2013年05月12日

Adriana Rios『Cadapaju, Terra Da Inocencia』

アルゼンチン在住のブラジル人女性シンガーの2nd☆Adriana Rios『Cadapaju, Terra Da Inocencia』
adriana rios cadapaju.jpg
発表年:2012年
ez的ジャンル:アルゼンチン産ブラジリアン・メロウ・サンバ
気分は... :心の中に優しい微風が・・・

今回はアルゼンチン在住のブラジル人女性シンガーAdriana Riosの2ndアルバム『Cadapaju, Terra Da Inocencia』です。

昨年末の発売ですが、日本に流通するようになったのは今年になってからだと思います。実は僕が今年最も多く聴いているアルバムが本作『Cadapaju, Terra Da Inocencia』です。

しかしながらAmazon.co.jpに扱いがないため(Amazon.comでは扱っていますが)、ブログでの記事エントリーを保留していましたが、現状では扱いが見込めないようなのでこのタイミングでエントリーすることにしました。

Adriana Riosはアルゼンチン在住のブラジル人女性シンガー。2007年に1stアルバム『Simply Bossa』をリリースしています。本作『Cadapaju, Terra Da Inocencia』は約5年ぶりの2ndアルバムとなります。

前作はAntonio Carlos Jobim等のカヴァーを中心としたボサノヴァ作品でしたが、本作はすべてオリジナルです。その中にはアルゼンチン最高のボサノヴァ・ギタリストAgustin Pereyra Lucenaとの共作や、大御所ブラジル人ミュージシャンRoberto Menescalとの共作も含まれます。

AdrianaはAgustin Pereyra Lucenaのアルバム『Miradas』(1998年)にも参加しています。その意味でAdrianaのキャリアに大きな影響を与えたミュージシャンなのでしょうね。

Agustin Pereyra Lucenaはレコーディングにも参加しています。それ以外にもFelipe Radicetti(p、el-p、vo)、Rodrigo Aberastegui (g、vo)、Daniel Maza(b)、Fernando Martinez(per)等のミュージシャンが参加しています。

Felipe Radicettiがアレンジャーを務め、Felipe Radicetti、Fernando Martinez、そしてAdriana Rios本人が共同プロデューサーとしてクレジットされています。

全体的な印象としては、澄み切ったヴォーカルによる爽快なメロウ・サンバという感じですね。透明感のあるAdrianaのヴォーカル、サンバのリズム、メロウ・サウンドが見事に調和したモロに僕好みの1枚に仕上がっています。

こんなに素晴らしい作品がAmazon.co.jpで扱われないのは残念な限りです。

聴いていると、心の中に優しい微風が吹くはずですよ!

全曲紹介しときやす。

「Vem Viver」
オススメその1。Agustin Pereyra Lucena/Adriana Rios作。オープニングはAgustin Pereyra Lucenaの共作。本作の魅力が凝縮された爽快メロウなライト・サンバです。透明感のあるAdrianaのヴォーカルとライト&メロウなサンバ・サウンドが心を浄化してくれます。Cecilia Esperanzaによるフルート・ソロも素晴らしい!オリジナルはAgustin Pereyra Lucenaの『42:53』(2009年)のヴァージョンです。

「Hombre Triguerno」
オススメその2。Adriana Rios作。温もりのあるヴォーカル、メロディ、サウンドに魅了されるアコースティック・グルーヴ。聴いているだけ優しい気持ちにしてくれます。

「Maxixe Gramado」
Adriana Rios作。アルゼンチン作品らしくアコーディオンの音色が響く1曲。凛とした趣がいいですね。。

「Moco da Violao」
Adriana Rios作。哀愁モードの仕上がり。美しいストリングスをバックにしっとりと歌い上げます。終盤の美しいギターにも魅了されます。

「Ai Menino」
Adriana Rios作。素晴らしいヴォーカル・アレンジに魅了される美しいアコースティック・グルーヴ。小鳥の囀りのようなRuben "Mono" Izarrualdeのフルートにもグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=ZssF0kyKwgQ

「Cadapaju, Terra Da Inocencia」
オススメその3。Adriana Rios/Felipe Radicetti作。タイトル曲はライト&メロウなサンバ・チューン。サンバのリズムにのって、澄み切ったAdrianaのヴォーカルも絶好調です。メロウなギター&エレピもグッド!

「Segredos de Paixao」
オススメその4。Roberto Menescal/Adriana Rios作。前作に続くRoberto Menescalとの共作ですが、今回も美しいボサノヴァで魅了してくれます。しかもギターを弾くのは名手Agustin Pereyra Lucenaとなれば言うことありませせん。サイコー!

「Impensado」
オススメその5。Adriana Rios作。小気味良いサンバ・チューン。開放的なホーン隊とサンバのリズムがよくマッチしています。

「Cuna del Litoral」
オススメその6。Agustin Pereyra Lucena/Adriana Rios作。Agustin Pereyra Lucenaの共作2曲目。その美しくソフトリーな音世界に魅了されます。美しい!

「O Poeta Nao Sabia」
Adriana Rios作。哀愁モードのサンバ・チューン。クラリネットの響きが印象的です。

「Perdiste」
オススメその7。Adriana Rios作。開放感のある美しいメロウ・サンバ。心地好い感動が胸に込み上げてきます。
http://www.youtube.com/watch?v=8jnRpUSJ22g

「Vem Viver (Reprise)」
「Vem Viver」のリプライズで余韻に浸りながらアルバムは幕を閉じます。

『Simply Bossa』(2007年)
Simply Bossa
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2013年05月11日

Joe Thomas『Feelin's From Within』

メロウ・クラシック「Coco」収録のジャズ・ファンク作品☆Joe Thomas『Feelin's From Within』
フィーリンズ・フロム・ウィズイン
発表年:1976年
ez的ジャンル:Groove Merchant系ジャズ・ファンク
気分は... :メロウな休日・・・

今回はメロウ・ジャズ・ファンクの人気作Joe Thomas『Feelin's From Within』(1976年)です。

Joe Thomasは1933年ニュージャージー州ニューアーク生まれのサックス/フルート奏者。同名異人のジャズ・ミュージシャンが何名かいますので混同しないようにご注意を!

10代半ばには地元ニュージャージーのクラブで演奏するようになり、1962年には女性黒人オルガン奏者Rhoda Scottのグループに参加します。The Rhoda Scott Trio名義で『Hey, Hey, Hey』(1962年)、『Live! at the Key Club』(1963年)という2枚のアルバムを残しています。

Rhoda Scottのグループ解散後、同僚であったドラムのBill Elliottとの共同名義でJoe Thomas & Bill Elliott『Speak Your Piece』(1964年)をリリース。その後はJoe Thomas Group名義で『Comin' Home』(1968年)、ソロ名義で『Joe Thomas Is the Ebony Godfather』(1970年)、『Joy of Cookin'』(1974年)、『Masada』(1975年)、『Feelin's From Within』(1976年)、『Here I Come』(1977年)、『Get in the Wind』(1978年)、『Make Your Move』(1979年)、『Flash』(1980年)といったアルバムをリリースしています。

レア・グルーヴ好きの人であれば、『Comin' Home』(1968年)、『Joe Thomas Is the Ebony Godfather』(1970年)、ジャズ・ファンク/クロスオーヴァー好きの人であればジャズ・ファンクの人気レーベルGroove Merchantに残した『Joy of Cookin'』(1974年)、『Masada』(1975年)、『Feelin's From Within』(1976年)といったあたりが要チェックなのでは?

Groove Merchantに残したアルバムの中でも今日最も人気が高いのが本作『Feelin's From Within』(1976年)だと思います。特に日本人にはJ Hip-Hopの人気グループBuddha Brandの「ブッダの休日」サンプリング・ソース「Coco」が収録されていることで注目の高い1枚ですね。

参加ミュージシャンはJoe Thomas(fl、ts)以下、Bob Babbitt(b)、Jerry Friedman(g)、Lance Quinn(g)、Pat Rebillot(key)、Gary Mure(ds)、Barry Miles(syn)、Jimmy Maelen(per)、Steve Gadd(ds)、Jeff Mironov(g)、Alan Rubin(tp)、Lew Soloff(tp)、Jon Faddis(tp)、Dave Taylor(tb)、Barry Rogers(tb)、Michael Brecker(sax)、George Young(sax)、Lew DelGatto(sax)、David Lasley(vo)、 Arnold McCuller(vo)等です。プロデューサーはGroove Merchantの総帥Sonny Lester

究極のメロウ・チューン「Coco」に惹かれるアルバムですが、それ以外にも完成度の高いジャズ・ファンク・チューンが収録されています。主役Joe Thomasのフルート、サックスに加え、参加ミュージシャンの印象的なフレーズが多いのも魅力ですね。

メロウなジャズ・ファンク/クロスオーヴァー好きの人はぜひチェックを!

全曲紹介しときやす。

「Funky Fever」
Jerry Friedman作。オープニングはメロウ・ディスコ調のジャズ・ファンク。冒頭のホーン・アンサンブルがなかなか格好良いです。主役Joe Thomasのフルートもコーラス隊をバックに涼しげに疾走します。
http://www.youtube.com/watch?v=6k3Zt2NeXMg

「Feelin's From Within」
Lance Quinn/Brad Baker作。イージーリスニング調の序盤からグルーヴィーなクロスオーヴァーへと展開します。Joe Thomasのフルートに加え、軽快なギター・ソロにもグッときます。

「Polarizer」
Joe Thomas/Lance Quinn/Brad Baker作。印象的なギター・リフと共にスタートするジャズ・ファンク・チューン。中盤のBarry Milesのシンセ・ソロもなかなかインパクトがあります。
http://www.youtube.com/watch?v=Dh0V0fZaGEU

印象的なギター・リフはThe High & Mighty feat. Mos Def & Mad Skillz「B-Boy Document 99」、D.I.T.C.「Way of Life」等のサンプリング・ソースとなっています。
D.I.T.C.「Way of Life」
 http://www.youtube.com/watch?v=w7kxwiAwJ-8

「Coco」
Bob Babbitt作。前述のBuddha Brand「ブッダの休日」のサンプリング・ソースとなったメロウ・チューン。Buddha Brand当時大好きでした。本作のハイライトと呼べるでしょう。サンセット・モードにぴったりなメロウネスです。Buddha Brand「ブッダの休日」以外にもPanacea「Blue Oceanwave」でサンプリングされています。
http://www.youtube.com/watch?v=1OO8wFRPWDQ

Buddha Brand「ブッダの休日」
 http://www.youtube.com/watch?v=BLjesmzFwxg

「Galaxy Dreamin'」
Lance Quinn/Brad Baker作。ここではJoe Thomasのテナーを聴くことができます。ドラマティックな格好良さがあるのがいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=fh_Y9yyIgPA

「Venus」
Brad Baker作。Joe Thomasのテナーが優しく歌い上げるロマンティックな・バラードで締め括ってくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=wZRCTtfNvzw

冒頭のサックスは当ブログでも紹介したBeck「The New Pollution」のサンプリング・ソースにもなっています。
Beck「The New Pollution」
 http://www.youtube.com/watch?v=uxugaMpt1vU

ご興味がある方はJoe Thomasの他作品もチェックを!

『Comin' Home』(1968年)
Comin' Home

『Joy of Cookin'』(1974年)
ジョイ・オブ・クッキン

『Masada』(1975年)
Masada

『Make Your Move』(1979年)
Make Your Move
posted by ez at 17:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月10日

Jorge Ben『Jorge Ben』

「Pais Tropical」、「Que Pena」等の人気曲収録!☆Jorge Ben『Jorge Ben』
Jorge Ben
発表年:1969年
ez的ジャンル:オンリーワン系サンバ・グルーヴ
気分は... :サンバ・グルーヴで自分を盛り上げようっと!

最近どうもテンションが上がらない・・・まぁ、原因はいろいろあるのですが。
こんな時にはサンバ・グルーヴで自分を盛り上げようっと!

今回はブラジルを代表する男性シンガー・ソングライターJorge Ben(Jorge Ben Jor)の人気作『Jorge Ben』(1969年)です。

これまで当ブログで紹介したJorge Ben作品は以下の5枚です。

 『Sacundin Ben Samba』(1964年)
 『Forca Bruta』(1970年)
 『Africa Brasil』(1976年)
 『A Banda Do Ze Pretinho』(1978年)
 『Salve Simpatia』(1979年)

初期Jorge Benを代表するアルバムであり、70年代への橋渡しとなった作品です。

「Pais Tropical」「Take It Easy My Brother Charles」「Que Pena」といった人気曲が収録されているのが魅力ですが、他の楽曲も粒揃いでアルバム全体としても充実しています。

プロデュースはManoel Barenbein、アレンジはJose BriamonteRogerio Dupratが務めています。この2人のアレンジャーのいい仕事ぶりがアルバムの魅力を大幅にアップしてくれます。

また、ファンキー・サンバ・ユニットTrio Mocotoがバックを務めています。

Jorge Benらしいグルーヴィーな音世界を満喫できる間違いのない1枚です。

全曲Jorge Benのオリジナルです。

全曲紹介しときやす。

「Criola」
Trio Mocotoとの一体感のある演奏と切れのあるホーン・アレンジが印象的なオープニング。

「Domingas」
哀愁のアコースティック・グルーヴ。

「Cade Tereza」
Jorge Benらしい小気味良いグルーヴと本作らしいアレンジ・センスが上手く噛み合った素晴らしい1曲。
http://www.youtube.com/watch?v=DvTiehKj4P0

「Barbarella」
タイトルからしてJane Fonda主演のカルト・ムービー『Barbarella』からインスパイアされているんですかね。エレガントなストリングスも配したメロウなジャズ・サンバ・チューンです。
http://www.youtube.com/watch?v=Bgc8tvYuf1M

「Pais Tropical」
人気曲ですね。当ブログでもSom Okey 5Gal Costa‎のカヴァーも紹介済みです。Sergio Mendes & Brasil '77も『Pais Tropical』(1971年)でカヴァーしていました。開放的な雰囲気がいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=5ger8PgN-Os

Gal Costa‎「Pais Tropical」
http://www.youtube.com/watch?v=iNc3j1fod0Q

「Take It Easy My Brother Charles」
「Pais Tropical」と並ぶ人気曲。当ブログでも紹介したAstrud Gilbertoヴァージョンも人気ですね。キュートなメロウ・ボッサ・グルーヴのAstrudヴァージョンも大好きですが、オリジナルである本ヴァージョンの軽快な躍動感も魅力です。
http://www.youtube.com/watch?v=FiQ3tGAXPK0

Astrud Gilberto「Take It Easy My Brother Charlie」
 http://www.youtube.com/watch?v=EWv4mLbh8xo

「Descobri Que Eu Sou Um Anjo」
サンバ・グルーヴをバックにしたラップのような仕上がりです。テルミンも用いられたミステリアスでアブストラクトな雰囲気がグッド!
http://www.youtube.com/watch?v=_FtUXmyUCCE

「Bebete Vaobora」
当ブログではClara Morenoのカヴァーを紹介済みです。なかなか魅惑のアコースティック・グルーヴです。Trio Mocotoと一体感のある演奏がいいですね。ホーン・アレンジもグッド!

「Quem Foi Que Roubou A Sopeira De Porcelana Chinesa Que A Vovo Ganhou Da Baronesa?」
非常に長いタイトルですね。僕のお気に入り曲の1つ。ロマンティックなボッサ・チューンです。
http://www.youtube.com/watch?v=LhICp9kdHcQ

「Que Pena」
当ブログではGal CostaBossa Rioのカヴァーを紹介済みです。特にラブリー・ボッサなGalヴァージョンはCafe Apres-midiのコンピにも収録された人気曲ですね。自身のヴァージョンは小粋なアレンジ・センスが冴えるセクシー・グルーヴに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=Lie-L67eMho

Gal Costa「Que Pena」
 http://www.youtube.com/watch?v=sYHTwcpHlxY

「Charles Anjo 45」
ラストはエキサイティングなサンバ・グルーヴで締め括ってくれます。特に終盤の盛り上がりは凄いですね。

Jorge Benの過去記事もご参照下さい。

『Sacundin Ben Samba』(1964年)
Sacundin Ben Samba

『Forca Bruta』(1970年)
Forca Bruta

『Africa Brasil』(1976年)
アフリカ・ブラジル

『A Banda Do Ze Pretinho』(1978年)
A Banda Do Ze Pretinho

『Salve Simpatia』(1979年)
サルヴィ・シンパチーア(BOM1452)
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2013年05月08日

Omar『Best By Far』

Omarワールドを確立したターニング・ポイント的な1枚☆Omar『Best By Far』
Best By Far
発表年:2001年
ez的ジャンル:UK男性ソウル
気分は... :新作への期待も高まります

今回はアシッド・ジャズ期から活躍するUKソウルの男性シンガーOmarの5thアルバム『Best By Far』(2001年)です。

Omar(Omar Lye-Fook)の紹介は、デビュー・アルバム『There's Nothing Like This』(1990年)、『Sing (If You Want It)』(2006年)に続き3回目となります。

間もなく7年ぶりとなる7thアルバム『The Man』のリリースが控えているOmarですが、その前におさらいとして5th『Best By Far』を取り上げたいと思います。

3rd『For Pleasure』(1994年)、4th『This Is Not a Love Song』(1997年)を大手のRCAからリリースしたOmarでしたが、個人的には1st『There's Nothing Like This』、2nd『Music』と比較して物足りなさを感じました。アメリカのマーケットも意識するあまり、Omarらしさが少し希薄になってしまった印象を受けました。結果として、4th『This Is Not a Love Song』を最後にOmarの新作購入を止めてしまいました。

そのため、本作『Best By Far』(2001年)や次作『Sing (If You Want It)』(2006年)といった素晴らしいアルバムをリアルタイムではスルーすることになってしまいました。この2枚については後年に後追いで購入し、愛聴しています。

本作はRCAを離れ、フランスの新進レーベルNaiveからリリースされました。当ブログでも紹介したMadonna『Music』(2000年)のメイン・プロデューサーに起用され、一躍注目を集めたエレクトロ系アーティストMirwaisも所属していたレーベルがNaiveです。

大手レーベルのプレッシャーや制約から解放され、真に自分が創りたい音をOmar自身の主導で制作した印象を受けます。自らプロデューサーを務め、一部の曲で元JamiroquaiのベーシストStuart Zenderと共同プロデュースしています。

OmarらしいUKソウルがベースながら、ジャズや70年代ソウル/ファンク、60年代サントラからクラブミュージックまで時空を自由に行き来しながらOmarミュージックをクリエイトしている感じがいいですね。また、サンプリング・ネタがすべて60年代サントラというのも印象的です。

その後のOmarを方向づけるターニング・ポイントとなった1枚だと思います。

本作を聴いていると、新作『The Man』への期待も高まります。

全曲紹介しときやす。

「I Guess」
ファンキー・ホーン隊やストリングスも配したスケールの大きなファンキー・チューン。Omarらしいソウル・サウンドに70年代ニューソウルのエッセンスをスパイスとして効かせています。
http://www.youtube.com/watch?v=W4grbsAV1og

「Something Real」
2step調のリズムにファンキー・ホーンを上手く絡めた仕上がり。シングルにもなりました。クロスオーヴァー感があっていいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=XJEwDttmGFY

「Essensual」
Lalo Schifrin「Room 26」(Steve McQueen主演、映画『Bullitt』サントラ収録) のオルガンをサンプリングしたジャジー・ソウル。最近オルガン・ソウル・ジャズを聴く頻度が高い僕の嗜好にフィットします。
http://www.youtube.com/watch?v=bQrdy6a-IcM

「Be Thankful」
当ブログでも紹介したWilliam DeVaughnのソウル・クラシック「Be Thankful For What You Got」のカヴァー。当ブログではMassive AttackFingazzDonald McCollumのカヴァーも紹介済みです。ここではErykah Baduとのデュエットで、OmarらしいUKソウルに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=w458aTECqEk

本曲にはAngie Stoneをフィーチャーしたヴァージョンもあります。本ヴァージョンと比較するとトライバル感があるサウンドが印象的です。僕が保有する国内盤には未収録ですが、輸入盤にはAngie Stoneヴァージョンも収録されているものもあります。
http://www.youtube.com/watch?v=euCCX4osKgs

Omar Feat. Angie Stone「Be Thankful」
 http://www.youtube.com/watch?v=euCCX4osKgs

「Best By Far」
タイトル曲はジャジー&ダビーな仕上がり。こういった音はNaiveのようなレーベルだから創れる音かもしれませんね。
http://www.youtube.com/watch?v=tyQDDs9ZVKI

「To The Top」
キャッチーなヴォーカル・アレンジにグッとくるネオソウル調の仕上がり。本作におけるOmarの好調ぶりを実感できる1曲なのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=hwcp0cMSlfo

「Goodness」
「Essensual」に続きLalo Schifrin作品のオルガンをサンプリングしたインタールード。
http://www.youtube.com/watch?v=8fUTDJtyPmk

「Prologue」
ストリングスによるインタールード。

「Tell Me」
ムーグ・シンセの刺激的な音色とエレガントなストリングスのコントラストがいい感じのソウル・チューン。
http://www.youtube.com/watch?v=tR6-2aAW59g

「Syleste」
ダブルベース、バス・クラリネットが印象的なジャジー・ソウル。ジャズ・アーティスト作品にOmarが客演しているような雰囲気です。Bacharach作の名曲「I Say A Little Prayer」のフレーズも引用しています。
http://www.youtube.com/watch?v=yW2GpNeNZs8

「Come On」
UKの女性R&BシンガーKele Le Rocをフィーチャー。ブリブリのベースラインが効いているソウル・チューン。なかなかパンチのある1曲に仕上がっていると思います。
http://www.youtube.com/watch?v=boLGFfnCZDg

「Emporium」
変態チックなシンセの音色にグッときます(笑)。こういう雰囲気もOmarらしいですよね。
http://www.youtube.com/watch?v=vtRaitcAmsw

「In The Morning」
John Barry「Midnight Cowboy」(映画『Midnight Cowboy』のサントラ)をサンプリングしたソウル・バラード。
http://www.youtube.com/watch?v=0sSPYg3ZYAw

「Syleste (Lounge Lizzard Mix)」
「Syleste」のリミックス。ラウンジ感のあるスタイリッシュなリミックスです。
http://www.youtube.com/watch?v=KSev0sIGtG0

国内盤にはさらにボーナス・トラックとして「Something Real (10 Degrees Below Vs X-Men Radio Mix)」が収録されています。

輸入盤の場合、収録曲や曲順の異なるものがいくつかあるので、内容をきちんと確認した方がいいと思います。

『There's Nothing Like This』(1990年)
There's Nothing Like This

『Sing (If You Want It)』(2006年)
Sing (If You Want It)
posted by ez at 03:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月07日

Sarah Vaughan『Brazilian Romance』

最後のオリジナル作品はSergio Mendesプロデュース☆Sarah Vaughan『Brazilian Romance』
ブラジリアン・ロマンス
発表年:1987年
ez的ジャンル:ブラジリアン・フレイヴァー系女性ジャズ・ヴォーカル
気分は... :これがラストとは信じられない!

今回は偉大なる黒人女性ジャズ・ヴォーカリストSarah Vaughan(1924-90年)の『Brazilian Romance』(1987年)です。

Sarah Vaughanの紹介は『Sarah Vaughan With Clifford Brown』(1954年)に続き2回目となります。

Billie Holiday、Ella Jane Fitzgeraldと並び称された黒人女性ジャズ・ヴォーカリストであったSarahですが、1990年に肺がんで66年の人生にピリオドを打ちます。そのSarahの最後のオリジナル・アルバムとなったのが本作『Brazilian Romance』(1987年)です。

タイトルの通り、ブラジリアン・フレイヴァーの作品です。過去にも『I Love Brazil!』(1977年)、『Copacabana』(1979年)といったブラジル路線のアルバム(共にブラジル録音)をリリースしてきたSarahですが、本作はコンテンポラリーなフュージョン色が強い雰囲気ですね。録音もアメリカで行われています。

Sergio Mendesがプロデュースを務め、フィーチャリング・アーティストとして、Milton Nascimento(vo)をはじめ、George Duke(key)、Hubert Laws(fl)、Tom Scott(ts、lyricon)、Paulinho da Costa(per)、Ernie Watts(as)といったミュージシャンの名が表ジャケに記されています。

それ以外にもAlphonso Johnson(b)、Dan Huff(g)、Dori Caymmi(g)、Carlos Vega(ds)、Chuck Domanico(b)、Marcio Montarroyos(flh、tp)、Siedah Garrett(back vo)、Gracinha Leporace(back vo)、Kate Markowitz(back vo)といったミュージシャンが参加しています。アレンジはDori Caymmiが務めています。

これがラスト・アルバムとは思えない素晴らしい歌声を聴かせてくれます。
コンテンポラリーなサウンドも含めて晩年モードを感じさせないアルバムになっているのがいいですね。

ラスト・アルバムということを気にせず、純粋にブラジリアン・フレイヴァーの女性ジャズ・ヴォーカル作品として楽しめると思います。特にハイライト曲「Nothing Will Be as It Was (Nada Sera Como Antes)」は要チェックです。

唯一無二の堂々とした歌声をブラジリアン・サウンドと共に堪能しましょう。

全曲紹介しときやす。

「Make This City Ours Tonight」
Tracy Mann/
Milton Nascimento作。本作らしいコンテンポラリーなブラジリアン・フレイヴァーの効いたオープニング。
http://www.youtube.com/watch?v=bwiAlPYcQFw

「Romance」
Dori Caymmi/Tracy Mann/Paulo Cesar Pinheiro作。美しいストリングスと小粋なGeorge Dukeのピアノをバックにしたロマンティック・バラード。
http://www.youtube.com/watch?v=4gB3_wBSnNc

「Love and Passion」
Tracy Mann/
Milton Nascimento作。
Milton Nascimento本人もヴォーカルで参加しています。コンテンポラリーながらもミナスな雰囲気があるのがいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=e9vC3myzZY8

「So Many Stars」
Marilyn Bergman/Alan Bergman/Sergio Mendes作。Sergio Mendes and Brasil '66『Look Around 』(1968年)のヴァージョンでお馴染みの曲です。優しくかみしめるように歌い上げています。
http://www.youtube.com/watch?v=z-NmVTYThKQ

「Photograph」
Dori Caymmi/Tracy Mann/Paulo Cesar Pinheiro作。哀愁モードのバラードを情感たっぷりに歌い上げます。
http://www.youtube.com/watch?v=SLX_GtEiM5c

「Nothing Will Be as It Was (Nada Sera Como Antes)」
Ronaldo Basos/
Milton Nascimento/Renne Vincent作。当ブログではElis ReginaFlora Purimによるカヴァーも紹介済みです。Cafe Apres-midi系の音がお好きな人であれば、このブラジリアン・ダンサーがハイライトだと思います。Ernie Wattsがアルト・ソロで盛り上げてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=krfY3wpiDlI

「It's Simple」
Dori Caymmi/Tracy Mann/Paulo Cesar Pinheiro作。優しいギターが寄り添う素敵なバラード。バラード系ではこの曲が一番好きです。

「Obsession」
Dori Caymmi/Tracy Mann/Gilson Peranzzetta作。Hubert Lawsのフルートが涼しげにナビゲートするメロウ・チューン。サンセット・モードが似合いそうです。
http://www.youtube.com/watch?v=5DWElSkW6K4

「Wanting More」
Fernando Leoporace/Tracy Mann作。ボッサ調の素敵な仕上がり。Dori Caymmiのビューティフルなアレンジがグッド!
http://www.youtube.com/watch?v=j031rx-ArVQ

「Your Smile」
Dori Caymmi/Paulo Cesar Pinheiro/Ina Wolf作。美しく感動的なメロウ・ブラジリアンで締め括ってくれます。これが偉大なシンガーのラスト・アルバムのラスト・ソングかと思うと感傷にふけってしまいます。
http://www.youtube.com/watch?v=zXgX2csdB4c

Sarah Vaughanの他のブラジリアン・テイスト作品もチェックを!

『I Love Brazil!』(1977年)
I Love Brazil

『Copacabana』(1979年)
コパカバーナ
posted by ez at 02:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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