2012年10月30日

Eugene McDaniels『Headless Heroes of the Apocalypse』

前作『Outlaw』からグッとジャズ色を強めた1枚☆Eugene Mcdaniels『Headless Heroes of the Apocalypse』
Headless Heroes of the Apocalypse
発表年:1971年
ez的ジャンル:摩訶不思議ニューソウル
気分は... :この独特の雰囲気にヤラれます...

今回は名曲「Feel Like Makin' Love」の作者として知られる黒人シンガー/ソングライターEugene Mcdaniels(Gene McDaniels)が1971年にリリースした『Headless Heroes of the Apocalypse』です。

Eugene Mcdanielsの紹介は『Outlaw』(1970年)に続き2回目となります。

前回『Outlaw』を紹介したのは2009年でしたが、昨年惜しくも他界してしまいました。

前作『Outlaw』はアーシー&ブルージーな印象が強かったニューソウル作品でしたが、本作『Headless Heroes of the Apocalypse』はジャズ色が目立つスピリチュアルなニューソウル作品に仕上がっています。ただし、このジャズ色が強いソウルでブルージーなクロスオーヴァー感覚は同時期のニューソウル作品と比較しても異彩を放っていると思います。

レコーディング・メンバーはEugene Mcdaniels(vo、g)、Harry Whitaker(p)、Gary King(el-b)、Miroslav Vitous(b)、Alphonse Mouzon(ds)、Richie Resnikoff(g)、Carla Cargill(vo)。特にMiroslav Vitous、Alphonse MouzonというWeather Reportのメンバー2人の参加が、アルバムにクロスオーヴァー感覚を与えているのだと思います。プロデュースは前作『Outlaw』に続きJoel Dornが務めています。

ニューソウルとしての魅力は勿論、スピリチュアル・ジャズ/ブラック・ジャズ的な魅力も感じます。また、サンプリング大定番「Jagger the Dagger」をはじめ、殆どの曲がサンプリング・ソースになっているのでHip-Hop好きの人も楽しめるはずです。

絶叫するEugeneと2人の侍が映るジャケ同様、サウンドも摩訶不思議な感覚です。そのため、いつ聴いても新鮮な印象を受ける1枚です。

全曲紹介しときやす。

「The Lord is Back」
オープニングはロック・フィーリングも感じられるファンキー・チューン。格好良さでいえばアルバム随一かも?
http://www.youtube.com/watch?v=3kYkNECfgGw

「Jagger the Dagger」
本作のハイライトと呼べる独特のダークな雰囲気にグッとくるスピリチュアル・ソウル・チューン。ダーク&ミステリアスなサウンドがクセになります。
http://www.youtube.com/watch?v=yHMnIf4u5ak

A Tribe Called Quest「Ham N' Eggs」をはじめ、Masta Ace Incorporated「Jeep Ass Niguh (Remix)」、The Beatnuts「Third of the Trio」、Krispy 3「We Don't Go Pop Like Bubble Gum」、Gravediggaz「Nowhere to Run, Nowhere to Hide」、Organized Konfusion「Black Sunday」、Down South「Tractors, Rakes & Hoes」、Nottie Head Alliance「Straight From Da Streets」、Non Phixion「The Full Monty」、De La Soul「Just Havin' a Ball」等のサンプリング・ソースになっています。また、Breakestraがカヴァーしています。

The Beatnuts「Third of the Trio」
 http://www.youtube.com/watch?v=Nl--RXvqq_0
Gravediggaz「Nowhere to Run, Nowhere to Hide」
 http://www.youtube.com/watch?v=LrSgpusp7PA
Organized Konfusion「Black Sunday」
 http://www.youtube.com/watch?v=EyLqmHyQCE4
Down South「Tractors, Rakes & Hoes」
 http://www.youtube.com/watch?v=u4SSMi-xyZ8
Nottie Head Alliance「Straight From Da Streets」
 http://www.youtube.com/watch?v=BwkD_icStxY
Non Phixion「The Full Monty」
 http://www.youtube.com/watch?v=FOM41tstPIQ
De La Soul「Just Havin' a Ball」
 http://www.youtube.com/watch?v=l7uKahvYRMQ
Breakestra「Jagger the Dagger」
 http://www.youtube.com/watch?v=cjEwDb-1SoM

「Lovin' Man」
クロスオーヴァー感覚のメロウ・サウンドがなかなか心地好い仕上がり。Lifers Group「Short Life of a Gangsta」のサンプリング・ソースにもなっています。
http://www.youtube.com/watch?v=6cHcedMlBLQ

Lifers Group「Short Life of a Gangsta」
 http://www.youtube.com/watch?v=Bevlo-5dULE

「Headless Heroes」
クロスオーヴァー色の強いタイトル曲。音だけ聴いているとジャズ色の強いシティ・ミュージックって雰囲気さえありますね。
http://www.youtube.com/watch?v=4bXCJVEOF-E

Pete Rock & C.L. Smooth「Soul Brother #1」、Eric B. & Rakim「Pass the Hand Grenade」、Beastie Boys feat. Q-Tip「Get It Together」のサンプリング・ソースにもなっています。

Pete Rock & C.L. Smooth「Soul Brother #1」
 http://www.youtube.com/watch?v=lvT7gEhTw6k
Eric B. & Rakim「Pass the Hand Grenade」
 http://www.youtube.com/watch?v=pR1lNLyOSds
Beastie Boys feat. Q-Tip「Get It Together」
 http://www.youtube.com/watch?v=pzRKkXk56iE

「Susan Jane」
前曲から一転、前作『Outlaw』の雰囲気に近いBob Dylan風のフォーキーな仕上がり。
http://www.youtube.com/watch?v=w0e2mHlgFqo

「Freedom Death Dance」
「Jagger the Dagger」のPart2と呼びたくなるようなスピリチュアル・ソウル・チューン。ソウルでジャズでブルージーな独特の雰囲気がたまりません。後半のクロスオーヴァーな盛り上がりがいい感じです。
http://www.youtube.com/watch?v=x5VBzoeM80E

Pete Rock & C.L. Smooth「Act Like You Know」、Figure Uv Speech「Keep the Faith」のサンプリング・ソースとなっています。

Pete Rock & C.L. Smooth「Act Like You Know」
 http://www.youtube.com/watch?v=5Mes12ZikPw
Figure Uv Speech「Keep the Faith」
 http://www.youtube.com/watch?v=YK9NT-rb5YE

「Supermarket Blues」
イントロのブレイクがなかなか格好良いソウルでジャズでブルースな仕上がり。まるでBob Dylanの如く言葉を畳み掛けるヴォーカルはラップのようにさえ聴こえてきます。
http://www.youtube.com/watch?v=xeF9L7FB_Fw

Jungle Brothers「I'm in Love With Indica」、Quasimoto「Return of the Loop Digga」、People Under the Stairs「Stay Home」等のサンプリング・ソースになっています。

Jungle Brothers「I'm in Love With Indica」
 http://www.youtube.com/watch?v=YF_Mf3eKdXY
People Under the Stairs「Stay Home」
 http://www.youtube.com/watch?v=nMMED9WapHQ

「The Parasite (For Buffy)」
ラストはスピリチュアルな雰囲気も漂うソウル・チューン。Eugene Mcdanielsのヴォーカルは独特の温かみがありますね。Cesar Comanche feat. Stage Presence「The Downpour」のサンプリング・ソースになっています。Miroslav Vitousのベースが目立っています。フリージャズ状態のエンディングはいかにも本作らしいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=HPbO2GjMgjQ

Cesar Comanche feat. Stage Presence「The Downpour」
 http://www.youtube.com/watch?v=wm24SefgJu0

未聴の方は『Outlaw』(1970年)もセットでどうぞ!

『Outlaw』(1970年)
Outlaw

『Outlaw』『Headless Heroes of the Apocalypse』の2in1CDもあります。

『Outlaw/Headless Heroes of the Apocalypse』 ※2in1CD
Headless Heroes of Apocalypse / Outlaw
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2012年10月29日

Youssou N'Dour & Le Super Etoile De Dakar『Immigres』

Youssouのプリミティブな魅力を堪能できる1枚☆Youssou N'Dour & Le Super Etoile De Dakar『Immigres』
Immigres
発表年:1984年
ez的ジャンル:セネガル産ワールド・ミュージック
気分は... :プリミティブな魅力!

今回はセネガル出身の世界的ミュージシャンYoussou N'Dourが1988年にリリースした『Immigres』です。

Youssou N'Dourの紹介は、『The Lion』(1989年)、『Set』(1990年)に続き3回目となります。

元々は1984年にレコーディングし、同年フランスでリリースされた作品ですが、1988年にVirgin RecordsのEarthworksレーベルから再リリースされました。

Virginと契約したYoussouの本格的な世界進出アルバム第1弾は『The Lion』(1989年)ですが、その前の簡単な自己紹介的な意味合いで再リリースされた作品といった位置づけかもしれませんね。

僕がYoussou N'Dourというアーティストの名を知ったのも本作や『Nelson Mandela』(1986年)あたりだったと思います。ただし、実際にアルバムを購入したのは『The Lion』が最初でしたが・・・

当時はワールド・ミュージック・ブームの真っ只中であり、その中で最も注目されたアーティストの一人がYoussou N'Dourでした。

そんな影響で『The Lion』(1989年)から『Set』(1990年)、『Eyes Open』(1992年)あたりまでは熱心にアルバムを聴き込んだ記憶があります。『The Guide (Wommat)』(1994年)以降も作品は購入していましたが、だんだんお付き合いで購入といった感じになってしまいました。

僕にとってのYoussou N'Dourは『The Lion』(1989年)、『Set』(1990年)という2枚のアルバムの印象が強いです。どちらのアルバムも僕のお気に入りであることに間違いありませんが、良くも悪くも世界進出仕様のひと手間(プロダクション)が加わっているのも事実です。

その意味で本作『Immigres』はYoussou N'Dour本来の音をダイレクトに楽しめる作品だと思います。Fela KutiKing Sunny Adeといったアフリカ音楽を世界に知らしめた先人達のようなインパクトには欠けますが、当時のセネガルのリアルなダンス・ミュージックを満喫できます。

全4曲35分にも満たない長さですが、Youssouのプリミティブな魅力を堪能しましょう。

全曲紹介しときやす。

「Immigres/Bitim Rew」
Youssou N'Dour作。Youssouらしいアフリカン・グルーヴを堪能できるタイトル曲。アフリカン・パーカッションが紡ぎ出すリズムとYoussouのハイ・トーン・ヴォーカルが生み出す開放的グルーヴが実に心地好いです。終盤の盛り上がりもいい感じ!
http://www.youtube.com/watch?v=EwtezlZbdss

「Pitche Mi」
ベースで参加しているKabou Gueyeの作品。哀愁メロディ&ギターが印象的な叙情チューン。
http://www.youtube.com/watch?v=rHbQK55B4es

「Taaw」
Youssou N'Dour作。僕の一番のお気に入り。ギター&アフリカン・パーカッションが織り成すアフリカン・グルーヴには生命感に溢れています。少し前に紹介したカナダの現行アフロ・ファンク・バンドThe Souljazz Orchestraが好きな人は気に入るグルーヴだと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=cUl2yiKx3oI

「Badou」
Youssou N'Dour作。ゆったりとしたリズムをバックにYoussouらしい味わい深いヴォーカルを聴かせてくれます。聴き込むほどに芳醇な味わいが増してきます。
http://www.youtube.com/watch?v=EhWIYHxPjHQ

Youssou N'Dourの過去記事もご参照下さい。

『The Lion』(1989年)
Lion

『Set』(1990年)
Set
posted by ez at 00:23| Comment(2) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年10月28日

Robin McKelle & The Flytones『Soul Flower』

実力派女性ジャズ・シンガーがソウル/R&Bバンドを従えたソウル・アルバム☆Robin McKelle『Soul Flower』
ソウル・フラワー
発表年:2012年
ez的ジャンル:女性ジャズ・シンガー系ソウル/R&B
気分は... :今聴きたいソウルはジャズ・コーナーにある!

今回は実力派女性ジャズ・シンガーRobin McKelleの最新作『Soul Flower』です。ソウル好きが聴くべき新作ジャズ・アルバムです。

Robin McKelleは1976年N.Y.生まれの女性ジャズ・シンガー。

2004年のモンク・ヴォーカル・ジャズ・コンペで3位入賞したことで注目を集め、1stアルバム『Introducing Robin McKelle』(2006年)でデビューしたのを皮切りに、2nd『Modern Antique』(2008年)、3rd『Mess Around』(2010年)といったアルバムをリリースしています。

前作『Mess Around』(2010年)でソウルへのアプローチを強めたRobinですが、4thとなる最新作『Soul Flower』ではソウル/R&BバンドThe Flytonesを従え、ソウルへのアプローチを強めています。内容的にはジャズ・アルバムよりもソウル・アルバムの呼称が相応しいと思います。

Robin自身がプロデュースを務め、Robin McKelle(vo)、 Ben Stivers(key)、 Derek Nievergelt(el-b)、 Adrian Harpham(ds、per)、 Al Street(g)、 Scott Aruda(tp)、 Mike Tucker(ts)、 Clayton DeWalt(tb)といったメンバーがレコーディングに参加しています。

さらにベテラン男性ソウル・シンガーLee Fieldsや今最も旬な男性ジャズ・シンガーGregory Porterがゲスト参加しています。

Gregory Porterは先週紹介した新作アルバムThe Rongetz Foundation『Brooklyn Butterfly Session』にもゲスト参加していました。このあたりからもGregory Porterへの注目度の高さがおわかりいただけると思います。

さて、『Soul Flower』に話を戻すと、パワフル&ソウルフルでありながらジャズ・シンガーならではのテクニカルな部分も併せ持つRobin McKelleのスケールの大きな魅力が全開のソウル・アルバムに仕上がっています。全体としては60年代モータウン&アトランティック・テイストのソウル・サウンドを2012年のセンスでまとめた趣です。

ジャケからして60年代モードですよね。

きっとRobin McKelleはNina SimoneやAretha Franklinが大好きなんだろうなぁ、と感じさせてくれるアルバムです。

Robin McKelleGregory Porterといった最近ソウルを感じさせくれるシンガーは、CDショップのソウル/R&Bコーナーではなくジャズ・コーナーに置いてあります。Gregory Porterはサウンドはジャズですが、温かみのあるヴォーカルはソウルを感じます。

ソウル好きはソウル/R&Bコーナーに止まらず、ジャズ・コーナーまで足を伸ばすべきかもしれませんね。

全曲紹介しときやす。

「So It Goes」
ソウルフルなオルガンとメロウなエレピが交錯するソウル・バラード。少し抑えたRobinのソウルフル・ヴォーカルは貫録十分です。

「Tell You One Thing」
Martha & The Vandellasあたりが聴きたくなる60年代モータウン風のキャッチーな仕上がり。

「Nothing's Really Changed」
前曲がモータウン風ならば本曲はアトランティック風です。Aretha Franklinを意識したかのようなRobinのヴォーカルがいい感じ!
http://www.youtube.com/watch?v=-0aRpupmPdc ※ライブ音源

「Fairytale Ending」
僕の一番のお気に入り。ポップなメロディにときめくソウル・グルーヴ。本作でBacharach作品をカヴァーしていますが、Bacharach作品のソウル・カヴァーといった趣があります。クラブジャズやソウルフルなクロスオーヴァー・チューンとセットで聴くのもグッド!一度聴くと最低3回はリピートしたくなります。
http://www.youtube.com/watch?v=bsbWuksIceI ※ライブ音源

「Miss You Madly」
これも大好き!この曲にもBacharach作品のソウル・カヴァー的な雰囲気があります。メロウ&ソウルフルなエレピの音色とRobinのヴォーカルがよくマッチしています。
http://www.youtube.com/watch?v=1gQEMjeuRng

「Don't Give Up」
ジャズ出身らしい小粋なセンスに溢れたソウル・チューン。どこかのどかな雰囲気が漂うのがいいです。

「Walk On By」
Hal David/Burt Bacharach作の名曲カヴァー(リジナルはDionne Warwick)。ここではモータウン風のリズムによる軽快なカヴァーに仕上げています。

本曲について、当ブログではa href="http://eastzono.seesaa.net/article/123308752.html">Cal Tjader、Average White BandGloria GaynorThe Four King CousinsThe CarnivalPucho & The Latin Soul BrothersGimmicksChristopher Scottのカヴァーも紹介済みです。ご興味のある方はそれらの記事もご参照下さい。

「To Love Somebody」
Bee Geesのヒット曲カヴァー(Barry Gibb/Robin Gibb作)。当ブログでは『Bee Gees 1st』に収録されたオリジナルやP. P. Arnoldのカヴァーを紹介済みです。ここではLee Fieldsとのデュエットにより、味わいのあるソウル・バラードとして聴かせてくれます。Lee Fieldsのシブいヴォーカルもグッド!

「Change」
バックのサウンドも妖艶なRobinのヴォーカルもビッチな雰囲気です。ファンキーなオルガン・サウンドが格好良いですね。

「I'm Ready」
ホーン隊のアンサンブルがいい感じのアトランティック風の仕上がり。Aretha Franklinへのリスペクトを感じます。

「Love's Work」
Gregory Porterをフィーチャー。旬な男女ジャズ・シンガー2人による素敵なソウル・チューンです。聴いているだけで心がほっこりします。やはりこの2人は素晴らしい!
http://www.youtube.com/watch?v=C86z2gIBgB8 ※ライブ音源

「I'm A Fool To Want You」
Joel S. Herron/Frank Sinatra/Jack Wolf作。ラストはFrank Sinatraでお馴染みのスタンダード・カヴァー。ジャズ・シンガーらしい選曲ですが、哀愁ソウル・モードのヴォーカルで締め括ってくれます
http://www.youtube.com/watch?v=wXK9QvnBOR4

Robin McKelleの他作品もチェックを!

『Introducing Robin McKelle』(2006年)
Introducing Robin Mckelle

『Modern Antique』(2008年)
モダン・アンティーク

『Mess Around』(2010年)
Mess Around

先週もプッシュしましたが、話題の男性ジャズ・シンガーGregory Porterの作品もぜひチェックを!

Gregory Porter『Water』(2011年)
Water

Gregory Porter『Be Good』(2012年)
Be Good
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2012年10月27日

Isabelle Aubret『Isabelle Aubret』

人気シャンソン歌手によるフレンチ・ボッサ作品☆Isabelle Aubret『Isabelle Aubret
イザベル・オーブレ
発表年:1971年
ez的ジャンル:シャンソン系フレンチ・ボッサ
気分は... :ギア・チェンジ!

今回はフランスの人気シャンソン歌手Isabelle Aubretが1971年にリリースしたフレンチ・ボッサ・アルバム『Isabelle Aubret』(1971年)です。

Isabelle Aubretは1938年フランス、リール生まれ。僕の場合、リールと聞いて、思い浮かぶのはプロ・サッカー・チームだけですが・・・

1962年に「Un Premier Amour(邦題:はじめての愛)」でユーロビジョン・ソング・コンテストのグランプリに輝き、売れっ子歌手の仲間入りを果たします。しかし、そんな絶頂期い交通事故に遭い、活動を中断せざるを得なくなります。しかし、不死鳥の如くカムバックを果たし、70年代以降も勢力的に活動しているようです。

本来はもっと書くべきことがある歌手なのかもしれませんが、あまり詳しく知りませんのでこの程度で・・・

Isabelle Aubretのキャリアを踏まえれば、ボサノヴァへ接近した本作『Isabelle Aubret』(1971年)は異色作なのだと思います。

アルバムはEdu LoboJorge BenAntonio Carlos JobimLuiz Bonfaといったブラジル人アーティストの有名曲カヴァーで占められた前半と、当時のフランスのヒット曲カヴァーで占められた後半という構成です。

シャンソン歌手ならではの哀愁感が漂う後半と、開放的かつキュート&セクシーな前半のコントラストが印象的です。

個人的には前半のボサノヴァ・パートが全てのアルバムですが、それだけでもゲットする価値のある1枚だと思います。

雰囲気だけではない、しっかりした歌を堪能できるフレンチ・ボッサ作品ですよ!

全曲紹介しときやす。

「Casa Forte」
Edu Loboの人気曲カヴァー。当ブログではEdu Loboのオリジナル、Elis ReginaSergio Mendes & Brasil '66のカヴァーを紹介済みです。この曲の持つミステリアスな雰囲気とIsabelleの歌声がフィットしていると思います。本曲といえば、魅惑のスキャット・パートがお馴染みですが、本ヴァージョンでも満喫できます。Alain Goraguerのアレンジもグッド!
http://www.youtube.com/watch?v=mhz7nbcD2gA

「Adieu Tristesse」
Antonio Carlos Jobim/Vinicius de Morais作の名曲「Felicidade」のカヴァー。大人の色気を感じるIsabelleのフレンチ・ヴォーカルがたまりません。本作で僕の一番のお気に入りです。
http://www.youtube.com/watch?v=M0nrwU8B_2k

当ブログではRamsey Lewis TrioKenny DrewMilton NascimentoSirius BClaude Ciari, Bernard Gerard And The Batucada's SevenDiana PantonTania Mariaのカヴァーも紹介済みです。ご興味のある方はそれらの記事もご参照下さい。

「La Ville Est La」
Jorge Ben作。名曲「Mas Que Nada」のフランス語カヴァー。フランス語の語感がいい感じです。また、他の曲以上にキュートなIsabelleの歌声が印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=xrzCY7TKCZI

当ブログではSergio Mendes & Brasil'66Tamba TrioLill LindforsSteen Rasmussen Feat. Josefine CronholmOscar Petersonのヴァージョンを紹介済みです。ご興味のある方はそれらの記事もご参照下さい。

「La Chanson D'Orphee」
Antonio Maria/Luiz Bonfa作のボサノヴァ名曲「Manha De Carnaval(カーニバルの朝)」のカヴァー。哀愁モードのフレンチ・ヴォーカルは一番Isabelle Aubretらしいのかもしれませんね。

当ブログではDexter GordonGerry MulliganBalancoAstrud GilbertoJack Marshall & Shelly ManneSteen Rasmussen Feat. Josefine CronholmOscar PetersonAkua AllrichClaude Ciari, Bernard Gerard And The Batucada's SevenDiana PantonCountry Comfortのカヴァーも紹介済みです。ご興味のある方はそれらの記事もご参照下さい。

「Pour Nous」
Edu Lobo「Arrastao」のカヴァー。当ブログでは『A Musica De Edu Lobo Por Edu Lobo』に収録されたLoboヴァージョンを紹介済みです。Elis Reginaの熱唱でも知られる曲ですね。「Adieu Tristesse」と並ぶ僕のお気に入り。軽やかかつエレガントな雰囲気にグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=3PHUcMrr2LI

ここまでが前半のボサノヴァ・パートです。

「Les Enfants」
Gilles Olivier/Maurice Fanon作。緩急つけた哀愁モードが印象的です。Isabelle Aubret本来の姿を垣間見ることができます。

「Aimer A Perdre La Raison」
Jean Ferrat/Louis Aragon作。甘酸っぱい雰囲気の哀愁フレンチ・ポップ。

「Des Jardins Melancoliques」
Alain Goraguer/Serge Lama作。情感豊かに歌い上げる哀愁フレンチ・ポップ。

「Parce Que」
Claudine Daubisy/Roland Vincent作。後半ではこの曲が一番好きです。アコースティックな哀愁メロディにグッときます。

「Les Derniers Tsiganes」
Jean Ferrat/Michelle Senlis作。ラストはエスニック風のミステリアスな雰囲気で締め括ってくれます。

どうせならば、前半のボサノヴァ・モードでアルバム1枚作って欲しかった気もします。
でも哀愁モードの後半との対比があるからこそ前半部分が面白いのかもしれませんね。
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2012年10月26日

Marisa Monte『Barulhinho Bom(A Great Noise)』

スタジオ録音とライブ、MPBの歌姫の魅力がテンコ盛り☆Marisa Monte『Barulhinho Bom(A Great Noise)』
Great Noise
発表年:1996年
ez的ジャンル:MPBの歌姫
気分は... :エロいジャケでどん引きしないで!

今回はMPBの歌姫Marisa Monte『Barulhinho Bom(A Great Noise)』(1996年)です。

これまで当ブログで紹介したMarisa Monte作品は以下の5枚。

 『Marisa Monte(MM)』(1989年)
 『Mais』(1991年)
 『Verde Anil Amarelo Cor de Rosa e Carvao』(1994年)
 『Universo Ao Meu Redor』(2006年)
 『O Que Voce Quer Saber De Verdade』(2011年)

また、Carlinhos BrownArnaldo Antunesによるスーパー・トリオTribalistasのアルバム『Tribalistas』(2002年)も紹介済みです。

本作『Barulhinho Bom』はライヴ11曲+スタジオ録音7曲という変則2枚組CDとして本国ブラジルで発売された作品です。また、『A Great Noise』の英題で1枚組CDもリリースされています。僕が所有するのは『A Great Noise』の方です。

Marisa MonteArto Lindsayが共同プロデュース。また、スタジオ録音の数曲はCarlinhos Brownが共同プロデュースしています。

全体としては、デビュー作『Marisa Monte(MM)』、2nd『Mais』(1991年)、3rd『Verde Anil Amarelo Cor de Rosa e Carvao』(1994年)とMPBの歌姫として階段を着実にステップアップしてきたMarisa第1幕の集大成といった印象を受けます。

ライブの方はCesinha(ds)、Dadi(b)、Davi Moraes(g)、Fernando Caneca(g)、Marco Lobo(per)、Monica Millet(per)、Lanlan(per)、Waldonys Menezes(accordion)といったメンバーをバックに従え、『Mais』『Verde Anil Amarelo Cor de Rosa e Carvao』からの楽曲を中心とした自信に満ちたMarisaのパフォーマンスを堪能できます。

スタジオ録音の方は、Arto Lindsay、Carlinhos Brownのセンスを上手く織り交ぜた先進サウンドで楽しませてくれます。特に天才ミュージシャンCarlinhos BrownとのコラボはTribalistasを予感させます。レコーディングにはライブのメンバーに加え、Melvin Gibbs(b)、Bernie Worrell(key)、Andres Levin(sampling)等も参加しています。

Marisa Monteの魅力がテンコ盛りの濃厚な全18曲です。
躊躇してしまう人がいるかもしれませんが、内容は折紙付です!

全曲紹介しときやす。※『A Great Noise』の曲順

「Arrepio」
Carlinhos Brown作。Carlinhos BrownとMarisa Monteのコラボ。Carlinhos Brownの個性がMarisaと上手く調和しています。

「Magamalabares」
Carlinhos Brown作。Carlinhos Brownらしいパーカッシヴ感を活かしつつ、エレガントなオーケストレーションも配した爽快チューンに仕上がっています。隠し味でアヴァンギャルド感も効かせているのがいいですね。Melvin Gibbsもレコーディングに参加しています。
http://www.youtube.com/watch?v=cdyycNt9jjI

「Chuva no Brejo」
Moraes Moreira作。ライブのメンバーに加え、Arto Lindsay作品でお馴染みAndres Levinも参加しています。爽快な華やかさのあるMPBチューンに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=dfKP9NjmiwE

「Cerebro Eletronico」
Gilberto Gil作。オリジナルは『Gilberto Gil』(1969年)に収録されています。Arto Lindsay(g)やBernie Worrell(key)も参加し、Arto Lindsayのセンスによるアヴァンギャルドな仕上がりがグッド!
http://www.youtube.com/watch?v=Cpps1b3TQK4

「Tempos Modernos」
Lulu Santos作。Lulu Santosのオリジナルは『Tempos Modernos』(1982年)に収録されています。オリジナルとは雰囲気の異なる妖艶な格好良さのあるバンド・サウンドを聴かせてくれます。Arto LindsayとMarisaのコンビの成熟度を感じさせます。
http://www.youtube.com/watch?v=_M2T9ktg3os

「Maraca」
Carlinhos Brown作。この曲でもCarlinhos Brownらしい独特のリズムで楽しませてくれます。Bernie Worrellのハモンド・オルガンもグッド!

「Blanco」
Haroldo Campos/Octavio Paz作。スタジオ録音の余韻を味わうかのようなアウトロ的な仕上がり。

ここまでがスタジオ録音。

「Panis Et Circenses」
ここからライブ。Gilberto Gil/Caetano Veloso作。名作『Tropicalia: ou Panis Et Circencis』に収録されていたOs Mutantesによるソフト・サイケ・チューンをカヴァー。ソフト・サイケのイメージが強い楽曲ですが、ここでは生き生きとした演奏でMarisa Monteワールドに惹き込んでくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=-Vjci0Hx7l0

「De Noite Na Cama」
Caetano Veloso作。『Mais』収録。Davi Moraes、Fernando Canecaの見事なギター・アンサンブルが印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=P1wZI7EJwVQ

「Beija Eu」
Marisa Monte/Arnaldo Antunes/Arto Lindsay作。『Mais』収録。『Mais』からのヒット曲を堂々と歌い上げます。いつ聴いても惹き込まれるMarisa Monteを代表する名曲ですね。この曲にはアコーディオン・サウンドがよく似合います。
http://www.youtube.com/watch?v=40MdALPWnTw

「Give Me Love (Give Me Peace On Earth)」
George Harrison作。Georgeのソロ第3作『Living in the Material World』(1973年)収録の名曲をカヴァー。意外な選曲のような気もしますが、一方でMarisaにぴったりのカヴァーという気もします。バック・バンドと一体化したMarisaの素晴らしいパフォーマンを披露してくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=J30BChx_P2Q

「Ainda Lembro」
Marisa Monte//Nando Reis作。『Mais』収録。『Mais』で僕の一番のお気に入りだった曲です。『Mais』ではEd Mottaとデュエットしていました。「Beija Eu」と並び、この曲もいつ聴いてもグッときますね。

「A Menina Danca」
Luiz Galvao/Moraes Moreira作。トロピカリア・バイアーノ第二世代バンドOs Novos Baianosのカヴァー。オリジナルはアルバム『Acabou Chorare』(1972年)に収録されています。このオリジナルのレコーディングには本作でバックを務めるDadiも参加しています。ライブで取り上げられたはその影響があるのかもしれませんね。躍動するバンド・サウンドをバックにMarisaもヴォーカルも絶好調です!

「Danca Da Solidao」
Paulinho da Viola作。『Verde Anil Amarelo Cor de Rosa e Carvao』収録。Paulinho da Violaのオリジナルは『A Danca da Solidao』(1972年)に収録されています。Marisaの哀愁モードの妖艶ヴォーカルがたまりません。
http://www.youtube.com/watch?v=e-fNh-92Lw8

「Danca Da Solidao」
Paulinho da Viola作品のカヴァー。Paulinho da Violaのオリジナルは『A Danca da Solidao』(1972年)に収録されています。ブラジル音楽好きならば相当グッとくる絶品カヴァーに仕上がっています。Gilberto Gilがアコースティック・ギター&コーラス、Celso Fonsecaがエレクトリック・ギターで参加しています。バス・クラリネットのNed Rothenberg、パーカッションのMarcos Suzano等も含めた素晴らしい演奏と気だるく艶やかなMarisaのヴォーカルが一体化したパーフェクトな仕上がりです。

「Ao Meu Redor」
Nando Reis作。『Verde Anil Amarelo Cor de Rosa e Carvao』収録。Waldonys Menezesのアコーディオンが大活躍するモダンなセンスに溢れたパフォーマンスを満喫できます。
http://www.youtube.com/watch?v=dHd2QiwjesU

「Bem Leve」
Marisa Monte/Arnaldo Antunes作。『Verde Anil Amarelo Cor de Rosa e Carvao』収録。哀愁モードの楽曲を少しレイジーな歌声で聴かせてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=_cqyoAS3p4U

「Segue o Seco」
Carlinhos Brown作。『Verde Anil Amarelo Cor de Rosa e Carvao』収録。ビリンバウをはじめとする民族色を強く押し出した演奏を楽しめます。

「O Xote das Meninas」
人気アコーディオン奏者、作曲家、歌手であったLuiz Gonzagaのカヴァー。『Marisa Monte(MM)』収録。『Marisa Monte(MM)』ではレゲエ調の演奏をしていましたが、ここではよりリズミックなサウンドで盛り上げてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=dDb19k8Wc2A

Marisa Monte関連作品の過去記事もご参照下さい。

『Marisa Monte(MM)』(1989年)
マリーザ・モンチ

『Mais』(1991年)
Mais

『Verde Anil Amarelo Cor de Rosa e Carvao(Rose and Charcoal)』(1994年)
ローズ・アンド・チャコール

Tribalistas『Tribalistas』(2002年)
Tribalistas

『Universo Ao Meu Redor』(2006年)
Universo ao Meu Redor

『O Que Voce Quer Saber De Verdade』(2011年)
あなたが本当に知りたいこと
posted by ez at 01:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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