発表年:2000年
ez的ジャンル:J Dilla系Hip-Hop
気分は... :全米オープン決勝、イルカ軍団快勝、『Jazz The New Chapter 2』・・・
テニスの全米オープン決勝、NFL開幕戦でドルフィンズが白星スタート、話題の音楽ムック本の続編『Jazz The New Chapter 2』の発売・・・今日は書きたいことが山ほどあるのですが・・・
とりあえず『Jazz The New Chapter 2』から・・・
新しいジャズの潮流を紐解いた話題の音楽ムック本『Jazz The New Chapter』の続編『Jazz The New Chapter 2』が昨日発売となりました。
『Jazz The New Chapter 2』
『Jazz The New Chapter〜ロバート・グラスパーから広がる現代ジャズの地平』
『Jazz The New Chapter』では、Hip-Hop、ネオソウル、LAビート・ミュージック、インディー・ロック、ポストロック、ワールドミュージック等のさまざまなジャンルと融合するRobert Glasper以降の"進化するジャズ"の地図が示されました。
『Jazz The New Chapter 2』は、パート1の追加・補完的な内容であり、ご興味がある方は2冊セットで読むと楽しいと思います。僕も早速購入し、ざっと目を通しましたがTaylor McFerrin『Early Riser』、Gideon Van Gelder『Lighthouse』、Richard Spaven『Whole Other』といった当ブログで紹介した新作ジャズ作品がきっちりフォローされておりニンマリしています(笑)
新作以外にもJazz The New Chapterの流れで紹介したい作品が我が家のCD棚にかなり溜まってきているので、今月はJazz The New Chapter強化月間として、関連する作品を集中的に紹介したいと思います。と言っても、ジャズ作品ばかり紹介するわけではなく、進化するジャズに影響を与えた作品や、ジャンル融合的な作品も紹介していきます。
まず第1弾として、"進化するジャズ"に大きな影響を与えたHip-HopクラシックSlum Village『Fantastic, Vol. 2』(2000年)です。
Slum Villageは、ご存知の通り故J Dilla(1974-2006年)が在籍していたHip-Hopグループです。J Dilla(当時はJay Dee)がT3、Baatinという高校の仲間と1988年にデトロイトで結成しました。
A Tribe Called QuestのQ-Tipと出会い、その才能を認められたJay Deeは、The Pharcyde『Labcabincalifornia』(1995年)のプロデュースを皮切りに、プロダクション・チームThe Ummahでの活動などで、その名がシーンで知られるようになります。さらに、2000年代のR&B/Hip-Hopの流れを決定づけた音楽コレクティヴThe Soulquariansのメンバーとなり、絶頂期を迎えることになります。
その傍らでSlum Villageとして『Fan-Tas-Tic (Vol. 1)』(1996年)、『Fantastic, Vol. 2』(2000年)といったアルバムをリリースしています。その後、ソロ活動に専念するためJ Dillaはグループを脱退しています。
『Jazz The New Chapter』に話を戻すと、"進化するジャズ"の中心人物は『Black Radio』(2012年)で音楽シーンに衝撃を与えたRobert Glasperですが、そのGlasperをはじめとする進化形ジャズ・ミュージシャンに大きな影響を与えたのがJ Dillaです。
極端な言い方をすれば、J Dillaのトラックを聴いたことがない人に、"進化するジャズ"の面白さは理解できないというのが『Jazz The New Chapter』のスタンスですからね。
『Jazz The New Chapter』には、J Dillaを代表する1枚として、彼もプロデュースで参加したCommon『Like Water For Chocolate』(2000年)が挙げられていました。
J Dilla作品を未聴の方がいれば、『Like Water For Chocolate』あたりから入るのもいいかもしれませんが、そこをパスしたならば、次の作品としてチェックして欲しいのがSlum Village名義の本作『Fantastic, Vol. 2』(2000年)です。
やはり、J DillaのホームグループであるSlum Villageの作品をチェックしておきたいですよね。『Like Water For Chocolate』以上に、J Dillaの独自性を満喫できるはずだと思います。
1997〜1998年頃にレコーディングされた本作には、Q-Tip、D'AngeloといったThe Soulquariansの仲間や、Pete Rock、Jazzy Jeff、Busta Rhymes、Kuruptといったゲストを迎えています。
何の予備知識なしに聴いても、J Dillaという不世出の天才が創り上げたHip-Hopの1つの金字塔的作品として楽しめるはずです。
さらにRobert Glasperの諸作を聴いたうえで、Jazz The New Chapter的な観点から聴くと、さらに楽しみが増す1枚だと思います。
全曲紹介しときやす。
「Intro」
時計の目覚ましの音と共にアルバムはスタートします。終盤の声ネタはA Tribe Called Quest「Butter」です。
https://www.youtube.com/watch?v=Sp0q-LqBR94
「Conant Gardens」
Little Beaver「A Tribute to Wes」ネタのベース・ラインのループを使いながら、J Dillaらしいビートを響かせます。A Tribe Called Quest「Award Tour」の声ネタ、終盤には『Fan-Tas-Tic (Vol. 1)』収録の「Keep It on (This Beat)」も声ネタもサンプリングされています(これ自体James Brown「Make It Funky」ネタですが)。
https://www.youtube.com/watch?v=rNW32tg-mbU
「I Don't Know」
Jazzy JeffのスクラッチをフィーチャーしたHip-Hopクラシック。J Dillaらしい独自の揺らぎのあるビートはBaden Powell「E Isso Ai」ネタのメロウなループとよくフィットして実に心地好いですね。Jazzy Jeffの擦りもいい感じです。James Brownの声ネタが配されています。
https://www.youtube.com/watch?v=rXd5ZXTjStA
「Jealousy」
Bill Evans「Are You All the Things」のエレピ・ネタが心地好く弾みます。
https://www.youtube.com/watch?v=rkdVhMIxkF4
「Climax (Girl Shit)」
Isao Tomita「Clair De Lune」ネタの浮遊するメロウ・トラックが絶品です。揺らぎのあるビートの威力発揮ですね。Steve Miller Band「Space Intro」もサンプリングしています。
https://www.youtube.com/watch?v=-p16_e_x7c4
「Hold Tight」
Q-Tipをフィーチャー。KC & the Sunshine Band「What Makes You Happy」ネタのループと共にスタート。さらにはThe Cannonball Adderley Quintet「Experience in E」ネタのサンプリングがミステリアスな雰囲気を醸し出します。J DillaとQ-Tipとのタッグは、さらにQ-Tipの初ソロ『Amplified』へと続いていきます。
https://www.youtube.com/watch?v=3FQLgD_8wcs
「Tell Me」
D'Angeloをフィーチャー。D'Angeloの持つグルーヴ感覚とJ Dillaの持つビート感覚が融合したThe Soulquarians屈指のコラボですね。
https://www.youtube.com/watch?v=q4NikHEU6Ww
「What It's All About」
Busta Rhymesをフィーチャー。Alicia Myers「Don't Stop What You're Doin'」ネタのメロウ・ダンサーな上モノ、J Dillaのビート、Bustaのダミ声フロウの組み合わせは実にキャッチーです。
https://www.youtube.com/watch?v=mKvSQzwlJuQ
「Forth and Back」
Kuruptをフィーチャー。Kuruptの客演は少し意外な気もします。Tom Browne「Funkin' For Jamaica」ネタの重心が低くアブストラクト感のあるトラックが印象的です。Kool & the Gang「Jungle Boogie」の声ネタやHerbie Hancock「I Thought It Was You」、Crown Heights Affair「Far Out」ネタも軽く入っています。
https://www.youtube.com/watch?v=znQxLCp-Rsk
「Untitled/Fantastic」
前半の「Untitled」は何の予備知識もなく聴くと、ATCQの楽曲と思い込んでしまいそうですね。
https://www.youtube.com/watch?v=0BOJH-G0T3I
当ブログでも度々その名前が登場すると同時に、Build An ArkやFlying Lotus等の作品に参加し、『Jazz The New Chapter 2』でも特集が組まれていた弦楽器奏者Miguel Atwood-Fergusonがオーケストラを従え、本曲をカヴァーしています。これ自体が進化するジャズにおける本作やJ Dillaの影響力を象徴していますね。
「Fall in Love」
Gap Mangione「Diana in the Autumn Wind」をサンプリングするあたりにJ Dillaのセンスと音楽IQの高さを感じます。ビートはIron Butterfly「Soldier in Our Town」ネタ。
https://www.youtube.com/watch?v=_Mjco9g5dCY
「Get Dis Money」
Jazz The New Chapter的なセレクトとしてチェックしておきたいトラックですね。Herbie Hancock「Come Running to Me」をサンプリングしています。Robert Glasperが、J Dillaと同様の影響力を語っていたHerbie Hancock。その両者がクロスする本曲をJazz The New Chapter的な観点から聴くのも楽しいのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=F-oLqMwzvBY
「Raise It Up」
Thomas Bangalter「Extra Dry」ネタのループによるミニマル感が興味深いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=eATZrHwNW7w
「Once Upon a Time」
Pete Rockをフィーチャー。Dee Dee Bridgewater「Afro Blue」をサンプリング。Jazz The New Chapter的な観点に立てば、J DillaがDee Dee Bridgewater「Afro Blue」をサンプリングし、J Dillaから影響を受けたRobert Glasperが『Black Radio』で「Afro Blue」をカヴァーするというソング・サイクルは実に興味深いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=hjhGGvJXeaA
「Players」
The Singers Unlimited「Clair」の声ネタを巧みに使った浮遊トラックが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=xqylSGpyhOI
「Eyes Up」
ブリブリとうねるファンキー・トラックが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=JDHX67ovBd0
「2U4U」
D'Angelo「Jonz In My Bonz」をサンプリング。J DillaがD'Angeloネタを使うのは少し反則技な気もしますが(笑)、究極に心地好いユラユラ浮遊するグルーヴを堪能できます。夢心地気分です。
https://www.youtube.com/watch?v=L_vNfcaX8oc
「CB4」
今では聴き慣れた乾いたビートと淡々としたフロウの組み合わせですが、それもJ Dillaのおかげですね。
https://www.youtube.com/watch?v=vbh-sopLNWA
「Go Ladies」
本編のラストは、Don Blackman「Holding You, Loving You」ネタの浮遊トラックで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=x5f4uhkDAK8
「Thelonius」
CDの隠れトラック。Common『Like Water For Chocolate』(2000年)収録曲としてお馴染みですね。『Jazz The New Chapter』の中でもRobert Glasperが影響を受けた楽曲として本曲が挙げられていました。『Like Water For Chocolate』であれば、「The Light」、「The 6th Sense」あたりのHip-Hopクラシックに耳を奪われる人が多いにも関わらず、「Thelonius」に惹かれるあたりがRobert Glasperの感性なのかもしれませんね。George Duke「Vulcan Mind Probe」をサンプリング。
https://www.youtube.com/watch?v=7mvlaULr2Xs
『Fan-Tas-Tic (Vol. 1)』やJ Dillaのソロ作もチェックを!
『Fan-Tas-Tic (Vol. 1)』(1997年 ※2006年に再発)
Jay Dee『Welcome 2 Detroit』(2001年)
Jaylib『Champion Sound』(2003年)
J Dilla『Donuts』(2006年)
J Dilla『The Shining』(2006年)
Jay Dee『Jay Deelicious: The Delicious Vinyl Years』(2007年)
J Dilla『Jay Stay Paid』(2009年)
テニスの全米オープン決勝、残念ながら錦織選手はストレート負け!でも今日は彼が悪かったというより、相手のチリッチが生涯最高のプレーと呼べるほど良すぎた!という感じでしたね。錦織選手の今大会の見事な戦いぶりに拍手を送りましょう!
NFL開幕戦でドルフィンズが白星スタート・・・これについては明日にでも書きます。