2014年09月25日

Ben Williams『State Of Art』

新進ジャズ・ベーシストの初リーダー作☆Ben Williams『State Of Art』
State of Art
発表年:2011年
ez的ジャンル:新進ジャズ・ベーシスト
気分は... :新世代ならではの感性!

今回はJazz The New Chapter(JTNC)強化月間の第10弾、新進ジャズ・ベーシストBen Williamsのデビュー・アルバム『State Of Art』(2011年)です。

Ben Williamsは1984年ワシントンDC生まれ。

Miles Davis『Kind of Blue』、 Charles Mingus『Blues & Roots』を聴いてジャズに目覚め、 ジャズ・ベーシストの道を本格的に目指すようになります。

そして、ミシガン州立大学、ジュリアード音楽院で学び、2009年にはThelonious Monk International Jazz Bass Competitionで優勝し、一躍注目のジャズ・ベーシストとなりました。

この優勝を手土産にConcordと契約し、満を持してリリースした初リーダー作が本作『State Of Art』(2011年)です。

その後も自身のグループSound Effectを率いたり、Pat MethenyのグループUnity Bandへ参加しています。

また、Jamire WilliamsKris BowersMatthew StevensGerald ClaytonChristian ScottLogan RichardsonWalter Smith IIIによる若手ジャズメンのオールスター・ユニットNEXT Collectiveのメンバーにもなっています。

初リーダー作となる本作は、Ben Williams(b)以下、Gerald Clayton(p)、Matthew Stevens(g)、Marcus Strickland(ts、ss)、Jamire Williams(ds)、Etienne Charles(per)、Jaleel Shaw(as、ss)という基本布陣に加え、John Robinson(vo)、Christian Scott(tp)がゲスト参加しています。

Marcus StricklandはBen Williamsの才能に早くから注目していたサックス奏者であり、本作以前のMarcus Stricklandのリーダー作にBenが参加しています。また、Gerald ClaytonMatthew StevensJamire WilliamsChristian Scottは、前述のNEXT Collectiveの仲間です。

オリジナル楽曲以外に、Stevie Wonder、Michael Jacksonのカヴァー等も演奏しています。また、Lee Morganをラップする「The Lee Morgan Story」や、James Brownを意識した「Mr. Dynamite」といった曲もあります。

Go-Go調、ジャズ・ラップ調、ブラジル調、アフリカ調、ブルース調と演奏もバラエティに富んでおり、何より演奏が小難しくなくキャッチーなのがいいですね。Ben Williams自身も過度に自身のベース・プレイを強調するのではなく、トータルなサウンドにこだわっている感じが好感持てます。また、上手く表現できませんが、演奏全体から新世代ジャズ・ミュージシャンならではの感性が伝わってくるのがいいですね。

普段、コンテンポラリー・ジャズを聴かない人でも意外に聴きやすい演奏だと思います。

僕のような正統派すぎるジャズ作品だと退屈に感じてしまうようなタイプにはフィットする1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Home」
Ben Williams作。アフリカを感じるオープニング。Ben WilliamsとJamire Williamsの強力リズム隊をバックに、Marcus Stricklandが軽快なブロウを聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=ITPEmrWtyuI

「Moontrane」
Woody Shaw作。John Coltraneに捧げられたWoody Shawの名曲をカヴァー。当ブログでも紹介したLarry Young『Unity』での演奏が有名ですね。この名曲をGo-Go調リズムでカヴァーするのがGo-Goの本場ワシントンDC出身のBen Williamsらしいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=Gq_rpYcAVpw

「The Lee Morgan Story」
John Robinson作。John RobinsonのラップとChristian Scottのトランペットをフィーチャーっした、天才トランぺッターLee Morganへのトリビュート。Lee Morganの作品名や共演ミュージシャンを散りばめたJohn Robinsonのラップと、Christian Scottのクールなトランペット・ソロを楽しめます。Gerald Claytonのメロウ・エレピも心地好いです。ラップ曲でも全く違和感なく演奏してしまうのが新世代ジャズ・ミュージシャンらしいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=-jqQG6vUZVQ

「Dawn Of A New Day」
Ben Williams作。コンテンポラリー・ジャズらしいオーセンティックな演奏ですが、実にスマートですね。Ben Williamsのツボを押さえたベース・ソロもいいですね。

「Little Susie Intro」
Ben Williams作。Ben Williamsのベース・ソロによる次曲のイントロ。

「Little Susie」
Michael Jacksonのカヴァー。MJの哀愁ソングをストリングスも配してドラマティックにカヴァーしています。Ben Williamsのトータルな音創りへのこだわりを感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=daaGe3YRXH4

「November」
Ben Williams作。僕の一番のお気に入り。ブラジリアン調のリズムののって、各メンバーが躍動します。特にMatthew Stevensのギターが冴えています。もちろんBenのベース・プレイもさすがです。
https://www.youtube.com/watch?v=Zk4c2CiTYDY

「Part-Time Lover」
Stevie Wonderの大ヒット曲をカヴァー。オリジナルは『In Square Circle』(1985年)に収録されています。お馴染みのヒット曲を意外にもブルージーにカヴァーしています。

「Things Don't Exist」
Goapele/Jeffrey Bhasker作のスタンダードをカヴァー。Gerald Claytonの美しいピアノと共に始まる美しも切ない哀愁バラード。ストリングスも絶妙です。新世代ジャズ・ミュージシャンらしいエレガントさのようなものを感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=o_k2Jfgy37M

「Mr. Dynamite」
Ben Williams作。タイトルの通り、James Brownを意識したファンキーな演奏を楽しめます。グイグイ突進するリズム隊に負けじと、Marcus StricklandのサックスやGerald Claytonのピアノもエキサイティングです。

「Moonlight In Vermont」
Ben Williams作。ラストはロマンティックに締め括ってくれます。Matthew Stevensのギターがいいですね。

「Home (DJ Rich Medina Remix)」
ボーナス・トラックとして、「Home」のクラブ仕様のリミックスが収録されています。

ご興味がある方は関連アルバムもチェックを!

Pat Metheny『Unity Band』(2012年)
Unity Band

Pat Metheny Unity Group『Kin』(2014年)
Kin

NEXT Collective『Cover Art』(2013年)
Cover Art
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2014年09月24日

Bilal『Airtight's Revenge』

JTNCの文脈で聴くと興味深いネオソウル作品☆Bilal『Airtight's Revenge』
Airtight's Revenge
発表年:2010年
ez的ジャンル:進化形男性ネオソウル
気分は... :時代を先取り!

今回はJazz The New Chapter(JTNC)強化月間の第9弾、かつては"The Soulquariansの最終兵器"と呼ばれた男性R&BシンガーBilalの2ndアルバム『Airtight's Revenge』(2010年)です。

『Jazz The New Chapter』の中で、Robert Glasper周辺作品の中の1枚として紹介されていたのが、本作『Airtight's Revenge』です。

周知の通り、Robert GlasperBilalは、ニュースクール大学時代の盟友であり、Bilalの全アルバムにRobert Glasperが参加しています。

Bilal(本名:Bilal Sayeed Oliver)は1979年フィラデルフィア生まれの男性R&Bシンガー。

The Soulquariansメンバーとして、?uestloveThe Roots)、Erykah BaduQ-TipD'AngeloMos DefCommonJay Dee(J Dilla)等の錚々たるメンバーと肩を並べていました。

2001年にリリースした1stアルバム『1st Born Second』には、Jay DeeMos DefCommon?uestloveThe Roots)といったThe SoulquariansのメンバーやDr. Dre等が参加し、ネオソウル良盤として高い評価を得ました。

その後、2006年に2ndアルバム『Love for Sale』をリリースする予定でしたが、直前に音源がリークしてしまい、結局お蔵入りとなってしまう不運に遭います。

そして、2010年に約9年ぶりの2ndアルバム『Airtight's Revenge』をリリース。さらに2013年には3rdアルバム『A Love Surreal』をリリースしています。

Bilalのアルバムは3枚とも所有していますが、何故かブログでは未紹介のままでした。しかし、今年に入り『Jazz The New Chapter』を読んだことがきっかけで、Bilalのアルバムを聴き直す機会が増えています。

1st『1st Born Second』(2001年)もクレジットをきちんと見直すと、Robert GlasperRobert Glasper ExperimentのメンバーCasey Benjaminの名前を確認することができます。

2nd『Airtight's Revenge』、3rdアルバム『A Love Surreal』も同様に、JTNC的視点で参加メンバーを確認すると実に興味深いですね。

Soulquarians好きの僕としては、『1st Born Second』(2001年)に一番愛着がありますが、JTNCの文脈で聴くのであれば、本作『Airtight's Revenge』が一番面白いと思います。実際、『Jazz The New Chapter』でも本作がピックアップされました。

『Airtight's Revenge』には、JTNC関連でいえば、Robert GlasperDerrick HodgeShafiq HusaynSa-Ra Creative Partners)、Miguel Atwood-FergusonThundercatといったミュージシャンが参加しています。

当時、Bilal自身が最も好きなプロデューサーとして、Flying Lotusの名前を挙げており、Flying Lotusの右腕ThundercatやL.A.シーンの重要ミュージシャンMiguel Atwood-Fergusonの起用は、そのあたりの意図もあるのかもしれませんね。この時点でLAビート・ミュージックに着目したBilalの先見の明に感心します。

BilalSteve McKieがメイン・プロデューサーですが、それ以外にNottzShafiq Husayn88-KeysConley "Tone" Whitfieldがプロデューサーとして起用されています。

アルバム全体としては、インディー・ロック、LAビートミュージック、ジャズ、Hip-Hop、エレクトロ等のジャンル融合的な実験的サウンドが印象的であり、R&B/Soulの枠を飛び越えて進化しようとするBilalの意気込みが伝わってくる意欲作です。

おそらくR&B/Soulというジャンル固定的な音楽の聴き方をしている方は、LAビートミュージックな「Levels」、インディー・ロックな「All Matter」、アブストラクトHip-Hopな「The Dollar」のようなサウンドに戸惑うかもしれませんね。

しかしながら、それらの曲にこそ本作の面白さやBilalの意図が明確に示されていると思います。

JTNC的な聴き方が要求される、時代を先取りした1枚だと思います。
Bilalはやはり只者ではありませんな。

全曲紹介しときやす。

「Cake & Eat It Too」
Bilal/Steve McKieプロデュース。Jay Dee的なビートにのって、Bilalが独特のハイトーン・ヴォーカルが浮遊するネオソウル・チューン。ベースはDerrick Hodge、シンセ/フェンダー・ローズはJunius Bervineです。
https://www.youtube.com/watch?v=uwmCt_S24lk

「Restart」
Bilal/Steve McKieプロデュース。シングルにもなった本曲では、本作の特徴であるインディー・ロック的なアプローチを聴くことができます。リード・ギターはBen "Bananas" O'Neil。
https://www.youtube.com/watch?v=5att1ZTG1wY

「All Matter」
Bilal/Steve McKieプロデュース。Bilalが客演したRobert Glasper『Double Booked』(2009年)のヴァージョンでも知られる楽曲ですね。JTNC的な聴き方をすると、実にジャンル融合的で興味深い楽曲です。Bilalの少し憂いのあるハイトーン・ヴォーカルが適度にハードかつサイケなサウンドとよくマッチしています。
https://www.youtube.com/watch?v=0apYId-zQQE

「Flying」
Bilal/Nottz/Frederick G. Mcintoshプロデュース。アンダーグランド的な儚い美しいトラックにグッときます。Bilalの進化を感じる1曲。
https://www.youtube.com/watch?v=GPFVj5FcHXY

「Levels」
Bilal/Shafiq Husayn/KenBts.プロデュース。Shafiq Husayn、Thundercat、Miguel Atwood-Fergusonが参加している本曲は、Flying Lotusの影響を色濃く感じるLAビート・ミュージック的な仕上がりです。シングルにもなりました。アルバム未収録ですが、Flying Lotusによるリミックスもあります。また、Flying LotusはPVの監督も務めています。
https://www.youtube.com/watch?v=qleLHf0_Swg

「Little One」
Conley "Tone" Whitfieldプロデュース。美しい哀愁モードがグッときます。シングルにもなりました。バックの演奏はすべてConley "Tone" Whitfieldによるものです。
https://www.youtube.com/watch?v=PzrQexzPLDk

「Move On」
Bilal/Steve McKieプロデュース。Robert Glasper参加曲です。そのGlasperの美しいピアノとMike Seversonのハードなギターのコントラストが印象的なネオソウルです。
https://www.youtube.com/watch?v=t1Xu7noivfU

「Robots」
Bilal/Steve McKieプロデュース。Hip-Hopビート、ロッキン・ギター、スペイシーなシンセ等ジャンル融合的なサウンドを楽しめる1曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=gZek8rK6gvk

「The Dollar」
Bilal/Steve McKieプロデュース。アブストラクトHip-Hop的なサウンドが実に印象的です。Robert Glasperがフェンダー・ローズで参加しています。
https://www.youtube.com/watch?v=H1BO1JTEAUI

「Who Are You」
Bilal/Steve McKieプロデュース。アルバムでも最も柔らかい印象を持つ楽曲と思いきや・・・後半は実験的な展開となり、終盤はダビーなサウンドへ様変わりしていきます。
https://www.youtube.com/watch?v=tA5tThJlaNA

「Think It Over」
88 Keys/Bilalプロデュース。Gentle Giant「Memories of Old Days」をサンプリングしたギター・ループに、ThundercatのベースやMiguel Atwood-Fergusonのストリングスが加わります。Miguel Atwood-Fergusonのサウンド・センスに脱帽です。
https://www.youtube.com/watch?v=QsBMP8rZrHA

Bilalの他作品もチェックを!

『1st Born Second』(2001年)
1st Born Second

『A Love Surreal』(2013年)
Love Surreal
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2014年09月23日

Gretchen Parlato『In a Dream』

JTNCでも大注目の進化形ジャズの歌姫☆Gretchen Parlato『In a Dream』
In a Dream
発表年:2009年
ez的ジャンル:進化形ジャズ系女性ジャズ・ヴォーカル
気分は... :彼女がなぜ魅力的なのか?その理由は・・・

今回はJazz The New Chapter(JTNC)強化月間の第8弾、N.Y.を拠点に活躍する進化形ジャズの歌姫Gretchen Parlatoの2ndアルバム『In a Dream』(2009年)です。

『Jazz The New Chapter』でも大きく取り上げられていた新進女性ジャズ・シンガーGretchen Parlatoの紹介は、彼女の名を一躍有名にした3rdアルバム『The Lost And Found』(2011年)に続き2回目となります。

『The Lost And Found』は当ブログ年末恒例の『ezが選ぶ2011年の10枚』にセレクトしたお気に入り作品でした。

振り返れば、僕が進化形ジャズの動きを最初に感じ、そのピープルツリーが気になり始めたアルバムが『The Lost And Found』だったかもしれません。

Gretchenとの共同プロデュースでRobert Glasperが関わり、それ以外にもRobert Glasper ExperimentのベーシストDerrick Hodgeや、『Jazz The New Chapter』でも取り上げれていたTaylor Eigsti(p)、Kendrick Scott(ds)、Alan Hampton(g)といった注目のジャズ・アーティストがバックを固め、Mary J. BligeSimply Redをカヴァーした『The Lost And Found』は、正にJTNCを象徴するような1枚でした。

まぁ、リアルタイムで聴いていた時は、そこまでの重要作になるとは思っていませんでしたが、僕のフィーリングにジャスト・フィットする特別な作品であるとは感じていました。

また、Q-Tip『The Renaissance』(2008年)への参加以来、僕の中でその名を忘れかけていたRobert Glasperの名前を再度強く印象付けてくれたのも本作でした。その流れで、『Double Booked』(2009年)におけるRobert Glasper Experimentの演奏をチェックした記憶があります。

その意味で、JTNCを決定づけた衝撃作『Black Radio』がリリースされる前年に、聴き手として準備する機会を与えてくれたのが『The Lost And Found』というアルバムでした。

本作『In a Dream』(2009年)は、その『The Lost And Found』の前作となる2ndアルバムです。

改めて聴き直すと、まだまだ手探り状態ですが、『The Lost And Found』の登場を予感させる、進化形ジャズの芽吹きのようなアルバムですね。

レコーディング・メンバーには、Lionel Loueke(g、vo)、Aaron Parks(p、el-p、org、syn、glockenspiel)、Derrick Hodge(b)、Kendrick Scott(ds、per)という、いずれも『Jazz The New Chapter』でリーダー作がピップアップされていたJTNC重要ミュージシャンが顔を並べます。特に、GretchenとはThelonious Monk Institute of Jazz時代の同期である天才ギタリストLionel Louekeのプレイに注目したいですね。

また、レコーディングには未参加ですが、Robert Glasperは楽曲提供で関与しています。

プロデューサーはMichele Locatelli

シンプルな演奏も多い分、Gretchen Parlatoの魅力がダイレクトに伝わってくると思います。

決して声量があるわけでもなく、歌い上げることもあまりしない彼女のヴォーカルが、なぜ魅力的で、なぜ評価されるのか?本作を聴けば、その答えが見えてくるはずです。

全曲紹介しときやす。

「Turning into Blue」
Alan Hampton/Gretchen Parlato作。Gretchenのヴォーカルも含めて、全体的に澄み切った美しさを持つ演奏がいいですね。実にGretchen Parlatoらしい雰囲気に満ちたオープニングだと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=pO2W-O-2tZg

「Within Me」
Francis Jacob作。派手さはありませんが、進化形ジャズの芽吹きを感じる演奏です。Kendrick Scottの叩き出すリズムが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=ceCm4oTsFh4

「I Can't Help It」
Michael Jacksonの人気曲をカヴァー(Stevie Wonder/Susaye Coton Greene作)。Gretchenとの親交も深いJTNCの重要アーティストEsperanza Spalding『Radio Music Society』で本曲をカヴァーしていましたね。やはり、本作のハイライトはこのMJカヴァーではないでしょうか、Gretchenのメロウな声質による歌い上げないヴォーカル・スタイルの魅力がよく伝わってきます。Lionel Louekeのギター&スキャットと一体化している感じもいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=D69aT-IFelQ

「Butterfly」
Bennie Maupin/Herbie Hancock作。Hancockのオリジナルは当ブログでも紹介した『Thrust』(1974年)に収録されています。本作と同じ2009年にRobert Glasper Experiment『Double Booked』で本曲をカヴァーしているという点も興味深いですね。子供の戯れる声と共にスタートする本カヴァーは、「I Can't Help It」同様にLionel Louekeのギター&スキャットが寄り添います。

「In a Dream」
Robert Glasper/Gretchen Parlato作。Robert Glasperとの共作による本曲は、Aaron Parksのメロウ・エレピとGretchenの夢心地モードのヴォーカルがよくマッチしています。まさに夢の中・・・
https://www.youtube.com/watch?v=hSfhowdHjR0

「Doralice」
Antonio Almeida/Dorival Caymmi作。 Stan Getz/Joao Gilberto 『Getz/Gilberto』収録曲として有名ですね。ここでは殆どア・カペラに近い状態でGretchenのヴォーカルを堪能できます。
https://www.youtube.com/watch?v=fffHVcZcnxw

「Azure」
Duke Ellington/Irving Mills作。Ellington作品をアコースティックな雰囲気の中でしっとりと歌い上げます。

「E.S.P.」
Wayne Shorter作。毎回Wayne Shorter作品を取り上げるGretchenですが、本作ではMiles Davisの名盤『E.S.P.』(1965年)のタイトル曲としてお馴染みの本曲を取り上げています。今回のバック陣による主流派らしい演奏とGretchenの軽やかなスキャットが駆け抜けていきます。

「On the Other Side」
Francis Jacob作。シンプルながらもジャズ・ヴォーカルの魅力が伝わってくる味わい深い1曲。こういう曲を聴くと、GretchenがBecca Stevens、Rebecca Martinと女性ヴォーカル・ユニットTilleryとして活動しているのがわかる気がします。

「Weak」
SWVの全米No.1ヒットをカヴァー(Brian Alexander Morgan作)。クレジットを見ると、オリジナルというよりZapp「Computer Love」をサンプリングしたBam Jams Jeep Mixを意識したカヴァーかもしれません。SWV好きの僕としては、かなり嬉しいカヴァーです。また、SWVMary J. Bligeを軽やかにジャズ・カヴァーしてしまうあたりに、進化形ジャズ・アーティストの真髄を見るような気がします。
https://www.youtube.com/watch?v=WYN4I6YHCfA

「All My Tomorrows」
国内盤ボーナス・トラック。Jimmy Van Heusen/Sammy Cahn作のスタンダードをカヴァー。ここではオーソドックスなスタイルでスタンダードを歌い上げます。Aaron Parksの美しいピアノもいいですね。

『The Lost And Found』に続くスタジオ新作を渇望しています。また、GretchenとJTNCの流れで最も注目を集めている女性シンガーBecca StevensRebecca Martinとの女性ヴォーカル・ユニットTillery名義のアルバム・リリースも期待してしまいます。

Gretchen Parlatoの他作品もチェックを!

『Gretchen Parlato』(2005年)
Gretchen Parlato

『The Lost And Found』(2011年)
Lost & Found

『Live In NYC』(2013年)
ライヴ・イン・ニューヨーク・シティ【CD+DVD】(仮)
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2014年09月22日

Jorge Ben『Ben』

代表曲「Taj Mahal」のオリジナル収録☆Jorge Ben『Ben』
Jorge Ben - Ben
発表年:1972年
ez的ジャンル:オンリーワン系ブラジル男性SSW
気分は... :Jorge Benのプリミティブな魅力!

今回はブラジルを代表する男性シンガー・ソングライターJorge Ben(Jorge Ben Jor)が1972年にリリースした『Ben』です。

これまで当ブログで紹介したJorge Ben作品は以下の6枚です。

 『Sacundin Ben Samba』(1964年)
 『Jorge Ben』(1969年)
 『Forca Bruta』(1970年)
 『Africa Brasil』(1976年)
 『A Banda Do Ze Pretinho』(1978年)
 『Salve Simpatia』(1979年)

1972年にリリースされた本作『Ben』は、タイトルもジャケも飾り気がなくシンプル!

サウンドも派手なサンバ・グルーヴ/サンバ・ロックというものではなく、フォーキー感覚のアコースティック・チューンで占められています。Osmar Militoが数曲でアレンジを手掛けていますが、アルバム全体の印象は少し地味かもしれません。

CD自体も入手しづらい状態であることも手伝い、Jorge Benの70年代アルバムの中でも意外に語られる機会が少ない作品かもしれませんね。しかしながら、本作には「Taj Mahal」「Fio Maravilha(Filho Maravilha)」といった有名曲のオリジナル・ヴァージョンが収録されています。

また、シンプルながらも随所でJorge Benらしいメロディ、歌い回しを聴くことができ、Jorge Benのプリミティブな魅力を再確認することができます。

その意味では、Jorge Ben入門編としてはオススメできませんが、60〜70年代の主要作を5〜6枚以上聴いた後に聴くと、より楽しめると思います。

プロデュースはPaulinho Tapajos。全曲Jorge Benのオリジナルです。

Jorge Benのプリミティブな魅力を存分に満喫しましょう。

全曲紹介しときやす。

「Morre o Burro Fica o Homem」
オススメその1。開放的なグルーヴ感が心地好いオープニング。フォーキー・グルーヴ好きの人も気に入るのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=RrJi0kDlNb8

「O Circo Chegou」
オススメその2。アコースティックな質感の中にもJorge Benらしいファンキー・メロウなグルーヴ感を堪能できます。Jorge Benのセンスの良さを感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=s7KU2MCEK_M

「Paz e Arroz」
Osmar Militoのアレンジ・センスとJorge Benのグルーヴ感が融合したファンキー・グルーヴ。
https://www.youtube.com/watch?v=xmMAlu1bo1k

「Moca」
哀愁のメロディをBenが切々と歌います。Osmar Militoによる美しいオーケストレーションが哀愁もーどを盛り上げてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=8wBEkx4TSb4

「Domingo 23」
Jorge Benらしいメロディ、節回しを堪能できるアコースティック・グルーヴ。
https://www.youtube.com/watch?v=Q3rH_3poPMI

「Fio Maravilha」
名曲「Fio Maravilha」のオリジナル。当ブログではクラブ方面で人気のTania Mariaヴァージョンも紹介済みです。Tania Mariaヴァージョンのイメージで聴くと、オリジナルは意外に素朴でフォーキーです。元々はフラメンゴのサッカー選手Fioに捧げられた曲でしたが、問題となり現在では「Filho Maravilha」のタイトルに改題されています。
https://www.youtube.com/watch?v=d7BbSoRCIKs

「Quem Cochicha o Rabo Espicha」
オススメその3。Benの本領発揮のファンキー・サンバ・グルーヴ。このファンキーな疾走感がたまりません。
https://www.youtube.com/watch?v=ZSlPwZ9F3BI

「Caramba!... Galileu da Galileia」
オススメその4。パーカッシヴなアコースティック・メロウ。リズミックなのに味わい深い感じがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=w1NJBYCLAvI

「Que Nega E Essa」
哀愁モードのフォーキー・サウンドは秋モードにフィットします。
https://www.youtube.com/watch?v=3rzOrwuXnxs

「As Rosas Eram todas Amarelas」
美しさとミステリアスな雰囲気が同居するアコースティック・チューン。
https://www.youtube.com/watch?v=2HUdDNDWYSo

「Taj Mahal」
オススメその5。Jorge Benの代表曲「Taj Mahal」のオリジナル・ヴァージョン。当ブログでは『Africa Brasil』収録ヴァージョンも紹介済みです。また、『Acustico MTV』収録ヴァージョンは、一時期CMで流れていました。それ以外にも何度か再録されているため、どれがオリジナルなのかわかりづらいですが本ヴァージョンがオリジナルです。アコースティックな質感ですが、サビの♪テ・テ・テ・テ・テ〜テ♪部分はやはり興奮しますね。
https://www.youtube.com/watch?v=ILZjZ85mASk

多くの方がご存知の通り、本曲の印象的なサビ部分をRod Stewart「Do Ya Think I'm Sexy?」で模倣し、裁判で敗訴しています。

Jorge Benの過去記事もご参照下さい。

『Sacundin Ben Samba』(1964年)
Sacundin Ben Samba

『Jorge Ben』(1969年)
Jorge Ben

『Forca Bruta』(1970年)
Forca Bruta

『Africa Brasil』(1976年)
アフリカ・ブラジル

『A Banda Do Ze Pretinho』(1978年)
A Banda Do Ze Pretinho

『Salve Simpatia』(1979年)
サルヴィ・シンパチーア(BOM1452)
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2014年09月21日

Nortec Collective Presents: Bostich+Fussible『Motel Baja』

メキシコ北部の大衆音楽とエレクトロニカ/テクノの融合☆Nortec Collective Presents: Bostich+Fussible『Motel Baja』
Motel Baja
発表年:2014年
ez的ジャンル:メキシコ産エレクトロニカ/テクノ
気分は... :レトロなのに近未来的・・・

今月に入り、週末の新作紹介はJazz The New Chapter(JTNC)絡みの作品が続いたので、気分の変えてそれ以外の新作を・・・

ということで、今回はメキシコ大衆音楽とエレクトロニカ/テクノを融合させたユニークな音楽スタイルの先鋭集団Nortec Collectiveの派生プロジェクトNortec Collective Presents: Bostich+Fussible『Motel Baja』です。

Nortec Collectiveは、アメリカとの国境の町、メキシコのティファナで結成されたユニット。メキシコ北部の伝統音楽(ノルテ―ニョ)と電子ビートを融合させたノスタルジックなのに電脳的な独自のダンス・ミュージックを創り上げ、ラテンアメリカのエレクトロニカ/テクノ・シーンを牽引してきました。グラミーやラテン・グラミーにもノミネートされています。

Nortec Collective名義で『The Tijuana Sessions Vol. 1』(2001年)、『Tijuana Sessions Vol. 3』(2005年)という2枚のアルバムをリリースした後、Collective全体としての活動を休止し、メンバーは各々の活動をスタートさせます。

その中で主要メンバーのBostichRamon Amezcua)とFussiblePepe Mogt)の2人は、Nortec Collective Presents: Bostich+Fussibleというかたちで、『Tijuana Sound Machin』(2009年)、『Bulevar 2000』(2010年)という2枚のアルバムをリリースしています。

また、メンバーの一人ClorofilaNortec Collective Presents: Clorofila『Corridos Urbanos』(2010年)をリリースしています。

Bostich+Fussible名義の3作目となる本作『Motel Baja』は、残念ながらNortec Collectiveとしての最終作になる模様です。

そのフィナーレを飾るべく、アルバムにはTalking HeadsTom Tom Clubの活動で知られるChris FrantzTina Weymouth、元KraftwerkWolfgang Flur、シスコのエレポップ・バンドLoquatのメンバーKylee SwensonAtom HeartSenor Coconutでの活動でも知られるチリ在住のドイツ人アーティストUwe Schmidtといったゲストが参加しています。

ノスタルジックで適度にユルいエレクトロニカ/テクノ・サウンドは、一度聴いたらクセになりますよ!

ジャケ・デザインもサイコー!

全曲紹介しときやす。

「Tele-Vco」
Pepe Mogt/Argenis Brito作。メキシコのテレビ・メディアを皮肉ったオープニング。ローファイ感覚の電子サウンドが郷愁漂うメロディとよくマッチしています。適度なユルさがたまりません。ヴォーカルをとるのはSenor Coconut作品にも参加していたベネズエラ出身の男性シンガーArgenis Brito。

「Camino Verde」
Pepe Mogt/Melo Ruiz/Luiz Eloza/Gerardo Molina作。僕の一番のお気に入り。近未来とレトロが同居するラウンジ感覚にグッとくるダンサブル・チューン。ヴォコーダーを使っているのも僕好み!
https://www.youtube.com/watch?v=fhW1C1it9Lk

「Into Your Heaven」
Ramon Amezcua作。このユニットらしいノルテ―ニョとテクノの融合を楽しめます。伝統音楽の和んだ雰囲気と先鋭的サウンドのギャップが面白いですね。

「Motel Baja」
Pepe Mogt/Chris Frantz/Tina Weymouth作。タイトル曲にはChris Frantz(vo、ds)、Tina Weymouth(vo、b)の2人がゲスト参加しています。何となくメキシコ版Tom Tom Clubといった雰囲気がいいですね!「Camino Verde」と並ぶ僕のお気に入りです。アコーディオンの音色がいいアクセントになっています。
https://www.youtube.com/watch?v=z2ukr-aYIdw

「Blue Pill」
Ramon Amezcua作。Alberto Nunez Palacioによるオーケストレーションを従え、TR-808とTB-303といった機材を駆使したダンサブル・サウンドはB級グルメのような味わいがあります。
https://www.youtube.com/watch?v=fHrjqxAnP7s

「Moda Makina」
Ramon Amezcua/Wolfgang Flur作。元KraftwerkのWolfgang Flurがヴォーカルで参加しています。哀愁のメロディと近未来的な電子サウンドの融合はKraftwerkとノルテ―ニョの出会いといったところとでしょうか。

「Preciosa」
Ramon Amezcua作。チリ在住のドイツ人アーティストUwe SchmidtがAtom名義で参加しています。電脳的なシンセ・サウンドとノスタルジックのアコーディオンの音色の組み合わせにハマります。

「Temporary Paradise」
Ramon Amezcua/Kylee Swenson作。前作にも参加していたLoquatの女性ヴォーカル&ギターKylee Swensonが参加しています。ダンサブルでキャッチーなエレクトロニカ/テクノ・チューンですが、ノルテ―ニョのエッセンスもきちんと織り込んでいます。

「Room Service」
Ramon Amezcua作。本人曰く、"アルバムで最もロマンティックなインスト曲"ということらしいです。
https://www.youtube.com/watch?v=nGIB8_KbbkE

「El Coyote」
Pepe Mogt作。アルバム中最もノルテ―ニョ色の強いインスト。

「No Vacancy」
Pepe Mogt作。ラストはNortec Collectiveのフィナーレを惜しむかのようなメランコリックなサウンドで締め括ってくれます。

ご興味がある方は、他のNortec Collective関連作品もチェックを!

Nortec Collective『The Tijuana Sessions Vol. 1』(2001年)
Tijuana Sessions 1

Nortec Collective『Tijuana Sessions Vol. 3』(2005年)
Tijuana Sessions 3

Nortec Collective Presents: Bostich+Fussible『Tijuana Sound Machin』(2009年)
Tijuana Sound Machine

Nortec Collective Presents: Bostich+Fussible『Bulevar 2000』(2010年)
Bulevar 2000

Nortec Collective Presents: Clorofila『Corridos Urbanos』(2010年)
Corridos Urbanos
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