発表年:2013年
ez的ジャンル:Gil Scott-Heronトリビュート
気分は... :遺志を受け継ぐ・・・
今回は新作アルバムの中から故Gil Scott-Heronへのトリビュート・アルバムM1, Brian Jackson, The New Midnight Band『Evolutionary Minded -Furthering The Legacy Of Gil Scott-Heron』です。
当ブログでもこれまで以下の7枚のGil Scott-Heron作品を紹介しており、こうしたGilの遺志を継ぐトリビュート・アルバムは大歓迎です。
『Pieces Of A Man』(1971年)
『Winter In America』(1974年)
『The First Minute Of A New Day』(1975年)
『It's Your World』(1976年)
『Bridges』(1977年)
『Secrets』(1978年)
『1980』(1980年)
2011年5月にGil Scott-Heronが亡くなった後、DJのKentyah FraserがGil Scott-Heronの盟友Brian Jacksonへコンタクトをとり、このプロジェクトが始動した模様です。
そのKentyah FraserとBrian Jacksonがプロデュースを手掛け、レコーディングにはBrian Jackson(key、fl、ds、vo)、Kentyah Fraser(programming、per)、今最も注目される黒人男性ジャズ・シンガーGregory Porter(vo)、コンシャスHip-HopユニットDead Prez(M1、Sticman)、元The RootsのMartin Luther(vo)、Chuck D(MC)、Killah Priest(MC)、Bobby Seale(Spoken Word)、Abiodun Oyewole(Spoken Word)、Airto Moreira(per)、Galacticでお馴染みStanton Moore(ds)、Bill Summers(per)、Blackbyrd McKnight(g)、Mike Clark(ds)、Paul Jackson(b)といったHeadhuntersの面々などが参加しています。
ビッグネームを並び立てるようなトリビュートにはなっていません。
全18曲中、純粋なGil Scott-Heron作品のカヴァーは3曲のみ。残りはGil Scott-Heron作品を引用した楽曲や参加メンバーのオリジナルという構成である点が本作の特徴です。Gil Scott-Heronの思いを引き継ぐ強い意志のようなものが感じられる作品になっているのがいいですね。
Gil Scott-Heronのオリジナル・アルバムでいえば、『The First Minute Of A New Day』(1975年)、『Bridges』(1977年)、『Secrets』(1978年)、『1980』(1980年)からのカヴァー、引用が中心となっています。
ブラック・ミュージックの革命はまだ終わらない・・・
全曲紹介しときやす。
「Offering」
『The First Minute Of A New Day』のオープニングをカヴァー。Brian JacksonのエレピをバックにD. Bookerがソウルフルなヴォーカルで歌い上げます。
「All We Got」
M1(Dead Prez)とMartin Lutherをフィーチャー。「Alien (Hold On To Your Dreams)」(『1980』収録)を引用したトラックをバックに、M1がライムを叩きつけ、Martin Lutherが「Alien (Hold On To Your Dreams)」の一節を歌い上げます。オリジナルでも聴かれたようなシンセの音色が聴こえてくるのも嬉しいですね。
「Voice Of The People」
Juma Sultanのパーカッションをフィーチャー。Kentyah Fraserによるインタールード。
「Liberation Psychology」
Bobby Seale, M1をフィーチャー。公民権運動の指導者であり、ブラックパンサー党を結成し、議長を務めたBobby Sealeの演説が引用されています。さらに「Guerilla」(『The First Minute Of A New Day』収録)を引用したトラックに、 M1のラップが絡みます。
「Opponent」
Dead PrezとMartin Lutherをフィーチャー。本作を象徴するThe New Midnight Bandらしい1曲だと思います。フリーソウル・クラシックでもある人気曲「Angola, Louisiana」(『Secrets』収録)を引用したトラックにのって、Martin Lutherが歌い、Dead Prezがラップします。この不穏な空気感は「Angola, Louisiana」に通じるものがあります。「Angola, Louisiana」がお好きな人であれば気に入ると思います。
http://www.youtube.com/watch?v=_MJceOt-ttY
「Winter In America」
M1とMartin Lutherをフィーチャー。アメリカの抱える闇にメスを入れた社会メッセージ・ソングのカヴァー(オリジナルは『The First Minute Of A New Day』収録)。重々しい楽曲ですが、M1のラップが絡むことでいいアクセントがついています。
「It's A Time Warp」
「1980」(『1980』収録)を引用したインタールード。
「Go Ahead On Bobby」
再びBobby Sealeをフィーチャー。Bobby Sealeのスポークン・ワードに合わせてStanton Mooreが格好良いドラミングを聴かせてくれます。
「Young Blood」
Dead PrezとBlackbyrd McKnightをフィーチャー。「Under The Hammer」(『Bridges』収録)を引用した格好良いトラックにのって、Dead Prezの2人が激しいフロウを繰り広げます。Blackbyrd McKnightのギターも盛り上げてくれます。「Under The Hammer」大好きな僕としては納得の1曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=YkK3f_bVTL8
「Recurring Cycles」
M1をフィーチャー。「1980」(『1980』収録)の引用を挟みながら、M1がコンシャスHip-Hopラッパーらしい硬派なライムを畳み掛けます。
「Losin' Our Minds」
Gregory Porterをフィーチャー。「We Almost Lost Detroit」(『Bridges』収録)の儚いエレピの音色を引用しています。この曲にGregory Porterを配したのは絶妙の人選ですね。Stanton Mooreが格好良いドラミングも聴き逃せません。
「Headhunters」
タイトル通り、Headhunters絡みのミュージシャン達がHeadhuntersならではのジャズ・ファンクを聴かせてくれます。
「Occupy Planet Earth」
Chuck DとM1をフィーチャー。
「Shut 'Um Down」(『1980』収録)のファンキー・ブギー・サウンドを引用し、Chuck DがM1を引き連れて力強いフロウを聴かせてくれます。
「Uncle Sammy Full Of Lucifer」
三度Bobby Sealeをフィーチャー。
「(Re)Evolution」
Chuck DとKillah Priestをフィーチャー。「Third World Revolution」(『Secrets』収録)のトライバル・グルーヴを引用したトラックをバックに、Chuck Dが本領発揮のフロウを聴かせてくれます。格好良さではアルバム随一なのでは?
「Unknown Variables Ahead」
Brian Jackson作によるコズミックなインタールード。
「Tradition」
Abiodun Oyewoleのスポークン・ワードをフィーチャー。Brian Jacksonのフルートと、Bill Summersのパーカッションによるトライバルなグルーヴが印象的です。
「Song Of The Wind」
ラストはGregory PorterとAirto Moreiraをフィーチャー。『Bridges』収録曲のカヴァーです。Gregory Porterの低音ヴォーカルがこの曲によくマッチします。D. Bookerの女性ヴォーカルやKrishna Bookerのビートボックスも盛り上げてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=_UgYi-ZJhpE
Gil Scott-Heronの過去記事もご参照下さい。
『Pieces Of A Man』(1971年)
『Winter In America』(1974年)
『The First Minute Of A New Day』(1975年)
『It's Your World』(1976年)
『Bridges』(1977年)
『Secrets』(1978年)
『1980』(1980年)