2013年04月25日

Jazmine Sullivan『Fearless』

早熟の女性R&Bシンガーのヒット・デビュー作☆Jazmine Sullivan『Fearless』
フィアレス(2ヶ月限定スペシャルプライス)
発表年:2008年
ez的ジャンル:早熟系女性R&Bシンガー
気分は... :この面構えからして大物!

今回はグラミー賞新人賞にノミネートされた女性R&BシンガーJazmine Sullivanのデビュー・アルバム『Fearless』(2008年)です。

1987年フィラデルフィア生まれの女性R&Bシンガー/ソングライターJazmine Sullivanの紹介は、『Love Me Back』(2010年)に続き2回目です。

最近、新作も含めてヒットしたR&B作品を取り上げることが少なかったですね。元来僕は「ヒット作品は飽きるから賞味期限はせいぜい数年だし、長くは聴かないでしょ!」とヒット作品を毛嫌いする性分ですが、最近はそれに拍車が掛かっている状態です。

しかしながら、今回紹介するJazmine Sullivanのデビュー・アルバム『Fearless』は全米アルバム・チャート第6位、同R&Bチャート第1位のヒット作ですが、今も僕にとって魅力的な1枚です。

ヴォーカリストとして存在感がある点とソングライターとしても優れている点に惹かれます。本作の全曲が彼女のオリジナルです(共作含む)。このデビュー・アルバム時は弱冠21歳でしたが、そんな年齢とは思えない堂々とした歌いっぷりにも感心してしまいます。

お蔵入りとなってしまいましたが、16歳でJiveと契約して幻のデビュー作をレコーディングし、さらに『Fearless』以前からChristina Milian「Say I」、Jennifer Hudson「I'm His Only Woman」、Monica「Everything to Me」などのソングライティングを手掛け、ソングライターとしての才能を示していた実力は只者ではありません。

本作に収録されたMissy Elliottのプロデュースによるデビュー・シングル「Need U Bad」は全米R&Bチャートで4週連続No.1となりました。

そのMissy Elliottをはじめ、Salaam Remi、、Cainon LambStargateCarvin & IvanFistcuffsAnthony BellJack Splashといったプロデューサー陣がJazmineをバックアップしています(Jazmine Sullivan自身も1曲プロデュース)。

多彩なプロデューサーが起用され、さまざまなサウンドの楽曲が雑多に収録されていますが、誰がプロデュースしても彼女の存在感のある歌が中心にあり、決して散漫な印象は受けません。

この面構えからして大物ですね。

全曲紹介しときやす。

「Bust Your Windows」
Salaam Remiプロデュース。「Need U Bad」に続く2ndシングルであり、全米R&Bチャート第4位となりました。21歳とは思えない妖艶な歌いっぷりです。Salaam Remi「Bad Man Waltz」、Soulja Boy「Crank That (Soulja Boy)」をサンプリング。
http://www.youtube.com/watch?v=mOzdfaEPaR0

「Need U Bad」
Missy Elliott/Cainon Lambプロデュース。前述のように全米R&Bチャートで4週連続No.1となった彼女の代表曲です。しかも、Nicholas Taylor「Higher Meditation Riddim Version」とTapper Zukie「Papa Big Shirt」をサンプリングしたレゲエ調というあたりに意表を突かれます。R&Bファンよりもレゲエ・ファンがグッとくる1曲かもしれませんね。
http://www.youtube.com/watch?v=HiFqIVQNM4I

「My Foolish Heart」
Carvin & Ivan(Carvin Haggins、Ivan Barias)プロデュース。Willie Mitchell「Groovin'」をサンプリングしたソウルフルなイントロが印象的です。全体的に少しイナたく摩訶不思議な雰囲気がいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=nkL0wGXutRE

「Lions, Tigers & Bears」
Salaam Remiプロデュース。アルバムからの3rdシングル全米R&Bチャートで第10位となりました。Jazmineのヴォーカリストとしての確かな実力を堪能できます。Salaam Remi「Shila's Playground」をサンプリング。
http://www.youtube.com/watch?v=Uh5mEat46fc

「Call Me Guilty」
Salaam Remiプロデュース。硬質なHip-Hop調トラックをバックに、Jazmineの存在感のあるヴォーカルがグイグイ迫ってきます。
Salaam Remi「Police Theme」をサンプリング。
http://www.youtube.com/watch?v=CbZNK8P6O8w

「One Night Stand」
Fisticuffsプロデュース。60年代ソウル・テストで弾けています。ハモンド・オルガンの音色がいい感じです。
http://www.youtube.com/watch?v=Q6ZPi9yOnuQ

「After the Hurricane」
Stargateプロデュース。Stargateらしいサウンドをバックに、Jazmineが哀愁のメロディを力強く歌います。
http://www.youtube.com/watch?v=bawqI6UqKPU

「Dream Big」
Missy Elliott/Cainon Lambプロデュース。アルバムからの4thシングル。Daft Punk「Veridis Quo」をサンプリングしたエレクトリック感が印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=K5w85EWZqKE

「Live a Lie」
Salaam Remiプロデュース。The Vibrettes「Humpty Dump」のブレイクを使ったトラックが僕のお気に入り。Jazmineの魅力を堪能できるソウルフル・トラックです。Salaam Remi「The Truth」をサンプリング。
http://www.youtube.com/watch?v=Bas56CvkNHs

「Fear」
Dirty Harryプロデュース。僕の一番のお気に入り曲。Art of Noise「Beat Box (Diversion One)」をサンプリングし、Stevie Wonder「I Was Made to Love Her」を引用したビューティフル・ソウル・チューンです。語り継がれていくべき名曲だと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=C6Cfn9ZtpAw

「In Love with Another Man」
Jazmine Sullivan/Anthony Bellプロデュース。ゴスペル仕込みのヴォーカルを堪能できる感動バラード。聴いているだけで涙腺が緩くなります。
http://www.youtube.com/watch?v=s96nlATQCGU

「Switch!」
Jack Splashプロデュース。ラストはThe Marvelettes「Switch!」をサンプリングした60年代モータウンへのオマージュで締め括ってくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=0kwKvxOxERU

『Love Me Back』(2010年)
Love Me Back
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2013年04月23日

Gilberto Gil『Gilberto Gil (1969)』

トロピカリズモ期らしいサウンドを満喫できる充実作☆Gilberto Gil『Gilberto Gil (1969)』
Gilberto Gil
発表年:1969年
ez的ジャンル:トロピカリズモMPB
気分は... :エレクトリック・ブレイン・・・

今回はMPBを代表する大物アーティストGilberto Gilが1969年にリリースした『Gilberto Gil(邦題:セレブロ・エレトローニコ)』(1969年)です。

Caetano Velosoと並ぶブラジル音楽界の牽引者Gilberto Gilについて、これまで当ブログで紹介した作品は以下の3枚。

 『Gilberto Gil(邦題:日曜日の公園で)』(1968年)
 『Gilberto Gil(邦題:イン・ロンドン)』(1971年)
 『Realce』(1979年)

以前のエントリーでも書いたとおり、この時期のGilberto Gil作品は、『Gilberto Gil(邦題:日曜日の公園で)』(1968年)、『Gilberto Gil(邦題:セレブロ・エレトローニコ)』(1969年)、『Gilberto Gil(邦題:イン・ロンドン)』(1971年)とセルフ・タイトル作が続くのでジャケや発売年で区別しておくのが良いかもしれません。ここでは『Gilberto Gil (1969)』という表記で区別したいと思います。

『Gilberto Gil (1969)』は、前作『Gilberto Gil(1968)』に続きトロピカリズモ期らしい1枚に仕上がっています。

Rogerio Dupratがアレンジャーを務め、レコーディングにはLanny Gordin(g)、Sergio Barroso(b)、Wilson Das Neves(ds)、Chiquinho de Moraes(p、org)が参加しています。

伝統的なブラジル音楽と英米のロック/サイケを融合させたトロピカリズモらしいサウンドを満喫できます。最近ロック・アルバムを殆ど聴かなくなっている僕ですが、こういった作品でロック・サウンドへの渇望が充たされているのかもしれません。

インパクトでいえば、前作『Gilberto Gil(1968)』かもしれませんが、アルバム全体の完成度では本作も引けをとりません。初期Gilberto Gilを代表する1枚だと思います。

ブラジル音楽好きのみならず、60年代後半のロック好きの人にも聴いて欲しい1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Cerebro Eletronico」
Gilberto Gil作。ブラジル音楽とロックが融合したオープニング。ファズ・ギターとマッドなオルガンの音色に煽られます。当ブログで紹介したMarisa Monteのカヴァーもアヴァンギャルドな仕上がりがグッドでした。
http://www.youtube.com/watch?v=JFAHDYEMHEE

「Volks-Volkswagen Blue」
Gilberto Gil作。ブルージーな名曲ですね。『Gilberto Gil(1971)』にも英語ヴァージョンが収録されていました。アコースティック感が印象的であった英語ヴァージョンに比べ、オリジナルとなる本作はホーン隊も入ったロック・サウンドで聴かせてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=iAFyL5hw298

「Aquele Abraco」
Gilberto Gil作。僕の一番のお気に入り。ブラジルらしいリズム&サウンドを満喫できます。バック・コーラス隊も含めて盛り上がっている感じが伝わってきます。
http://www.youtube.com/watch?v=TsWyYzGn8FA

「17 Leguas e Meia」
Humberto Teixeira作。少しレイジーなロック・サウンドが今の僕の気分にフィットします。
http://www.youtube.com/watch?v=ySbhWdwX16Y

「A Voz do Vivo」
Caetano Veloso作。トロピカリズモ期らしいサウンドを満喫できます。後半のアヴァンギャルドな雰囲気がいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=Um2oaz3Ag3o

「Vitrines」
Gilberto Gil作。基本フォーキーな中にロック・サウンドでアクセントをつけています。
http://www.youtube.com/watch?v=U0K6kTY7uvw

「2001」
Rita Carvalho/Antonio Martins作。フォーキー&サイケなサウンドでトリップできそうな1曲。こういう曲案外好きです。

「Futurivel」
Gilberto Gil作。ミステリアス&アシッドなアコースティック・チューン。ホーン隊が効いています。
http://www.youtube.com/watch?v=sSeOgG-Ocpg

「Objeto Semi-identificado」
Gilberto Gil/Rogerio Duarte/Rogerio Duprat作。ラストはサウンド・コラージュ的な仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=to4nGiRYE_0

他のGilberto Gil作品もチェックを!

『Louvacao』(1967年)
ロウヴァサォン

『Gilberto Gil(1968)』(1968年)
Gilberto Gil 1968

『Gilberto Gil(1971)』(1971年)
Gilberto Gil

『Expresso 2222』(1972年)
Expresso 2222

Caetano Veloso e Gilberto Gil『Barra 69 - Caetano e Gil Ao Vivo na Bahia』(1972年)
Barra 69

『Gilberto Gil Ao Vivo』(1974年)
Ao Vivo

『Refazenda』(1975年)
Refazenda

Gilberto Gil & Jorge Ben『Gil & Jorge - Ogum - Xango』(1975年)
Gil & Jorge

『Refavela』(1977年)
Refavela

Gilberto Gil & Rita Lee『Refestanca』(1977年)
Refestanca - Ao Vivo

『Gilberto Gil Ao Vivo Em Montreux』(1978年)
Ao Vivo Em Montreux

『Realce』(1979年)
Realce

『Nightingale』(1979年)
Nightingale
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2013年04月22日

Little Beaver『Party Down』

マイアミT.K.サウンドを満喫できる1枚☆Little Beaver『Party Down』
パーティ・ダウン(紙ジャケット仕様)
発表年:1974年
ez的ジャンル:T.K.サウンド系マイアミ・ソウル
気分は... :最高のワンパターン!

マイアミ・ソウル/T.K.サウンドを代表するギタリスト/シンガーLittle Beaverの3rdアルバム『Party Down』(1974年)です。

Little Beaver(本名Willie Hale)の紹介は、『When Was the Last Time』(1976年)に続き2回目となります。

本作『Party Down』にはフリーソウル/レア・グルーヴ人気曲「Party Down」が収録されています。しかしながら、1996年にCD化されたものの長い間入手しづらい状況が続いていました。僕の場合、幸いにも96年CD化の際に入手できたので、それ以来愛聴していました。

それでも入手しづらい状況が続いていたため、何となくエントリーを控えていました。先日ようやくCDが再発されて入手しやすくなったため、晴れてエントリーした次第です。

2006年に『When Was the Last Time』をエントリーしたときから本作のエントリーを渇望していたのですが、それから約6年半も経っているんですね。時が流れるのはあっという間ですね。

『Party Down』(1974年)は、『Joey』(1972年)、『Black Rhapsody』(1974年)に続く3rdアルバムです。

タイトル曲「Party Down」はR&Bチャート第2位のヒットとなりました。

プロデューサーはWillie Clarke、さらに「Party Down」はSteve Alaimoが共同プロデュースしています。

レコーディングには、Ron Bogdon(b)、George "Chocolate" Perry(b)、Robert Ferguson(ds、per)、Glen "Zeke" Holmes(per)、Latimore(key)、Timmy Thomas(key)、Betty Wright(back vo)が参加しています。さらにはNelson "Jocko" Padronの変名でJaco Pastorius(b)が参加しています。

全7曲30分強。しかもそのうち1曲が「Party Down」のパート2。残りの数曲も「Party Down」と同タイプの曲という構成にメリハリのない印象をお持ちの方もいるかもしれません。しかしながら、このワンパターンがたまらなくいいんです。96年に本作を入手して以来、ワンパターンに飽きたことはありません。「Party Down」は余程僕の嗜好にフィットする1曲なのだと思います。

小難しいこと考えず、リラックス・モードで楽しみたい1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Party Down」
前述のようにR&Bチャート第2位のヒットとなったタイトル曲。フリーソウル/レア・グルーヴ人気曲でもある本作のハイライトです。Willie Hale作。TKらしいパカポコなリズム・ボックスのビートをバックにしたメロウ・ソウルです。寛いだ雰囲気のメロウなブルージー感がたまりません。不思議な魅力に惹かれるメロウ・チューンですね。
http://www.youtube.com/watch?v=JRYqoIGZmEE

Wagon Christ「Receiver」でサンプリングされています。
Wagon Christ「Receiver」
 http://www.youtube.com/watch?v=3PZ7iozF5qU

「Party Down (Part Two)」
「Party Down」のパート2はインスト・ヴァージョン。Little Beaverのギターを満喫しましょう。
http://www.youtube.com/watch?v=9fh7xcJGy3Y

「Money Vibrations」
派手さはありませんが、ファンキーなグルーヴ感にグッとくるファンク・チューン。Willie Hale作。
http://www.youtube.com/watch?v=bJoWXUBkz8s

「Get Into The Party Life」
「Party Down」と同タイプのメロウ・ソウル。「Party Down」がお好きな人なら気に入るはず!Little Beaverのギター・プレイも冴え渡っています。Willie Hale/Willie Clarke作。
http://www.youtube.com/watch?v=UldcK5Ld-GI

Jay-Z「Party Life」でサンプリングされています。
Jay-Z「Party Life」
 http://www.youtube.com/watch?v=0Cfx0pDr6os

「I Can Dig It Baby」
Betty Wright/Willie Clarke/Willie Hale作。タイトル曲に次ぐハイライトは本曲かもしれませんね。Jaco Pastorius参加曲であり、Betty Wrightがソングライティング&バック・コーラスで参加しています。マイアミらしい雰囲気の哀愁のメロウ・ディスコ・チューンに仕上がっています。この時はまだ無名の天才Jacoのプレイにも注目です。
http://www.youtube.com/watch?v=hapEOcbWvqA

「Let The Good Times Roll」
Willie Clarke/Willie Hale作。ファンキー・メロウな本曲も要チェックの1曲です。TKサウンド好きの人であればハマるはず!
http://www.youtube.com/watch?v=txJHE5Y9Q_M

Drumsound & Bassline Smith「Good Times Roll」、Erykah Badu「Honey (DJ Day Remix)」でサンプリングされています。

「Let's Stick Together」
Willie Clarke/Willie Hale作。この曲も「Party Down」の再加工といった趣です。正直、ワンパターンなのかもしれませんが、そのワンパターンがたまらなくいいんです!
http://www.youtube.com/watch?v=A4F4q8k1k18

ぜひ『When Was the Last Time』(1976年)とセットでどうぞ!

『When Was the Last Time』(1976年)
ホエン・ワズ・ザ・ラスト・タイム(紙ジャケット仕様)
posted by ez at 08:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月21日

The Jazzinvaders Featuring Dr. Lonnie Smith『That's What You Say!』

オランダのニュー・ジャズ・コンボの最新作は伝説のオルガン奏者との共演☆The Jazzinvaders Featuring Dr. Lonnie Smith『That's What You Say!』
ザッツ・ホワット・ユー・セイ!
発表年:2013年
ez的ジャンル:オランダ産クラブジャズ
気分は... :若々しいDr. Lonnie!

今回はオランダのニュー・ジャズ/クラブジャズ・コンボThe Jazzinvadersの最新作となる4thアルバム『That's What You Say!』です。

これまで当ブログは彼らの1st〜3rdアルバムを紹介済みです。

 『Up & Out』(2006年)
 『Blow!』(2008年)
 『Three』(2010年)

最新作となる4thアルバム『That's What You Say!』は伝説のハモンド・オルガン奏者Lonnie Smithとの共演盤となっています。

ソウル・ジャズ好きにはお馴染みのジャズ・オルガン奏者Lonnie Smithについては、以前に『Turning Point』(1969年)を紹介済みです。最近、手持ちの作品の中から‎『Think!』(1968年)、『Move Your Hand』(1969年)を紹介しようと思っていたところでした。

Lonnie Smith‎『Think!』(1968年)
Think

Lonnie Smith‎『Move Your Hand』(1969年)
ムーヴ・ユア・ハンド

一方、本作のThe Jazzinvadersのメンバーは、Phil Martin(ds、per)、Linda Bloemhard(vo)、Rolf Delfos(as、ss)、Guido Nijs(ts)、Jan Van Duikeren(tp)、Berthil Busstra(key、syn)、Tom Van Der Kolk(b)の7名。

前作『Three』(2010年)は、70年代フュージョンの影響を受けた"アダルト・オリエンティッド・フュージョン"作品でしたが、本作はDr. Lonnie Smithを迎え、彼のオルガンを活かしたソウル・ジャズ/ジャズ・ファンク的なアプローチが目立ちます。ニュー・ジャズ meets ソウル・ジャズといった趣ですね。

紅一点Linda Bloemhardのヴォーカルの比重が低くなっているのは多少残念ですが、本作の主役はDr. Lonnieのオルガンなので仕方がないでしょうか。

2012年7月に初共演を果たし、意気投合したThe JazzinvadersとDr. Lonnie Smithの相性はバッチリです。何よりDr. Lonnieの演奏に活気があるのがいいですね。

これまでのThe Jazzinvaders作品とは多少異なる印象を受ける作品ですが、単なる企画作ではなく現在進行形のジャズ作品として十分に満足できる1枚に仕上がっています。

プロデュースはリーダーのPhil Martinが務めています。

全曲紹介しときやす。

「Nelson」
ニュー・ジャズ経由のソウル・ジャズといった趣のファンキーなオープニング。衰えを感じさせないLonnie Smithのオルガンの格好良さにヤラれます。

「No Cure」
Lindaのヴォーカルをフィーチャーしたジャズ・ファンク調の仕上がり。サイレンのように響くLonnieのオルガンがアクセントになっています。

「Hey Hey Yeah Yeah」
キャッチーなファンク・チューン。なかなか重量感のあるファンキー・チューンです。ヴォーカル・パートのLindaのキュートな雰囲気もグッド!

「Mellow Mood」
Jimmy Smithのカヴァー。オリジナルはJimmy Smith & Wes Montgomery‎『Further Adventures Of Jimmy & Wes』(1969年)に収録されています。Lonnie SmithがJimmy Smithをニュー・ジャズ・コンボと共にカヴァーするというのも感慨深いものがありますね。まさにニュー・ジャズとソウル・ジャズの融合といった趣の演奏になっています。
http://www.youtube.com/watch?v=hkBLDosdAIY

「Tie Am」
淡々とした中にもLonnieのオルガンを堪能できます。ホーン陣とLonnieのオルガンの絡みがいい感じです。

「Song For Lonnie」
タイトルの通り、JazzinvadersがDr. Lonnieに捧げたファンキー・チューン。大々的にLonnieのオルガンを満喫できます。途中でThe Beatles「Eleanor Rigby」の一節が聴こえてくるあたりも楽しいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=jztCxnH9O04

「Buzzin'」
クラブジャズ好きの人であればグッとくる疾走感のある仕上がり。ミステリアスなヴォーカルやLonnieのオルガンが絡む様が実にキマっています。クラブジャズ的にはこの曲が一番なのでは?

「Tastisch」
比較的オーセンティックな演奏ですが、Lonnieのオルガンが加わることでメリハリがついています。

「Square Blues」
開放的なソウル・ジャズ・チューン。わかりやすい演奏でみんなで盛り上がることできます!

「Little Sunflower」
Freddie Hubbardのカヴァー。オリジナルは『Backlash』(1967年)に収録されていますまた、Al Jarreauのヴォーカルをフィーチャーした『Love Connection』(1979年)収録ヴァージョンも有名ですね。当ブログではJerker Kluge's Deep Jazzのカヴァーも紹介済みです。ここではJazzinvadersらしいニュー・ジャズ風のスタイリッシュでダンサブルな仕上がりで聴かせてくれます。Lindaのヴォーカルも入って実にキャッチーな「Little Sunflower」を満喫できます。ニュー・ジャズ・サウンドに絡むDr. Lonnieのオルガンもスリリングです。

The Jazzinvadersの過去記事もご参照下さい。

『Up & Out』(2006年)
Up & Out

『Blow!』(2008年)
ブロウ!

『Three』(2010年)
スリー

Lonnie Smithのリーダー作も近々取り上げたいと思います。
posted by ez at 00:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月20日

Samba Trio『Tristeza』

オランダで録音されたブラジリアン・ジャズ作品☆Samba Trio『Tristeza』
Tristeza
発表年:1983年
ez的ジャンル:オランダ録音系ブラジリアン・ジャズ
気分は... :Ivan Lins作品との相性が◎

今回はオランダで録音されたブラジリアン・ジャズ作品Samba Trio『Tristeza』(1983年)です。

Samba Trioは、Alfredo Silva(b、vo)、Alberto Silva(per、vo)というウルグアイ出身のSilva兄弟がJoaquim Requejo(g、vo)、紅一点のTheresa Sayas(ds)と共にスペインで結成したグループ。トリオと言いながらカルテット編成です(笑)。ちなみにSilva兄弟はスペインを活動拠点にする本国のみならずブラジルでも活動していたようです。

彼らのライブにたまたま来ていた偉大なUS女性ジャズ・シンガーElla Fitzgeraldがその演奏を気に入り、彼女の口添えでオランダのレーベルTimelessで制作された作品が本作『Tristeza』です。

オランダTimelessといえば、以前に紹介したブラジリアン・フュージョン作品Batida『Batida』(1984年)もそうでしたね。

内容はすべてブラジル音楽のカヴァーという構成になっています。ただし、ブラジル音楽に憧憬するウルグアイ人兄弟がスペインで結成したグループのオランダ録音というのが何か興味深いですね。また、Batida『Batida』のようなブラジリアン・フュージョン作品もリリースしているTimeless作品ということで、フランジャーのかかったギターの音色がフュージョン風味なのが特徴的です。

特にIvan Lins作品を3曲取り上げているのが印象的です。確かに、本作を聴く限り、彼らとIvan Lins作品の相性の良さを感じます。

彼らのブラジル音楽に対する愛情が伝わってきます。
聴いているだけで清々しい気分になれる1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Tristeza」
Haroldo Lobo/Niltinho作の名曲カヴァー。当ブログではSergio Mendes & Brasil'66Elis ReginaBirgit LystagerCarlos Lyraのヴァージョンを紹介済みです。個人的にも大好きな曲(僕が一番聴くのはBirgit Lystagerヴァージョンですが)なので嬉しいカヴァーです。軽快なサンバ・リズムが実に心地好いですね。

「Amelia Emilia」
「Ai! Que Saudades De Amelia」(Ataulfo Alves/Mario Lago作)と「Emilia」(Wilson Batista/Haroldo Lobo作)のカヴァー。前者は以前にTania Mariaのカヴァーも紹介済みです。しっとりした序盤から軽快なジャズ・サンバへと展開します。終盤には息の合ったコーラスワークで盛り上げてくれます。

「Chick De Ipanema」
Antonio Carlos Jobim/Vinicius de Moraes作の名曲「イパネマの娘」をカヴァー。コーラス・ワークも含めて実に爽快なカヴァーです。また、途中でMarcos Valle作品の名曲「Samba De Verao (Summer Samba)」を挿入するサービスぶりに大満足です。

名曲「イパネマの娘」について、当ブログではTamba TrioAgustin Pereyra LucenaDiane Denoir/Eduardo MateoRoberto MenescalBossacucanova & Roberto MenescalSheila Landis/Rick MatlePapikTrio 3Dのカヴァーも紹介済みです。ご興味がある方はチェックを!

「O Pato」
Jayme Silva/Neusa Teixeira作の名曲「あひる」をカヴァー。当ブログではこれまでSergio Mendes & Brasil'66Lennie Dale & Sambalanco Trioのカヴァーを紹介済みです。楽しげなヴォーカル&演奏で盛り上げてくれます。コーラス・グループとしての彼らを堪能できます。終盤のアヒルの鳴き声もお見事(笑)

「Chega Mais」
ブラジル・ロックの女王Rita Leeのカヴァー(Rita Lee/Roberto de Carvalho作)。オリジナルは『Rita Lee』(1979年)に収録されています。こういった曲を取り上げることでアルバム全体の構成にメリハリがつきますね。個人的にも大好きな演奏です。
http://www.youtube.com/watch?v=aQQ9YUhq68c

「Tres Horas Da Manha」
Ivan Lins/Waldemar Correia作。Ivan Linsのカヴァー1曲目。当ブログでは有名なTamba TrioヴァージョンやAgustin Pereyra Lucenaのカヴァーを紹介済みです。彼らとIvan Lins作品の相性の良さを感じる爽快な仕上がりになっています。

「Quadras De Roda」
Ivan Linsのカヴァー2曲目。オリジナルは当ブログでも紹介した『Somos Todos Iguais Nesta Noite』(1977年)に収録されています。オリジナルも大好きな本曲が僕の一番のお気に入りです。オリジナルの雰囲気を受け継いだ小気味良いカヴァーに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=GKLbrj0_vJA

「Grito De Alerta」
Gonzaguinha作。Maria Bethania『Mel』(1979年)収録曲です。しっとり味わい深い仕上がりで聴かせてくれます。

「Aquelas Coisas Todas」
Toninho Horta作の名曲。オリジナルは当ブログでも紹介した『Terra dos Passaros』(1979年)に収録されています。また、当ブログではLuisito QuinteroTamba TrioStarship Orchestraのヴァージョンも紹介済みです。軽快なメロウ・グルーヴは実に心地好いですね。

「Essa Marie」
Ivan Linsのカヴァー3曲目(Ronaldo Monteiro/Ivan Lins作)。オリジナルは当ブログでも紹介した『Modo Livre』(1974年)に収録されている人気曲です。派手さはありませんが、この疾走感にはグッときます。

「Deve Ser Amor」
Baden Powell作。本作唯一のインスト。小気味良いジャズ・サンバで一息つく感じでしょうか。

「Vera Cruz」
ラストはMilton Nascimento作のブラジリアン・クラシックをカヴァー。当ブログではSirius BBatidaのカヴァーも紹介済みです。ここではミステリアスな雰囲気で聴かせてくれます。

個人的には和テイストのジャケにも惹かれます。
posted by ez at 11:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする