2013年01月25日

Chaka Khan『I Feel For You』

大ヒット「I Feel For You」、名曲「Through The Fire」収録☆Chaka Khan『I Feel For You』
I Feel for You
発表年:1984年
ez的ジャンル:ダイナマイト・ボーカル系R&B
気分は... :挑戦することを恐れず!

今回はChaka Khanの80年代ヒット作『I Feel For You』(1984年)です。

これまで当ブログで紹介したChaka Khan関連作品は以下の7枚です。

 Rufus
 『Rufusized』(1974年)
 『Rufus Featuring Chaka Khan』(1975年)
 『Ask Rufus』(1977年)
 『Street Player』(1978年)
 Chaka Khan
 『Chaka』(1978年)
 『Naughty』(1980年)
 『What Cha Gonna Do For Me』(1981年)

多くの方がご存知の通り、本作からのシングル「I Feel For You」Prince殿下のカヴァー)が全米シングル・チャート第3位、同R&Bチャート第1位という大ヒットとなり、ソウル/R&Bファンに止まらない、より多くの音楽ファンにChaka Khanの名を知らしめたアルバムです。

また、「I Feel For You」はGrandmaster Melle Melのラップを大きくフィーチャーしており、ソウル/R&BとHip-Hopのコラボを大ヒットにつなげた点でも意味のあるヒット曲でした。今では当たり前のソウル/R&BとHip-Hopのコラボですが、当時は挑戦的な取り組みであったと思います。人気アーティストでありながら、そういった取り組みに挑んだあたりにChaka姐さんの心意気を感じます。

また、本作にはKanye Westをブレイクさせたた「Through The Wire」のサンプリング・ソース「Through The Fire」 も収録されています。

その意味で新旧ラップを語るうえで重要なアルバムといえますね。

敏腕Arif Mardinをメイン・プロデューサーに、David FosterRuss TitelmanJohn RobieJames Newton-Howard/David "Hawk" WolinskiHumberto GaticaJoe MardinRobbie Buchananといったプロデューサー陣が起用されています。

また、David Frank(key、syn)、Mic Murphy(back vo)、Steve Ferrone(ds)、Hamish Stuart(back vo)、Paul Pesco(g)、Philippe Saisse(key、syn、prog)、Nathan East(b)、J.R. Robinson(ds)、Dan Huff(g)、Tony Maiden(g)、Michael Landau(g)、Robbie Buchanan(key、syn、prog)、John Robie(key、syn、prog)、Don Freeman(key、syn)、Michael Sembello(g、back vo)、Reggie Griffin(b、key、syn、prog)、Grandmaster Melle Mel(rap)Stevie Wonder(harmonica)等がレコーディングに参加しています。

80年代半ばならではの打ち込みサウンドが目立つアルバムであり、そのあたりで賛否が分かれるアルバムかもしれません。僕自身も『Chaka』(1978年) 、『Naughty』(1980年)、『What Cha Gonna Do For Me』(1981年)あたりと比較すると、聴く頻度が圧倒的に少ないですね。その意味では多少軽視している部分があったのかもしれません。それでもじっくり聴き、こうして記事にしてみるとなかなか楽しめるアルバムであると再認識しました。

賛否はあるかもしれませんが、Chaka Khanを語るうえでは外せないアルバムであり、手元に置いておきたい1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「This Is My Night」
David Frank/Mic Murphy作。アルバムからの2ndシングルとして全米R&Bチャート第11位となりました。後に「Don't Disturb This Groove」をヒットさせるThe SystemのMic Murphyが作者に名を連ねていますが、確かにそれっぽいエレクトリック・サウンドを聴くことができます。
http://www.youtube.com/watch?v=sy6IUDoL8Bg

「Stronger Than Before」
Burt Bacharach/Bruce Roberts/Carole Bayer Sager作。オリジナルは作者Carole Bayer Sagerの『Sometimes Late At Night』(1981年)に収録されています。オードックスな作りですが、Chakaのヴォーカリストとしての魅力を堪能するためには最適です。
http://www.youtube.com/watch?v=6rGC2AtF7xw

印象的なイントロはCormega「Therapy」、Petter「Stockholm Brinner (Inte) Igen」でサンプリングされています。
Cormega「Therapy」
 http://www.youtube.com/watch?v=TDabim__Bgg
Petter「Stockholm Brinner (Inte) Igen」
 http://www.youtube.com/watch?v=JPR7-u3lZjs

「My Love Is Alive」
70年代ロック好きには知られるGary Wrightの「Dream Weaver」と並ぶヒット・シングル「Love Is Alive」をカヴァー。オリジナルは「Dream Weaver」と同じく『The Dream Weaver』(1975年)に収録されています。ロッキンな雰囲気とシンセ・サウンドを上手く融合したこの時期らしいダンサブル・チューンに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=fraBfj7TjC4

「Eye to Eye」
Don Freeman/Dan Sembello/John Sembello/Michael Sembello作。「Maniac」でお馴染みMichael Sembelloの作品。Russ Titelmanがプロデュースを手掛けています。個人的にはかなり好きな1曲。軽快なシンセ・ポップ風の仕上がり。打ち込みサウンドが嫌味になっていないのがいいですね。Rufus時代の同僚Tony Maidenもギターで参加しています。
http://www.youtube.com/watch?v=g4Y1IB1E500

「La Flamme」
Rhoda Roberts/Philippe Saisse作。この時代らしいスクラッチ、リン・ドラム、シンセ・サウンドで作られた楽曲。「What Cha Gonna Do For Me」Rufus & Chaka Khan「Ain't Nobody by」といった自身のヒット曲がサンプリングされています。
http://www.youtube.com/watch?v=zMr8qogyTAY

「I Feel For You」
前述のように全米シングル・チャート第3位、同R&Bチャート第1位となり、本作を商業的成功へ導いたPrince殿下のカヴァー。殿下のオリジナルは当ブログでも紹介した『Prince』(1979年)に収録されています。実にこの時代らしい1曲ですね。本作で忘れていけないのはいきなりインパクト大のラップで貢献しているGrandmaster Melle Melと印象的なハーモニカを聴かせてくれるStevie Wonderの2人ですね。いきなり♪Chaka Khan〜♪と始まるあのフレーズは元々はGrandmaster Melle Mel & The Furious Fiveの「Step Off」ネタです。また、終盤に「Fingertips Part 2」の声ネタを挿入しているのはStevie Wonderに対するお礼かもしれませんね。
http://www.youtube.com/watch?v=1XV5_WagxZg

Barracuda「Mad Love」、Eminem「Bagpipes From Baghdad」等の元ネタにもなっています。

「Hold Her」
James Newton-Howard/David "Hawk" Wolinski作。Rufus & Chaka Khanの同僚であるDavid Wolinskiの作品だけあってChakaにマッチしたパンチの効いた1曲に仕上がっています。サウンド面では多少ビミョーですが(笑)。Steve Lukatherのギターも聴きどころでは?
http://www.youtube.com/watch?v=t4FMD5QHAGc

冒頭のパワフルなChakaの歌声はE.Kude「Never Let Go」、Yolk「Music 4 Da People」、Dirty Super Car「Get a Grip」といったダンス・トラックでサンプリングされています。

「Through The Fire」
David Foster/Tom Keane/Cynthia Weil作。作者でもあるDavid Fosterがプロデュース&アレンジを手掛けています。「I Feel For You」と並ぶ本作のハイライト。アルバムからの3rdシングルとなりました。本曲といえばKanye Westの名を一躍有名にした「Through The Wire」のサンプリング・ソースとしてあまりに有名ですね。Chakaの歌声と実にマッチした、さすがはDavid Fosterと思わせる名曲ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=ymuWb8xtCsc

当ブログではThe Moleskinsのカヴァーを紹介済みですが、それ以外にもPeabo Bryson、Eliane Elias、DJ Deckstream 、Donald Lawrence等数多くのアーティストがカヴァーしています。
Donald Lawrence「Through The Fire」
 http://www.youtube.com/watch?v=xh7T7Bvafjc

「Caught in the Act」
Arif Mardinの息子Joe MardinとAlec Milsteinの共作。80年代半ばらしいミディアム・ファンクですが、ややインパクトが弱いか?
http://www.youtube.com/watch?v=UeDW0F1AO1Y

「Chinatown」
Chaka Khan/Rhoda Roberts/Philippe Saisse作。ラストはオリエンタル・テイストのミディアム・ファンク。
http://www.youtube.com/watch?v=ex74I8MqY38

Chaka Khan/Rufusの過去記事もご参照下さい。

『Chaka』(1978年)
Chaka

『Naughty』(1980年)
Naughty

『What Cha Gonna Do For Me』(1981年)
What'Cha Gonna Do for Me

Rufus『Rufusized』(1974年)
Rufusized

Rufus『Rufus Featuring Chaka Khan』(1975年)
ルーファス・フィーチャリング・チャカ・カーン(紙ジャケット仕様)

Rufus『Ask Rufus』(1977年)
Ask Rufus

Rufus 『Street Player』(1978年)
ストリート・プレイヤー(紙ジャケット仕様)
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2013年01月23日

Jazzanova『In Between』

Nu Jazz/クロスオーヴァー好き必聴!彼らのセンスが凝縮された1stアルバム☆Jazzanova『In Between』
イン・ビトゥイーン・デラックス・エディション
発表年:2002年
ez的ジャンル:Sonar Kollektiv系Nu Jazz/クロスオーヴァー
気分は... :慌てず、騒がず...

ベルリンを拠点に世界のクラブジャズ/クロスオーヴァーを牽引するプロデューサー/DJユニットJazzanovaの1stアルバム『In Between』(2002年)です。

Axel ReinemerStefan LeiseringRoskow KretschmannAlexander BarckClaas BrielerJurgen Knoblauchによって結成され、自身の活動に加え、他アーティストのプロデュース/リミックス、自らのレーベルSonar Kollektivの運営、様々なコンピ・アルバムの編纂などクラブ・シーンで勢力的に活動するJazzanovaの紹介は2ndアルバム『Of All The Things』(2008年)に続き2回目となります。

コンピ等のせいで数多くアルバムを出している印象もあるJazzanovaですが、純然たるオリジナル・スタジオ・アルバムは『In Between』(2002年)、『Of All The Things』(2008年)の2枚のみなんですよね。なんか意外です。

以前紹介した2nd『Of All The Things』は、アコースティックなサウンドを前面に打ち出し、60年代、70年代ソウルへのオマージュを感じるアルバムに仕上がっていました。

それに対して、本作『In Between』(2002年)は、エレクトリック・ソウル・テイストのNu Jazz/クロスオーヴァー作品に仕上がっています。

リリースから10年以上経った今日聴くとさまざまな意見が出るアルバムかもしれませんが、個人的には『Of All The Things』とのコントラストで聴くと楽しめる1枚です。また、幅広い音楽性を違和感なく統合しているあたりに彼らのセンスを感じます。サンプリング・ソースのセレクトもなかなか興味深いですね。

アルバムにはDavid FriedmanPaul KleberClara HillCapital A吉澤 はじめRob Gallagher、、Valerie EtienneUrsula RuckerHawkeye PhanaticVikter DuplaixDoug HammondDesney Baileyといった多彩なアーティストがゲスト参加しています。

1曲ずつじっくり聴き直すと新発見もあって、なかなか楽しめました。
クラブジャズ/クロスーヴァー好きの方は手元に置いておきたい1枚ですね。

全曲紹介しときやす。

「L.O.V.E. And You & I」
N.Y.出身のジャズ・ヴァイヴ奏者David Friedman、Sonar Kollektiv所属のジャズ・ユニットMicatoneのベーシストPaul Kleberが参加したオープニング。Five Stairsteps & Cubie「Something's Missing」のヴォーカル・サンプリングで幕を開ける壮大なサンプリング・ミュージック。さらにDiana Ross & The Supremes and The Temptations「I'll Try Something New」、The Sylvers「Only One Can Win」のヴォーカル・ネタ、Neil Merryweather & Lynn Carey「Shop Around」、Bobby Hutcherson「Rain Every Thursday」、サディスティック・ミカ・バンド「快傑シルバーチャイルド」、Wilson Big Band「Dirty Feet」のブレイク・ネタ、Catalyst「Uzuri」のエレピ・ネタ、それ以外にもLes DeMerle「A Day in the Life」、Branford Marsalis Quartet feat. Denzel Washington 「Pop Top 40」がサンプリングされています。
http://www.youtube.com/watch?v=hEolsca35hI

「No Use」
Sonar Kollektivに所属する女性シンガーClara Hillをフィーチャー。当時Sonar Kollektiv所属であった男性シンガーGeorg Levinとのデュエット「(I Got) Somebody New」は当ブログでも紹介済みです。しっとりとした中にもミステリアスな魅力があるネオソウル風のメロウ・チューン。シングルにもなりました。
http://www.youtube.com/watch?v=leMzhnK5Cog

「The One-Tet」
フィラデルフィア出身のMCであるCapital Aをフィーチャー。当ブログで紹介した作品でいえば、Tek 9『Simply』Afro-Mystik『Morphology』で彼がフィーチャーされています。クラブジャズ的なアブストラクトHip-Hopチューンに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=ry0hz5Gerxk

「Fade Out」
インタールード的な小曲。George Duke「Capricorn」をサンプリング。
http://www.youtube.com/watch?v=HgWSCUlQw9U

「Hanazono」
Cosmic VillageやSleep Walkerでお馴染みの日本人アーティスト吉澤はじめがピアノで参加。タイトルからして和な雰囲気ですね。詫び・寂び(わび・さび)のクロスオーヴァーといった趣ですが、そこにモーダルなエッセンスも取り込んでしまうあたりが彼らのセンスですね。
http://www.youtube.com/watch?v=m_dASLB3hxM

「Mwela, Mwela (Here I Am) 」
Gallianoの中心人物であったRob Gallagher、そのGallianoの名カヴァー「Prince of Peace」でヴォーカルをとっていたValerie Etienneをフィーチャーしたブロークンビーツ。ダンサブル・チューンを求めている方はまず本曲をチェックを!Webster Lewis「Seasons」をサンプリング。
http://www.youtube.com/watch?v=rV8HK-LfhOA

「Keep Falling」
フィラデルフィア出身の女性詩人Ursula RuckerとラッパーHawkeye Phanaticをフィーチャー。Ursula RuckerはThe Roots4Heroの作品でお馴染みですね。当ブログで紹介した作品でいえば、Richard Earnshaw『In Time』にも参加しています。意外にネオソウル好きの人が聴くとフィットするのでは?と思わせるアングラ・ジャジーHip-Hop風の仕上がり。
http://www.youtube.com/watch?v=CZZ3Ig_Ovpw

「Cyclic」
インタールード。

「Another New Day」
ミステリアスなジャズ・ファンク調ブレイクビーツ。Harumi「Hunters of Heaven」、Egberto Gismonti「Egberto」といったサンプリング・ソースを巧みに使っています。個人的に大好きな1曲。
http://www.youtube.com/watch?v=kwmuCv4r3Lk

「Place In Between」
インタールード。

「Soon」
フィラデルフィア出身のシンガー・ソングライター/プロデューサー/DJであるVikter Duplaixのヴォーカルをフィーチャー。シングルにもなりました。当ブログでは本作と同じ2002年にリリースされた彼の1stソロ『International Affairs』も紹介済みです。『International Affairs』はネオ・フィリー+クロスオーヴァーなR&B作品でしたが、ムーグ・シンセの音色が印象的な変拍子エレクトリック・ソウル・チューンである本曲もその流れにあります。
http://www.youtube.com/watch?v=UTy4M8qs0u4

「Dance The Dance」
ベテラン・ジャズ・ドラマー/シンガーDoug Hammondのヴォーカルをフィーチャー。前半は。EW&F的なカリンバの音色が印象的です。後半はアフロ・サンバのリズムでズシリとくるダンス・チューンで盛り上げてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=cLl_VN7-0us

「Sub-Atlantic」
インタールード。

「Glow And Glare」
80年代風のレトロなエレクトリック感と21世紀クロスオーヴァーな感覚を融合させたインスト・チューン。
http://www.youtube.com/watch?v=WsW1bXQTI30

「E-Ovation」
インタールード。

「Takes You Back (Unexpected Dub)」
ベルリン在住のUSシンガーDesney Baileyをフィーチャー。Jazzanovaのサウンド・センスを満喫できるエレクトリックなダンス・チューン。
http://www.youtube.com/watch?v=SrbIe4xuidE

「Wasted Time」
ラストは再びVikter Duplaixをフィーチャー。ラストはダウンテンポなメロウ・ソウルでしっとりと締め括ってくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=fUgF9kpoi4c

オリジナル・スタジオ新作はリリースされないんですかね!

『Of All The Things』(2008年)
Of All the Things
posted by ez at 00:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年01月22日

Astrud Gilberto『Now』

"ボサノヴァの女王"からの脱却を目指した意欲作☆Astrud Gilberto『Now』
ナウ(紙)
発表年:1972年
ez的ジャンル:ボサノヴァの女王の新境地
気分は... :ハーボウル実現!

NFLのカンファレンス・チャンピオンシップは49ersとレイブンズが勝ち、レイブンズのジョン・ハーボーHC、49ersのジム・ハーボーHCによる史上初のスーパーボウル兄弟HC対決が実現することになりました。

NFCチャンピオンシップは0対17から逆転した49ersの底力を感じました。個人的にはファルコンズを応援していましたが、スーパーボウル進出に相応しい戦いぶりだったのはやはり49ersでしたね。

AFCチャンピオンシップはペイトリオッツが意外に脆かったですね。前半は僕の予想通りの展開でしたが、後半はペイトリオッツが無得点で終わるとは思いませんでした。レイ・ルイスの花道を飾るべくレイブンズには何か特別なものが宿っている気がします。

ハーボウルが楽しみですね。

今回は"ボサノヴァの女王"Astrud Gilbertoが1972年にリリースした『Now』(1972年)です。

これまで当ブログで紹介したAstrud Gilberto作品は以下の4枚。

 『The Shadow Of Your Smile』(1965年)
 『A Certain Smile A Certain Sadness』(1966年)
 ※Walter Wanderley Trioとの共演
 『Beach Samba』(1967年)
 『Talkin' Verve』 ※Verve時代のベスト盤

本作は長年所属していたVerveを離れ、CTIからリリースされたStanley Turrentineとの共演盤
『Gilberto With Turrentine』(1971年)に続いて、Perceptionからリリースされた作品です。

Astrud Gilberto本人がプロデュースを手掛け、Eumir Deodatoがアレンジを手掛けています。

レコーディングには、Eumir Deodato(key、g、back vo)、Al Gaffa(g)、Mike Longo(key)、Bob Cranshaw(b)、Patrick Adams(b)、Ron Carter(b)、Billy Cobham(ds)、Mickey Rocker(ds)、Airto Moreira(per)、Maria Toledo(back vo)、Nick La Sorsa(back vo)が参加しています。ジャズ・ミュージシャンが多数参加しているのが特徴ですね。バック・コーラスのMaria ToledoLuiz Bonfaの奥方だったアノ人です。

どうしてもボサノヴァ/ポップスの印象が強い人ですが、そういった印象とは異なるAstrud Gilbertoに出会える作品です。彼女の出身であるブラジル北東部の伝統的なリズムの積極的な取り込みやジャズ・ミュージシャンとの交流が、Astrud Gilbertoを新境地へ踏み込ませたといったところでしょうか。その意味でEumir Deodatoの貢献が大きいかもしれませんね。

今の僕ならば、最も好きなAstrud Gilbertoのアルバムとして本作を挙げると思います。

全曲紹介しときやす。

「Zigy Zigy Za」
オススメその1。Astrud Gilberto作。「Take It Easy My Brother Charlie」と並ぶ僕のお気に入り。ブラジル北東部の伝統的なリズムに合わせたAstrudのファニー・ヴォーカルとDeodatoの本領発揮のグルーヴィーなクロスオーヴァー・サウンドを見事に融合させたオープニングです。この疾走感はたまりません。
http://www.youtube.com/watch?v=892rcoj4XNY

「Make Love To Me」
Eumir Deodato作。甘酸っぱいムードのアコースティック・ポップ。
http://www.youtube.com/watch?v=9_FF0uUjHMQ

「Baiao」
Humberto Teixeira/Luiz Gonzaga作。まさにバイアォンな1曲。ブラジル北東部の伝統的サウンドを強く意識した本作らしい仕上りなのでは?

「Touching You」
David Jordan/Patrick Adams作。USポップ感覚のメロウ・チューン。美しいストリングスが盛り上げてくれます。Al Gaffaのギター・ソロもなかなか。
http://www.youtube.com/watch?v=LzE96U-4o6c

「Gingele」
オススメその2。Astrud Gilberto作。グルーヴィーなサンバ・チューン。アフロ・ブラジルなリズムとAstrud らしい爽快メロウな雰囲気のバランスがいい感じです。
http://www.youtube.com/watch?v=pb7vq1q7Tmw

「Take It Easy My Brother Charlie」
オススメその3。本作のハイライト。Jorge Ben「Take It Easy My Brother Charles」のカヴァーです。僕の保有する国内盤ライナーノーツにはAstrud Gilberto/David Jordan作という誤った説明がなされていますが・・・。小粋なメロウ・ボッサ・グルーヴに仕上がった本ヴァージョンはキュートな魅力に溢れています。
http://www.youtube.com/watch?v=EWv4mLbh8xo

個人的には本曲を初めて知ったのはカヒミ・カリィのヴァージョンでした。個人的には本ヴァージョンとカヒミ・カリィのヴァージョンをセットで聴くのがお気に入りです。
Jorge Ben「Take It Easy My Brother Charles」
 http://www.youtube.com/watch?v=FiQ3tGAXPK0
カヒミ・カリィ「Take It Easy My Brother Charlie」
 http://www.youtube.com/watch?v=xKJubav5zNs

「Where Have You Been?」
Astrud Gilberto作。哀愁モードのポップ・チューン。大人の恋愛映画のエンディング・テーマといった雰囲気もありますね。
http://www.youtube.com/watch?v=3mYXsgWxFe8

「General Da Banda」
オススメその4。Jose Alcides/Satiro de Melo/Tancredo Silva作。当ブログではIvan Linsのカヴァーも紹介済みです。メロウ・サンバ・チューンに仕上がっています。キュートなAstrudなヴォーカルとサンバのリズムが意外にマッチしています。

「Bridges」
オススメその5。Milton Nascimentoの名曲「Travessia」の英語カヴァー。ブラジル音楽をあまり聴かない人でもエヴェーグリーンなポップ・チューンとして楽しめるはずです。優しさに包まれた雰囲気の好カヴァーに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=gxLqSW28LWs

「Daybreak」
Joe Knowlton & Bing Bingham作。ラストはUSのフォーク・デュオJoe & Bingのカヴァー。哀愁モードのフォーキー・チューンで締め括ってくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=1g1yk3EYkDo

他のAstrud Gilberto作品もチェックを!

『The Astrud Gilberto Album』(1965年)
おいしい水

『The Shadow Of Your Smile』(1965年)
いそしぎ

『Look To The Rainbow』(1966年)
ルック・トゥ・ザ・レインボウ

『A Certain Smile A Certain Sadness』(1966年)
A Certain Smile, A Certain Sadness

『Beach Samba』(1967年)
ビーチ・サンバ(紙ジャケット仕様)

『Windy』(1968年)
ウィンディ(紙ジャケット仕様)

『September 17, 1969』(1969年)
ジルベルト・イン・セプテンバー

『I Haven't Got Anything Better To Do』(1970年)
あなたと夜を

Astrud Gilberto With Stanley Turrentine『Gilberto With Turrentine』(1971年)
ジルベルト・ウィズ・タレンタイン
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2013年01月21日

Black Sheep『A Wolf In Sheep's Clothing』

Native Tongues好きには外せない1枚☆Black Sheep『A Wolf In Sheep's Clothing』
Wolf in Sheep's
発表年:1991年
ez的ジャンル:Native Tongues系Hip-Hop
気分は... :羊の皮を被った狼

今回は90年代Hip-Hop好きには忘れられない1枚Black Sheepの1stアルバム『A Wolf In Sheep's Clothing』(1991年)の紹介です。

DresMista Lawngeの2人によるN.Y.のHip-HopユニットBlack Sheepの紹介は『Non-Fiction』(1994年)に続き2回目となります。

De La SoulA Tribe Called Quest
Jungle Brothersでお馴染みのNative Tonguesに所属していたBlack Sheepのこのデビュー作はユーモラスなインパクトがありましたね。90年代前半のHip-Hopの充実ぶりを象徴する1枚だと思います。

アルバムを聴いていなくとも、このジャケは多くの方が観たことがあるのでは?

トラック良し、とぼけた雰囲気のフロウ良し、ユルい感じのHip-Hop好きにはたまらない作品ですね。特にドラム、ベースのネタ使いが僕好みでグッときます。

シングルにもなった「Flavor of the Month」「The Choice is Yours (Revisited)」「Strobelite Honey」といったクラシックをはじめ、全編聴きどころ満載の1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Intro」
De La SoulA Tribe Called QuestJungle Brothersの名も登場するイントロ。Fantasy Three「It's Your Rock」ネタ。

「U Mean I'm Not」
ギャングスタ・ラッパーになった夢を見たというネタのハードコアなオープニングで最初から笑わせてくれます。Bar-Kays「Do You See What I See?」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=IIiVMe9Sq20

「Butt in the Meantime」
Joe Farrell「Upon this Rock」、Paul Butterfield「I Don't Wanna Go」ネタのリズムにBoogie Down Productions「The Bridge Is Over」のピアノ・ネタが絡みます。ユルいラップでNative Tonguesらしさを満喫できます。
http://www.youtube.com/watch?v=NVZDAtpMdLc

「Have U.N.E. Pull」
The Shades of Brown「The Soil I Tilled for You」のリズム・ネタ、Michel Colombier「Pourquois Pas?」のエレピ・ネタをサンプリング。Angelique Bellamyがヴォーカルで参加。マイク・タイソンの名が出てくるあたりが当時のN.Y.らしいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=n2vxAvR1PjE

「Strobelite Honey」
この曲もシングルになりました。「The Choice is Yours (Revisited)」と並ぶ僕のお気に入りです。Young & Company「I Like What You're Doing to Me」ネタをベースに、The S.O.S. Band「Take Your Time (Do It Right)」ネタやVaughan Mason & Crew「Jammin' Big Guitar」ネタが絡んでくるトラックは僕好み。
http://www.youtube.com/watch?v=A_JtkSmw808

「Are You Mad?」
スキット。

「The Choice Is Yours」
後述する「The Choice is Yours (Revisited)」の方がお馴染みかもしれませんが、こちらのヴァージョンもいい感じ。Johnny Hammond「Big Sur Suite」のオルガン・ネタ、Iron Butterfly「Her Favorite Style」ネタ、Bar-Kays「Humpin'」のギター・ネタが印象的です。Native Tonguesらしさがよく出ているのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=IEwvOG3W4nA

「To Whom It May Concern」
何処かとぼけた感じのフロウがいいですね。Gary Bartz「Celestial Blues」、 Les McCann「North Carolina」、Fuzzy Haskins「Love's Now Is Forever」、Luther Vandross「Don't You Know That?」Doug E. Fresh & Slick Rick「La Di Da Di」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=OlymeGRDSXw

「Similak Child」
印象的なJefferson Airplane「Today」ネタをはじめ、Three Dog Night「I Can Hear You Calling」ネタのブレイク、Ramsey LewisRamsey Lewis「Les Fleur」ネタのピアノ、The Guess Who「Three More Days」ネタのフルート、Mahavishnu Orchestra「You Know You Know 」 ネタが絡む哀愁トラックとNative Tonguesらしいフロウの組み合わせが意外にマッチしています。
http://www.youtube.com/watch?v=Hvz0tELNH4w

「Try Counting Sheep」
僕のお気に入り曲の1つ。ロックでファンクなトラックにユルめのフロウが絡み実にリズミカルです。Rare Earth「(I Know) I'm Losing You」、The Johnny Almond Music Machine「Solar Level」、Jimi Hendrix & Curtis Knight「Got to Have It」ネタ。

「Flavor of the Month」
彼らの1stシングルでありHip-Hopクラシック。Bubble Gum Machine「I Wonder」ネタで怪しげな雰囲気が醸し出し、そこにJoe Farrell「Upon this Rock」ネタのドラムとギターが絡んできます。そしてHerb Alpert「In a Little Spanish Town」のホーン・ネタが盛り上げてくれます。ジャケそのままのPVも印象的ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=F01fzPwBwc4

「La Menage」
Q-Tipをフィーチャー。The Guess Who「Three More Days」ネタのベースとFunk, Inc.「God Only Knows」ネタのドラムにMouth & MacNeal「A.B.C.」の妖しげな声ネタが絡む気怠いトラックが印象的です。そんなトラックにユルめのフロウがよくマッチしています。Q-Tipも短い登場ですが存在感があってQ-Tipファンをニンマリさせてくれます。途中でDoug E. Fresh & Slick Rick「La Di Da Di」のフレーズが聴こえてくるのも嬉しいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=LRQJZBsAR9g

「L.A.S.M.」
スキット。

「Gimme the Finga」
Mashmakhan「I Know I've Been Wrong」、Charles Kynard「Momma Jive」、Eumir Deodato「Rhapsody in Blue」ネタのトラックがなかなか格好良い1曲。
http://www.youtube.com/watch?v=KqLsI70C4F0

「Hoes We Knows」
Native Tonguesらしいユルいフロウが魅力。Brother Jack McDuff「Hunk of Funk」をサンプリング。

「Go to Hail」
スキット。

「Black with N.V. (No Vision)」
The New Birth「I Wash My Hands of the Whole Damn Deal」
Freddie Hubbard「Povo」

「Pass the 40」
Chi Ali、'Baby' Chris Lighty、Dave Gossett、Hot Dogをフィーチャーしたマイク・リレーを楽しめる1曲。Jimmy McGriff「Blue Juice」Eddie Harris「Carry on Brother」をサンプリング。
http://www.youtube.com/watch?v=N9ApnU9rLiw

「Blunted 10」
彼らの原点を垣間見ることができるような1曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=xnnLq5CCXBs

「For Doz That Slept」
Millie Jackson「Phuck U Symphony」の声ネタを使ったトラックが印象的です。何処となくユーモラスな感じがいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=hq7HqKqp1Vc

「The Choice is Yours (Revisited)」
当初シングルのみに収録されていた曲でしたが、シングルが好評であったため急遽アルバムにも収録されたクラシック。オリジナルもいいですが、やはりこの曲の格好良さを満喫できるのは本ヴァージョンですね。McCoy Tyner「Impressions」ネタのベースに、The New Birth「Keep on Doin It」のブレイクやSweet Linda Divine「I'd Say It Again」の声ネタがいい感じで絡みます。Johnny Hammond「Big Sur Suite」、Iron Butterfly「Her Favorite Style」ネタも登場します。
http://www.youtube.com/watch?v=K9F5xcpjDMU

「Yes」
ラストは「Have U.N.E. Pull」のパート2といった趣。The Shades of Brown「The Soil I Tilled for You」、Michel Colombier「Pourquoi Pas?」ネタ。

『Non-Fiction』(1994年)
Non-Fiction
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2013年01月20日

Andre Solomko『Ou Es-Tu Maintenant?』

フィンランド発、至極のメロウAOR/フュージョン☆Andre Solomko『Ou Es-Tu Maintenant?』
ウ・エチュ・マントゥノン?
発表年:2012年
ez的ジャンル:北欧系AOR/フュージョン
気分は... :70〜80年代へタイム・スリップ

今回はフィンランドのフュージョン・グループVinyl Jamを率いるAndre SolomkoによるAOR/フュージョン・アルバム『Ou Es-Tu Maintenant?』(2012年)です。

Vinyl Jam名義で『Vinyl Jam』(2007年)、『Kino』(2009年)という2枚のアルバムをリリースしていますが、本作はAndre Solomko名義でのリリースとなっています。

Andre Solomkoは1965年ウクライナ生まれ、旧ソビエト連邦下で1989年にAndreはEquinoxというバンドを結成し、政府の支援を得てソ連全土をツアーするなど勢力的な活動を行っていました。しかし、91年のソ連崩壊とともにバンド活動を維持することが難しくなり、失望したAndreはフィンランドへ移住します。

フィンランドで再起の機会をうかがっていたAndreは2005年に自身のスタジオVinyl Jamを設立しました。その後、Vinyl Jam名義で前述の2枚のアルバムをリリースしています。

そこで、かつての仲間であるEquinoxのバンド・メンバーに声を掛け、再結集してレコーディングしたのが本作収録の「I Recall」です。まるでMichael FranksのようなLa SayのヴォーカルをフィーチャーしたこのメロウAORは各方面で話題となります。

そして、これを気に入ったフランスのFavorite Recordingsの主宰者Pascal Riouxが協力して制作された作品が本作『Ou Es-Tu Maintenant?』です。

レコーディングには、Andre Solomko(ss、as、fl、per)、La Say(vo)、Maru(vo)、Jarkko Lepisto(ds)、Peter Christiansson(b)、Valery Nikitin(el-p、viola)、Vladimir Rajapu(g)、Denis Ani(el-p、harmonica)、Sebastian Teir(key)等が参加しています。

アルバム全体としては、70〜80年代AOR/フュージョンやアナログ・サウンドへのこだわりが感じられる1枚に仕上がっています。

北欧クラブジャズというよりも、70〜80年代アーバン・メロウ好きの人が一番フィットする1枚だと思います。ソフトなヴォーカル、メロウな鍵盤サウンドやロマンティックなサックスを堪能あれ!

全曲紹介しときやす。

「I Recall」
前述のようにMichael FranksのようなLa Sayのヴォーカルをフィーチャーした本作のハイライト。多くの人が本曲狙いでこのアルバムを購入するのでは?70〜80年代へタイム・スリップといった趣のメロウAORです。AndreのソロがAOR気分を盛り上げてくれます。サンセット・モードにぴったりな1曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=2dPmuMB0cPY

「Grooving With Grover In Paradise」
Maruの女性スキャットをフィーチャーしたメロウ・フュージョン。Andreのサックス・プレイを堪能できます。まさにパラダイス・モードの仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=nqfle2BAoHo

「Summer 77」
この曲もMaruの女性スキャットをフィーチャー。エレピのメロウな響きにグッとくるサマー・モードのフュージョン・チューン。後半のクラヴィネットの絡みもいい感じです。

「Ou Es-Tu Maintenant?」
タイトル曲はLa Sayをフィーチャー。前述のようにアナログ・サウンドへのこだわりがよく表れたメロウ・フュージョンです。

「We Had Some Good Years Together」
Maruの女性ヴォーカルをフィーチャー。ハーモニカの音色にグッとくるサンセット・メロウ・グルーヴ。

「I Recall (Instrumental)」
「I Recall」のインスト・ヴァージョン。これは数合わせ的な1曲という気もします。

ここからの2曲は国内盤CDのボーナス・トラックです。

「Disaster」
『Kino』(2009年)収録曲。本編同様、アナログ・サウンドへのこだわりが感じられるメロウなジャズ・ファンク・チューンです。

「Afternoon」
『Vinyl Jam』(2007年)収録曲。ロマンティックなサンセットAORはかなり僕好みです。

いかにも日本人が好きそうな1枚だと思います。
posted by ez at 00:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする