発表年:2014年
ez的ジャンル:Fela Kuti直系アフロビート
気分は... :洗練しつつ、鋭く切り込む!
今回はアフロビートの創始者Fela Kutiの一番下の息子Seun Kutiが、父も率いたグループEgypt 80を従えた最新3rdアルバム『A Long Way To The Beginning』です。
1982年生まれのサックス奏者/ヴォーカリストSeun Kutiの紹介は2ndアルバム『From Africa With Fury: Rise』(2011年)に続き2回目となります。
1stアルバム『Many Things』(2008年)、2ndアルバム『From Africa With Fury: Rise』(2011年)とアルバムをリリースする度に、Fela Kuti直系アフロビートを進化させてきたSeun Kuti。
1st『Many Things』ではMartin Meissonnier、2nd『From Africa With Fury: Rise』(2011年)ではBrian Enoといった大物プロデューサーを起用し、アフロビートを進化させてきました。
そして、本作『A Long Way To The Beginning』では、なんと『Black Radio』(2012年)で音楽シーンに衝撃を与えた今最も注目される先鋭ジャズ・ピアニストRobert Glasperを共同プロデューサーに迎えています。Fela Kutiの正当な継承者と先鋭ジャズ・ピアニストがどのような化学反応を起こすのか、この一点のみでも本作を聴く価値があると思います。
また、アルバム・タイトル『A Long Way To The Beginning』は、故ネルソン・マンデラの自伝『Long Walk To Freedom』を意識したものと思われ、父Fela Kutiの遺志を受け継ぐ鋭いメッセージを聴く者に投げ掛けます。
アルバムにはRobert Glasper(key)をはじめ、USのHip-HopユニットDead PrezのメンバーM1、ガーナ出身で現在はN.Y.を拠点に活動する男性ラッパーBlitz the Ambassador、ナイジェリア出身でドイツを拠点に活動する女性ネオ・ソウル・シンガーNneka、フランス出身のヴィブラフォン奏者David Neermanといったゲストが参加しています。
メッセージは鋭さを増し、サウンドは洗練されつつダイナミズムを増した進化形アフロビートを満喫しましょう。
『A Long Way To The Beginning』Album Teaser
http://www.youtube.com/watch?v=YUrJNWydgIQ
全曲紹介しときやす。
「IMF」
国際通貨基金(IMF: International Monetary Fund)を"International Mother Fu**er" と読み替え、その実態を皮肉ったメッセージ・ソング。この1曲を聴いただけで、Seun KutiがFela Kutiの継承者であることを実感できるはずです。躍動するアフロビートのリズムにのってDead PrezのM1が鋭いリリックを畳み掛けます。M1といえば、故Gil Scott-Heronへのトリビュート・アルバム『Evolutionary Minded -Furthering The Legacy Of Gil Scott-Heron』への参加も印象的でしたね。
http://www.youtube.com/watch?v=8fGcf3GODKE
「African Airways」
軽快なアフリカン・リズムと素晴らしいホーン・アンサンブルが織り成す大地のグルーヴに魅了されます。
「Higher Conciousness」
人々から搾取する政府、銀行、企業へ宣戦布告するFela Kuti顔負けの1曲。イントロがRobert Glasper Experiment風なのも印象的です。
「Ohun Ruye」
ヨルバ人としてのアイデンティティを歌った曲。サウンド面では汎カリブ的なエッセンスが印象的です。
「Kalakuta Boy」
父Fela Kutiが作ったコミュニティ「カラクタ共和国(Kalakuta Republic)」の精神を受け継ぐ1曲。アフロビートの躍動感を維持しつつ、サウンドが洗練されているのがいいですね。終盤の洗練された高揚感がたまりません。このあたりはRobert Glasper起用の効果かもしれません。
「African Smoke」
Blitz the Ambassadorをフィーチャーし、鋭いメッセージでアフリカの現状を訴えます。重厚なサウンドも素晴らしいですね。進化するアフロビートを実感できる1曲に仕上がっています。
「Black Woman」
Nnekaをフィーチャーしたソウルフルな仕上がり。美しさと同時に力強さを感じる女性賛歌です。David Neermanのヴァイヴの音色を聴くと、父Fela KutiとRoy Ayersの共演アルバム『Music Of Many Colours』を思い出しますね。
http://www.youtube.com/watch?v=gXpkzhvkj7w
Seun Kutiの過去作品もチェックを!
『Many Things』(2008年)
『From Africa With Fury: Rise』(2011年)