発表年:2011年
ez的ジャンル:新進ジャズ・ベーシスト
気分は... :新世代ならではの感性!
今回はJazz The New Chapter(JTNC)強化月間の第10弾、新進ジャズ・ベーシストBen Williamsのデビュー・アルバム『State Of Art』(2011年)です。
Ben Williamsは1984年ワシントンDC生まれ。
Miles Davis『Kind of Blue』、 Charles Mingus『Blues & Roots』を聴いてジャズに目覚め、 ジャズ・ベーシストの道を本格的に目指すようになります。
そして、ミシガン州立大学、ジュリアード音楽院で学び、2009年にはThelonious Monk International Jazz Bass Competitionで優勝し、一躍注目のジャズ・ベーシストとなりました。
この優勝を手土産にConcordと契約し、満を持してリリースした初リーダー作が本作『State Of Art』(2011年)です。
その後も自身のグループSound Effectを率いたり、Pat MethenyのグループUnity Bandへ参加しています。
また、Jamire Williams、Kris Bowers、Matthew Stevens、Gerald Clayton、Christian Scott、Logan Richardson、Walter Smith IIIによる若手ジャズメンのオールスター・ユニットNEXT Collectiveのメンバーにもなっています。
初リーダー作となる本作は、Ben Williams(b)以下、Gerald Clayton(p)、Matthew Stevens(g)、Marcus Strickland(ts、ss)、Jamire Williams(ds)、Etienne Charles(per)、Jaleel Shaw(as、ss)という基本布陣に加え、John Robinson(vo)、Christian Scott(tp)がゲスト参加しています。
Marcus StricklandはBen Williamsの才能に早くから注目していたサックス奏者であり、本作以前のMarcus Stricklandのリーダー作にBenが参加しています。また、Gerald Clayton、Matthew Stevens、Jamire Williams、Christian Scottは、前述のNEXT Collectiveの仲間です。
オリジナル楽曲以外に、Stevie Wonder、Michael Jacksonのカヴァー等も演奏しています。また、Lee Morganをラップする「The Lee Morgan Story」や、James Brownを意識した「Mr. Dynamite」といった曲もあります。
Go-Go調、ジャズ・ラップ調、ブラジル調、アフリカ調、ブルース調と演奏もバラエティに富んでおり、何より演奏が小難しくなくキャッチーなのがいいですね。Ben Williams自身も過度に自身のベース・プレイを強調するのではなく、トータルなサウンドにこだわっている感じが好感持てます。また、上手く表現できませんが、演奏全体から新世代ジャズ・ミュージシャンならではの感性が伝わってくるのがいいですね。
普段、コンテンポラリー・ジャズを聴かない人でも意外に聴きやすい演奏だと思います。
僕のような正統派すぎるジャズ作品だと退屈に感じてしまうようなタイプにはフィットする1枚です。
全曲紹介しときやす。
「Home」
Ben Williams作。アフリカを感じるオープニング。Ben WilliamsとJamire Williamsの強力リズム隊をバックに、Marcus Stricklandが軽快なブロウを聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=ITPEmrWtyuI
「Moontrane」
Woody Shaw作。John Coltraneに捧げられたWoody Shawの名曲をカヴァー。当ブログでも紹介したLarry Young『Unity』での演奏が有名ですね。この名曲をGo-Go調リズムでカヴァーするのがGo-Goの本場ワシントンDC出身のBen Williamsらしいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=Gq_rpYcAVpw
「The Lee Morgan Story」
John Robinson作。John RobinsonのラップとChristian Scottのトランペットをフィーチャーっした、天才トランぺッターLee Morganへのトリビュート。Lee Morganの作品名や共演ミュージシャンを散りばめたJohn Robinsonのラップと、Christian Scottのクールなトランペット・ソロを楽しめます。Gerald Claytonのメロウ・エレピも心地好いです。ラップ曲でも全く違和感なく演奏してしまうのが新世代ジャズ・ミュージシャンらしいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=-jqQG6vUZVQ
「Dawn Of A New Day」
Ben Williams作。コンテンポラリー・ジャズらしいオーセンティックな演奏ですが、実にスマートですね。Ben Williamsのツボを押さえたベース・ソロもいいですね。
「Little Susie Intro」
Ben Williams作。Ben Williamsのベース・ソロによる次曲のイントロ。
「Little Susie」
Michael Jacksonのカヴァー。MJの哀愁ソングをストリングスも配してドラマティックにカヴァーしています。Ben Williamsのトータルな音創りへのこだわりを感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=daaGe3YRXH4
「November」
Ben Williams作。僕の一番のお気に入り。ブラジリアン調のリズムののって、各メンバーが躍動します。特にMatthew Stevensのギターが冴えています。もちろんBenのベース・プレイもさすがです。
https://www.youtube.com/watch?v=Zk4c2CiTYDY
「Part-Time Lover」
Stevie Wonderの大ヒット曲をカヴァー。オリジナルは『In Square Circle』(1985年)に収録されています。お馴染みのヒット曲を意外にもブルージーにカヴァーしています。
「Things Don't Exist」
Goapele/Jeffrey Bhasker作のスタンダードをカヴァー。Gerald Claytonの美しいピアノと共に始まる美しも切ない哀愁バラード。ストリングスも絶妙です。新世代ジャズ・ミュージシャンらしいエレガントさのようなものを感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=o_k2Jfgy37M
「Mr. Dynamite」
Ben Williams作。タイトルの通り、James Brownを意識したファンキーな演奏を楽しめます。グイグイ突進するリズム隊に負けじと、Marcus StricklandのサックスやGerald Claytonのピアノもエキサイティングです。
「Moonlight In Vermont」
Ben Williams作。ラストはロマンティックに締め括ってくれます。Matthew Stevensのギターがいいですね。
「Home (DJ Rich Medina Remix)」
ボーナス・トラックとして、「Home」のクラブ仕様のリミックスが収録されています。
ご興味がある方は関連アルバムもチェックを!
Pat Metheny『Unity Band』(2012年)
Pat Metheny Unity Group『Kin』(2014年)
NEXT Collective『Cover Art』(2013年)