2012年06月03日

Alexia Bomtempo『I Just Happen To Be Here』

待望の2ndはCaetano Velosoの英語詩曲のカヴァー集☆Alexia Bomtempo『I Just Happen To Be Here』
I Just Happen to Be Here
発表年:2012年
ez的ジャンル:コスモポリタン系女性MPB
気分は... :London, London

期待の女性MPBシンガーAlexia Bomtempo、待望の2ndアルバム『I Just Happen To Be Here』です。

1985年ワシントンD.C.生まれ。母はアメリカ人で父がブラジル人というコスモポリタンな女性MPBシンガーAlexia Bomtempoの紹介は、デビュー・アルバム『Astrolabio』(2008年)、公私のパートナーであったPierre AderneらとのユニットDoces Cariocasのアルバム『Doces Cariocas(Sweet Cariocas)』(2009年)に続き3回目となります。

Dadiプロデュースによるドリーミーなデビュー・アルバム『Astrolabio』は、『ezが選ぶ2008年の10枚』にセレクトするほどのお気に入り作品でしたし、アコースティックな透明感に溢れたDoces Cariocas『Doces Cariocas(Sweet Cariocas)』も今でもよく聴く大好きな作品です。

『Astrolabio』(2008年)
Astrolabio

Doces Cariocas『Doces Cariocas(Sweet Cariocas)』(2009年)
Sweet Cariocas

そんなお気に入りアーティストAlexia Bomtempoの最新作となる2ndアルバム『I Just Happen To Be Here』は、Alexiaが敬愛する偉大なMPBアーティストCaetano Velosoの英語詩曲のカヴァー集です。

曲はCaetanoのロンドン亡命の前後にリリースされた『Caetano Veloso(ホワイト・アルバム)』(1969年)、『Caetano Veloso(イン・ロンドン)』(1971年)、『Transa』(1972年)という3枚のアルバムからのセレクトです。前2枚は当ブログでも紹介済みの作品です。

最初にAlexiaの新作がCaetanoの英語詩曲カヴァー集と聞き、少し意外な気もしましたし、2012年のブラジル音楽として面白みがあるなかなぁという不安も過りました。

しかし、幼少期から母が口遊む「London, London」を聴いて育ったという話を中原仁氏のライナーノーツで知り、AlexiaがCaetanoの英語詩曲を取り上げる必然性を感じました。また、サウンド面でも興味深いミュージシャンも多数参加し、しっかり2012年のブラジル作品になっている気がします。

プロデュースはFelipe Abreu/De Palmeira。

もうすぐロンドン五輪ですし、「London, London」を聴きながら、ロンドン五輪を心待ちにするなんていうのもいいのでは?

全曲紹介しときやす。

「A Little More Blue」
『Caetano Veloso』(1971年)収録曲。当時のブラジル軍事政権から国外退去を命じられ、やむを得ず母国を出国することになったCaetanoの思いを綴った曲です。7歳の時に父と共にブラジル・リオへ移住し、17歳の時に音楽の勉強をするために再びアメリカへと渡ったAlexiaにも、母国を離れる際の後ろ髪を引かれる思いはよくわかるのかもしれませんね。

レイジーなAlexiaのヴォーカルはこの曲の持つ空気感を見事に伝えてくれます。最近ではRoberta Sa‎『Segunda Pele』(2011年)をプロデュースしていたRodrigo Campelloがブルーな心情をギターの音色で奏でてくれます。

「You Don'T Know Me」
『Transa』収録曲。見知らぬ土地で過ごす複雑な心境を歌った曲です。ブルージーな雰囲気の中にもAlexiaらしい透明感があるのがいいですね。

「Shoot Me Dead」
『Caetano Veloso』(1971年)収録曲。Domenico(per)、Kassin(b)というDomenico+2の才人2人やBerna Ceppasのシンセが加わり、2012年スタイルのエクスペリメンタル・テイストな「Shoot Me Deadを聴かせてくれます。こういうカヴァーが聴けるのも本作の魅力でしょうね。Kassinは先週紹介したTibless『Afro-Beat-Ado』にも参加していましたね。

「Lost In The Paradise」
『Caetano Veloso』(1969年)収録曲。Norah Jonesの大ヒット「Don't Know Why」の作者としても知られる米国人SSW、Jesse Harrisがギターで参加しています。少し寂しげですが、ソフト&メロウな雰囲気は『Astrolabio』に通じるものがあります。

Jesse HarrisはMarisa Monte『O Que Voce Quer Saber De Verdade』(2011年)にも参加していましたし、ブラジル人アーティストとの交流が目立ちますね。

「Nine Out Of Ten」
『Transa』(1972年)収録曲。管楽器&打楽器グループLeitieres Leite & Orkestra Rumpilezzをフィーチャー。躍動する素晴らしいアンサンブルで盛り上げてくれます。

「In The Hot Sun Of A Christmas Day」
『Caetano Veloso』(1971年)収録曲。Caetanoと共に国外退去を命じられたGilberto Gilとの共作曲。クリスマスをテーマに母国ブラジルの現状を皮肉っぽく歌ったものです。ここでは元Barao VermelhoのギタリストRoberto Frejatのドブロをフィーチャー。アーシーな味わいの仕上がりがグッド!

「The Empty Boat」
『Caetano Veloso』(1969年)収録曲。Tom Ze「Ma」をサンプリングしたエクスペリメンタル・テイストな仕上り。この曲の持つダークな雰囲気を21世紀スタイルで聴かせてくれます。

「London, London」
『Caetano Veloso』(1971年)収録曲。前述のように母が歌うこの曲を聴いて育ったというAlexiaの思い出の1曲。この曲に本作の魅力が凝縮されています。この曲を愛して止まないAlexiaの思いが優しく包み込んでくれます。デビュー作『Astrolabio』で素晴らしい手腕を示したDadiがギター、マンドリン、ピアノで参加しています。
http://www.youtube.com/watch?v=2UeBZUVm99M

「It's A Long Way」
『Transa』(1972年)収録曲。The Beatles「The Long and Winding Road」に因んだ曲です。現代的なフォーキー・カヴァーに仕上がっています。元TitasのCharles Gavinがドラムで参加しています。

「If You Hold A Stone」
『Caetano Veloso』(1971年)収録曲。ブラジルを代表する女性芸術家Lygia Clark(1920-1988年)に捧げられた1曲。ラストはAlexiaの弾き語りで余韻を残したままアルバムの幕は閉じます。

ご興味のある方は、Caetano Velosoのオリジナルもチェックを!

『Caetano Veloso』(1969年)
Caetano Veloso (Irene)

『Caetano Veloso』(1971年)
Caetano Veloso (A Little More Blue)

『Transa』(1972年)
トランザ(紙ジャケット仕様)
posted by ez at 00:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする