Eyes」
Jacob Sheffer/Larry Jacobs/Verdine White/Robert Wright作。ラストはメロウなアコースティック・ソウルです。サンセット・モードのハワイアンAORあたりと一緒に聴きたくなりますね。素晴らしい余韻に浸れるエンディングだと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=OqFOzUID2I4

1st『Come Go With Us』(1977年)や、同じくEW&FファミリーでPhilip BaileyがプロデュースしたSplendor『Splendor』(1979年)もチェックを!

『Come Go With Us』(1977年)
平和の使者(紙ジャケット仕様)

Splendor『Splendor』(1979年)
スプレンダー(紙ジャケット仕様)
posted by ez at 04:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月27日

The Southwest FOB『Smell Of Incense』

Dan Seals、John Ford Coleyが在籍していたサイケ・ロック・バンド☆The Southwest FOB『Smell Of Incense』
Smell of Incense
発表年:1968年
ez的ジャンル:サイケ・ソフトロック
気分は... :妖しげ・・・

サッカーUEFAチャンピオンズリーグは準決勝の2ndレグ2試合が終了し、チェルシー対バイエルン・ミュンヘンの決勝となりました。バルサ対レアル・マドリッドのクラシコ対決を期待していたので残念です。

バルサの敗戦は彼らの今季を象徴していたようでしたね。こうなると今後のペップの動向が気になります。一方、レアル・マドリッドの敗戦は意外でした。準決勝2ndレグ前半で2対0になった時には100%レアル・マドリッドの決勝進出と思いましたが・・・。ホームスタジアムでの決勝進出に燃えたバイエルン・ミュンヘンの執念に脱帽です。しかし、守備陣に累積警告による出場停止が相次ぎ苦しい布陣での決勝となりそうですね。

今回はダラス出身のグループThe Southwest FOBの唯一のアルバム『Smell Of Incense』(1968年)です。

The Southwest FOBは、70年代に活躍した人気デュオEngland Dan & John Ford Coleyの2人がデュオ結成以前に在籍していたグループです。

高校時代に知り合ったDan SealsJohn Ford Coleyはバンド活動を開始し、Playboys Five、Theze Fewといったバンドを組んでいました。そのTheze Fewが母体となり結成されたのがThe Southwest FOBです。

1968年に今日紹介するグループ唯一のアルバム『Smell Of Incense』をリリース。翌年に「As I Look at You 」「The 59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy)」(S&Gのカヴァー)という2枚のシングルを残してグループは解散します。その後、Dan SealsJohn Ford ColeyEngland Dan & John Ford Coleyとしてデュオ活動を開始し、1970年にA&Mと契約しています。

さて、唯一のアルバム『Smell Of Incense』(1968年)は、England Dan & John Ford Coleyのイメージとは大きく異なる、サイケ・ソフトロック作品となっています。ジャケからして妖しげですよね(笑)

その意味では、England Dan & John Ford Coley好きの方よりも、サイケ/ソフトロック好きの方にマッチするアルバムかもしれません。

The West Coast Pop Art Experimental Bandのカヴァー「Smell Of Incense」、 Buffalo Springfieldのカヴァー「Rock 'N' Roll Woman」、Chuck Berryのカヴァー「Nadine」以外はDan Seals/John Ford Coleyによるオリジナルです。England Dan & John Ford Coleyの雰囲気とは異なるかもしれませんが、彼らのソングライティングの素晴らしさは本作でも実感できます。

全体としてはB級感が漂うサイケ/ソフトロックですが、どこか捨て難い魅力があります。

全曲紹介しときやす。

「Smell Of Incense」
タイトル曲はL.A.を拠点に活動していたサイケ・ロック・グループThe West Coast Pop Art Experimental Bandのカヴァーです。アルバムからシングル・カットされ、全米チャート第56位となっています。妖しげなオルガンの音色が誘うサイケ・ポップなカヴァーに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=zCq8o7Dqg5I

「Tomorrow」
美しいフォーキー・バラード。England Dan & John Ford Coley好きの人は、この曲に一番グッとくるのでは?Dan Seals/John Ford Coleyのソングライティング
http://www.youtube.com/watch?v=T-8cF2YSlsQ

「Rock 'N' Roll Woman」
Buffalo Springfieldのカヴァー(Stephen Stills作)。オリジナルの雰囲気を損なわない格好良いカヴァーに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=AiTNVwyJfU0

「Downtown Woman/Nadine」
オリジナル曲「Downtown Woman」とChuck Berryのカヴァー「Nadine」のメドレーです。ポップ&サイケな「Downtown Woman」から「Nadine」のブルージーなサイケ・ロック感はいかにも1968年の音といった雰囲気です。
http://www.youtube.com/watch?v=fzTpTcIDHqY

「All One Big Game」
ソフトロック好きにはたまらない美しいハーモニー&メロディが印象的です。ある意味Dan Seals/John Ford Coleyらしいかもしれませんね。

「On My Mind」
キャッチーなメロディと妖しげなオルガンの響きが印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=YCj0ehCp1Zg

「Bells Of Baytown」
美しいポップ・ソング。一瞬サイケになりそうでならないところが意表を突かれます(笑)

「And Another Thing」
ラストは12分近く大作です。ポップなヴォーカルが聴けるのは序盤のみ。前半途中からはアシッドなインスト・パートが続きます。
http://www.youtube.com/watch?v=OMT4BgzW82g

僕が保有するCDはオリジナル8曲のみの収録ですが、シングル曲や未発表テイク、さらにTheze Few時代の楽曲も収録した全20曲入りのCDも存在します。

England Dan & John Ford Coley『Dr.Heckle And Mr.Jive』(1978年)
Dr. Heckle & Mr. Jive
posted by ez at 01:10| Comment(2) | TrackBack(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月26日

The Roots『Phrenology』

新たなアプローチが目立つ意欲作☆The Roots『Phrenology』
Phrenology
発表年:2002年
ez的ジャンル:ナンバー・ワンHip-Hopバンド
気分は... :今の脳の地図は・・・

今回はナンバー・ワンHip-HopバンドThe Rootsが2002年にリリースした意欲作『Phrenology』です。

これまで当ブログで紹介したThe Roots作品は以下のとおりです。

 『Do You Want More?!!!??!』(1994年)
 『Things Fall Apart』(1999年)
 『Game Theory』(2006年)
 『Rising Down』(2008年)
 『How I Got Over』(2010年)
 John Legend & The Roots『Wake Up!』(2010年)
 『Undun』(2011年)

近年はJohn Legend & The Roots『Wake Up!』Betty Wright & The Roots『Betty Wright: The Movie』あたりの流れで語られることが多いThe Rootsですが、彼らの本質に触れることができるのはやはり単独名義の作品だと思います。

本作のタイトルにある『Phrenology』とは、「骨相学(こっそうがく)」を意味します。骨相学は、脳は精神活動に対応する複数の器官の集合体であり、その器官・機能の差が頭蓋の大きさ・形状に現れるとするものです。まさに、ジャケに描かれているような脳の地図で各器官が示されます。

それを踏まえると、本作『Phrenology』は当時のグループのスピリッツを強く意識した作品と言えるでしょう。芸術性と社会性と商業性、この3つを同時達成した傑作『Things Fall Apart』(1999年)をリリースした後、グループはどのようにステップ・アップしていくのか、その方向を模索していましたが、その試行錯誤がかたちとなった作品が本作です。

本作にメンバーとしてクレジットされているのは、Tariq "Black Thought" Trotter(vo)、Ahmir "?uestlove "Thompson(ds)、 Leonard "Hub" Hubbard(b)、Kamal Gray(key)、Scratch(human beatbox)、Ben Kenney(g)の6名。

Malik B、Rahzelの名前はなく、Dice Rawはゲスト扱いで参加しています。それに代わり、ギタリストBen Kenneyが参加しています。また、James Poyserや後に正式メンバーとなるFrank "Frankie Knuckles" Walkerも参加しています。さらにScott Storchもプロデュースで参加しています。

本作ではロックへのアプローチを強めるなど、意図的に『Things Fall Apart』からの変化を強調しているのが印象的です。ロック・テイストの曲が目立ちますが、フリー・ジャズやラテン・フレイヴァーを取り入れたり、人力ドラムンベース調のリズムが飛び出したりと、さまざまな実験的アプローチを聴くことができます。

その意味では多少毛色の変わったThe Rootsと言えるかもしれません。

Nelly Furtado、Talib Kweli、Cody ChesnuTT、Musiq Soulchild、Tracey Moore(Jazzyfatnastees)、Jill Scott等がゲスト参加しています。

The RootsというバンドがもはやHip-Hopの枠では収まらなくなってきたことを感じさせる意欲作です。

全曲紹介しときやす。

「Phrentrow」
アルバムのプロローグ。前作『Things Fall Apart』のラストを飾っていたUrsula Ruckerのポエトリーリーディングをオープニングで聴くことができます。

「Rock You」
DJ Scratchプロデュース。本作の方向性を示唆するロックな仕上がり。Black Thoughtの叩きつけるようなラップとそれに呼応する?uestloveのドラムが印象的です。

「!!!!!!!」
ハードコア・パンクなインタールード!とてもThe Roots作品だとは思えないサウンドです。

「Sacrifice」
人気カナダ人女性シンガーNelly Furtadoをフィーチャー。ポルトガル系カナダ人であるNellyを迎えた曲らしく、甘く危険なセクシー・フレイヴァーを上手くThe Rootsサウンドに採り入れています。Kamal Grayプロデュース。

「Rolling With Heat」
Talib Kweliをフィーチャー。元メンバーのDice Rawも参加しています。?uestloveの乾いたブレイクが牽引するラガ調の仕上りですが印象的です。The Grand Wizzardsプロデュース。

「WAOK (AY) Roll Call」
Ursula Ruckerをフィーチャーしたインタールード。

「Thought @ Work」
個人的にはアルバムで一番のお気に入り。Kool G Rap & DJ Polo「Men At Work」にインスパイアされた曲のようです。「Men At Work」と同じくIncredible Bongo Band「Apache」をサンプリングしたトラックにのって、Black Thoughtが快調なフロウで飛ばしてくれます。滅茶苦茶カッチョ良いスリリングな仕上がりです。何故かAlicia Keysの名がゲストでクレジットされています。The Beatles「Hey Bulldog」、Fat Boys「Human Beat Box」ネタ。?uestloveプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=cBHF7XriPFI

「The Seed (2.0)」
アルバムからの2ndシングル。ジャマイカ系R&BシンガーCody ChesnuTTをフィーチャー。Codyのアルバム『The Headphone Masterpiece』(2002年)に収録されたヴァージョンと区別する意味でver2.0となっています。本作らしくギター・サウンドを前面に押し出したロック・サウンドが印象的です。今聴くと、「How I Got Over」あたりのプロトタイプのようにも聴こえます。哀愁モードのCody ChesnuTTのヴォーカルもサウンドによくマッチしています。?uestlove/Cody ChesnuTTプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=ojC0mg2hJCc

「Break You Off」
Musiq Soulchildをフィーチャー。アルバムからの1stシングル。ただし、アルバム・ヴァージョンは7分超の長尺です。Kamal Grayプロデュース。彼がプロデュースした「Sacrifice」と同じく、甘く危険なラテン・フレイヴァーが魅力の1曲。特にアルバム・ヴァージョンの後半はエレガントなチェロに人力ドラムンベース調のドラムが絡む展開が印象的です。Sting「Shape of my Heart」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=K_NvtAxmDEM

「Water」
10分超の大作。「the first movement」、「the abyss」、「the drowning」という三部構成になっています。The Flying Lizards「Her Story」ネタのリズムが印象的です。フリー・ジャズ系ギタリストのJames Blood Ulmerが参加しています。僕が洋楽を聴き始めた頃は革新的ギタリストとして、かなり注目の存在だった人です。そんなせいもあってかフリー・ジャズ系生音Hip-Hopといった雰囲気に仕上がっています。Tahir Jamal/Kelo Saunders/The Grand Wizzardsプロデュース。

「Quills」
全体的にはダークな仕上がりですが、JazzyfatnasteesのTracey Mooreが歌うSwing Out Sister「Breakout」のフレーズがいいアクセントになっています。Karreem Riggins/The Grand Wizzardsプロデュース。

「Pussy Galore」
JazzyfatnasteesのTracey Mooreのヴォーカルをフィーチャーした哀愁セクシー・チューン。Scott Storch/Zoukhan Beyプロデュース。Jungle Brothers「Because I Got It Like That」ネタ。

「Complexity」
Jill Scottをフィーチャー。爽快メロウなネオ・ソウル感がグッド!軽やかな気分になります。The Grand Wizzards/?uestlove/ Omar the Scholarプロデュース。

「Something In The Way Of Things (In Town)」
Amiri Barakaのポエトリー・リーディングをフィーチャーした演奏でアルバムは幕を閉じます。バックのクロスオーヴァーなジャジー・サウンドを聴き逃さないように!The Grand Wizzardsプロデュース。

アルバムには隠れトラックとして、Talib Kweliをフィーチャーした「Rhymes And Ammo/Thirsty」が収録されています。

The Rootsの過去記事もご参照下さい。

『Do You Want More?!!!??!』(1994年)
Do You Want More?!!!??!

『Things Fall Apart』(1999年)
シングズ・フォール・アパート

『Game Theory』(2006年)
Game Theory

『Rising Down』(2008年)
Rising Down

『How I Got Over』(2010年)
How I Got Over

John Legend & The Roots『Wake Up!』(2010年)
Wake Up

Betty Wright & The Roots『Betty Wright: The Movie』(2011年)
Betty Wright: the Movie

『Undun』(2011年)
Undun
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