発表年:2002年
ez的ジャンル:プリンセス・オブ・ダークネス系ブルース/ジャズ/ソウル
気分は... :川の底からこんにちは...
ジャズを超越した最高の女性シンガーCassandra Wilsonが2002年にリリースした『Belly Of The Sun』です。
今月に入って何気なく本作を久々に聴いたら、見事にハマってしまいました。
ディープ&ブルージーなのにへヴィな雰囲気はなく、透明感のあるナチュラルさが強く印象に残るあたりが僕自身の今のマインドとフィットしたのかもしれません。
これまで当ブログで紹介したCassandra Wilsonは以下の5枚(発売年順)。
『Point Of View』(1986年)
『Days Aweigh』(1987年)
『Blue Light 'Til Dawn』(1993年)
『New Moon Daughter』(1995年)
『Traveling Miles』(1999年)
本作『Belly Of The Sun』は、彼女の出身地のミシシッピにある旧鉄道駅舎に録音機材を持ち込んでレコーディングされた作品です。
レコーディングの中心メンバーはCassandra Wilson(vo、g)以下、Marvin Sewell(g)、Kevin Breit(g、mandolin、vo)、Mark Peterson(b)、
アルバム全体を支配するのはブルース・フィーリング。レコーディングが行われたミシシッピ州クラークスデールはデルタ・ブルース発祥の地であり、Cassandraの意図として自身のルーツの追求があったことは明快です。カヴァーやオリジナルの双方でブルージーなサウンドをバックにしたCassandraのディープなヴォーカルを満喫できます。
ただし、ブルース・フィーリングが支配するアルバムですが、ブルース一辺倒で終わっていないのが本作が魅力です。Antonio Carlos Jobim作品のボッサ・カヴァー、スティール・パンを用いたカリビアン・テイストの楽曲、ゲストのIndia.Arieとのデュエットによるオーガニック・ソウル等ジャンルに囚われないアプローチの楽曲も目立ちます。
ジャズ界最高の女性シンガーから最高の女性シンガーへとステップ・アップしたCassandra Wilsonの姿がはっきり読み取れる1枚です。
ジャズ・ファンのみならずソウル・ファンにも聴いて欲しい1枚ですね。
全曲紹介しときやす。
「The Weight」
The Bandの名曲をカヴァー(Robbie Robertson作)。オリジナルは当ブログでも紹介した名盤『Music From Big Pink』(1968年)に収録されています。僕の一番のお気に入りです。このオープニングを聴けば、本作の素晴らしさを一発で実感できるはずです。ディープ&ブルージーなのに実に澄み切った仕上がりに感動の連続です。こんな秀逸な「The Weight」のカヴァーを聴いたことがありません。ここでのCassandraのヴォーカルはジャンルを超越した存在感があります。さすがはプリンセス・オブ・ダークネス!
http://www.youtube.com/watch?v=x26I1EHGgmI
「Justice」
Cassandra Wilson作。Marvin Sewellのブルージーなギターが印象的なブルース。成熟を増したCassandraのヴォーカルを堪能できると同時に、ソングライターとしての彼女の才能を再確認できます。
http://www.youtube.com/watch?v=DzD7tGDmROI
「Darkness on the Delta」
Jay Livingston/Al J. Neiburg/Marty Symes作。タイトルからしてCassandraにぴったりな曲ですね。"Boogaloo" Amesのノスタルジックなピアノをバックに、Cassandraが雰囲気たっぷりのヴォーカルで魅了してくれます。
「Waters of March」
Antonio Carlos Jobimの名曲「Aguas de Marco」をカヴァー。ブルージーなイメージが強い本作に爽やかな風を吹き込んでくれます。こんなブルージーなボッサはCassandraのアルバムだからこそでしょうね!実に秀逸です。終盤の子供たちのコーラスの演出も心憎い!
http://www.youtube.com/watch?v=ufoO5rvD88k
「You Gotta Move」
Mississippi Fred McDowell作。当ブログでも紹介したThe Rolling Stones『Sticky Fingers』でのカヴァーでお馴染みのミシシッピ・ブルースをカヴァー。この曲といえば、Mick Jaggerのイメージが強いですが、Stonesヴァージョンをさらに黒くディープにしたかのような本ヴァージョンは鳥肌ものです。Richard Johnstonのギターが超シブい!
http://www.youtube.com/watch?v=GxeVoRMvlzU
「Only a Dream in Rio」
James Taylor作品をカヴァー。JTのオリジナルは『That's Why I'm Here』(1985年)に収録されています。スティール・パンを含む軽やかなパーカッシヴ感を持ち、華やかな女性コーラスも加わった本曲は、メロウネスという意味では本作随一かもしれません。Cassandraのヴォーカルも明るく躍動しています。
「Just Another Parade」
Cassandra Wilson作。India.Arieとデュエットした話題曲。Cassandraのディープな魅力とIndia.Arieのオーガニックな魅力が見事に融合した透明感に溢れた1曲に仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=yulR7RHBkoo
「Wichita Lineman」
Glen Campbellのヒットでお馴染み、Jimmy Webb作の名曲をカヴァー。Cassandraならではのディープで美しいカヴァーに仕上がっています。ディープでも重くなりすぎていないのがいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=lWwDgYlGeZA
「Shelter From the Storm」
Bob Dylanのカヴァー。オリジナルは『Blood on the Tracks』(1975年)に収録されています。当ブログでは『Hard Rain』(1976年)収録のライヴ・ヴァージョンを紹介済みです。Cassandraの説得力のあるヴォーカルがこの名曲に新たな息吹を吹き込んでくれています。
http://www.youtube.com/watch?v=5-C319Qj_O0
「Drunk as Cooter Brown」
Cassandra Wilson作。スティール・パンが印象的なカリビアン・テイストの仕上がり。こういった作品も聴けるのが本作の楽しいところですね。
http://www.youtube.com/watch?v=AyANp9BnCEs
「Show Me a Love」
Jesse Robinson/Cassandra Wilson作。オリジナル曲ではこの曲が一番好き!素晴らしいソウル・チューンです。軽やかでパーカッシヴなバッキングを従え、Cassandraが味わい深く艶やかなヴォーカルを聴かせてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=R_G3vzIG_10
「Road So Clear」
Rhonda Richmond作。どこまでにブルージーに迫るバラード。プリンセス・オブ・ダークネスらしい歌声を存分に味わえます。
「Hot Tamales」
Robert Johnson作。本編のラストはアルバムの余韻を味わうリラックした小曲で締め括ってくれます。
「Corcovado」
国内盤のボーナス・トラックとしてAntonio Carlos Jobimのカヴァー2曲目「Corcovado」が収録されています。お馴染みのボッサ名曲をディープに歌い上げます。
Cassandra Wilson作品の過去記事もご参照下さい。
『Point Of View』(1986年)
『Days Aweigh』(1987年)
『Blue Light 'Til Dawn』(1993年)
『New Moon Daughter』(1995年)
『Traveling Miles』(1999年)