発表年:2014年
ez的ジャンル:マエストロ系新世代ヨーロピアン・ジャズ
気分は... :熟練技の職人!
今回は新世代ヨーロピアン・ジャズのマエストロNicola Conteの最新作『Free Souls』です。
イタリアを代表するクラブジャズ・プロデューサー/アーティストNicola Conteに関して、これまで当ブログで紹介した作品は以下の3枚。
『Other Directions』(2004年)
『Rituals』(2008年)
『Love & Revolution』(2011年)
『Love & Revolution』(2011年)以来、約3年ぶりの新作となる本作『Free Souls』ですが、本作は新たに書き下ろした作品集ではなく、『Rituals』(2008年)、『Love & Revolution』(2011年)の制作時にレコーディングされた音源から未発表であったものを、新たにオーヴァー・ダビングさせて完成させたものです。
このように書くと、寄せ集めの未発表作品集のように聞こえるかもしれませんが、あくまでNicola Conte本人の主導で1度レコーディングされた音源を熟成させている点で立派な新作と呼べると思います。
実際、中身は期待以上の充実ぶりに大満足です。
レコーディング・メンバーは自ずと、『Rituals』、『Love & Revolution』と重なってきます。
レギュラー・コンボとしてクレジットされているのは、現在活動休止中のThe Five Corners QuintetのメンバーであるTimo Lassy(bs、fl)、Teppo Makynen(ds)、最新作『Souls』を当ブログでも紹介したスウェーデンのイケメン・ミュージシャンMagnum Lindgren(ts、fl)、イタリアの実力派トリオLTCのメンバーPietro Lussu(p、el-p)、Pietro Ciancaglini(b)、Lorenzo Tucci(ds)、昨年SchemaからNicola Conteプロデュースでアルバム『Besides - Songs from the Sixties』をリリースしたGaetano Partipilo(as)、現在のNicola Conteのライブのレギュラー・メンバーであるLuca Alemanno(b)、Francesco Lento(tp)、それにPaolo Benedettini(b)といったミュージシャンです。特にMagnum Lindgrenはアレンジャーとしても本作に大きく貢献しています。
それ以外にドイツの貴公子Till Bronner(tp)、Greg Osby(as)Logan Richardson(as)、Michael Pinto(vibe)といったUSジャズ・ミュージシャン、Rosario Giuliani(as)、Daniele Scannapieco(ts)、Pierpaolo Bisogno(congas per)、Liviana Ferri(tamb)といったミュージシャンがゲスト参加しています。
また、Jose James、Bridgette Amofah、Melanie Charles、Marvin Parks、Tasha's World、Heidi Vogelといった多彩なゲスト・ヴォーカリストがフィーチャーされ、Kim Sandersもバック・ヴォーカルで参加しています。
近年のNicola Conteのブラック・ミュージックへのアプローチを再確認できるアフロ・ジャズ、ソウル、ブルース寄りの演奏が印象的ですね。ただし、格好良いモード・ジャズやお洒落なボッサ・ジャズも忘れないところがマエストロだと思います。
全13曲中9曲がNicola Conteのオリジナルです(共作含む)。
さすがはマエストロ!と納得の1枚です。
全曲紹介しときやす。
「Shades of Joy」
Marvin Parks & Magnus Lindgrenをフィーチャー。また、世界が注目する"ザ・リアル・ヴォイス"、話題の黒人男性シンガーGregory Porterが歌詞を書いています。近年のNicola Conteらしいソウルフルなエッセンスを上手く融合させた1曲に仕上がっています。N.Y.を拠点に活動する黒人男性シンガーMarvin Parksの伸びやかなヴォーカルがいいですね。Magnus Lindgrenのサックスもキマっています。
「Goodes of the Sea」
もはや貫録も漂う人気男性ジャズ・シンガーJose Jamesをフィーチャー。格好良いモード・ジャズ・サウンドに、Jose Jamesの何ともいえない味わいのヴォーカルが絶妙に加わり、極上のジャズ・ワールドを展開します。サイコー!
https://www.youtube.com/watch?v=7UvyMWuuohc
「Free Souls」
タイトル曲はガーナ系イギリス人シンガーBridgette Amofahをフィーチャー。『Love & Revolution』のソウルフルな雰囲気を継承しています。Bridgetteのキュートなヴォーカルとソウルフルなサウンドがよくマッチしています。
「Spirit of Nature」
US出身の女性シンガーMelanie Charlesをフィーチャー。神秘的なアフロ・スピリチュアル・チューン。Magnus Lindgrenのフルートがミステリアスな雰囲気を盛り上げてくれます。
「Ode to Billie Joe」
USシンガー・ソングライターBobbie Gentry、1967年の大ヒット曲をカヴァー。ここでは再びBridgette Amofahをフィーチャー。ブラック・フィーリングに溢れたブルージーなカヴァーに仕上がっています。
「Soul Revelation」
オランダ出身のネオソウル・シンガーTasha's Worldをフィーチャー。アフロ・ファンク・フィーリングのソウル・チューンはTasha's Worldの雰囲気ともよくマッチしているのでは?
「Ahmad's Blues」
Ahmad Jamal/Bobby Williams作。ジャズ・ピアニストAhmad Jamalのカヴァー。ここではMelanie Charlesをフィーチャーし、奇をてらわないブルース・カヴァーで聴かせてくれます。ゲストのGreg Osbyが雰囲気のあるアルト・サックスを聴かせてくれます。
「If I Should Lose You」
Leo Robin/Ralph Rainger作のスタンダードをカヴァー。Marvin Parksをフィーチャーし、Nicola Conteらしいお洒落なボッサ・ジャズを聴かせてくれます。1曲目の「Shades of Joy」も含めてMarvin Parksの歌は素晴らしいですね。今後の動向に注目したく思います。ゲスト参加のRosario Giulianiのアルト・サックスも実にムーディーです。
「Baltimore Oriole」
Hoagy Carmichael/Paul Francis Webster作のスタンダードをカヴァー。Bridgette Amofahをフィーチャーしたアフロ・サンバ調のブラック・フィーリングにグッときます。ブラジル音楽好きの人が聴くとグッとくると思います。Timo Lassyのフルートも効いています。
「Uhuru」
Tasha's Worldをフィーチャー。僕の一番のお気に入り曲。パーカッシヴなアフロ・ジャズと疾走する4ビート・ジャズが交錯するドライブ感満点の1曲に仕上がっています。Pietro CiancagliniとLorenzo TucciによるLTCコンビのリズム隊が素晴らしいです。しばらく僕のiPodでのヘビロテ状態が続きそうです。
「Astral Rivers」
昨年Far Outから最新アルバム『Turn Up The Quiet』をリリースした女性シンガーHeidi Vogelをフィーチャー。少し憂いを帯びながらもエレガントな雰囲気が漂うモーダル・ジャズに仕上がっています。Pietro Lussuの小粋なピアノがいいですね。
「Sunrise」
US出身の黒人サックス奏者Logan Richardsonをフィーチャー。ディープ&スピリチュアルな雰囲気の漂うアフロ・ジャズ・チューンに仕上がっています。終盤のエキサイティングなアンサンブルにグッときます。
「A Prayer for Lateef」
国内盤ボーナス・トラック。ドイツの貴公子Till Bronnerをフィーチャー。タイトルの通り、昨年逝去したマルチ・リード奏者Yusef Lateefへ捧げた1曲です。神秘的な演奏が印象的であったYusef Lateefの雰囲気をそのまま音にしたような演奏を満喫できます。Till Bronnerのトランペットもエキサイティングです。
Nicola Conteの他作品もチェックを!
『Jet Sounds』(2000年)
『Bossa Per Due』(2001年)
『Jet Sounds Revisited』(2001年)
『Other Directions』(2004年)
『Rituals』(2008年)
『Love & Revolution』(2011年)