発表年:2004年
ez的ジャンル:コスモポリタン系新世代ブラジリアン・ミュージック
気分は... :N.Y.、ロンドン、リオ、バイーア...
今回はコスモポリタンなブラジル人シンガーBebel Gilbertoの2ndアルバム『Bebel Gilberto』(2004年)です。
ブラジル音楽界の巨人Joao GilbertoとMiuchaの娘Bebel Gilbertoについて、これまで紹介したアルバムは以下の3枚。
『Tanto Tempo』(2000年)
『Moment』(2007年)
『All In One』(2009年)
今回紹介する『Bebel Gilberto』(2004年)は、『Tanto Tempo』(2000年)に続く2ndアルバムです。
ブラジル音楽とクラブ・ミュージックを融合したハイブリッドなスタイルで、クラブ系リスナーを中心に高い支持を得たアルバムが『Tanto Tempo』でした。
しかし、『Tanto Tempo』を創り上げた最大の功労者である鬼才プロデューサーSubaが『Tanto Tempo』完成後に自宅火災で急死するという悲運が起こってしまいます。火災発生後に『Tanto Tempo』のマスターテープを取りに戻った彼はそのまま帰らぬ人となってしまったのでした。
『Tanto Tempo』もの成功と、Subaの死の間で、残されたBebelの心境も複雑であったでしょう。
そんな状況を乗り越えてリリースされたアルバムが『Bebel Gilberto』です。
Subaの代わるサウンドの要として、Bjork、U2、Annie Lennox等でお馴染みのUKのプロデューサーMarius de Vrieをメイン・プロデューサーに迎えています。
それ以外にもBjork、Madonna等を手掛けたUKのプロデューサーGuy Sigsworth、バイーアの天才パーカッション奏者Carlinhos Brown、当ブログでも紹介したN.Y.の異色ユニットBrazilian GirlsのメンバーDidi Gutman、ベルギー出身のPascal Gabriel、気鋭のブラジル人サウンド・クリエイターAle Siqueira、そしてBebel本人がプロデュースに関与しています。
こうしたプロデューサー陣の顔ぶれを見ても、Bebelのコスモポリタン感覚がよく反映されていますね。
さらにアルバムにはJoao Donato、Marcos Suzano、Daniel Jobim(Antonio Carlos Jobimの孫)、さらには母Miucha等が参加しています。
アルバム全体として、肩肘張らず自然なかたちでハイブリッドなブラジリアン・サウンドを創り上げているのがいいですね。無理に新しいサウンドを生み出そうとするのではなく、創ってみたらハイブリッドな音になっていたみたいな・・・
自身の名の冠したアルバム・タイトルを含めて、コスモポリタンなブラジル人アーティストBebel Gilbertoの進むべき道が示された作品だと思います。
全曲紹介しときやす。
「Baby」
Caetano Veloso作。Gal Costaヴァージョンでお馴染みの名曲。当ブログではトロピカリズモ名盤『Tropicalia: ou Panis Et Circencis』収録のGal & CaetanoヴァージョンやOs Mutantesヴァージョンも紹介済みです。ここではナチュラル&ソフトリーでメロウ感覚の「Baby」を聴くことができます。
http://www.youtube.com/watch?v=mbl4mH7Ye40
「Simplesmente」
Bebel Gilberto/Didi Gutman/Marius de Vries作。 Carlinhos Brown、Marcos Suzano、Marius de Vries、Didi Gutman(Brazilian Girls)という気鋭のミュージシャンが集まったネオ・ボッサ・チューン。さり気ないですがエスプリが効いています。
http://www.youtube.com/watch?v=V9GFJw2ffI4
「Aganju」
Carlinhos Brown作。母Miuchaもバック・ヴォーカルで参加しています。透明感のあるBebelのヴォーカル、Carlinhos Brownが活躍する大地のリズム、さらにはエレクトロ・サウンドが相俟ったハイブリッド感が僕好みです。
http://www.youtube.com/watch?v=J71FLwVNps8
「All Around」
Bebel Gilberto/Marius de Vries/Masaharu Shimizu作。英語で歌われていることもあって都会的な感覚のメロウ・ボッサといった印象です。
http://www.youtube.com/watch?v=0J4QmrIomK4
「River Song」
Bebel Gilberto/Didi Gutman/Marius de Vries作。クラブ系リスナーの方も気に入るであろう、スタイリッシュ&キャッチーなボッサ・グルーヴ。
http://www.youtube.com/watch?v=vB87uf03x1Q
「Every Day You've Been Away」
Daniel Jobim/Pedro Baby作。ギターのみのバックでBebelが歌うシンプルな仕上がり。
http://www.youtube.com/watch?v=9hB8sQQr7Qo
「Cada Beijo」
Bebel Gilberto/Guy Sigsworth作。Guy Sigsworthらしいプロデュース・センスが発揮されたエレクトロニカな仕上がり。クールな哀愁モードにグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=9jxKycYuhhc
「O Caminho」
Bebel Gilberto作。Joao Donatoの美しいピアノと共に始まります。哀愁のメロディをBebelがしっとりと歌います。
http://www.youtube.com/watch?v=Yu-Jt3x4af8
「Winter」
Bebel Gilberto/Didi Gutman/Marius de Vries作。タイトルは冬ですが夏にもフィットする素敵なネオ・ボッサ・チューンに仕上がっています。
「Ceu Distante」
Bebel Gilberto/Pascal Gabriel作。Pascal Gabrielプロデュース。派手さはありませんが、夢の世界のような独特の音世界に惹かれます。
「Jabuticaba」
Bebel Gilberto/Carlinhos Brown作。個人的にも一番のお気に入りです。Carlinhos Brownらを中心とする多彩な打楽器のリズムが、美しいメロディとBebelの優しい歌声を上手く引き立てているのがサイコーです。
http://www.youtube.com/watch?v=DHEOefzCGNU
「Next To You」
Bebel Gilberto/Didi Gutman/Marius de Vries作。ラストは美しく壮大なストリングスをバックに、子守唄のような優しい歌声で聴く者を包み込んでくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=zLOuJhqZmhg
僕は保有しているのは輸入盤ですが、国内盤にはThe 5th Dimensionでお馴染み、「Up, Up And Away」(Jimmy Webb作)のカヴァーがボーナス・トラックとして追加収録されています。
Bebel Gilbertoの過去記事もご参照下さい。
『Tanto Tempo』(2000年)
『Moment』(2007年)
『All In One』(2009年)