発表年:2012年
ez的ジャンル:最新キューバン・ジャズ
気分は... :最新ワールド・ミュージックの姿がここに...
今回はキューバ人先鋭ピアニストRoberto Fonsecaの最新作『Yo』です。
Roberto Fonsecaは1975年キューバ、ハバナ生まれ。1997年に元Irakereのサックス奏者Javier Zalbaらとラテン・ジャズ・ユニットTemperamentoを結成し、アルバム『En el Comienzo』をリリースしました。
その後ソロとして『Tiene Que Ver』(1999年)、『No Limit』(2000年)、『Elengo』(2001年)、『Zamazu』(2007年)、『Akokan』(2009年)、『Live in Marciac』(2010年)といったアルバムをリリースしています。
また、キューバン・ジャズの枠に止まらず、幅広いジャンルのミュージシャンと交流を持っています。Asa Festoonのデビュー作をプロデュースしたり、United Future Organizationの作品に参加したり、と日本人アーティストとの関わりも持っています。
さて最新作『Yo』ですが、キューバン・ジャズの枠を飛び越えたワールド・ミュージック作品に仕上がっています。特にアフリカ音楽との接点を強く感じる1枚に仕上がっています。
その象徴がマリ出身のパーカッション奏者Baba Sissokoやギニア出身のコラ奏者Sekou Kouyateの参加です。アフロ・ファンクとは少し異なるワールド・ミュージック的なアフリカン・サウンドを楽しむことができます。僕は80年代後半から90年代初めのワールド・ミュージック・ブームにハマった一人ですが、本作を聴いているとその頃聴いていたアフリカ音楽の諸作を思い出してしまいました。
本作のもう1つの魅力がクラブ・ミュージックとの接点です。その最大の目玉が人気DJ、Gilles Petersonが共同プロデューサーとして2曲に関与している点です。GillesとRoberto Fonsecaの接点は、2009年にGillesが企画したアルバム『Gilles Peterson Presents Havana Cultura: New Cuba Sound』です。Roberto Fonsecaは、このアルバムに中核メンバーとして参加していました。
『Gilles Peterson Presents Havana Cultura: New Cuba Sound』(2009年)
Gillesが関与した2曲以外にもドラムン・ベース調のダンス・チューンやCountによるリミックス3曲(ボーナス・トラック)が収録されており、クラブ・ミュージック好きの人も十分に楽しめる1枚になっています。
勿論、基本はジャズ・ピアニストなので現代ジャズ作品として聴いても十分楽しめます。
全曲紹介しときやす。
「80's」
キューバ音楽とアフリカ音楽がクロスオーヴァーしたオープニング。僕はこのオープニングを聴いて本作の購入を決めました。強烈なトライバル・リズムとRobertoのピアノがアフリカへと誘ってくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=EStcBLqiw58
「Bibisa」
マリ出身の女性シンガーFatoumata Diawaraをフィーチャー。Sekou Kouyateのコラと作者Baba SissokoのンゴニとRobertoのピアノが織り成す美しいサウンドに魅了されます。
http://www.youtube.com/watch?v=ve7ERgS6k5Q
「Mi Negra Ave Maria」
Gilles Peterson共同プロデュース1曲目。 パリ在住のアメリカ人の詩人Mike C. Laddのポエトリー・リーディングをフィーチャーした感動的な1曲に仕上がっています。Ramses Rodriguezのドラムが実にクロスオーヴァーな感じでいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=aeLZyOz04Fg
「7 Rayos」
キューバ人詩人の故Nicolas Guillenの朗読をサンプリング。この曲もSekou Kouyateのコラがいいアクセントになっています。
「El Sonador Esta Cansado」
Gilles Peterson共同プロデュース2曲目。クラブジャズ的センスのキューバン・ジャズを堪能できます。
http://www.youtube.com/watch?v=FlpbHLpL1QI
「Chabani」
アルジェリアのワールド・ミュージック、ライのシンガーFaudel Amilをフィーチャー。ライ独特のコブシの効いた歌い回しを楽しめます。ワールド・ミュージック・ブームの際によく聴いていたライの王様Cheb Khaledを思い出してしまいました。ただし、音自体はとてもジャズしており、Robertoのジャズ・ピアニストとしての魅力も堪能できます。
「Gnawa Stop」
パーカッションで参加しているJoel Hierrezueloの作品。現代ジャズとアフリカ音楽の美しい融合に魅了されます。
「El Mayor」
インタールード的な小曲。
「JMF」
ここではピアノのみならずRobertoのハモンド・オルガンも楽しめる1曲。Grupo Fantasmaあたりにも通じるハイブリッドなラテン・ミュージックを楽しめます。
http://www.youtube.com/watch?v=pFSLcxt5Lh4
「Asi Es La Vida」
ピアノ・トリオにチェロが加わった美しいジャズ作品。"静かなる音楽"好きの人が聴いてもグッときそうな1曲です。
「Quien Soy Yo」
セネガル出身のシンガーAssane Mboupをフィーチャーしたアフロ・キューバン・チューン。ある意味一番キューバン・ミュージックらしい仕上りかも?
「Rachel」
クラブ・ミュージック好きにとってのハイライトはこの曲でしょう!人力ドラムン・ベースのリズムが心地好いクロスオーヴァー・チューン。Robertoもフェンダー・ローズやムーグを駆使しています。
さらにアルバムにはCountによる「Bibisa」、「80's」、「Gnawa Stop」のリミックスが収録されています。特に「Gnawa Stop」のリミックスは国内盤のみのボーナス・トラックです。
「Bibisa(Remix)」
http://www.youtube.com/watch?v=BSipMXrOqDE
ご興味がある方はRoberto Fonsecaの他作品もチェックを!
『Tiene Que Ver』(1999年)
『No Limit』(2000年)
『Elengo』(2001年)
『Zamazu』(2007年)
『Akokan』(2009年)
『Live in Marciac』(2010年)