2013年09月02日

Osmar Milito『Nem Paleto, Nem Gravata』

ポップス職人が放つブラジリアン・ソフトロックの最高峰☆Osmar Milito『Nem Paleto, Nem Gravata』
ネン・パレトー、ネン・グラヴァッタ(紙ジャケット仕様)(BOM24124)
発表年:1973年
ez的ジャンル:ブラジリアン・ソフトロックの最高峰
気分は... :過ぎ行く夏の終わりに・・・

今回はブラジリアン・ソフトロックの最高峰Osmar Milito『Nem Paleto, Nem Gravata』(1973年)です。

サンパウロ生まれのコンポーザー/アレンジャー/キーボード奏者Osmar Militoの紹介は、『... E Deixa O Relogio Andar!』(1971年)に続き2回目です。

ブラジリアン・ソフトロックの最高峰に君臨する1枚として、ブラジル音楽好きの評価がすこぶる高い1枚ですね。ブラジル音楽界きってのポップス職人Osmar Militoのアレンジャーとしての手腕が如何なく発揮されています。

レコーディング・メンバーは、Osmar Milito(p、el-p)以下、Dario(g)、Tiao(b)、Paulinho Batera(ds)、Hermes(per)、Ariovaldo(per)、Ricardo(as、fl)、Wanderley(tb)、Quarteto Number One(vo)という編成です。さらにゲストとしてMarcio Lott「Minhas Razoes」に参加しています。

オリジナルは1曲のみであり、それ以外はJorge BenMarcos Valle、Toquinho & Vinicius、Antonio Carlos E Jocafi等のカヴァーです。そういった構成が功を奏し、Militoのアレンジ・センスを際立たせていると思います。

Quarteto Number Oneの男女ヴォーカルを上手く活かしながら、あの手この手でバラエティに富んだポップなブラジリアン・サウンドを聴かせてくれます。まさにブラジリアン・ソフトロックの玉手箱のようなアルバムだと思います。

過ぎ行く夏の名残を惜しむかのようなジャケのデザインも秀逸です!

全曲紹介しときやす。

「Eu Dei」
Ary Barroso作。軽快なリズムにのってQuarteto Number Oneによる男女ヴォーカルが華やかに響きます。
http://www.youtube.com/watch?v=RhOAN2Abahg

「A Briga」
Cesar Costa Filho/Walter Queiroz作。哀愁モードとポジティヴ・モードのメリハリがいい感じのボッサ・チューン。Militoの小粋なピアノもグッド!

「Bom Conselho」
Chico Buarque De Holonda作。哀愁モードのジャジー&レイジー・サウンドとQuarteto Number Oneによる男女ヴォーカルが見事に調和しています。

「Mais Cedo Ou Mais Tarde」
Lilian Knapp/Osmar Milito作。本作唯一のオリジナル。ポップな聴きやすさが魅力です。Quarteto Number Oneによるグッドヴァイヴに満ちたヴォーカルがサイコー!
http://www.youtube.com/watch?v=oEKSn8LBfzY

「Morre O Burro, Fica O Homem」
Jorge Ben作。オリジナルは『Ben』(1972年)に収録されています。個人的に今年に入って『Ben』をよく聴いていたせいもあって嬉しいカヴァーです。Jorge Ben作品らしい躍動感のあるアレンジがいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=QAx7KPDuOBI

「Um Jeito Novo De Viver」
Carlos Colla/Mauricio Duboc作。Militoの美しいピアノと共に始まる感動的な仕上がり。正統派ポップ・ソングって雰囲気がいいですね。

「Nem Paleto, Nem Gravata」
Marcos Valle/Paulo Sergio Valle作。 邦題「背広もネクタイもなしに」。タイトル曲を当ブログでも紹介したMarcos Valleの名盤『Previsao Do Tempo』(1973年)収録曲のカヴァーです。Marcosの名曲をMilitoのアレンジ手腕でさらに極上のポップ・ソングに昇華させている点が素晴らしいですね。

「Dose Pra Leao」
Cesar Costa Filho/Walter Queiroz作。哀愁メロウで疾走するサンバ・チューンですが、サビで一気に視界が開ける感じがサイコーです。

「Tem Dende」
Nei Lopes/Reginaldo Bessa作。ブラジリアン・リズムとQuarteto Number Oneによるヴォーカル・ワークが見事に調和した至極のブラジリアン・ソフトロックだと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=IJ3psaKvFRY

「Regra Tres」
Toquinho/Vinicius De Moraes作。オリジナルはToquinho & Vinicius名義の名盤『Sao Demais Os Perigos Desta Vida...』に収録されています。『Sao Demais Os Perigos Desta Vida...』は以前によく聴いたアルバムなので、個人的に嬉しいカヴァーですし、 Militoの素晴らしいアレンジ・センスに脱帽です。
http://www.youtube.com/watch?v=cf2lB5ns32Q

「Quem Mandou (Pe Na Tabua)」
Jorge Ben作品のカヴァー2曲目。躍動するリズムとメロウ・エレピ、思わせぶりな女性ヴォーカルが印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=x8ukbWUoZ5o

「Minhas Razoes」
Antonio Carlos E Jocafiのカヴァー。オリジナルは1972年にリリースされています。ここではエレガントなボッサ・チューンで聴かせてくれます。

「Chiclete Com Banana」
Almira Castilho/Gordurinha作。ラストは躍動するジャズ・サンバで華やかに締め括ってくれます。

Osmar Militoの他作品もチェックを!

『... E Deixa O Relogio Andar!』(1971年)
E Deixa O Relogio Andar

『Viagem』(1974年)
ヴァイアージェン(紙ジャケット仕様)(BOM24100)

『Ligia』(1978年)
LIGIA (1978)
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2013年09月01日

Quasimoto『Yessir, Whatever』

奇才Madlibの別人格による珠玉のトラック集☆Quasimoto『Yessir, Whatever』
Yessir Whatever
発表年:2013年
ez的ジャンル:奇才トラックメーカーの別人格ラッパー
気分は... :梶本!

奇才トラックメーカーMadlibQuasimoto名義でリリースした『Yessir, Whatever』です。

今年リリースされた作品ですが、過去のレア・トラックや未発表曲を集めた変則コンピ作品です。

QuasimotoMadlibの変名。自身の低い声にコンプレックスを持っていたMadlibが自分の声を加工し、ハイトーン・ヴォイスの別人格ラッパーQuasimotoとしました。

これまでQuasimoto名義で『The Unseen』(2000年)、『The Further Adventures of Lord Quas』(2005年)という2枚のアルバムをリリースしています。

どうやらQuasimoto名義の活動に区切りをつけるようなので、その意味でQuasimotoとしての集大成的な1枚と捉えることもできるのでは?

Madlibらしい絶品トラックと、Quasimotoならではのハイトーン・ヴォイスのラップのコンビネーションを楽しみましょう。

全曲紹介しときやす。

「Broad Factor」
2004年のプロモ・オンリー・シングル(『The Further Adventures of Lord Quas』国内盤にも収録)。Johnny Guitar Watson「Superman Lover」をサンプリングしたトラックとQuasimotoのハイトーン・ラップがよくマッチしています。
http://www.youtube.com/watch?v=fSz2KQep3nA

「Seasons Change」
『The Further Adventures of Lord Quas』(2005年)収録予定であったものの使用許可の問題で見送られた楽曲。その許可が取れなかったRoy Ayers「D.C. City」をサンプリングしたメロウ・トラックが特長です。終盤はNeil Diamond「The Pot Smokers Song」のサンプリングで盛り上げてくれます。

「The Front」
2005年リリースのシングル曲。ファンキー&スペイシーなトラックがいい感じ。
http://www.youtube.com/watch?v=4oU25gJVStg

「Youngblood」
「The Front」のB面曲。Brand New Funk「Interlude」をサンプリング。ベースが効いています!

「Astronaut」
『Astronaut EP』(2002年)収録曲。Gianni Ferrio「La Morte Accarezza a Mezzanotte」、Melvin Van Peebles「You Ain't No Astronaut」 、John Dankworth「Return From the Ashes Theme」をサンプリング。不気味なムードが支配します。

「Planned Attack」
未発表曲。QuasimotoとMadlibのラップの絡み(?)がお楽しみ!Brand Nubian「Slow Down」、Big Daddy Kane「Smooth Operator」、D&D All-Stars「1, 2 Pass It (Remix)」、Busta Rhymes「Live to Regret」といった声ネタが使われています。
http://www.youtube.com/watch?v=_0sPtj57inQ

「Brothers Can't See Me」
未発表曲。Gershon Kingsley「Rebirth」ネタのシンセがループするスペイシー・トラックが印象的です。 Diamond D「Best Kept Secret」の声ネタも使っています。

「Catchin' the Vibe」
未発表曲。淡々としたトラックですが、Madlibらしいヴァイヴがジワジワきます。
http://www.youtube.com/watch?v=TVbrpJ13emo

「Am I Confused?」
『Astronaut EP』(2002年)収録曲。Stevie Wonder「Ai No, Sono」をサンプリングした和風トラックが印象的です。Organized Konfusion「Intro」の声ネタも使っています。

「Sparkdala (Original Version)」
Bob James「Nautilus」 、Dave Grusin「Modaji」をサンプリングしたミステリアス・トラックが印象的です。

「Green Power (Original Version)」
プロモ盤『Stones Throw Summer 2002』収録曲。The Unseen』にも収録されていた楽曲のオリジナル。浮遊感のあるメロウ・トラックが僕好み!

「LAX to JFK」
プロモ盤『Stones Throw Summer 2002』収録曲。Gang Starr『Moment of Truth』に収録された「JFK 2 LAX」へのオマージュ。

Quasimotoの他作品もチェックを!

『The Unseen』(2000年)
Unseen (Dlx)

『The Further Adventures of Lord Quas』(2005年)
Further Adventures of Lord Quas

Madlib関連の過去記事もご参照下さい。

Madlib『Shades Of Blue』(2003年)
Shades of Blue

Talib Kweli & Madlib『Liberation』(2007年)
Liberation

Georgia Anne Muldrow『Seeds』(2012年)
Seeds
posted by ez at 01:14| Comment(2) | TrackBack(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする