2014年09月14日

Kris Bowers『Heroes + Misfits』

ジャズ界の新星ピアニストが示した進化するジャズ☆Kris Bowers『Heroes + Misfits』
Heroes & Misfits
発表年:2014年
ez的ジャンル:ポストGlasper世代ジャズ・ピアニストの新星
気分は... :ジャズ界を背負って立つ逸材!

昨日に続き、Jazz The New Chapter強化月間の第4弾Kris Bowers『Heroes + Misfits』(2014年)です。

1989年L.A.生まれのジャズ界の新星ピアニストKris Bowersは、これからのジャズ界を背負って立つ才能であることは間違いないでしょう。

ジュリアード音楽院を卒業し、2011年のThelonious Monk International Jazz Piano Competitionで優勝するというジャズ界のエリート街道にいる期待のピアニストです。その一方で、Jay-Z & Kanye West『Watch the Throne』(2011年)に参加し、などジャズの枠に囚われない活動も行っています。

Erimaj『Conflict Of A Man』の記事で紹介した、若手ジャズメンのオールスター・ユニットNEXT Collectiveのメンバーであり、NEXT Collective『Cover Art』(2013年)、さらにはJose James『No Beginning No End』(2013年)、Jose James『While You Were Sleeping』(2014年)
Takuya Kuroda『Rising Son』(2014年)といったJTNC重要作にも参加しています。

Kris Bowersの音楽性が示されているのがYouTubeにアップされている2本の動画です。

1本目は1899年から2014年までのジャズ・ピアノの歴史を11分で演奏した「History of Jazz Piano」、もう1本が新進ラッパーKendrick Lamarの楽曲「Rigamortis」のジャズ・ピアノ・カヴァーです。ジャズの歴史をしっかり踏まえつつ、ジャズ以外の音楽もしっかり吸収するというKris Bowersというアーティストのスタンスが示された動画2本です。

Kris Bowers「History of Jazz Piano」
https://www.youtube.com/watch?v=IstFVThvo1A
Kris Bowers「Rigamortis」
https://www.youtube.com/watch?v=_Mx5rZFAm0g

そんなKris Bowersのデビュー作となるのが今年リリースされた本作『Heroes + Misfits』です。厳密には2010年に日本で『Blue In Green』というBen Williams(b)、Clarence Penn(ds)とのピアノ・トリオ作品をリリースしていますが、本作『Heroes + Misfits』をデビュー盤と呼んで差支えないと思います。

2012年にレコーディングされた本作の参加メンバーはKris Bowers(p、el-p、syn)以下、Casey Benjamin(as、vocoder)、Kenneth Whalum III(ts)、Adam Agati(g)、Burniss Earl Travis II(b)、Jamire Williams(ds)といったミュージシャンです。

Casey BenjaminはRobert Glasper Experimentのメンバーとしてお馴染みですね。新進ジャズ・ドラマーJamire Williamsは先日Erimaj『Conflict Of A Man』を紹介したばかりです。Burniss Earl Travis IIはそのErimaj『Conflict Of A Man』にも参加していたベーシストです。特にJamire Williamsの存在感は本作でも大きいですね。

さらにJulia EasterlinJose JamesChris Turnerといったヴォーカリストがゲスト参加しています。

アルバム全体の印象としては、ジャズ界のエリートらしい側面と、インディー・ロック、エレクトロニカ、ネオソウルなどジャズの枠に囚われない進化形ジャズ・アーティストらしい側面が上手くバランスしたバラエティに富んだ内容になっています。特にインディー・ロックからの影響が印象的です。また、映画音楽の作曲も学んでいた彼らしくトータルなサウンド創りの巧みさも目立ちます。

ポストGlasper世代を代表する若手ピアニストの溢れんばかりの才能を満喫しましょう。

全曲紹介しときやす。

「Forever Spring」
Kris Bowers作。アルバムのプロローグ。小鳥の囀りと共にKrisの美しいピアノが響きます。

「Wake the Neighbors」
Adam Agati/Kris Bowers作。インディー・ロックやエレクトロなエッセンスが反映された今ジャズらしいサウンドを堪能できます。Jose James『While You Were Sleeping』に通じるものがありますね。Adam Agatiのギターが唸りを上げます。インディー・ロック好きというKris Bowersの嗜好を垣間見ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=-N_8xl7o4io ※ライブ音源

「#TheProtester」
Kris Bowers作。正統派の現代ジャズですが、Jamire Williamsのドラムが新世代らしいですね。終盤のChris TurnerのヴォーカルとRGEでもお馴染みのCasey Benjaminのヴォコーダーの掛け合いもいい感じです。

「Vices and Virtues」
Kris Bowers作。70年代クロスオーヴァー/フュージョン風の仕上がり。浮遊するメロウ・エレピをバックに、サックスが心地好くブロウします。70年代のHerbie Hancockからの影響も感じます。

「Forget-er」
Kris Bowers/Julia Easterlin作。Julia Easterlinの女性ヴォーカルをフィーチャー。Julia Easterlinのコケティッシュかつミステリアスなヴォーカルが少しダビーなサウンドともマッチしています。また、Jamire Williamsの叩き出すロックなビートとエレガントなKris Bowersのコントラストもいいですね。菊地成孔氏が進化形ジャズのリズムを称した"第二次ドラムンベース"的なリズムも聴こえてきます。聴き重ねることに惹かれる演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=vYM2N1NTwxw

「WonderLove」
Kris Bowers作。JTNCでも注目されているヴォーカリストChris Turnerをフィーチャー。ジャズというよりもメロウなネオソウルですね。Chris Turnerの優しいヴォーカルとKrisのメロウ・エレピが実に心地好いですね。

「Forever Wonder」
Kris Bowers作。インタールード的な小曲。メロウ・エレピが浮遊します。

「Drift」
Kris Bowers作。緩急をつけたドラマチックな演奏が素晴らしいですね。鍵盤を巧みに使い分けるKris Bowers、哀愁のメロディをブロウするなホーン・アンサンブル、演奏全体を先導するJamire Williamsの変幻自在のドラムは噛み合ったRobert Glasper以降の進化形ジャズならではの演奏を満喫できます。ここでもインディー・ロックからの影響を感じます。

「First,」
Kris Bowers作。美しいピアノ・ソロによる小曲。

「Ways of Light」
Kris Bowers/Jose James作。ラストはJose Jamesをフィーチャー。Krisのピアノとトレモロ・エレピをバックに、Joseが歌い上げるバラード。Bill Evansの音世界に通じるようなリリカル
で"わびさび"な音世界を堪能できます。
https://www.youtube.com/watch?v=yQnvVjj-42k

ご興味がある方は、Kris Bowersの参加作品もチェックを!

Jose James『No Beginning No End』(2013年)
ノー・ビギニング・ノー・エンド

NEXT Collective『Cover Art』(2013年)
Cover Art

Takuya Kuroda『Rising Son』(2014年)
Rising Son

Jose James『While You Were Sleeping』(2014年)
While You Were Sleeping
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2014年09月13日

Becca Stevens Band『Weightless』

JTNCで"『Black Radio』級の重要作"と言わしめた静かなる衝撃作☆Becca Stevens Band『Weightless』
Weightless
発表年:2011年
ez的ジャンル:エクスペリメンタル・フォーキー系女性ジャズ・ヴォーカル
気分は... :果報は寝て待て!

今回はJazz The New Chapter強化月間の第3弾、Becca Stevens Band『Weightless』(2011年)です。

Jazz The New Chapter(JTNC)の動きの中で最も注目される女性シンガーがBecca Stevensですね。『Jazz The New Chapter 2』でも彼女の特集が大きく組まれていました。

来月にはBecca Stevens Band名義の最新作『Perfect Animal』が発売される予定ですが、その前に『Jazz The New Chapter』の中で"『Black Radio』級の重要作"と大絶賛されていた『Weightless』(2011年)を紹介したいと思います。

Becca Stevensはノースカロライナ出身。地元の芸術学校でクラシック・ギターを専攻した後、N.Y.のニュースクールでジャズ・ヴォーカルを専攻し、現在もN.Y.を拠点に活動しています。

自身のバンドBecca Stevens Band名義で、これまで、『Tea Bye Sea』(2008年)、『Weightless』(2011年)といったアルバムをリリースしています。

また、Gretchen ParlatoRebecca Martinと3人で女性ヴォーカル・ユニットTilleryとしても活動しています。Gretchen ParlatoもJTNCの重要アーティストの1人ですし、Rebecca Martinは、かつての恋人Jesse HarrisとのユニットOnce Blueでも活動していましたね。

また、他アーティストからの注目度も高い彼女は、Travis Sullivan Bjorkestra『Enjoy!』(2008年)、Taylor Eigsti『Daylight at Midnight』(2010年)、Esperanza Spalding『Radio Music Society』 (2012年)、Ambrose Akinmusire『The Imagined Savior Is Far Easier to Paint』(2014年)、Jose James『While You Were Sleeping』 (2014年)、Gideon Van Gelder『Lighthouse』(2014年)といった作品に参加しています。

前述のように、2ndアルバムとなる本作『Weightless』(2011年)は、"『Black Radio』級の重要作"と言わしめたJTNC重要作ですが、何の予備知識もなく聴くと、ジャズというよりはフォーク/カントリー的な印象を受けると思います。また、南米フォルクローレで使われる弦楽器チャランゴを持つジャケが象徴するように南米の"静かなる音楽"やクラシックの影響も随所で聴かれます。

Becca Stevens Bandのメンバーは、Becca Stevens(vo、g、charango、ukulele)、Liam Robinson(accordion、p、harmonium、chamberlin、vo)、Chris Tordini(b、vo)、Jordan Perlson(ds、per)という4名。

前述のチャランゴをはじめ、ウクレレ、アコーディオン、ハーモニウム、チェンバリン等の楽器の音色とBeccaの透明感のあるヴォーカルの組み合わせが実にいいですね。また、Beccaと男性ヴォーカル陣との美しいハーモニーも素晴らしいですね。ある意味、このヴォーカル・ワークを楽しむアルバムとも言えます。

カヴァー4曲以外はBecca Stevensのオリジナルです。カヴァー4曲がThe SmithsSealAnimal CollectiveIron & Wineというのも興味深いです。このあたりのカヴァー・センスはJTNCらしいですよね。

Norah Jonesあたりと同じく、サウンドはジャズではなくとも、その根っ子にはジャズがあるといった感じですね。

Jazz The New Chapterに囚われずとも、十分楽しめる作品です。
何より、今日消費して明日には消えるような曲が氾濫するUS音楽シーンで、こんなグッド・ミュージックが存在し、それが先鋭的なミュージシャンから絶大な支持を得ているというのが嬉しいですね。

その理由は、彼女の創り出す音世界が単にトラディショナルなものではなく、トラディショナルな楽器によるエクスペリメンタル・ミュージックだからだと思います。

静かなる衝撃作を満喫しましょう。

全曲紹介しときやす。

「Weightless」
本作の持つ素晴らしい音世界が凝縮されたタイトル曲。静かにスタートした曲は、知らぬ間に力強い音に・・・。Beccaをはじめとするハーモニーがサウンドと見事に調和している感じがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=qk_qfA9YIxg

「I'll Notice」
素晴らしいハーモニーと共にスタートする味わい深いフォーキー・チューン。ウクレレをこんな感じで聴かせてくれるあたりにBeccaのセンスを感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=ymq4VIDEeBc ※ライブ音源

「There is a Light That Never Goes Out」
The Smithsのカヴァー(Morrissey/Johnny Marr作)。Beccaのようなアーティストが年代、ジャンル的に何故The Smithsをカヴァーするのか、という点に興味が尽きません。哀愁のメロディを切なく歌い上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=-lNeag92Jy4 ※ライブ音源

「Traveler's Blessing」
チャランゴとアコーディオンの音色をバックに、素晴らしいヴォーカル・ワークを聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=drKBFDbha_o

「The Riddle」
フォーキーな雰囲気の中にもジャズを感じるヴォーカル&サウンドがあるのがいいですね。ジワジワと盛り上がってきます。

「Kiss From A Rose」
Seal、1995年の大ヒット曲をカヴァー。このカヴァーも意外といえば意外ですね。メリハリの効いた哀愁フォーキーの「Kiss From A Rose」を聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=Jxkw9NBXD_c ※ライブ音源

「How To Love」
アルバムで一番ジャズっぽいかもしれませんね。ブルージーなサウンドをバックにBeccaが少し気怠いヴォーカルを聴かせてくれます。

「Canyon Dust」
南米フォルクローレ風の仕上がり。思わず一緒にハンドクラップしてしまいます。BeccaのウクレレとLiam Robinsonのアコーディオンの奏でる音色が抜群にいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=vsCSZEKEvt0 ※ライブ音源

「My Girls」
Animal Collectiveのカヴァー(Panda Bear作)。オリジナルは『Merriweather Post Pavilion』(2009年)に収録されています。ネオ・サイケデリックなエクスペリメンタル・ミュージックをトラディショナルな楽器で見事にカヴァーしてしまう本曲にBecca Stevensというアーティストの凄みを感じました。これぞトラディショナル楽器によるエクスペリメンタル・ミュージック!

「No More」
Becca Stevens/William Stevens作。この曲はGretchen Parlato、Rebecca MartinとのユニットTilleryのレパートリーにもなっていますね。ドリーミーに浮遊する音空間は南米の"静かなる音楽"と一緒に聴きたくなります。

「You Can Fight」
見事なア・カペラと共に始まる小粋なフォーキー・チューン。シンプルな分、歌の良さ、曲の良さが引き立ちます。

「Each Coming Night」
ラストはIron & Wine(Samuel Beam)のカヴァー。オリジナルは『Our Endless Numbered Days』(2004年)に収録されています。このセレクトは本作にフィットしていますね。オリジナルのセピアなフォーキー感を、もう少しカラフルにした雰囲気のカヴァーに仕上がっています。

来月発売予定の新作『Perfect Animal』も楽しみですね!

ご興味がある方は、Becca Stevensが客演しているアルバムもチェックを!
いずれもJTNCの重要作です。

Travis Sullivan Bjorkestra『Enjoy!』(2008年)
Enjoy

Taylor Eigsti『Daylight at Midnight』(2010年)
Daylight at Midnight

Esperanza Spalding『Radio Music Society』 (2012年)
Radio Music Society

Ambrose Akinmusire『The Imagined Savior Is Far Easier to Paint』(2014年)
Imagined Savior Is Far Easier to Paint

Jose James『While You Were Sleeping』 (2014年)
While You Were Sleeping

Gideon Van Gelder『Lighthouse』(2014年)
ライトハウス
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2014年09月12日

The Love Exchange『The Love Exchange』

ティーン女性ヴォーカルを擁するサイケデリック・ロック☆The Love Exchange『The Love Exchange』
Love Exchange
発表年:1968年
ez的ジャンル:ティーン女性ヴォーカル系サイケデリック・ロック
気分は... :失われた時を求めて ・・・

今回は60年代後半のサイケデリック・ロック作品からThe Love Exchange『The Love Exchange』(1968年)です。

The Love Exchangeは1967年にL.A.で結成されたグループ。

Dan Altchuler(g)を中心としたMike Joyce(b)、Jeff Barnett(ds)、Fred Barnett(g)、Walter Flannery(org)という5名に、当時16歳の女性ヴォーカリストBonnie Blunt(vo、tbr)を加えた6人組。女性ヴォーカルの追加は彼らを見出したプロデューサーLarry Goldbergの提案だったようです。

1967年にシングル「Swallow The Sun」でデビューし、1968年にはアルバム『The Love Exchange』をリリースしています。しかし、今後の方向性をめぐりマネジャー、メンバー間で分裂が起こり、バンドは空中分解してしまいます。

ジャケのイメージやティーンの女性ヴォーカリストというメンバー構成から、バブルガム・ポップのような音を想像する人もいるかもしれませんが、思いきりサイケな内容になっています。サウンド的にはJefferson AirplaneDoorsあたりがお好きな人はフィットするのでは?

紅一点のBonnie Bluntの華のあるヴォーカルは、キュートながらも過度にガ―リーではないのがいい感じです。

「Get Out Of My Life Woman」「Swallow The Sun」「Flying High」「Meadow Memory」「Saturday Night Flight 505」「Give Up On Love」という前半6曲に本作の魅力が凝縮されていると思います。

サイケ・サウンドとキュート・ヴォーカルの組み合わせはなかなかハマります。

全曲紹介しときやす。

「Get Out Of My Life Woman」
Allen Toussaint作。Lee Dorseyが1966年にヒットさせた曲ですが、Solomon Burke、The Butterfield Blues Band、The Leaves、The Comin' Generation、The Blues Effort、The Mad Lads、The Kingsmen、Cads、Iron Butterfly、Jimi Hendrix等もカヴァーしている名曲です。R&Bテイストのサイケ・ロック・サウンドとBonnie Bluntのキュート・ヴォーカルの組み合わせが独特の雰囲気を醸し出しています。
https://www.youtube.com/watch?v=2h_3-loubLQ

「Swallow The Sun」
Jack Merrill作。60年代の名曲を集めた人気コンピ『Nuggets Volume 10: Folk Rock』にも収録されていた楽曲です。グルーヴィーなオルガンとThe Mamas & the Papasライクなヴォーカル・ワークが印象的です。The Peanut Butter Conspiracyが歌詞を変え、「Dark On You Now」のタイトルでカヴァーしています。
https://www.youtube.com/watch?v=y5l1BfTlrhA

「Flying High」
Larry Goldberg作。スピーディーに駆け抜けるサイケ・チューン。Jefferson Airplaneなんかもそうですが、女性ヴォーカルがフロントにいると華があっていいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=d4Hu1jbkWns

「Meadow Memory」
Larry Goldberg/Mark Andrews作。Doorsあたりと一緒に聴きたくなる妖しげな雰囲気が漂います。Dan Altchulerの12弦ギターがサイケに響きます。
https://www.youtube.com/watch?v=h_3qXlgn7RM

「Saturday Night Flight 505」
グルーヴィー&サイケなオルガンがサイケ・ワールドへ誘うトリップ感Maxな演奏です。10代の女性ヴォーカルがこんなサウンドをバックに歌っていていいのでしょうか?
https://www.youtube.com/watch?v=5tpzzw6-Yd4

「Give Up On Love」
Kenny Smith作。Bonnie Bluntのヴォーカルを前面に押し出した仕上がり。ロッキンな中にポップなエッセンスが上手く織り交ぜられています。
https://www.youtube.com/watch?v=VlbEBD00khg

「Two-O-Tango」
Walter Flannery作。哀愁のメロディをBonnieを歌い上げますが、緩急でアクセントをつけています。個人的には緩めずアクセル全開の方が良かった気がしますが・・・
https://www.youtube.com/watch?v=kVIZInrmkMQ

「Ballad Of A Sad Man」
Mike Joyce作。アシッド・フォーク調の仕上がり。他の曲に比べると少し退屈かも?
https://www.youtube.com/watch?v=o5eeVKFWp88

「Nothing At All」
Danny Hutton/Larry Goldberg作。後にThree Dog Nightを結成するDanny Huttonがソングライティングに参加しています。ソウルフルな味わいがなかなかいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=CbfDwRgCKk4

「Mrs. Ansel Griffith」
M. Cooper作。ラストは哀愁モードで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=j781MjdcL4w

CDには「Boston」「Live A Little」「Step To The Rear」「Get Out Of My Life Woman (alternatre take)」「Meadow Memory (alternatre take)」「Swallow The Sun (alternatre take)」の6曲はボーナス・トラックとして追加収録されています。
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2014年09月11日

Eddie Kendricks『Goin' Up In Smoke』

元Temptationsのリード・シンガーによるフィリー詣作品☆Eddie Kendricks『Goin' Up In Smoke』
ゴーイン・アップ・イン・スモーク
発表年:1976年
ez的ジャンル:元Temptations系フィリー・ダンサー
気分は... :今年のイルカ軍団は違う!

最近の僕の音楽嗜好でいえば、本当は毎日でもJazz The New Chapter系の作品を取り上げたいのですが、それでは新旧、ジャンルを問わずという当ブログのコンセプトに反するので、今日はJazz The New Chapterから離れたいと思います。

今回は元The Temptationsのリード・シンガーEddie Kendricksが1976年にリリースした『Goin' Up In Smoke』です。

Eddie Kendricksは1939年アラバマ生まれの男性ソウル・シンガー。

60〜70年代のMotown Recordsを代表する男性ソウル・グループThe Temptationsのメンバーとして、「The Way You Do The Things You Do」「Get Ready」「Just My Imagination」等のヒット曲を歌い、大成功を納めます。

1971年のソロ転向後も、Motownから『All By Myself』(1971年)、『People ... Hold On』(1972年)、『Eddie Kendricks』(1973年)、『Boogie Down!』(1974年)、『For You』(1974年)、『The Hit Man』(1975年)、『He's A Friend』(1975年)、『Goin' Up In Smoke』(1976年)、『Slick』(1977年)とコンスタントにアルバムをリリースしています。

Motownを離れた後も作品をリリースし続けますが、肺がんのため1992年に他界しました。

僕自身は60年代男性ソウル・グループはベスト盤程度で済ませてしまうタイプであり、テンプスのファンというわけでもなく、Eddie Kendricksのソロも大して聴いたことがないのですが、本作『Goin' Up In Smoke』(1976年)は僕のようなリスナーでも楽しめる1枚です。

その最大の要因は、Norman Harrisがプロデュースし、シグマ・サウンドで録音したフィリー・ダンサー作品であるという点です。特に、ハウスの名グループTen Cityもカヴァーしたガラージ・クラシック「Goin' Up in Smoke」の収録が目玉ですね。僕の場合、Eddie KendricksのオリジナルよりもTen Cityのカヴァーを先に聴いていたので、そのオリジナルが収録されている本作に惹かれました。

前作『He's A Friend』(1975年)からNorman Harrisがプロデュースを手掛け、アルバムがR&Bチャート第3位、タイトル曲がR&Bシングル・チャート第2位となり、成功を収めました。それを受けて、引き続きフィリー詣に行き、フィリー路線を推し進めたのが本作です。

レコーディングにはNorman Harris(g)、Vincent Montana, Jr.(vibe)、Ron Baker(b)、Earl Young(ds)、Bobby Eli(g)、Ron Kersey(key)、Larry Washington(congas)をはじめとするフィリー・サウンドを支えた名うてのスタジオ・ミュージシャン達がバックを務めています。

目玉は「Goin' Up in Smoke」ですが、「Sweet Tenderoni」「Don't You Want Light」「Music Man」「To You From Me」あたりも僕のオススメです。

Motownを代表する男性ソウル・シンガーEddie KendricksがP.I.Rを代表するスタジオ・ミュージシャン達と創り上げたフィリー・ダンサーという点でも興味深い1枚ですね。

全曲紹介しときやす。

「Goin' Up in Smoke」
Allan Felder/Norman Harris作。何といってもこのタイトル曲が本作のハイライトですね。シングルにもなりました。チャート・アクションはあまり振るいませんでしたが、躍動するフィリー・ダンサーの出来栄えは素晴らしく、Eddieのファルセット・ヴォーカルも冴え渡っています。前述のようにTen Cityがハウス・カヴァーしたことも手伝い、ガラージ・クラシックとしての再評価も高い1曲です。(僕の大嫌いな)Mariah Careyが最新作収録の「Meteorite」でサンプリングしています。
https://www.youtube.com/watch?v=P-kCL-p05eM

「The Newness Is Gone」
Allan Felder/Norman Harris作。切ないファルセット・ヴォーカルが印象的な哀愁バラードはAkhenaton「Bad Boys De Marseille (Part 2)」、Nas「Poppa Was a Playa」、College Boyz「Victim of the Ghetto」、Dilated Peoples feat. Prodigy「Thieves」のサンプリング・ソースにもなっています。
https://www.youtube.com/watch?v=iAP92RTtBgI

「Sweet Tenderoni」
Allan Felder/Norman Harris作。Eddieのファルセットが栄えるスウィートなフィリー・ダンサー。聴いているだけで晴れモードになります。
https://www.youtube.com/watch?v=Op9K6LhXSdQ

「Born Again」
Allan Felder/Norman Harris作。パーカッシヴに躍動するダンサブルなディスコ・チューン。シングルにもなりましたが、他の楽曲に比べると、少しモッサリしているかな?
https://www.youtube.com/watch?v=0N5TYzKgQMY

「Don't You Want Light」
Brian Evans/Donald Harmon/John Faison作。軽快なメロウ・グルーヴ。フリーソウル好きの人が気に入りそうな1曲ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=ITYM-BjTbdQ

「Music Man」
Jerry Akines/Johnny Bellmon/Reginald Turner/Victor Drayton作。Eddieのファルセット・ヴォーカルの魅力を堪能できるモダン・ソウル。聴けば聴くほど好きになります。
https://www.youtube.com/watch?v=wY85RYq9Cjg

「Thanks for the Memories」
Bruce Gray/Philip Hurtt作。フィリーらしいドラマティックなアレンジを堪能できます。
https://www.youtube.com/watch?v=FeAawXoWMh0

「To You From Me」
Bruce Gray/Frank Snowdon/Mike Holden/T.G. Conway作。今聴く分には、このモダン・ソウルなメロウ・ダンサーはかなり魅力的だと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=Joyaf_Or8Zs

「Don't Put Off Till Tomorrow」
Allan Felder/Norman Harris/Ron Kersey作。小粋なフィリー・ダンサーって雰囲気がいいですね。

「Skeleton in Your Closet」
Jerry Akines/Johnny Bellmon/Reginald Turner/Victor Drayton作。短めの曲ながらも、実にキャッチーでEddieのファルセットの魅力を上手く引き出していると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=wpw_vN7wCZ0

Eddie Kendricksのソロ作品ってCD化があまり進んでいないんですね。何故でしょう?

遅くなってしまいましたが、NFL我がドルフィンズの開幕戦に触れたいと思います。

正直、ホームとはいえ同じ東地区の強豪ペイトリオッツに勝利するのは難しいと思っていました。

僕は他のNFL開幕試合をTV観戦しながら、ネットの速報でドルフィンズ戦の経過をチェックしていましたが、前半を終えて10対20でペイトリオッツでリード。「やはり、ペイトリオッツには歯が立たないのかな」と半ば諦めモードでした。

しかし、後半の速報をチェックしていると、ドルフィンズが得点を重ねるなか、ペイトリオッツは20点から動かないまま・・・終わってみれば、33対20、しかも後半は23対0という完璧な内容でドルフィンズが勝利しました。

ラン攻撃が機能したことと、強豪ペイトリオッツ相手に後半完封した守備陣の頑張りを称賛したいですね。

今シーズンはイルカ軍団が久々に覚醒しそうな予感がします。第2週もビルズを破り、連勝スタートとなれば勢いに乗れそうな気がします。

楽しみ、楽しみ!
posted by ez at 04:48| Comment(2) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月10日

Erimaj『Conflict Of A Man』

新世代ジャズ・ドラマーJamire Williams率いるユニットのデビュー作☆Erimaj『Conflict Of A Man』
CONFLICT OF A MAN
発表年:2012年
ez的ジャンル:NEXT Collective系新世代ジャズ・ドラマー
気分は... :これはジャズ・アルバムではない・・・

今回は注目の新世代ジャズ・ドラマーJamire Williamsが率いるユニットErimajの1stアルバム『Conflict Of A Man』(2012年)です。

これまでデジタル配信のみでのリリースでしたが、今年になりCD化されました。

昨日から勝手に開始したJazz The New Chapter強化月間の第2弾です。

昨日は進化するジャズに多大な影響を与えた故J Dillaを代表する1枚として、Slum Village『Fantastic, Vol. 2』(2000年)を紹介しました。

今日の主役であるJamire Williamsは1984年生まれ。まさにJ Dillaを聴いて育ってきた新世代ドラマーです。

Kenny GarrettDr. Lonnie Smithのバンドで実力をつけたJamireは、同世代である気鋭のトランぺッターChristian Scottのリーダー作へのレコーディング参加で大いに刺激を受けます。

そして、自身のユニットErimaj(ユニット名はJamireの綴りを逆にしたもの)を結成したり、Ben Williams(b)、Matthew Stevens(g)、Gerald Clayton(p、el-p)、Kris Bowers(el-p)、Christian Scott(tp)、Logan Richardson(as、fl)、Walter Smith III(ts、cla)による若手ジャズメンのオールスター・ユニットNEXT Collectiveへ参加しています。

先日紹介したJazz The New Chapterの流れを汲む新作ジャズGideon Van Gelder『Lighthouse』でもドラムを叩いていたのはJamire Williamsであり、大いに存在感を示していました。

2012年にリリースされたErimajのデビュー作となる本作『Conflict Of A Man』は、USのiTunesジャズ・チャートで第1位を獲得しています。さらに日本では今年『Jazz The New Chapter』発売後にCD化が実現し、作品への注目が高まっています。

レコーディングには、Jamire Williams(ds)、Matthew Stevens(g)、Corey King(tb)、Vincente Archer(b)、Chris Turner(vo)、Jason Moran(p)、John Ellis(sax)、Burniss Earl Travis(b)、Tomoko Omura(violin)、Maria Jeffers(cello)といったメンバーが参加しています。。

Matthew StevensはJamireと同じくNEXT Collectiveのメンバーです。Vincente ArcherはThe Robert Glasper Trioのメンバーとして、『Double Booked』(2009年)までRobert Glasperを支えていたベーシストですね。Corey Kingは当ブログでも紹介したEsperanza Spalding『Radio Music Society』(2012年)、Jose James『No Beginning No End』(2013年)、Derrick Hodge『Live Today』(2013年)といったJazz The New Chapter重要作に参加しています。話題のネオソウル/ジャズ・シンガーChris Turnerや、天才ピアニストJason Moranは『Jazz The New Chapter』でも作品が取り上げられている注目のミュージシャンです。また、

アルバムの内容は、ジャズの枠に囚われないオルタナティヴ・ロック、ソウル、Hip-Hopのエッセンスも取り込んだ演奏を満喫できます。また、J Dillaのカヴァーも収録されており、まさにJazz The New Chapterの内容に呼応したかのような音を聴くことができます。特にオルタナ・ロックのエッセンスを上手く織り交ぜているのが特長だと思います。

Jamire本人が"これはジャズ・アルバムではない"と語っているように、ジャズ・ミュージシャンによるジャズに囚われないサウンドを楽しむアルバムだと思います。

その意味では普段ジャズを聴かない人も楽しめる1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Unrest (Journey to the Land of Milk & Honey)」
Jamire Williams作。ジャズに囚われないサウンドを目指すErimajらしいオープニング。ワールド・ジャズ風のミステリアスな雰囲気が印象的です。

「Black Super Hero Theme Song」
Corey King作。Jamireの新世代ドラマーらしいプレイを満喫できる曲です。やはり、進化するジャズの肝はドラムであることを実感できます。格好良い!
https://www.youtube.com/watch?v=LDilBhJ3bOg

「This Night, This Song」
The Tony Williams Lifetimeのカヴァー。オリジナルは『Turn It Over』(1970年)に収録されています。JamireがTony Williamsをカヴァーするのはわかりますが、その中でもスピリチュアルなヴォーカル曲「This Night, This Song」を取り上げるというのが意外ですね。オリジナルを受け継ぐミステリアス&スピリチュアルな雰囲気ですが、終盤にはJamireによる人力ドラムンベース調のドラミングを聴くことができます。Chris Turnerのファルセット・ヴォーカルやJason Moranの美しいピアノも効果的です。

「The Day the Sun Rose Twice」
Jamire Williams/Corey King作。タイトルを見ればわかる通り、前曲からの流れ汲んで夜モードから夜明けモードへシフトしています。Robert Glasper Experimentに通じる雰囲気ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=iToXlWLt4T4

「Nothing Like This」
話題のJ Dillaのカヴァー。オリジナルは『Ruff Draft』に収録されています。Jamire自身"誰もJ Dillaを超えることはできない"と述べるほど、やはりJ Dillaは偉大なんですね。J Dillaの遺志を受け継ぐビートを叩き出すJamireのプレイに注目です。
https://www.youtube.com/watch?v=Iw3iSZusuCs

「Plants」
Jamire Williams/Corey King作。新世代ならではのインタープレイでエキサイトさせてくれます。リミットの外れたJamireのプレイが凄いです!
https://www.youtube.com/watch?v=-XbfuGQE40k

「Conflict of a Man」
Alan Hampton/Jamire Williams/Corey King作。『Jazz The New Chapter 2』でも大きく取り上げられていたAlan Hamptonがソングライティングで参加しています。Chris Turnerの哀愁ヴォーカルをフィーチャーしたオルタナ感のあるサウンドは、最近のJose Jamesあたりにも通じるものはがありますね。
https://www.youtube.com/watch?v=3TvEh4mw5tE

「Social Life」
Jamire Williams/Corey King作。Chris Turnerのヴォーカルによる美しく切ない哀愁のソウル・チューンは、もはやジャズ・ユニットという雰囲気ではありませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=qYVHvVrFaTc

「Choosing Sides」
Matthew Stevens作。ラストもオルタナ感のある演奏で締め括ってくれます。このあたりの何でもアリな感じがErimaj最大の魅力かもしれませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=oYihWZVMFA0

ご興味がある方は、Jamire Williams参加のJazz The New Chapter重要作をチェックを!

Christian Scott『Yesterday You Said Tomorrow』(2010年)
Yesterday You Said Tomorrow

Christian Scott『Christian Atunde Adjuah』(2012年)
Christian Atunde Adjuah

NEXT Collective『Cover Art』(2013年)
Cover Art
posted by ez at 10:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする