2013年07月25日

Bebel Gilberto『Bebel Gilberto』

コスモポリタンBebelの2ndアルバム☆Bebel Gilberto『Bebel Gilberto』
Bebel Gilberto
発表年:2004年
ez的ジャンル:コスモポリタン系新世代ブラジリアン・ミュージック
気分は... :N.Y.、ロンドン、リオ、バイーア...

今回はコスモポリタンなブラジル人シンガーBebel Gilbertoの2ndアルバム『Bebel Gilberto』(2004年)です。

ブラジル音楽界の巨人Joao GilbertoとMiuchaの娘Bebel Gilbertoについて、これまで紹介したアルバムは以下の3枚。

 『Tanto Tempo』(2000年)
 『Moment』(2007年)
 『All In One』(2009年)

今回紹介する『Bebel Gilberto』(2004年)は、『Tanto Tempo』(2000年)に続く2ndアルバムです。

ブラジル音楽とクラブ・ミュージックを融合したハイブリッドなスタイルで、クラブ系リスナーを中心に高い支持を得たアルバムが『Tanto Tempo』でした。

しかし、『Tanto Tempo』を創り上げた最大の功労者である鬼才プロデューサーSuba『Tanto Tempo』完成後に自宅火災で急死するという悲運が起こってしまいます。火災発生後に『Tanto Tempo』のマスターテープを取りに戻った彼はそのまま帰らぬ人となってしまったのでした。

『Tanto Tempo』もの成功と、Subaの死の間で、残されたBebelの心境も複雑であったでしょう。

そんな状況を乗り越えてリリースされたアルバムが『Bebel Gilberto』です。

Subaの代わるサウンドの要として、BjorkU2Annie Lennox等でお馴染みのUKのプロデューサーMarius de Vrieをメイン・プロデューサーに迎えています。

それ以外にもBjorkMadonna等を手掛けたUKのプロデューサーGuy Sigsworth、バイーアの天才パーカッション奏者Carlinhos Brown、当ブログでも紹介したN.Y.の異色ユニットBrazilian GirlsのメンバーDidi Gutman、ベルギー出身のPascal Gabriel、気鋭のブラジル人サウンド・クリエイターAle Siqueira、そしてBebel本人がプロデュースに関与しています。

こうしたプロデューサー陣の顔ぶれを見ても、Bebelのコスモポリタン感覚がよく反映されていますね。

さらにアルバムにはJoao DonatoMarcos SuzanoDaniel JobimAntonio Carlos Jobimの孫)、さらには母Miucha等が参加しています。

アルバム全体として、肩肘張らず自然なかたちでハイブリッドなブラジリアン・サウンドを創り上げているのがいいですね。無理に新しいサウンドを生み出そうとするのではなく、創ってみたらハイブリッドな音になっていたみたいな・・・

自身の名の冠したアルバム・タイトルを含めて、コスモポリタンなブラジル人アーティストBebel Gilbertoの進むべき道が示された作品だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Baby」
Caetano Veloso作。Gal Costaヴァージョンでお馴染みの名曲。当ブログではトロピカリズモ名盤『Tropicalia: ou Panis Et Circencis』収録のGal & CaetanoヴァージョンやOs Mutantesヴァージョンも紹介済みです。ここではナチュラル&ソフトリーでメロウ感覚の「Baby」を聴くことができます。
http://www.youtube.com/watch?v=mbl4mH7Ye40

「Simplesmente」
Bebel Gilberto/Didi Gutman/Marius de Vries作。 Carlinhos BrownMarcos Suzano、Marius de Vries、Didi Gutman(Brazilian Girls)という気鋭のミュージシャンが集まったネオ・ボッサ・チューン。さり気ないですがエスプリが効いています。
http://www.youtube.com/watch?v=V9GFJw2ffI4

「Aganju」
Carlinhos Brown作。母Miuchaもバック・ヴォーカルで参加しています。透明感のあるBebelのヴォーカル、Carlinhos Brownが活躍する大地のリズム、さらにはエレクトロ・サウンドが相俟ったハイブリッド感が僕好みです。
http://www.youtube.com/watch?v=J71FLwVNps8

「All Around」
Bebel Gilberto/Marius de Vries/Masaharu Shimizu作。英語で歌われていることもあって都会的な感覚のメロウ・ボッサといった印象です。
http://www.youtube.com/watch?v=0J4QmrIomK4

「River Song」
Bebel Gilberto/Didi Gutman/Marius de Vries作。クラブ系リスナーの方も気に入るであろう、スタイリッシュ&キャッチーなボッサ・グルーヴ。
http://www.youtube.com/watch?v=vB87uf03x1Q

「Every Day You've Been Away」
Daniel Jobim/Pedro Baby作。ギターのみのバックでBebelが歌うシンプルな仕上がり。
http://www.youtube.com/watch?v=9hB8sQQr7Qo

「Cada Beijo」
Bebel Gilberto/Guy Sigsworth作。Guy Sigsworthらしいプロデュース・センスが発揮されたエレクトロニカな仕上がり。クールな哀愁モードにグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=9jxKycYuhhc

「O Caminho」
Bebel Gilberto作。Joao Donatoの美しいピアノと共に始まります。哀愁のメロディをBebelがしっとりと歌います。
http://www.youtube.com/watch?v=Yu-Jt3x4af8

「Winter」
Bebel Gilberto/Didi Gutman/Marius de Vries作。タイトルは冬ですが夏にもフィットする素敵なネオ・ボッサ・チューンに仕上がっています。

「Ceu Distante」
Bebel Gilberto/Pascal Gabriel作。Pascal Gabrielプロデュース。派手さはありませんが、夢の世界のような独特の音世界に惹かれます。

「Jabuticaba」
Bebel Gilberto/Carlinhos Brown作。個人的にも一番のお気に入りです。Carlinhos Brownらを中心とする多彩な打楽器のリズムが、美しいメロディとBebelの優しい歌声を上手く引き立てているのがサイコーです。
http://www.youtube.com/watch?v=DHEOefzCGNU

「Next To You」
Bebel Gilberto/Didi Gutman/Marius de Vries作。ラストは美しく壮大なストリングスをバックに、子守唄のような優しい歌声で聴く者を包み込んでくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=zLOuJhqZmhg

僕は保有しているのは輸入盤ですが、国内盤にはThe 5th Dimensionでお馴染み、「Up, Up And Away」(Jimmy Webb作)のカヴァーがボーナス・トラックとして追加収録されています。

Bebel Gilbertoの過去記事もご参照下さい。

『Tanto Tempo』(2000年)
タント・テンポ

『Moment』(2007年)
モメント

『All In One』(2009年)
All in One
posted by ez at 01:13| Comment(2) | TrackBack(0) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月24日

Nicolette『Let No-One Live Rent Free In Your Head』

当時のUKらしさ満載!官能的超現実体験な女性ヴォーカル作品☆Nicolette『Let No-One Live Rent Free In Your Head』
Let No One Live Rent Free
発表年:1996年
ez的ジャンル:テクノ/アンビエント系女性ヴォーカル
気分は... :電脳世界の天使の声・・・

今回はナイジェリア系UK女性シンガーNicoletteの2ndアルバム『Let No-One Live Rent Free In Your Head(邦題:官能的超現実体験への情熱)』(1996年)です。

Nicolette(本名:Nicolette Suwoton)は1964年、スコットランド、グラスゴー生まれのナイジェリア系女性シンガー。

これまで『Now is Early』(1992年)、『Let No-One Live Rent Free In Your Head』(1996年)、『Life Loves Us』(2005年)といったアルバムをリリースしています。

トリップ・ホップ名盤Massive Attack『Protection』(1994年)において「Sly」「Three」の2曲でフィーチャーされ、その個性的なヴォイスと共に一躍注目の存在となったNicolette。

そんな注目を集めるなか、Talkin' Loudからリリースされた2ndアルバムが本作『Let No-One Live Rent Free In Your Head』(1996年)です。

4HeroDego、Ed HandleyとAndy Turnerによるテクノ/エレクトロニカ・ユニットPlaid、Atari Teenage Riotの設立メンバーでもあるドイツ人ミュージシャン、Alec Empire、UKのDJ/プロデューサーFelix、そしてNicolette本人がプロデュースを務めています。

唯一無二なNicoletteのチャーミングなヴォーカルと多彩なプロデューサー陣によるサウンドが相俟って、この時期のUKの最新サウンドを提示してくれます。僕もリアルタイムで本作を聴いた時、"これぞ今のUKの音!"と思い、何度も繰り返し聴いていた記憶があります。

ただし、どんなサウンドをバックにしても彼女の声がそこに入るとNicoletteワールドにしてしまうところがNicoletteというヴォーカリストのユニークなところですね。

個人的には電脳感覚のアンビエントな音世界にも惹かれます。

官能的超現実をぜひ体験あれ!

全曲紹介しときやす。

「Don't Be Afraid」
Nicoletteプロデュース。次曲「We Never Know」のプロローグのような電脳チューン。

「We Never Know」
Plaidプロデュース。テクノ/アンビエント・トラックと天からの声のようなNicoletteのユニーク・ヴォイスにより、脳内が電脳化されてしまいます。
http://www.youtube.com/watch?v=jxyemSXmfcU

「Song For Europe」
Degoプロデュース。僕の一番のお気に入り。Degoによるアンビエント感覚のドラムンベース調サウンドとNicoletteのキュート・ヴォーカルが透明感のある音空間を創り上げています。
http://www.youtube.com/watch?v=SgqvC5RsArE

「Beautiful Day」
Plaidプロデュース。ダークなトリップ・ホップ。美しくも儚い音世界が印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=sHY1zaebMYE

「Always」
Nicoletteプロデュース。囁くようなNicoletteのヴォーカルがキュートなプリティ・チューン。
http://www.youtube.com/watch?v=Ip_MpjdUw7Q

「Nervous」
Alec Empireプロデュース。へヴィ&ノイジーなデジタル・サウンドとNicoletteのユニーク・ヴォーカルのケミストリーを楽しみましょう。

「Where Have All The Flowers Gone?」
Plaidプロデュース。Pete Seeger作の反戦フォークをカヴァー。お馴染みの反戦ソング「花はどこへ行った」をアンビエント+教会音楽といった趣のカヴァーで聴かせてくれます。

「No Government As A Way Of Life」
シングルにもなった「No Government」のPlaid Remix。Plaidらしい電脳サウンドを満喫できます。
http://www.youtube.com/watch?v=W5hivDXm5wY

「Nightmare」
Alec Empireプロデュース。まさに悪夢といった雰囲気のダーク・サウンドとNicoletteのヴォーカルのコントラストが面白いですね。
http://www.youtube.com/watch?v=dZOWvYJXxlI

「Judgement Day」
Nicoletteプロデュース。美しいピアノをバックに、しっとりと歌い上げます。
http://www.youtube.com/watch?v=POHj5HmIhbQ

「You Are Heaven Sent」
Felixプロデュース。電脳空間で天国へ誘うかのようなNicoletteのヴォーカルが印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=ut--Ly4fmg4

「Just To Say Peace And Love」
Degoプロデュース。ドラムンベース調「Song For Europe」に対して、こちらはDegoのHip-HopプロジェクトTek 9に通じる、ジャジーなブレイクビーツに仕上がっています。ジャジー・サウンドとNicoletteの不思議系ヴォーカルが案外マッチします。

「No Government (Original Version)」
Plaidプロデュース。前述のようにアルバムからの先行シングルにもなった楽曲です。ダークでエキゾチックなトラックに負けない、Nicoletteの個性的な声質の存在感が抜群です。
http://www.youtube.com/watch?v=kZXGvU6qLoI

「Don't Be Ashamed (Don't Be Afraid Part II)」
ラストは電脳チューンで締め括ってくれます。

『Now is Early』(1992年)
Now Is Early

『Life Loves Us』(2005年)
Life Loves Us
posted by ez at 02:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月22日

Candido『Dancin' & Prancin'』

アフロ・キューバン屈指のパーカッション奏者によるサルソウル・ディスコ作品☆Candido『Dancin' & Prancin'』
DANCIN' AND PRANCIN' + 6
発表年:1979年
ez的ジャンル:アフロ・キューバン系パーカッション奏者
気分は... :千の指を持つ男!

今回はアフロ・キューバン史上最高のパーカッション奏者と称されるCandido Cameroが1979年にSalsoulからリリースした『Dancin' & Prancin'』です。

"千の指を持つ男"と呼ばれるCandido Cameroは1921年キューバ、ハバナ生まれ。

キャリア初期には同じくキューバ人の偉大なミュージシャンMachitoらとレコーディングしていました。1952年にN.Y.に拠点を移し、Dizzy Gillespie、Billy Taylor、Stan Kentonらのバンドで演奏しています。

また、自身のリーダー作も数多くリリースしています。レア・グルーヴ方面では『Thousand Finger Man』(1969年)、『Beautiful』(1970年)、『Brujerias De Candido/Candido's Latin McGuffa's Dust』(1971年)、『Drum Fever』(1973年)あたりの評価が高いのでは?

今日紹介する『Dancin' & Prancin'』は、CandidoがSalsoulでレコーディングした2枚のアルバムのうちの1枚です。本作の後にもう1枚の『Candi's Funk』(1980年)です。

本作『Dancin' & Prancin'』はSalsoul作品ということでディスコ作品に仕上がっています。その意味ではアフロ・キューバン史上最高のパーカッション奏者らしい作品とは呼べないかもしれませんが、N.Y.ディスコ/ガラージ好きの人は楽しめる1枚だと思います。

特に「Dancin' & Prancin'」「Jingo」「Thousand Finger Man」の3曲はガラージ好きにはたまらないのでは?

上記3曲のレコーディング・メンバーの中には、当ブログでも紹介したN.Y.のファンク/ディスコ・グループKleeerのメンバーWoody Cunningham(ds)、Norman Durham(b)が名を連ねています。特にWoody Cunninghamは楽曲提供を行っており、本作に大きく貢献しています。

CDにはオリジナル4曲に加え、別ヴァージョン6曲がボーナス・トラックとして収録されています。

"千の指を持つ男"の華麗なる手さばきとN.Y.ダンス・サウンドの融合を楽しみましょう。

全曲紹介しときやす。

「Dancin' & Prancin'」
ガラージ・クラシックとして人気のタイトル曲。Louis Smallのピアノ・リフやキャッチーな女性コーラスが印象的なダンス・チューン。主役Candidoのパーカッションは後半に炸裂します。
http://www.youtube.com/watch?v=R0EmypSYN9o

「Jingo」
ナイジェリアのパーカッション奏者Babatunde Olatunjiの作品。何といってもSantanaヴァージョンでお馴染みですね。元々パーカッションが目立つ楽曲なのでCandidoのプレイが光るのは当然ですね。さらにアープやクラヴィネットの音色がN.Y.ガラージらしい雰囲気を醸し出してくれるのがグッド!この曲もガラージ/ロフト・クラシックです。
http://www.youtube.com/watch?v=B85dYk77V-o

「Thousand Finger Man」
この曲もクラシック!不気味な序盤から一転し、ガラージ仕様の4つ打ちダンス・チューンに突入します。CandidoのパーカッションやCarlos Franzettiのピアノ、Kleeerメンバーのリズム隊、男女コーラスらが織り成す甘く危険な香りのするN.Y.ガラージはサイコーです。
http://www.youtube.com/watch?v=HvT0WywgFQ0

「Rock And Shuffle (Ah-Ha)」
華やかなディスコ・チューンに仕上がっています。ある意味、最もSalsoulらしいサウンドを満喫できるかもしれません。主役のCandidoのパーカッションは勿論のこと、弾けたホーン隊も盛り上げてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=fQOqavPxFoU

前述のように再発CDには「Jingo (Original 12" Version)」「Thousand Finger Man (12" Extended Version)」「Jingo (A Shep Pettibone Mix)」「Thousand Finger Man (Single Version)」「Jingo (Single Version)」の6曲がボーナス・トラックとして追加収録されています。

「Jingo (Original 12" Version)」 ※Mixed By – David Rodriguez Jr.
 http://www.youtube.com/watch?v=4seXzBj9QCY
「Jingo (A Shep Pettibone Mix)」
 http://www.youtube.com/watch?v=qAVrrk-pE04

ご興味がある方はCandido Cameroの他作品もチェックを!
『Drum Fever』(1973年)のCD化を希望します・・・

『Thousand Finger Man』(1969年)
Thousand Finger Man

『Beautiful』(1970年)
Beautiful

strong>『Brujerias De Candido/Candido's Latin McGuffa's Dust』(1971年)
Brujerias de Candido: Candido's Latin McGuffa's Dust

『Candi's Funk』(1980年)
CANDI'S FUNK +2
posted by ez at 01:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月21日

Thundercat『Apocalypse』

天才ベーシストの第2弾!エクスペリメンタルなブラック・ミュージックがここに!☆Thundercat『Apocalypse』
Apocalypse [帯解説・ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (BRC383)
発表年:2013年
ez的ジャンル:Flying Lotus系天才ベーシスト
気分は... :喪失と再生・・・

今回は音楽ファン大注目の天才ベーシストThundercatの最新2ndアルバム『Apocalypse』です。

ThundercatことStephen Brunerは、Diana RossやThe Temptations等のバックを務めた黒人ドラマーRonald Bruner Sr.を父に持つベーシスト(多分、現在27歳前後)。兄のRonald Bruner Jr.もグラミー受賞歴を持つ敏腕ドラマーです。

こうした音楽一家のなかで幼少期からベースを弾き始め、10代の頃からLeon Wareをはじめとする様々なソウル/ジャズ・ミュージシャンのバックを務めています。その一方で16歳から現在に至るまでL.Aのクロスオーヴァー・スラッシュ/ハードコア・バンドSuicidal Tendenciesに参加しているという側面を持ちます。

当ブログで紹介した作品でいえば、Erykah Badu『New Amerykah Part Two: Return Of The Ankh』(2010年)、Flying Lotus『Until The Quiet Comes』(2012年)の記事にThundercatの名が登場します。

特にLAビート・ミュージックの牽引者Flying Lotusとはアルバム『Cosmogramma』(2010年)の頃から蜜月関係にあり、Flying Lotusの後押しもあって彼のレーベルBrainfeederから1stソロ・アルバム『The Golden Age of Apocalypse』(2011年)をリリースしています。この作品は一部音楽ファンやミュージシャンの間で評判となり、一躍Thundercatの存在が注目されるようになりました。

本作『Apocalypse』は、『The Golden Age of Apocalypse』に続く2ndアルバムであり、前作同様Brainfeederからのリリースです。エグゼクティヴ・プロデューサーとしてFlying Lotusの名がクレジットされています。

僕も発売前から期待していたアルバムであり、発売直後に国内盤を即ゲットしましたが、某CDショップの新譜コーナーで本作が大々的にプッシュされているのには正直驚きました。しかも発売元の謳い文句が「Jaco PastoriusStevie Wonderがセッションしたような・・・」といった具合です。そんな大袈裟なフレーズで売り出すと、アーティスト/作品の真の姿が歪曲してしまうと思いますが・・・

ジャズ、ソウル、エレクトロニカ、プログレッシヴ・ロック、コズミック・ファンク、ディスコ等をBrainfeederらしいエクぺリメンタルな感覚でまとめあげた作品に仕上がっています。天才ベーシストとしての壮絶プレイもさることながら、本作では歌への比重が高まっているのが特徴です。

本作のテーマは「喪失と再生」。この背景には、『The Golden Age of Apocalypse』にも参加していた天才ピアニストAustin Peraltaが昨年11月に急逝したことが大きく影響しています。ジャケのインナーには在りし日のPeraltaの姿が写り、彼の死による喪失感や死生観を感じる楽曲が目立ちます。

アルバムには元The Mars VoltaのドラマーThomas Pridgen、Thundercatも一目置くベーシストHadrien Feraud、新世代ソウル・ミュージックの担い手Adrian Younge、グラミー賞受賞ピアニストRuslan Sirota等も参加しています。

楽曲はすべてThundercat、Flying Lotusらによるオリジナルです。

Jaco PastoriusStevie Wonderがセッションしたような・・・」といった謳い文句に惑わされることなく、Thundercatというアーティストの立ち位置や本作の「喪失と再生」というテーマの背景を知ることで、より興味深く聴くことができると思います。

全曲紹介しときやす。

「Tenfold」
Thundercatの哀愁モードのヴォーカルがスペイシーなエレクトロニカ・サウンドの中を駆け抜けます。
http://www.youtube.com/watch?v=F_mjwyPFCGs

「Heartbreaks + Setbacks」
僕の一番のお気に入り。メロディアスかつうねるグルーヴが僕好みのコズミック・ソウル!曲自体はPeraltaの死にショックを受け、心が折れかけていた時期に作られたもののようです。そんな自分を奮い立たせるかのような孤独な疾走感にグッときます。もっと長尺で聴きたい!
http://www.youtube.com/watch?v=48hJPXmqiFo

「The Life Aquatic」
ミニマル感覚のエレクトロニカなインスト。このあたりはBrainfeeder作品らしいエクぺリメンタル感覚ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=Zmdqr1zl5S8

「Special Stage」
美しさの中にエクぺリメンタルなスパイスの効いたソウル・チューン。
http://www.youtube.com/watch?v=dCZeWhfEpVU

「Tron Song」
スペイシー感覚の音世界が印象的なビューティフル・ソング。歌とメロディを重視した本作らしい仕上りなのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=czATEsWsmXU

「Seven」
ミニマルなエクぺリメンタル・チューン。このあたりは好き嫌いが分かれるかもしれませんが・・・
http://www.youtube.com/watch?v=4cmP3M4NY9A

「Oh Sheit it's X」
「Heartbreaks + Setbacks」と並ぶ僕のお気に入り。80年代感覚のキャッチーなディスコ・ファンク・チューンに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=uAdxsQC--ns

「Without You」
ここからはAustin Peraltaの死が影響している楽曲が続いています。サウンド自体はポップですが、どこか寂しげなヴォーカルが友の喪失感を表しているのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=DfXhyl3KMLI

「Lotus and the Jondy」
タイトルにあるJondyとはAustin Peraltaの愛称です。スピリチュアル・ジャズ感覚の演奏ですが、特に後半のインプロヴィゼーションはテンション高いです。
http://www.youtube.com/watch?v=GfcfFYg6puM

「Evangelion」
タイトルはお馴染みのアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』からとってものです。死はあらゆる生に付随するという死生観をエヴァンゲリオンやPeraltaの死に照らし合わせているようです。
http://www.youtube.com/watch?v=bfVkz2DYlNY

「We'll Die」
この曲も前曲の流れを汲むかのようなスピリチュアルな小曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=byNQwIYz8xU

「Daylight (Reprise)」
この曲は国内盤のみのボーナス・トラック。前作『The Golden Age of Apocalypse』にも収録されていた「Daylight」のリプライズです。

「A Message for Austin/Praise the Lord/Enter the Void」
ラストは3曲から成る組曲。「A Message for Austin」はタイトルの通り、Austin Peraltaに捧げられた楽曲。坂本龍一「El Mar Mediterrani」をサンプリングしたトラックに合わせて友の死を悼んでいます。「Enter the Void」は東京を舞台にしたGaspar Noe監督の同名映画がモチーフになっているようです。
http://www.youtube.com/watch?v=sHowf-v1Aho

『The Golden Age of Apocalypse』(2011年)
The Golden Age of Apocalypse [帯解説・ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (BRC302)
posted by ez at 02:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月20日

The Girls from Bahia『Pardon My English』

Quarteto Em Cyのアメリカ進出向けアルバム第1弾☆The Girls from Bahia『Pardon My English』
Girls From Bahia: Pardon My English
発表年:1967年
ez的ジャンル:ブラジル女性コーラス・グループの最高峰
気分は... :やる気満々!

ここ数日間、(僕はプログラマーではありませんが)ある作業のデバッグが解消しないままイライラの続く日々を過ごしたのですが、昨晩いきなり謎が解けスッキリ!この週末はスッキリしてやる気満々モードで各種案件を処理できそうです。

今回はブラジル女性コーラス・グループの最高峰Quarteto Em CyThe Girls from Bahia名義でリリースしたアルバム『Pardon My English』(1967年)です。

これまで当ブログで紹介したQuarteto Em Cy作品は以下の3枚。

 『Quarteto Em Cy』(1966年)
 『Em Cy Maior』(1968年)
 『Quarteto Em Cy』(1972年)

The Girls from Bahiaはアメリカ進出を意識したグループ名であり、この名義で『Pardon My English』(1967年)、『Revolucion con Brasilia!』(1968年)といったアルバムをリリースしています。

本作がレコーディングされた1966年時点のメンバーはCyva(1939年生まれ)、Cybele(1940年生まれ)、Cynara(1945年生まれ)、Cylene(1946年生まれ)というDe Sa Leite四姉妹。しかし、レコーディング直後に末妹のCyleneが結婚のためにグループを脱退し、Cyregina(Regina Werneck)が新メンバーとして加わっています。

アメリカ市場を意識した作品として、ボサノヴァ名曲の数々を英語で歌っています。さらにポピュラー・スタンダードやトラディショナルのカヴァーも披露してくれます。

しかし、何語で歌おうが、何を歌おうが彼女たちが歌うものは全てQuarteto Em Cyワールドへ誘ってくれます。その意味でポピュラー・スタンダードがボッサ名曲に聴こえたり、ボッサ名曲がポピュラー・スタンダードのボッサ調カヴァーに聴こえたりするのが案外楽しいですよ!

プロデュースはLouis OliveiraRay Gilbert。アレンジをOscar Castro-Nevesが手掛けています。

別の角度からQuarteto Em Cyの魅力を再確認できる作品であると同時に、ブラジル音楽を聴き慣れないリスナーの方にはQuarteto Em Cy入門編としても最適な作品かもしれません。

全曲紹介しときやす。

「Pardon My English (Samba Torto)」
Aloysio De Oliveira/Antonio Carlos Jobim作。当ブログでも紹介した『Quarteto Em Cy(1966)』でも歌っていたJobim作品の英語ヴァージョン。当ブログではRoberto Menescalのカヴァーも紹介済みです。英語になっても美しいコーラスは健在です。実に華やかな雰囲気のオープニング。

「Makin' Whoopee」
Walter Donaldson/Gus Kahn作のポピュラー・スタンダード。当ブログではJimmy Smithのカヴァーも紹介済みです。ポピュラー・スタンダードをポップなボッサ・サウンドで聴かせてくれます。

「Tears (Razao de Viver)」
Eumir Deodato/Paulo Sergio Valle作。当ブログではSambalanco Trioのカヴァーを紹介済みです。エレガントなバックと共にQuarteto Em Cyの本領発揮といった至極のビューティフル・ハーモニーを聴かせてくれます。

「Oh Susannah」
日本人にもお馴染みStephen Foster作の「おおスザンナ」をカヴァー。お馴染みのトラディショナルをキャッチーなブラジリアン・サウンドで聴かせてくれます。日本でいえばNHK「みんなのうた」で取り上げらそうな雰囲気です。

「Voce」
Roberto Menescal/Ronaldo Boscoli作。当ブログでは『Elis Regina in London』『Aquarela Do Brasil』に収録されたElis Reginaのカヴァーを紹介済みです。実に落ち着いた雰囲気で至極のハーモニーを堪能できます。僕の一番のお気に入りかも!

「Tup-A-Tup (Ate Londres)」
Oscar Castro Neves/Luvercy Fiorini作。『Quarteto Em Cy(1966)』でも歌われていた楽曲の英語ヴァージョン。このサンバ・グルーヴにもグッときます。。グルーヴィーなオルガン・サウンドと弾けるような彼女たちのスキャットがよくマッチしています。

「Surfin' in Rio (Vamos Pranchar)」
Marcos Valle/Paulo Sergio Valle作。この曲も『Quarteto Em Cy(1966)』収録曲の英語ヴァージョン。ミュージカル映画の楽しげなシーンのような明るく開放的な雰囲気がいいですね。彼女たちの素晴らしいコーラスワークを満喫するには最適の1曲かもしれません。

「Bye, Bye Blackbird」
Mort Dixon/Ray Henderson作のポピュラー・スタンダード。Oscar Castro-Nevesの小粋なアレンジ・センスが冴えるボッサ・サウンドにのってスタンダードをエレガントに歌い上げます。

「Useless Landscape (Inutil Paisagem)」
Aloysio De Oliveira/Antonio Carlos Jobim作。名曲「無意味な風景」のカヴァー。ひたすらエレガントです。英語のせいか、ボッサ名曲がポピュラー・スタンダードのボッサ調カヴァーのように聴こえます。

「Inutil Paisagem(邦題:無意味な風景)」に関して、当ブログではTenorio Jr.Quarteto Em CyTitaVinicius CantuariaNu BrazWanda SaSteen Rasmussen Feat. Josefine Cronholmのカヴァーを紹介済みです。
ご興味がある方はそれらの記事もご参照ください。

「The Face I Love (Seu Encanto)」
Marcos Valle/Paulo Sergio Valle/Carlos Pingarilho作。ワルツ調のアレンジがミュージカル名曲のような優雅さがあってでいいですね。ここでもOscar Castro-Nevesの手腕が光ります。当ブログではAstrud Gilbertoのカヴァーを紹介済みです。

「Image (Imagem)」
Aloysio de Oliveira/Luiz Eca作。オーケストレーションとボッサ・リズムをバックに、彼女たちならではの至極ハーモニーの魅力を存分に伝えてくれます。

「Canto de Ossanha」
Vinicius de Moraes/Baden Powell作の名曲カヴァー。アフロ・ブラジリアンなパートと一気に華やかなになるパートのコントラストが見事なこの楽曲の持つ魅力を彼女たちが見事に歌いきっています。

「Canto de Ossanha」に関して、当ブログではTamba 4Quarteto Em CyLill LindforsElis ReginaToots Thielemans & Elis ReginaAgustin Pereyra LucenaRosalia De SouzaChristiane Legrandのカヴァーを紹介済みです。
ご興味がある方はそれらの記事もご参照ください。

CDにはオリジナル12曲に加え、Vinicius de Moraes/Baden Powell作のアフロ・サンバ名曲「Berimbau」『Quarteto Em Cy』(1966年)でも歌われていた「I Live To Love (Morrer de Amor)」(Oscar Castro Neves/Luvercy Fiorini作)、Carlos Castilho/Chico de Assis作の「Amaralina Beach (Praia de Amaralina)」が収録されています。

『Revolucion con Brasilia!』(1968年)もセットでどうぞ!

『Revolucion con Brasilia!』(1968年)
レヴォリューション・コン・ブラジリア

Quarteto Em Cyの過去記事もご参照下さい。

『Quarteto Em Cy』(1966年)
ペドロ・ペドレイロ

『Em Cy Maior』(1968年)
エン・シー・マイオール

『Quarteto Em Cy』(1972年)
Quarteto Em Cy
posted by ez at 06:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする