発表年:2012年
ez的ジャンル:ミナス系静かなる音楽
気分は... :聖なる夜は静かなる音楽を聴きながら
クリスマス・イヴですね。
今日は昨日のAndres Beeuwsaert『Cruces』からの流れで、クリスマスを前に僕を虜にしている"静かなる音楽"の新作の1枚Antonio Loureiro『So』です。
当ブログで新作を2日続けて紹介することは通常ありませんが、クリスマス・スペシャルということで!
Antonio Loureiroはブラジル、サンパウロ出身。ミナス・ジェライス連邦大学で作曲と鍵盤打楽器を学んだ現在26歳のマルチ奏者、作曲家です。
2010年にリリースしたデビュー・アルバム『Antonio Loureiro』が各国で高い評価を受け、一躍将来を嘱望される新進気鋭のブラジル人アーティストとして注目を浴びました。日本でもMM誌(僕もかつて約20年間読者でしたが、今は全く読む気がしません)の『ベストアルバム2010』で某評論家が第1位に推したということで話題になりました(個人的にはこういう売り文句は大嫌いですが・・・)。
そして、大好評であった『Antonio Loureiro』に続く第2弾アルバムが本作『So』です。
同じ静かなる音楽でも昨日のAndres Beeuwsaert『Cruces』と比較すると、よりアヴァンギャルドな印象を受ける作品かもしれません。その意味では"静かなる音楽"なのに静かな音とは呼べないかもしれません(なんじゃそりゃ!)。また、彼のキャリアの出発点であるミナスのエッセンスも随所に感じられます。
アルバムには、そのAndres Beeuwsaert(p)やAndresと共作アルバム『Aqui』をリリースしたブラジル人女性シンガーTatiana Parra(vo)、昨日紹介したAndresの『Cruces』にも参加していたSantiago Segret(bandoneon)、本作や『Cruces』と共に新作『Motivo』を昨日大プッシュしたRafael Martini(vo、accordion)、元Mestre Ambrosioのブラジル人男性シンガーSiba(vo)、Alexandre Andres(fl)、等の興味深いアーティストが参加しています。また、そうしたゲスト陣に負けじと、Antonio Loureiroもマルチ奏者ぶりを存分に披露してくれています。
楽曲はすべてAntonio Loureiroのオリジナルです。
知的なアヴァンギャルドな"静かなる音楽"で過ごすクリスマス・イヴというのはいかがでしょうか?
全曲紹介しときやす。
「Pelas Aguas」
邦題「水を想う」。水をテーマに大自然と人間の深いつながりを歌い、環境破壊へ警鐘を鳴らすメッセージ・ソングでアルバムは幕を開けます。途中、先住民の言語も用いられる壮大なスケール感を持った楽曲です。大自然な神秘のようなものが見事に音で表現されています。
「Reza」
邦題「祈り」。Antonioの知的な感覚とアフロ・ブラジリアンな土着的魅力が融合した8分超の大作。静かなる高揚感・躍動感に充ちています。1つの音絵巻といった趣です。Alexandre AndresのフルートやDaniel Santiagoのギターも印象的です。
「Cabe na Minha Ciranda」
邦題「私のシランダ」。元Mestre Ambrosioのブラジル人男性シンガーSibaとの共演。楽曲も彼との共作です。抽象的な歌詞とアヴァンギャルドなサウンドが印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=1hcs2Q3dIPg ※スタジオ・ライブ音源
「Lindeza」
邦題「美しさ」。彼の知的な音楽センスを満喫できる1曲。ブラジル音楽というよりも現代音楽を聴いているイメージですね。Santiago Segretのバンドネオンも聴きどころです。
http://www.youtube.com/watch?v=6gGIHZu8pHA ※スタジオ・ライブ音源
「So」
タイトル曲はAntonio Loureiroらしい知的な"静かなる音楽"を満喫できます。Antonio自身が演奏しているヴァイヴの音色やRafael Martiniのアコーディオンがいいアクセントになっています。
「Parto」
邦題「出産」。Thiago Amudとの共作。アルバムの中でも屈指の美しさを持つ1曲。
「Passagem」
邦題「通路」。美しも神秘的な音世界に惹き込まれます。プログラミングによる電子音も駆使してサウンドに変化をつけています。
「Antidotodesejo」
邦題「欲望解毒剤」。すごい邦題ですね(笑)。不安と希望が交錯する美しも儚い雰囲気がいいですね。
「Boi」
Makely Kaとの共作。ブラジル北東部の民族劇にインスパイアされた楽曲なのだとか。そうやって聴くと、演劇の1シーンのような雰囲気がありますね。
「Luz da Terra」
邦題「地上の光」。Andres Beeuwsaert、Tatiana Parra、Rafael Martiniが参加している注目曲。個人的には本作のハイライトですね。知的センスとミナスらしいプリミティヴな魅力を兼ね備えた美しく感動的な1曲に仕上がっています。まさに聖母マリアの満月の光が海を照らしているかのような音世界です。素晴らしい!
http://www.youtube.com/watch?v=lkJg-BSM0-8
気づいたら昨日のエントリーが2,400回目でした。
以前は100回ごとの区切りで感動していましたが、最近は1つの通過点という感じですかね。
それでも、いい区切りなので多少はこれまでを振り返り、次の100回に向けてのモチベーションにしたいと思います。
このブログで僕が重視しているのは、いつも書いていますが、"年代、ジャンル問わずお気に入り作品を紹介する"というコンセプトを変えないことですね。これだけは第1回のエントリーから今日までブレずに貫き通すことができています。この"年代、ジャンル問わず"というコンセプトこそが、このブログをユニークたらしめている最大の特徴だと勝手に思っています。
一方で、"年代、ジャンル問わず"というコンセプトの範囲内で僕の音楽嗜好も徐々に変化しています。100回単位くらいのスパンで見返してもわかりづらいですが、300〜400回単位くらいで記事を見返すとその傾向がはっきり出ています。
特定のジャンル、特定のアーティストに固執して作品を聴くということがなく、気の赴くままにさまざまなジャンル、アーティストに手を出していくうちに守備範囲が少しずつ広がっているという説明の方が正確かもしれません。ジャンルやアーティストを極めるという音楽の聴き方をされている方から見れば、何とも中途半端な聴き方かもしれませんが(笑)
でも、そのおかげで自分の中でマンネリ感がなく、いつも新鮮な気持ちで音楽を聴くことができています。
これからも当ブログのコンセプトを頑固に貫きつつ、セレクションの"静かなる変化"で新鮮さを保ちたいと思っています。