
発表年:2013年
ez的ジャンル:先鋭ジャズ・ユニット系R&B/Hip-Hop
気分は... :Black Radioは進化し続ける・・・
今回はRobert Glasper Experiment話題の最新作『Black Radio 2』です。
今年のグラミー賞でBest R&B Albumを受賞した衝撃作『Black Radio』(2012年)の続編アルバムです。
正統派ジャズ・ピアニストであると同時に、Hip-Hop/R&Bアーティストとの交流を通じたクロスオーヴァーな側面も持つ先鋭的アーティストがRobert Glasperに関して、これまで当ブログで紹介した作品は以下の3枚。
『Double Booked』(2009年)
『Black Radio』(2012年)
『Black Radio Recovered: The Remix EP』 ※リミックスEP
また、Robert Glasper ExperimentのベーシストDerrick Hodgeの初ソロ・アルバム『Live Today』を約2ヶ月前に紹介しています。
Robert Glasper Experiment名義の初フル・アルバムとなった『Black Radio』は、Lupe Fiasco、Bilal、Lalah Hathaway、Ledisi、Musiq Soulchild、Chrisette Michele、Meshell Ndegeocello、Stokley Williams(Mint Condition)、Mos Def等の有名どころR&B/Hip-Hopアーティストが多数参加したクロスオーヴァーであり、音楽シーンに大きなインパクトを与え、各方面で絶賛された1枚でした。結果として、グラミーのR&B部門でBest Albumを受賞しています。
その続編となる『Black Radio 2』は発売前から話題となっていましたが、ようやくその全貌が明らかになりました。
本作にも豪華なゲストが多数参加しています。Common、Patrick Stump(Fall Out Boy)、Brandy、Jill Scott、Dwele、Marsha Ambrosius、Anthony Hamilton、Faith Evans、Norah Jones、Snoop Dogg、Lupe Fiasco、Luke James、Emeli Sande、Lalah Hathaway、Malcolm-Jamal Warnerといった面々です。さらにデラックス・エディションにはEric Roberson、Macy Gray、Jean Graeも参加しています。
まず前作からの大きな変化の1つとして、Robert Glasper Experimentのメンバーの交代があります。ドラムがChris DaveからMark Colenburgへ交代しています。個人的にはChris DaveのドラミングがRGEのサウンドの要であると感じていたので残念です。ただし、売れっ子ドラマーのChris Daveは多忙であったため、ライブ・ツアーでは昨年からMark Colenburgがドラムを叩いていました。その意味では、このメンバー交代は自然なものかもしれません。
その結果、本作におけるRobert Glasper Experimentのメンバーは、Robert Glasper(p、el-p、syn)、Casey Benjamin(vocoder、sax、fl、syn)、Mark Colenburg(ds、per)、Derrick Hodge(b)となっています。また、前作同様、Jahi Sundance(ジャズ・サックス奏者Oliver Lakeの息子)がターンテーブルで参加しています。プロデュースはRobert Glasper本人が務めています。
もう1つの大きな変化はオリジナル曲の重視です。前作は約半数がカヴァー作品でしたが、本作では全12曲中11曲(デラックス盤は全16曲中14曲)がオリジナル曲で占められています。Robert Glasperと豪華ゲスト陣の共作パターンが多いですが、前作で自信を深めたRobert Glasperらが、前作からの進化を目指そうとする意欲が感じられます。
前作ほどのインパクトはないかもしれませんが、より自然なかたちでジャズとR&B/Hip-Hopの間を行き来している作品に仕上がっています。
進化し続けるRGEの姿をしっかり確認できる1枚です。
全曲紹介しときやす。 ※国内盤
「Baby Tonight (Black Radio 2 Theme)/Mic Check 2」
Casey Benjamin/Derrick Hodge/Mark Colenburg/Robert Glasper作。「Baby Tonight」はRGEの特長の1つでもあるCasey Benjaminのヴォコーダーが入った本作のテーマ曲。後半の「Mic Check 2」アルバムのプロローグといった趣です。
「I Stand Alone」
Casey Benjamin/Common/Patrick Stump/Robert Glasper作。CommonとFall Out BoyのPatrick Stumpをフィーチャー。Derrick Hodge『Live Today』にも参加していたCommonの参加はある意味自然ですね。また、Patrick Stumpもロック畑ながらThe Roots『Rising Down』に参加するなどHip-Hopアーティストとの交流も深いアーティストなので違和感はありません。哀愁モードの演奏にCommonのラップやPatrick Stumpのコーラスが絡みます。
http://www.youtube.com/watch?v=-3tZ78n0H4M
「What Are We Doing」
Brandy/Claude Kelly/Robert Glasper作。Brandyをフィーチャー。かつてGlasperにとってアイドル的な存在であったBrandyの共演です。RGEによるHip-Hop調のクール・ビートとBrandyのヴォーカルがよくマッチした、シングル向きのキャッチーな仕上がりです。
「Calls」
Jill Scott/Robert Glasper作。Jill Scottをフィーチャー。彼女との共演というのも必然という気がしますね。しっとりとしたネオ・ソウルでアルバムに落ち着きを与えてくれます。ちなみに現在製作中のJill Scottの新作にGlasperが参加しているらしいです。
http://www.youtube.com/watch?v=e6NjqujEy1o
「Worries」
Mark Colenburg/PJ Morton/Robert Glasper作。Dweleをフィーチャーしたネオ・ソウル。Maroon 5絡みの活動でも知られるR&Bシンガー/プロデューサーPJ Mortonがソングライティングで参加しています。この曲を聴いていると、ドラムがChris DaveからMark Colenburgに代わってもRGEならではのグルーヴ感は健在であることを実感でき、安堵します。
「Trust」
Marsha Ambrosius/Robert Glasper作。Marsha Ambrosiusをフィーチャー。ネオ・フィリー系アーティストであるMarshaは以前からGlasperやDerrick Hodgeと交流を持っていたようです。Glasperの美しいピアノとMarshaの艶やかなヴォーカルが織り成す大人のバラードです。
「Yet To Find」
Andrea Martin/Robert Glasper作。Anthony Hamiltonをフィーチャー。僕が大好きな黒人女性ソングライターAndrea Martinがソングライティングで参加しています。Anthony Hamiltonらしい風格のあるヴォーカルを活かした正統派ソウル・バラードに仕上がっています。ここでGlasperはピアノに加え、ハモンド・オルガンもプレイしています。
「You Own Me」
Arita Lockett/Muhammad Ayers/Robert Glasper作。Faith Evansをフィーチャー。メロディアスなメロウR&Bはかなり僕好み。Faith Evansの魅力を引き立てることにRGEが成功しています。終盤はGlasperのジャズ・ピアニストとしての才に触れることができます。
「Let It Ride」
Munsinah Abdul-Karim/Robert Glasper作。Norah Jonesをフィーチャー。ドラムンベース調の本曲をNorah Jonesが歌うという点で、本作で最もサプライズな仕上がりかもしれません。Norah JonesとGlasperは高校時代からの友人なのだとか。当ブログで紹介したQ-Tip『The Renaissance』収録の「Life Is Better」でNorahとGlasper、Mark Colenburgは共演しており、それ以来の共演となります。
「Persevere」
Anu Sun/Luke James/Lupe Fiasco/Robert Glasper/Snoop Dogg作。Snoop Dogg、Lupe Fiasco、そしてLuke Jamesをフィーチャー。SnoopとLupeという大物2人によるマイク・リレーを堪能できる哀愁Hip-Hopチューン。終盤のGlasperの美しいピアノも聴きものです。
「Somebody Else」
Emeli Sande/Robert Glasper作。UK期待の女性シンガーEmeli Sandeをフィーチャー。哀愁のメロディが印象的なR&Bチューンです。
「Jesus Children of America」
本編のラストはStevie Wonderの名曲をカヴァー(オリジナルは『Innervisions』収録)。ここでは前作にも参加していたLalah HathawayとTV俳優Malcolm-Jamal Warnerをフィーチャー。この楽曲は2012年12月にコネチカット州で起こった小学校の銃乱射事件の犠牲者に対する追悼の意が込められています。
ここからデラックス盤および国内盤のボーナス・トラックです。
「Big Girl Body」
Mark Colenburg/Eric Roberson/Robert Glasper作。インディ・ソウルの実力派シンガーEric Robersonをフィーチャー。2週間前に紹介したThe Foreign Exchange『Love In Flying Colors』でも彼がフィーチャーされていましたね。彼が客演した作品に外れナシといった印象ですね。 Glasperの鍵盤さばきに魅了されるジャジー・ソウルです。Casey Benjaminのサックスも盛り上げてくれます。
「I Don't Even Care」
Macy Gray/Jean Grae/Robert Glasper作。Macy Gray & Jean Graeをフィーチャー。重みと哀愁を帯びたHip-HopビートにJean GraeのラップとMacy Grayのヴォーカルが絡みます。
「Lovely Day」
Bill Withersの名曲をカヴァー。冒頭の語りはBill Withers本人によるものです。ここでは客演はなく、Casey Benjaminのヴォコーダー・ヴォーカルをフィーチャーしています。ヴォコーダー好きの僕としては嬉しいカヴァーです。
「Trust (Alternate Version)」
本曲は国内盤のみのボートラ。本編収録の「Trust」の別ヴァージョンです。
Featuring Marsha Ambrosius & Common
Robert GlasperやRGEメンバーの他作品もチェックを!
『Mood』(2003年)

『Canvas』(2005年)

『In My Element』(2007年)

『Double Booked』(2009年)

『Black Radio』(2012年)

『Black Radio Recovered: The Remix EP』(2012年)

Derrick Hodge『Live Today』(2013年)
