2013年02月28日

Robert Glasper『Double Booked』

祝グラミー受賞!『Black Radio』への助走的作品!☆Robert Glasper『Double Booked』
Double Booked
発表年:2009年
ez的ジャンル:先鋭ジャズ・ピアニスト
気分は... :祝グラミー受賞!

今回は先日のグラミー賞でBest R&B Albumを受賞した先鋭ジャズ・ピアニストRobert Glasper『Double-Booked』(2009年)です。

Robert Glasperの紹介は、Robert Glasper Experiment名義の『Black Radio』(2012年)、そしてのリミックスEP『Black Radio Recovered: The Remix EP』に続き3回目となります。

先鋭ジャズ・ピアニストRobert Glasper(p)がCasey Benjamin(sax、fl、vo)、Chris Dave(ds)、Derrick Hodge(el-b)と結成したクロスーヴァー路線のユニットRobert Glasper Experiment初のフル・アルバム『Black Radio』のリリースは、ジャズ界のみならずR&B/Hip-Hopシーンにも大きなインパクトを与えました。それはR&B部門でのグラミー受賞が証明しています。

普段ジャズやクロスオーヴァーに見向きもしないR&B/Hip-Hopリスナーの方でも、R&B/Hip-Hop系アーティストの豪華ゲストに惹かれて購入していたのでは?

そんな歴史的名盤となった『Black Radio』の1つ前の作品となるのが今日紹介する『Double-Booked』(2009年)です。

Robert Glasper Experimen名義の初リリース作品は、Blue Noteの企画アルバム『Blue Note Street』(2007年)に収録されたWayne Shorter「Oriental Folk Song」のカヴァー「Oriental Folk Song Rework (Me N U)」となります。そして、Robert Glasper Experimen名義の演奏がまとまって聴くことができる最初の作品が本作『Double-Booked』です。

本作『Double-Booked』(2009年)では、全12曲中、前半6曲がRobert Glasper(p)、Vicente Archer(b)、Chris Dave(ds)によるRobert Glasper Trio名義でオーソドックスなピアノ・トリオでの演奏、後半6曲では前述のメンバーによるRobert Glasper Experiment名義でHip-Hop/R&B等のエッセンスを採り入れたクロスオーヴァーな演奏を行っています。

Experimentの演奏には、Mos DefBilalも参加しています。

ただし、Experiment名義の演奏も『Black Radio』の印象とは異なるものであり、まだまだ試行錯誤の状態といった感じです。逆に、その手探り感を楽しむのも面白いのでは?

演奏面では、Glasper本人のピアノ/エレピが素晴らしいのは当然ですが、Trio、Experiment両方の演奏に参加しているChris Daveのドラムの存在感が圧倒的です。Erykah Baduのバックバンド等R&B系ミュージシャンの印象が強い人ですが、Trioの演奏ではらしからぬジャズ的な演奏で魅了してくれます。言い過ぎかもしれませんが、Chris Daveの存在があってこそ『Black Radio』を制作することができたという気もします。

『Black Radio』と同じものを期待して聴くと肩透かしを喰うかもしれませんが、Robert Glasperという先鋭ジャズ・ピアニストを知るうえでは実に興味深い1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Intro」
アルバムのイントロ。

「No Worries」
Chris Dave、Vicente Archerが紹介され、美しく華麗に・・・適度にエキサイティングといった絶妙の塩梅のトリオ演奏に聴き入ってしまいます。

「Yes I'm Country (And That's OK)」
Glasperの美しいピアノを満喫しつつ、静かに疾走していく感じがいいですね。Chris Daveの疾走感を演出するドラムもいいですね。

「Downtime」
Glasperのピアノの美しい旋律に耳を傾けても、ついついChris Daveのドラムが気になっちゃいます(笑)

「59 South」
Glasperのピアノに対して変幻自在に対応するChris Daveのドラム・プレイが素晴らしいですね。Glasperがドラマーに彼を選んだのが納得できます。

「Think Of One」
Thelonious Monk作。Monkの演奏は『Monk』(1954年)で聴くことができます。GlasperのMonkへのリスペクトに溢れたピアノを満喫できます。クロスオーヴァーの側面のみならず、こうした演奏からも先鋭ジャズ・ピアニストとしての才能を実感できます。

ここまでがTrio名義です。そして、これ以降がExperiment名義のクロスオーヴァーな演奏となります。

「4eva」
Mos Defが参加していますが、Experimentパートのイントロといった雰囲気ですね。クレジットにはありませんが、声のパートは?uestloveらしいです。

「Butterfly」
Bennie Maupin/Herbie Hancock作。Hancockのオリジナルは当ブログでも紹介した『Thrust』(1974年)に収録されています。ここではCasey BenjaminのヴォコーダーとGlasperのエレピが印象的です。また、Chris DaveのドラムもTrio以上に激しくなっています。

「Festival」
「Butterfly」や本曲は『Black Radio』で聴かれたジャズとR&B/Hip-Hopの融合というよりも70年代ジャズ・ファンクへのオマージュといった色合いが強いですね。
http://www.youtube.com/watch?v=bjS76L7Gvnw

「For You」
Casey Benjamin/Sameer Gupta作。Casey Benjaminのヴォコーダーをフィーチャーしたメロウな小曲。

「All Matter」
Bilalをフィーチャー。以前にも紹介したとおり、Glasperとネオ・ソウル・シンガーBilalは大学のクラスメイトでした。ただし、モロにネオ・ソウルのような楽曲ではなく、どちらかといえばジャズのエッセンスもかなり強い演奏となっています。Bilalヴァージョンは彼のアルバム『Airtight's Revenge』(2010年)に収録されています。

「Open Mind」
『Black Radio』にも参加していたJahi Sundance(ジャズ・サックス奏者Oliver Lakeの息子)がターンテーブルで参加しています。また、前曲に続きBilalが参加しています。本作で最も『Black Radio』を予感させる楽曲かもしれませんね。

Robert Glasperの他作品もチェックを!

『Mood』(2003年)
MOOD

『Canvas』(2005年)
Canvas

『In My Element』(2007年)
In My Element

『Black Radio』(2012年)
ブラック・レディオ

『Black Radio Recovered: The Remix EP』(2012年)
Black Radio Recovered: the Remix Ep
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2013年02月27日

Hugo Montenegro & His Orchestra『Moog Power』

アメリカン・ラウンジ巨匠によるムーグ名盤☆Hugo Montenegro & His Orchestra『Moog Power』
Moog Power
発表年:1969年
ez的ジャンル:ムーグ系ポップス/ロック・カヴァー
気分は... :ムーグ・パワー全開!

アメリカン・ラウンジ巨匠Hugo Montenegro のムーグ名盤『Moog Power』(1969年)です。

Hugo Montenegro (1925-1981年)は数多くの映画音楽やムード音楽を手掛けた作曲家。そんな巨匠が手掛けたムーグ・シンセでポップス/ロックのヒット曲・名曲をカヴァーした作品が本作『Moog Power』(1969年)です。

彼の作品群のなかでは異色作でしょうが、今日では最も再評価の高いアルバムかもしれませんね。

アルバムには「Hair/Aquarius」

インパクト大のジャケも最高です。このケバケバしさはまさにムーグ・パワー全開です(笑)

タイトルとジャケだけからは、ケバケバしいムーグ・サウンドをイメージするかもしれませんが、決して最初にムーグありきのアルバムではなく、ヒット曲・名曲をムーグ・サウンドで引き立てるというスタイルが貫かれています。

その意味では、ムーグ・サウンド云々に関係なく、純粋にポップス/ロックのカヴァー集として楽しめます。また、Classics IV、Joe South、The Spiral Starecase、Harry Nilsson、Tommy Roe、Jimmy Webb等選曲のセンスの良さも光ります。

ヴォーカル曲の数曲ではGene Morfordがヴォーカルを務めています。

Hip-Hop好きの人であれば、「Moog Power」「Dizzy」といった定番曲をはじめ、サンプリング・ソースも数多く収録されています。

いろいろな意味で興味が尽きない1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Hair/Aquarius」
Gerome Ragni/James Rado/Gerome Ragni作。オープニングはブロードウェイ・ミュージカル『Hair』の挿入歌。「Aquarius」は5th Dimensionの大ヒットでもお馴染みですね。本ヴァージョンは「Hair」のイントロでムーグらしさを満喫できます。続く「Aquarius」は5th Dimensionばりのポップな仕上がりにムーグが加わった感じですね。
http://www.youtube.com/watch?v=XGmZCdWiyBA

Mobb Deep「Solidified」のサンプリング・ソースになっています。
Mobb Deep「Solidified」
 http://www.youtube.com/watch?v=lww7CKvj2wM

「Traces」
Buddy Buie/James Cobb/Emory Gordy作。Classics IVの大ヒット曲をカヴァー。哀愁メロディにムーグが絡みますが、純粋なカヴァーとしてもなかなかの出来栄えです。
http://www.youtube.com/watch?v=tpCd9uWd7Bw

Kohfie Konnect「Creme De La Creme」のサンプリング・ソースになっています。
Kohfie Konnect「Creme De La Creme」
 http://www.youtube.com/watch?v=W5f-YjahdAM

