発表年:2013年
ez的ジャンル:レベル・ミュージック系アフロ・グルーヴ
気分は... :過度な期待はせずに・・・
今回はコンゴ(コンゴ民主共和国)のレベル・ミュージックJupiter & Okwess International『Hotel Univers』です。
Jupiter & Okwess Internationalは、コンゴ出身のシンガーJupiterを中心としたユニット。Jupiterは1965年コンゴ北部の生まれ。
祖母がヒーラー(神霊治療師)であり、祖母から学んだゼボラ(霊が憑依した女性のダンス)がJupiterの音楽的ルーツとしてあるようです。外交補佐官であった父親の仕事の関係で旧東ドイツのベルリンに住んでいた経験もあり、そこでロックやファンクと出会い、自身もバンドを組んでいました。当時からアフリカの打楽器と欧米のロック/ファンクの融合を目指していたようです。
父の任期が終わり、コンゴに帰国後は首都キンシャサで自身のバンドOkwess Internationalを結成し、独自のゲットー・ミュージックを追求していきます。
Jupiterが最初に注目を浴びたのが、2006年公開のフランスのドキュメンタリー映画『Jupiter's Dance (La Danse de Jupiter) 』です。キンシャサ、ゲットー地区の無名ミュージシャンの活動を収めたこの映画で大きくフィーチャーされたのが、ゲットーで20年以上もバンド活動を続けるJupiterでした。ただし、同映画に登場したミュージシャンの中で、車椅子の障害者とストリート・チルドレンから成るバンドStaff Benda BililiがJupite以上に注目されてしまい、結果としてJupiterは少し割を食ってしまったようです。
Staff Benda Bililiの後塵を拝したJupiterですが、仕切り直しで完成させた世界進出作品が本作『Hotel Univers』です。楽曲の大半はDVD『Jupiter's Dance』のカップリングCD『Man Don't Cry』にも収録されたものですが、全面的にレコーディングし直し、アコースティック・セッションが中心であった『Man Don't Cry』ヴァージョンとは別物のハイテンションのバンド・サウンドで埋め尽くされています。『Man Don't Cry』は未聴ですが・・・
Jupiter自身はコンゴの多様な民族の持つ多様な伝統音楽・リズムをコンゴの宝と捉え、そのリズムとロック/ファンク/レゲエ等のエッセンスを融合させた音楽を目指しているようです。こうして生み出されるへヴィなアフロ・グルーヴがたまらく格好良いですね。
彼の音楽はコンゴの人々が直面している厳しい日常を歌うレベル・ミュージックであり、そこにはコンゴ人としてのアイデンティティと困難を乗り越えようとする魂の叫びがあります。
アフリカのレベル・ミュージックという意味では、Fela Kutiあたりがお好きな人は共感できるところが多い作品だと思います。
本作を聴くに際して、自分がコンゴ民主共和国について何も知らないことを猛省してしまいました。
首都キンシャサと聞いて、旧国名のザイールやモハメド・アリがジョージ・フォアマンに勝利した「キンシャサの奇跡」位しか思いつかなかったり、2つのコンゴ(コンゴ民主共和国とコンゴ共和国)があることは分かっていても、実際に両者の区別は殆どつかなかったり・・・もっと今のコンゴ民主共和国や現在に至る紛争の経緯なども知っておく必要がありますね。
きっと僕のような人間がいるからこそ、世界に向けてキンシャサのゲットー・ミュージックを発信する意義があるのでしょうね。
サウンドの格好良さに加え、こうしたゲットーの叫びに耳を傾けましょう。
全曲紹介しときやす。
「Bapasi」
インパクト大のオープニング。キンシャサで暮らす人々の苦しみを歌ったレベル・ミュージック!コンゴの伝統音楽を融合させた重量アフロ・ファンク・サウンドが炸裂します。苦難を乗り越えるための黒いファンキー・グルーヴに一発でKOされる方も多いはず!
http://www.youtube.com/watch?v=w0qo6dL6Q98
「Margerita」
アフロビート的なアッパー・チューン。軽快なリズムにのって、男を誘惑するイイ女について歌います。
「Bakwapanu」
伝統音楽ムトゥアシを基調とした曲なのだとか。個人的にはロックのエッセンスをうまく取り入れているのが印象的です。ホーン・セクションやマリンバも加わり、盛り上げてくれます。
「Evala Interlude」
有名ヒーラーであるEvala Valaによるインタールード。
「The World Is My Land」
テンションの高さではアルバム随一かも?煽動的なギター・リフとファンキー・リズムを聴いていると、自然とアドレナリンが出まくります。
「Yaka」
同郷のラッパーBebson de la Rueをフィーチャー。伝統的な儀式の音楽を電子サウンド化したような雰囲気です。ジワジワとテンションが上がってきます。
「Mwana Yokatoli」
「Bapasi」と並ぶ僕のお気に入り。ギター・リフが印象的なファンク・チューンです。バンドの一体感もある魅力的な仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=3Ppnn_POvlM ※ライブ映像
「Congo」
祖国の現状を嘆いた哀愁のレベル・ミュージック。こういった曲を通じて、僕自身のコンゴ民主共和国の現状を認識したいと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=kBxYPVTE3ng
「Tshanga Tshungu」
有名ヒーラーであるEvala Valaをフィーチャー。Jupiterの部族に根ざしたゼボラの曲なのだとか。音楽療法な歌、演奏として聴くと興味深いかも?
「Nelly Interlude」
女性コーラスNellyによるインタールード。
「Solobombe」
アフリカン・リズムを重視したファンキー・チューン。祖国のアイデンティティをリズムと歌で表現した1曲です。
「Djwende Talalaka」
ラストはフォーキーな味わい。美しいメロディにのって彼の生き方が歌われます。
これからはしばらくオリンピック・モードで寝られなくなりますね。まずはフィギュアスケート団体と女子モーグル決勝に注目ですね。過度な期待はせずに応援したいですが、それでも浅田真央と上村愛子の2選手は特別な思いで見守ってしまいそうですね。努力は報われる!そんな結果になれば最高ですが・・・