発表年:1973年
ez的ジャンル:国民的歌手系MPB
気分は... :Elisはプラス受信!
最近、僕の中で周囲にいる人を見定める際、マイナス受信orプラス受信という基準を最も重視しています。
物事を被害者意識で受け止め、他者への文句が目立つマイナス受信な人と、何事も善し悪しは自分次第と悟り、前向きに他者へアプローチするプラス受信する人・・・個人的には後者の人と付き合いたいし、自分自身もそういう人間でありたいと切望しています。
こうした事をブログで述べるのは久しぶりですね。最近、ブログに音楽以外の本音を書くといろいろ個人的な利害が絡んでくるので当たり障りのない記述が目立っていましたが、たまにはこれ位書いてもいいでしょう(笑)
今回はElis Reginaの1973年リリース作品『Elis (1973)』です。
前述の流れでいうとElis Reginaという人は、破天荒なイメージもありますが、物事をプラス受信する能力に長け、かつ周囲を巻き込むプラス発信の能力も兼ね備えていたため、国民的歌手としてブラジル国民から支持されたのでしょうね。文句をいってもそこに潔さがあるので許せてしまう人というのが僕のElis Regina像です。
これまで当ブログで紹介してきたブラジルの国民的歌手Elis Reginaの作品は以下の9枚。
『Elis Especial』(1968年)
『Elis, Como e Porque(Como & Porque)』(1969年)
『Aquarela Do Brasil』(1969年) ※Toots Thielemansとの共演
『Elis Regina in London』(1969年)
『Em Pleno Verao』(1970年)
『Ela』(1971年)
『Elis (1972)』(1972年)
『Elis (1974)』(1974年)
『Essa Mulher』(1978年)
前にも書きましたが、『Elis』のタイトルのオリジナル・アルバムを1966年、1972年、1973年、1974年、1977年、1980年にリリースしているのでややこしいです。区別するために、便宜上タイトルの後にリリース年を表記しています。
今回は1972年盤、1973年盤、1977年盤の『Elis』3枚で迷ったのですが、3枚並べてジャケが一番今の時期っぽい1972年盤をセレクトしました。
公私のパートナーとなるCesar Camargo Marianoと組む第2弾アルバムです。Cesar Camargo Marianoが全曲アレンジを担当します。
レコーディングには、Cesar Camargo Mariano(key)、Luizao Maia(b)、Paulinho Braga(ds)、Chico Batera(per)、Ari(g)、Toninho Horta(g)、Maurilio da Silva Santos(tp)、Ubirajara Silva(bandoneon)といったメンバーが参加しています。
前作『Elis (1972)』(1972年)からブラジルの国民的歌手として、ぐっと成熟度を増していったElisですが、本作でもそんな進化するElisの姿を満喫できます。
楽曲的にはGilberto GilおよびJoao Bosco/Aldir Blanc(他者との共作含む)の作品が各4曲、サンバ古典が各2曲という構成です。全体としてElisがより歌詞を重視し、歌詞とサウンドを一体化させたトータル・アーティストとして着実に進化していることが窺える1枚に仕上がっています。
冒頭3曲がミステリアスで抑えた楽曲が並んでいるので、どうしても地味な印象が強いアルバムですが、Elisのトータル・アーティストの才を示したアルバムとして外すことができない1枚だと思います
全曲紹介しときやす。
「Oriente」
Gilberto Gil作。歌詞の中に日本も登場する東洋をテーマにしたオープニング。ミステリアスな空気が包みます。
http://www.youtube.com/watch?v=SlewyLHFxeM
「O Cacador de Esmeralda」
Joao Bosco/Aldir Blanc/Claudio Tolomei作。この曲もミステリアス/スピリチュアルな雰囲気が漂います。Cesar Camargo Marianoによるサウンド・アレンジが印象的です。終盤にはToninho Hortaの美しいギターも堪能できます。
http://www.youtube.com/watch?v=3WcHchhSUAo
「Doente, Morena」
Gilberto Gil作。しっとりとしたElisの歌声を満喫できます。抑えていてもElisの表現力は抜群です。
http://www.youtube.com/watch?v=OTeih6kuc0k
「Agnus Sei」
Joao Bosco/Aldir Blanc作。某有名DJがセレクトするElisのベスト10に入っていた楽曲です。派手さはありませんが、躍動感と重厚感のあるサウンドをバックにElisが凛としたヴォーカルを聴かせてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=1OB0atgmDX4
「Meio de Campo」
Gilberto Gil作。アルバムの中でも人気が高いであろう小粋なジャズ・サンバ・チューン。かつてエスパルスの監督を務めたこともあるサッカー元ブラジル代表の名選手ロベルト・リベリーノのことを歌ったものです。当時彼はコリンチャンス(今年の南米クラブ王者でクラブW杯にも出場)所属でしたが、本作から2年後の1975年にElisがサポーターであったフルミネンセへ移籍しています。Elisのラブコールが実ったのでしょうか(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=Uu-PHfejO6Q
「Cabare」
Joao Bosco/Aldir Blanc作。邦題「キャバレー」。バンドネオンの音が印象的です。(ポルトガル語ですが)アルゼンチン・テイストのElisを楽しめる点で実に興味深い1曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=eWO4mJlKmIA
「Ladeira da Preguica」
Gilberto Gil作。軽快なテンポのElisがお好きな方であれば小気味良いこの曲も気に入るはず!Elisの貫録の歌いっぷりにうっとりです。
http://www.youtube.com/watch?v=IzapUk0S4mA
「Folhas Secas」
Nelson Cavaquinho/Guilherme de Brito作。邦題「枯葉」。エスコーラ・ヂ・サンバの老舗マンゲイラのコンビによる古典サンバをカヴァー。個人的には本作のハイライトだと思います。まどろみながらサウダージ気分で聴きたい1曲に仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=jVU3uvrvTOw
「Comadre」
Joao Bosco/Aldir Blanc作。暗喩で時の軍事政権を批判した歌のようです。国民の声を代弁するかのようなElisの語り口が印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=N5XIP5cEwg8
「E Com Esse Que Eu Vou」
Pedro Caetano作。古典サンバをボッサ・テイストで聴かせてくれます。サウンドのメロウネスだけでいえばアルバム随一かもしれませんね。
http://www.youtube.com/watch?v=cBULXdqX5DM
Elis Regina作品の過去記事もご参照下さい。
『Elis Especial』(1968年)
『Elis, Como e Porque(Como & Porque)』(1969年)
『Aquarela Do Brasil』(1969年)
『Elis Regina in London』(1969年)
『Em Pleno Verao』(1970年)
『Ela』(1971年)
『Elis (1972)』(1972年)
『Elis (1974)』(1974年)
『Essa Mulher』(1978年)