「Touch Me」
The Doorsの大ヒット曲をカヴァー。オリジナルは当ブログでも紹介した『The Soft Parade』(1969年)に収録されています。スペイシー感覚と甘酸っぱい香りが交互する「Touch Me」を楽しめます。Satanicpornocultshop「Lesson Ugh」でサンプリングされています。
http://www.youtube.com/watch?v=aGO_z9iVOMc

「The Greatest Love」
Joe South作品のカヴァー。オリジナルは『Introspect』(1968年)に収録されています。オリジナルの雰囲気のそのまま受け継ぎながら、軽く隠し味程度にムーグが効いています。純粋にポップス好きの人が聴いてグッとくる仕上がりだと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=dyi4QYBkN_I

「More Today Than Yesterday」
The Spiral Starecaseのヒット曲をカヴァー(Pat Upton作)。本カヴァーはいかにもムーグ・カヴァーといったサウンドを楽しめます。オリジナルの爽快さを残したままムーグの布で包み込んだといった雰囲気ですかね。
http://www.youtube.com/watch?v=JJmPT7Uugio

「Don't Leave Me」
Harry Nilsson作。Nilssonのオリジナルは『Aerial Ballet』(1968年)に収録されています。わりと地味であったNilssonのオリジナルと比較すると、かなりポップな仕上がりです。これはかなりの好カヴァーだと思います。ムーグの使い方も自然で決して浮いていません。
http://www.youtube.com/watch?v=hx7v9rOICJI

「Moog Power」
Hugo Montenegro作。本作唯一のオリジナルです。タイトルの通り、ムーグのパワーに漲ったタイトル曲です。ムーグ感を満喫したいのであれば、やはりこの曲」が一番でしょうね。また、ドラム・ブレイクの格好良さもこの曲の魅力を高めることに大きく貢献しています。
http://www.youtube.com/watch?v=STFf3UZRwQs

日本人であれば立花ハジメのカヴァーをお聴きの方もいるのでは?実は僕も収録アルバム『Bambi』(1991年)をリアルタイムで愛聴していたので、立花ハジメ版「Moog Power」をよく聴いていました。その当時はHugo Montenegroのオリジナルは聴いたことがありませんでしたが・・・

本曲はサンプリング・ソースとしても定番です。Malcolm McLaren「Buffalo Gals」、Stetsasonic「Bust That Groove」「Step Troop '88」、Just Too Fresh「Popular Demand」、Just Too Fresh「Popular Demand」、MC Cam「My Daydream」、The Click「Oldschool」、X-Ecutioners「The Turntablist Anthem」、Peanut Butter Wolf「Casio」、Arsonists「Flashback」 、DJ Talkback「The Return of Scratching」、DJ Static「My Definition」等数多くの曲でサンプリングされています。

Malcolm McLaren「Buffalo Gals」
 http://www.youtube.com/watch?v=ckjhFWWlyoY
MC Cam「My Daydream」
 http://www.youtube.com/watch?v=qJzWmGQl1Jk
The Click「Oldschool」
 http://www.youtube.com/watch?v=ze9GbJyFpPA
Arsonists「Flashback」
 http://www.youtube.com/watch?v=j2uKLAycJFc

「Dizzy」
Tommy Roeのヒット曲をカヴァー。ポップなメリハリが効いており、ある意味オリジナル以上に聴きやすいのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=MQVsZ8DKll0

「Moog Power」同様、本曲も定番サンプリング・ソースとしてもお馴染みですね。Pete Rock & C.L. Smooth「Carmel City」、Lord Finesse「Hip 2 Da Game (Remix)」、Busta Rhymes feat. Q-Tip「Ill Vibe」、A+ feat. Q-Tip「Me and My Microphone」、Large Professor「Listen (Blast Off)」、Mic Geronimo「Unstoppable」、Indelible MC's「Weight」、7L & Esoteric feat. Inspectah Deck「Speaking Real Words」、Bobby Hughes Experience「Sahara 72」、Ugly Duckling「Dizzy」、Kero One「Keep It Alive!」、Jay-Z「Interlude」、Hubert Daviz「Those Dizzy Days」、Tek「It's Not a Game」、Jehst「Killer Instinct」、Ras Kass feat. Bishop Lamont, Mk Asante and Talib Kweli「Godz N the Hood」等でサンプリングされています。個人的には当ブログでも紹介したKero One「Keep It Alive!」がお気に入り。

Pete Rock & C.L. Smooth「Carmel City」
 http://www.youtube.com/watch?v=dy8mu2_RbzA
Large Professor「Listen (Blast Off)」
 http://www.youtube.com/watch?v=kj0CucG2KnI
7L & Esoteric feat. Inspectah Deck「Speaking Real Words」
 http://www.youtube.com/watch?v=5CIzNlFUpmc
Bobby Hughes Experience「Sahara 72」
 http://www.youtube.com/watch?v=K-HTuLqPKXQ
Ugly Duckling「Dizzy」
 http://www.youtube.com/watch?v=PYE3fviP9E8
Kero One「Keep It Alive!」
 http://www.youtube.com/watch?v=wc5hLaaf2n4
Hubert Daviz「Those Dizzy Days」
 http://www.youtube.com/watch?v=wEmAs3ERQE8

「MacArthur Park (Allegro Part III)」
Jimmy Webb作の名曲をカヴァー。Richard Harris、Donna Summer等数多くのアーティストにカヴァーされています。サウンドの格好良さでいえばアルバムで一番ですね。ムーグの使い方も絶妙です。映画音楽で培ったドラマティックなアレンジもグッド!数ある本曲のカヴァーのなかでも最高峰の1つなのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=eNM6187cznE

「You Showed Me」
The Turtlesによってシングル・リリースされたThe Byrds作品(Gene Clark/Jim McGuinn作)。美しいメロディに上手くムーグが絡んでいます。
http://www.youtube.com/watch?v=AnvUM56sgLQ

「My Way」
Claude Francois/Jacques Revaux/Paul Anka作。ラストはポピュラー・スタンダード「My Way」のカヴァー。ムーグを巧みに使い、この曲の仰々しさをうまく中和しているのがグッド!
http://www.youtube.com/watch?v=A64Lq1VTtCg

本作とは路線が異なるかもしれませんが、Hugo Montenegro の他作品もどうぞ!

『Candy's Theme and Other Sweets 』(1965年)
Candy's Theme

『The Man From U.N.C.L.E 』(1965年)
THE MAN FROM U.N.C.L.E.

『Come Spy With Me 』(1967年)
カム・スパイ・ウィズ・ミー(紙ジャケット仕様)

『Hang 'Em High 』(1968年)
HANG'EM HIGH

『Lady in Cement』(1968年)
Lady in Cement

『Good Vibrations』(1969年)
グッド・ヴァイブレーション

『Mammy Blue』(1971年)
Mammy Blue

『Love Theme from the Godfather (Quadrophonic) 』(1972年)
LOVE THEME FROM THE GODFATHER

『Montenegro Plays A Neil Diamond Songbook』(1973年)
Neil's Diamonds

『Hugo in Wonder-Land』(1974年)
Hugo in Wonder-Land
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2013年02月25日

Toninho Horta『Terra dos Passaros』

記念すべき1stアルバムにして名盤!☆Toninho Horta『Terra dos Passaros』
Terra Dos Passaros
発表年:1979年
ez的ジャンル:ミナス系MPB
気分は... :心を整えて...

この週末はプライベートでかなりバタバタ状態・・・それも一件落着してようやくホッとしています。

そんな穏やかな気持ちにフィットしそうな1枚としてセレクトしたのがToninho Horta『Terra dos Passaros』(1979年)です。

ブラジル、ミナス出身の人気ギタリストToninho Hortaについて、これまで当ブログで紹介した作品は以下の4枚。

 『Toninho Horta』(1980年)
 『Diamond Land』(1988年)
 『Moonstone』(1989年)
 『Harmonia & Vozes』(2010年)

今日紹介する『Terra dos Passaros』(1979年)は、記念すべきToninho Hortaの1stアルバムであり、ブラジル音楽の虜になった人であれば、必ず手元に置いておきたいマスト・アイテムの1つかもしれませんね。

彼のアルバムは、どのアルバムを聴いても心が浄化されるピュアな魅力がありますね。僕にとってはPat Methenyと並ぶ至極のデトックス・ミュージックです。この1st『Terra dos Passaros』は、そんなToninho Hortaの魅力が凝縮された1枚だと思います。

正式にはToninho Horta E Orquestra Fantasma名義の作品です。

レコーディングにはToninho Horta(g、vo、b、org)以下、Milton Nascimento(vo)、Lena Horta(fl)、Hugo Fattoruso(key)、Airto Moreira(ds、per)、Raul de Souza(tb)、George Fattoruso(ds)、Laudir de Oliveira(per)、Novelli(b)、Robertinho Silva(ds)、Mauro Senise(fl)、Wagner Tiso(p、org)、Jamil Joanes(b)、Ze Eduardo Nazario(per)、Boca Livre(vo)、Luiz Alves(b)、Nivaldo Ornellas(ts、ss)、Georgiana de Moraes(caxixi)、Ringo Thiellmann(b)といった多彩なミュージシャンが参加しています。

「Ceu de Brasilia」「Diana」「Viver de Amor」「Serenade」「Aquelas Coisas Todas (Sanguessuga)」「Beijo Partido」をはじめ、収録曲すべてが名曲だと思います。

ギタリストとしてのToninho Hortaの素晴らしさは勿論のこと、コンポーザー/アレンジャーとしての才能も実感できる1stアルバムです。

心を整えたいときには、こういう作品を聴くに限ります。
今日が最高の1日になりますように・・・

全曲紹介しときやす。

「Ceu de Brasilia」
Toninho Horta/Fernando Brant作。美しいストリングスを配し、壮大なスケールを感じるオープニング。Pat Methenyに通じるものを感じます。いきなりHortaのギター・ソロも堪能できます。Milton Nascimentoがバック・コーラスで参加しています。
http://www.youtube.com/watch?v=dGFt1htbyd8

「Diana」
Toninho Horta/Fernando Brant作。美しいメロディ&ギターを満喫できる名曲ですね。癒されますなぁ。メロウなエレピの音色もグッド!Raul de Souzaのトロンボーンもいいアクセントになっています。当ブログでは『Harmonia & Vozes』収録のIvete Sangaloをフィーチャーした再演ヴァージョンも紹介済みです。
http://www.youtube.com/watch?v=nGTYZiYwOpQ

「Dona Olimpia」
Toninho Horta/Ronaldo Bastos作。映画『Dona Olimpia de Ouro Preto』のテーマ。タイトルにもその名を冠されたサンバの歴史に大きな軌跡を残した女性Dona Olimpiaのスピーチと共に始まる映画テーマらしい感動的な仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=mKQAP9wklYs

「Viver de Amor」
Toninho Horta/Ronaldo Bastos作。当ブログではAlaide Costaのヴァージョンも紹介済みです。Novelli、Robertinho Silva、Laudir de Oliveiraをバックに、Hortaのギターを満喫できます。
http://www.youtube.com/watch?v=ueJINL5QsdI

「Pedra da Lua」
Toninho Horta/Cacaso作。アコースティックな優しい響きの中に旧懐の情のようなものを感じる感動的な仕上がり。Lena Hortaのフルートがいいアクセントになっています。
http://www.youtube.com/watch?v=Oxr3hJEqJE0

「Serenade」
Toninho Horta/Ronaldo Bastos作。Hortaの軽快なギターが実に心地好い1曲。Boca Livreによる素晴らしいハーモニーのバック・コーラスもグッド!この曲もPat Methenyと一緒に聴きたくなりますね。
http://www.youtube.com/watch?v=Poi1ZNMvnhs

「Aquelas Coisas Todas (Sanguessuga)」
Toninho Horta作。多くのアーティストがカヴァーしている名曲ですね。ブラジル音楽好き、メロウ・グルーヴ好きであれば、誰しも気に入るであろう爽快メロウなサンバ・グルーヴです。Hugo Fattorusoのメロウな鍵盤がグッド!当ブログではLuisito QuinteroTamba TrioStarship Orchestraのヴァージョンも紹介済みです。
http://www.youtube.com/watch?v=w-ExOKDirwU

「Falso Ingles (Wonder woman)」
Toninho Horta/Fernando Brant作。爽快フォーキーな味わいが心地好い1曲。聴いているだけで心が晴れやかになります。
http://www.youtube.com/watch?v=Z_S0iWKXl44

「Terra dos Passaros/Beijo Partido」
Toninho Horta作。タイトル曲は味わい深い名曲「Beijo Partido」のためのイントロといった趣ですね。「Beijo Partido」については、『Diamond Land』収録ヴァージョンに加え、Milton NascimentoTamba TrioFlora Purimのカヴァーも紹介済みです。ここでは自身も本曲を取り上げたMilton Nascimentoがバック・ヴォーカルで参加しています。Toninho Hortaらしい奥深さが詰まった1曲だと思います。Nivaldo Ornelasのサックスが盛り上げてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=JcyBCn_JH6I

「No Carnaval」
Jota/Caetano Veloso作。当ブログではLuciana Souzaのカヴァーも紹介済みです。ラストはサウダージ・モードなHortaの弾き語りでで締め括ってくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=hV09nRWH6D0

Toninho Hortaの過去記事もご参照下さい。

『Toninho Horta』(1980年)
トニーニョ・オルタ

『Diamond Land』(1988年)
ダイアモンド・ランド

『Moonstone』(1989年)
ムーンストーン

『Harmonia & Vozes』(2010年)
アルモニア&ヴォゼス
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2013年02月24日

Papik『Papik Presents: Cocktail Martino - A Tribute To Bruno Martino』

Papikの最新作は敬愛する偉大なイタリア人ミュージシャンへのトリビュート☆Papik『Papik Presents: Cocktail Martino ? A Tribute To Bruno Martino』
カクテル・マルティーノ ~ ブルーノ・マルティーノ・トリビュート・アルバム (papik presents COCKTAIL MARTINO ~ tribute to Bruno Martino) [輸入盤]
発表年:2013年
ez的ジャンル:ラウンジ感覚クラブジャズ
気分は... :R30な大人のクラブジャズ!

今回はイタリア人キーボード奏者/コンポーザー/アレンジャーPapikことNerio Poggiの最新作『Papik Presents: Cocktail Martino - A Tribute To Bruno Martino』です。

先週末の新作アルバム紹介でPapikがアレンジを手掛けた男性ジャズ・ヴォーカル作品Matteo Brancaleoni『New Life』(2012年)を取り上げたばかりですが、その直後の20日に最新作『Papik Presents: Cocktail Martino - A Tribute To Bruno Martino』がリリースされました。

ラウンジ感覚の小粋でキャッチーなクラブジャズを聴かせてくれるNerio Poggiのクラブジャズ・ユニットPapikの紹介は、2nd『Music Inside』(2012年)、1st『Rhythm of Life』(2009年)に続き3回目となります。

昨年リリースされた2nd『Music Inside』(‎2012年)は日本でも好評を博し、来日公演も果たしました。当ブログでも『ezが選ぶ2012年の10枚』に選ぶほどのお気に入りの1枚でした。

最新作『Papik Presents: Cocktail Martino - A Tribute To Bruno Martino』はタイトルの通り、偉大なイタリア人作曲家/ピアニスト/シンガーBruno Martino(1925-2000年)へのトリビュート作品です。収録曲のすべてがBruno Martino作品または彼のレパートリーであった楽曲です。

Papikの過去のアルバムを振り返っても、1st『Rhythm of Life』では「E La Chiamano Estate」、2nd『Music Inside』では「Raccontami Di Te」といったBruno Martino作品を取り上げており、Nerio PoggiのBruno Martinoに対する敬愛ぶりが窺えます。

アルバムには前述のMatteo Brancaleoniをはじめ、Vittoria Sigillino、Tom Gaebel、Francesca Gramegna、Bengi Benati、Alessandro Pitoni、Cristiana Polegri、Federico Straga'、Paco Di Maso、Fred Buccini、The Barbera Connectionといった多彩なヴォーカル陣が参加しています。

レコーディングにはAlfredo Bochicchio(g)、Massimo Guerra(tp)、Pierpaolo Ranieri(b)、Fabrizio Foggia(key)、Marco Rovinelli(ds)、Simone "Federicuccio" Talone(per)といったPapik作品でお馴染みのミュージシャンが参加しています。

過去のPapik作品と比べると、やや落ち着いた印象の作品かもしれませんが、その分大人のムーディーな雰囲気を満喫できます。ただし、ムーディーといってもノスタルジックな雰囲気のみではなく、Papikらしいスタイリッシュなラウンジ感覚は随所に散りばめられているのでご安心を!

『Papik Presents: Cocktail Martino - A Tribute To Bruno Martino』ダイジェスト
※Nerio Poggi本人がアップしたYouTube音源です。
http://www.youtube.com/watch?v=5muAUNTEiXQ

タイトルやジャケの通り、カクテル片手に聴きたくなる1枚です。
やっぱりPapikはサイコーですな。

全曲紹介しときやす。

「Sabato Sera」
オープニングは現在絶好調の男性シンガーMatteo Brancaleoniをフィーチャー。ラウンジ感覚のエレガントなボッサ・サウンドをバックに、Matteo Brancaleoniが甘くムーディーなヴォーカルを披露してくれます。一気にリゾート気分へ誘ってくれます。

「Soli Tra La Gente」
Vittoria Sigillinoをフィーチャー。Vittoria Sigillinoの妖艶なヴォーカルが悩殺されそうなムード満点のバラード。

「The Girl from Ipanema」
MartinoのレパートリーであったAntonio Carlos Jobim/Vinicius de Moraes作の名曲「イパネマの娘」をカヴァー。Tom Gaebelの男性ヴォーカルをフィーチャーしたPapikらしいポップでキャッチーな大人のクラブジャズに仕上がっています。『Music Inside』のPapikがお好きな方であればど真ん中のカヴァーに仕上がっています。

名曲「イパネマの娘」について、当ブログではTamba TrioAgustin Pereyra LucenaDiane Denoir/Eduardo MateoRoberto MenescalBossacucanova & Roberto MenescalSheila Landis/Rick Matleのカヴァーも紹介済みです。ご興味がある方はチェックを!

「Estate」
Francesca Gramegnaをフィーチャー。哀愁ボッサ・サウンドとイタリア語の響きがよくマッチしています。ボッサ・ギターとエレガントなストリングスとメロウ・エレピの相まったサウンドがいい感じです。

「Rimpiangerai」
Bengi Benatiをフィーチャー。「The Girl from Ipanema」と並ぶ僕のiPodヘビロテ曲です。激シブのBengi Benatiの男性ボーカルと洗練されたメロウ・サウンドの組み合わせが大人のラウンジ・タイムといった趣でサイコー!Fabrizio Foggiaのムーグの響きがいい感じです。
http://www.youtube.com/watch?v=Or0qI5RI4cQ

「Resta」
Alessandro Pitoniをフィーチャー。ロマンティック・ムード満点のビューティフル・バラード。サンセット・モードにピッタリなのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=Hpzlbghby5g

「Se Mi Vuoi」
Giorgio Calabrese/Franco Cerri作。Cristiana Polegriをフィーチャー。軽快なボッサ・チューンです。Schemaのセクシー女性スキャットをフィーチャーしたボッサ・チューンがお好きな人でれば間違いなく気に入るはず!

「E La Chiamano Estate」
Federico Straga'をフィーチャー。1st『Rhythm of Life』でもカヴァーしていた楽曲の新録です。『Rhythm of Life』ではClizia Aloisiの情熱的な女性ヴォーカルをフィーチャーしていましたが、ここではFederico Straga'の伸びやかな男性ヴォーカルをフィーチャーし、大人のクラブジャズ仕立てで魅了してくれます。Nerio Poggiのアレンジ・センスも抜群です。

「Che Peccato」
Lino Patruno/Enzo Tortora作。Paco Di Masoをフィーチャー。Paco Di Masoの甘い男性ヴォーカルの魅力を最大限に引き出したロマンティック・バラード。ラウンジ感覚のオルガンの音色とCristiana Polegriのセクシー・バック・コーラスがアクセントになっています。
(feat. Paco Di Maso) (03:10)

「Al Di La」
Cristiana Polegriをフィーチャー。ポップなアレンジをバックに、Cristiana Polegriのセクシー&キュートなヴォーカルを満喫できます。

「Se Mai」
Charles Chaplinの名作映画『モダン・タイムズ』で使われた名曲「Smile」のカヴァー(Charles Chaplin作)。Fred Bucciniの男性ヴォーカルをフィーチャーしたジャジー・バラードに仕上がっています。

「Cos'hai Trovato In Lui」
Paco Di Masoをフィーチャー。寛いだムードでPaco Di Masoの魅惑の低音ヴォーカルを堪能できます。Alfredo Bochicchioのギター・ソロもグッド!

「Fai Male」
The Barbera Connectionをフィーチャー。ラストはリラックスしたムードで締め括ってくれます。

CDにはボーナス・トラックとして、「The Girl from Ipanema」のイタリア語ヴァージョン「La Ragazza di Ipanema」『Music Inside』にも収録されていた「Raccontami Di Te」
の2曲が追加収録されています。

Papikや本作のオープニングを飾ったMatteo Brancaleoniの過去記事もご参照下さい。

『Rhythm of Life』(2009年)
Papik - Rhythm Of Life

『Music Inside』(2012年)
Music Inside

Matteo Brancaleoni『New Life』(2012年)
New Life [輸入盤]
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2013年02月23日

Norman Connors『MR.C』

Beau Williams、Glenn Jonesが参加。アーバン気分を存分に満喫できます!☆Norman Connors『MR.C』
MR.C
発表年:1981年
ez的ジャンル:名プロデューサー系アーバン・メロウ・グルーヴ
気分は... :Hurry up!

今回は久々のNorman Connors作品、『MR.C』(1981年)です。

アーバンなメロウ・グルーヴで70年代半ば〜80年代前半にかけて佳作を多く残したドラマー/プロデューサーNorman Connorsの紹介は『This Is Your Life』(1978年)に続き2回目となります。

僕の中では『You Are My Starship』(1976年)あたりも紹介したつもりだったのですが・・・単なる思い込みでした(笑)

今日紹介する『MR.C』はArista最後の作品となりますが、『This Is Your Life』(1978年)、『Invitation』(1979年)、『Take It To The Limit』(1980年)、『MR.C』(1981年)というArista時代の4枚が、最もアーバン・メロウなNorman Connorsを満喫できるのではないでしょうか。

本作『MR.C』の頃のNorman Connorsは、Quincy Jonesあたりと同じでミュージシャンというよりは総合プロデューサーという立ち位置でアルバムをリリースしている感じですね。

本作でもBeau WilliamsGlenn JonesJean Carn等のリード・シンガーを配し、軽快なアーバン・サウンド満載のアルバムに仕上がっています。

アルバムにはクレジットされていませんが、本作のヴォーカルの主役はソロ作『Stay With Me』(1983年)等でも知られる男性シンガーBeau Williamsです。Temptationsにも誘われた実力派シンガーがその魅力を如何なく発揮してくれます。同じく実力派の男性シンガーGlenn Jonesも1曲のみの参加ですが、存在感を示してくれます。Glenn Jonesについても、てっきり当ブログで紹介したものと思い込んでいましたが未紹介でした。そのうち紹介したいと思います。

本作では、Jacques Burvick(key)、Dave Spann(ds)、Nate Winfield(g)、Duke Jones(tp、flh)、Pee Wee Ford(b)、Marion Meadows(ts、ss)、Kenny Hudson(per)の7名がバックバンドStarship Orchestraのメンバーとしてクレジットされています。

しかし、実際にはLeon Chancler(ds)、Nathan East(b)、Paulinho Da Costa(per)、Onaje Allan Gumbs(syn)、Marlo Henderson(g)、Mitch Holder(g)等のセッション・ミュージシャンを起用したレコーディングが多くなっています。

結果的にセールス面では不発に終わった本作ですが、Arista時代の集大成的な内容であり、Norman Connors好き、アーバン・メロウ好きには外せない1枚なのでは?

全曲紹介しときやす。

「She's Gone」
UKのドラマー/プロデューサー/ソングライターのNigel Martinezの作品。Billy Ocean、Light Of The WorldReal Thing等の作品へ関与していた人ですね。Beau Williamsをフィーチャーした極上のメロウ・ダンサーに仕上がっています。女性コーラス隊もアーバン気分を盛り上げてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=EPykA0njN8k

「Party Town」
Len Ron Hanks/Zane Grey/Quentin Bernard Jennings作。人気ソングライター・チームGrey & Hanksの楽曲です。Beau Williamsをフィーチャーしたアーバン・ファンク・チューンです。Beau Williamsのパワフルなヴォーカルに牽引され、重心の低いグルーヴと華やかなホーン隊&女性コーラス隊がパーティー・モード全開のサウンドを聴かせてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=-r3JjPrTAAg

「Keep Doin' It」
Nigel Martinez作。Beau Williamsをフィーチャー。軽快なアーバン・ファンクで疾走してくれます。シンセが程良いアクセントになっているのがいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=QY4FiHlqNYA

「Stay With Me」
Nigel Martinez作。Beau Williamsをフィーチャー。爽快ギター・カッティングが心地好いメロウ・グルーヴに仕上がっています
http://www.youtube.com/watch?v=OUKRSS3MsnE

「Anyway You Want」
Niteflyteのシティ・ポップ人気曲をカヴァー(Sandy Torano作)。オリジナルは当ブログでも紹介した『Niteflyte II』に収録されています。Beau Williamsをフィーチャーし、Norman Connors流のキレのあるシティ・ポップを満喫できます。オリジナルが大好きですが、このカヴァーもお気に入りです。
http://www.youtube.com/watch?v=aVbEjzl0qdU

「Sing A Love Song」
Jacques Burvick/Marion Meadows作。Glenn Jonesをフィーチャー。寛いだムードのアーバン・メロウを満喫できます。Glenn Jonesのヴォーカルも存分に堪能できます。アーバン・メロウ好きの人であれば、この曲が一番グッとくるのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=iIuDK0URchc

「Love's In Your Corner」
Paul Smith作。Jean CarnDerrick Hughesの男女ヴォーカルをフィーチャーしたダンサブルな仕上がり。Jean Carnのヴォーカルはやはり華やかですね。
http://www.youtube.com/watch?v=40QC9t3aryk

「Mr. C」
ラストはStarship Orchestra作によるインスト・チューン。Starship Orchestraの面々がハイ・スピードのジャズ・ファンクで魅了してくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=Z9hqQtZN7X8

他のArista時代の作品もチェックを!

『This Is Your Life』(1978年)
ディス・イズ・ユア・ライフ

『Take It To The Limit』(1980年)
テイク・イット・トゥ・ザ・リミット
posted by ez at 13:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする