発表年:1981年
ez的ジャンル:溌剌モダン・ソウル
気分は... :新鮮味はなくともいい味がある・・・
今回は最近になり世界初CD化が実現したモダン・ソウル作品Tony Fox『The Beginning』(1981年)です。
Tony Fox(本名:Larry Vivio Capel)はUSソウル・シンガー。
60年代にThe African Beaversのメンバーとして活動した後、Tony FoxあるいはLarry Capel名義でソロ作品をリリースしていたようです。
本作は1981年にリリースされた作品であり、本作収録の「Love Let Love And Be Loved」が人気DJ、Keb Dargeのコンピに収録され、『レア・グルーヴ A to Z』にも掲載されたモダン・ソウル/レア・グルーヴの人気アルバムです。宣伝文句によれば、DJであれば知らない人はいないマイナー・ソウルの傑作なのだとか・・・
本作から全く話が逸れますが、今月の僕のiPodヘビロテは、今年話題の音楽ムック本『Jazz The New Chapter』絡みの作品からセレクトしたプレイリストとなっています。『Jazz The New Chapter』は、USジャズを中心に今のブラック・ミュージックの潮流を紐解き、これまでのジャズやブラック・ミュージックの聴き方に一石を投じた刺激的なムック本です。
『Jazz The New Chapter』にも書かれている通り、新たなブラック・ミュージックの潮流の肝はビートであり、僕のプレイリストも故J Dilla制作のトラックや、Chris Dave、Mark Colenburg、Richard Spaven、Kendrick Scott、Marcus Gilmore、Jamire Williamsといった気鋭ドラマーが叩くビートが溢れています。
数週間このプレイリストばかり聴いていたら、他の作品を聴いた時、ビートの刺激の無さに拍子抜け状態になってしまうのが最近の悩みです(泣)
そんな最中に再発された本作『The Beginning』を購入したのですが、ジャケ同様に1981年録音というのが信じられないレトロな音に、"心地好いけど新鮮味はないレトロ・ソウル"というのが最初に聴いた印象でした。きっと先に述べたプレイリストの副作用かもしれません。
それでも何度か聴き直しているうちに、このイナたいダンサブルな・サウンドと溌剌としたTony Foxのヴォーカルの魅力がジワジワと伝わってきました。特に前述のキラー・チューン「Love Let Love And Be Loved」や「I Wanna Get Next To You」あたりが僕のお気に入りです。
根っからのソウル好きというわけではない僕からすれば、大絶賛するほどの傑作だとは思いませんが、たまに聴く分には十分楽しめるソウル作品といった感じですかね。
こんな書き方で誤解されそうですが、購入して正解だったと思っています(笑)
新鮮味はなくともいい味している!
全曲紹介しときやす。
「Love Let Love And Be Loved」
本作のハイライトとなるモダン・ソウル・ダンサー。溌剌とした高揚感が実に心地好いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=zvcbHYSnZuU
「A Nite For Love」
メロウなイントロと共にスタートするディスコ・チューン。81年にこのディスコ・サウンド?という気もしなくありませんが、細かいことは気にせずに楽しみましょう。
「Hurtin Hurt So Much」
カントリー調のイナたいミディアム・スロウ。僕の好みではありませんが、Tony Foxというアーティストには合っていると思います。
「Love And Care」
Tony Foxの歌心を堪能できるオーセンティックなソウル・バラード。60年代にタイム・スリップした感じでしょうか。
「Lay Some Lovin On Me」
軽快なアッパー・チューン。良くも悪くもイナたいダンサブル感がこの作品らしいのでは?
「Givin It All Tonite」
前曲に続き、開放的なダンス・チューン。ホーン隊をバックにTony Foxが溌剌としたヴォーカルを聴かせてくれます。
「I Wanna Get Next To You」
「Love Let Love And Be Loved」と並ぶ僕のお気に入り。モダン・ソウルと呼ぶに相応しいグッド・ヴァイヴを感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=1E4HPfZj6Bk
「A Tear Fell」
ラストもレトロ調のイナたいソウル・バラードで締め括ってくれます。
本作とはまったく関係ありませんが、唐突に説明した問題のムック本『Jazz The New Chapter』に関しては、別のエントリーで僕の感想・見解を整理したいと思います。ある意味で、近年の僕の音楽嗜好を知識・理論面からうまく説明してくれた本であり、僕が気になっていたミュージシャンのピープルツリーを整理してくれている点でも重宝しています。
『Jazz The New Chapter〜ロバート・グラスパーから広がる現代ジャズの地平』