2014年09月20日

Mos Def『Black On Both Sides』

知的リリシストによるHip-Hopクラシック☆Mos Def『Black On Both Sides』
Black on Both Sides
発表年:1999年
ez的ジャンル:知的リリシスト系Hip-Hop
気分は... :Mos DefとGlasper・・・

今回はJazz The New Chapter(JTNC)強化月間の第7弾、Hip-HopアーティストMos Defの1stソロ『Black On Both Sides』(1999年)です。

1973年N.Y.ブルックリン生まれのHip-HopアーティストMos Def(本名:Dante Terrel Smith)に関しては、Talib KweliとのユニットBlack Starのアルバム『Mos Def & Talib Kweli are Black Star』(1998年)を紹介済みです。

『Jazz The New Chapter』の中で、Robert Glasper周辺作品の中の1枚として紹介されていたのが、本作『Black On Both Sides』(1999年)です。

Robert Glasperは、ニュースクール大学時代の仲間であったBilalを介して、CommonErykah BaduQ-Tip等のThe Soulquariansメンバーとの交流を深めていきますが、そんな時期にMos Defとも出会っています。

Robert Glasper Experiment結成のきっかけはMos Defとのセッションであり、その意味でもMos DefとGlasperおよびExperimentメンバーとは深い縁で結び付いています。勿論、『Double Booked』(2009年)、『Black Radio』(2012年)といったExperiment作品にも参加しています。

本作『Black On Both Sides』(1999年)は、Mos Defの1stソロであり、USアンダーグラウンドHip-Hopの名門レーベルRawkusからリリースされました。

今回はJTNCの文脈で紹介していますが、そうしたことに関わらず"知的リリシスト"によるコンシャスHip-Hop名盤として評価の高い1枚ですね。

アルバムには、Mos Def以外に、Diamond DGe-ology88-KeysDJ PremierAyatollahD-Prosper、元A Tribe Called QuestAli Shaheed MuhammadThe BeatnutsPsycho LesDJ Etch-A-SketchDavid Kennedyといったプロデューサー陣が起用され、Busta RhymesTalib KweliVinia MojicaQ-Tipといったゲストが参加しています。また、ベテラン・キーボード奏者Weldon Irvineが数曲で参加しているのもキーポイントです。

まずはMos Def自身の言葉の力に着目すべきですが、彼自身がベース、ドラム、パーカッション、ヴィヴラフォンを演奏している曲もあり、サウンドへのこだわりにも注目です。

聴き応え十分の全17曲です。

全曲紹介しときやす。

「Fear Not of Man」
Mos Defプロデュース。♪最も慈悲深く、最も愛情深く・・・と始まるオープニング。Fela Kuti「Fear Not for Man」をサンプリングしたトラックにのって、Mos DefがHip-Hopの進むべき姿について意思表明します。Weldon Irvineのキーボードや途中で入るKraftwerk「Morgenspaziergang」ネタの電子音も印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=pY-ijGHx-mE

「Hip Hop」
Diamond D,/Mos Defプロデュース。David Axelrod「The Warnings (Part II)」、Stanley Clarke「Slow Dance」ネタの格好良いトラックにのって、自らがHip-Hopを牽引していくという力強いリリックが歌われます。Spoonie Gee「Spoonin' Rap」、Eric B. & Rakim「Paid in Full」、O.C.「Time's Up」のネタも散りばめられています。
https://www.youtube.com/watch?v=lISBme_Jy28

「Love」
88-Keysプロデュース。JTNC的な聴き方をすれば、Bill Evans Trio「Porgy (I Loves You, Porgy)」のサンプリングに耳がいってしまいますね。Eric B. & Rakim「I Know You Got Soul」のフレーズが引用されています。声ネタはCommon「I Used to Love H.E.R.」、Boogie Down Productions「South Bronx」です。
https://www.youtube.com/watch?v=TyGGsBSpg90

「Ms. Fat Booty」
Ayatollahプロデュース。シングルにもなったHip-Hopクラシック。Aretha Franklin「One Step Ahead」をサンプリングしたソウルフル・トラックが印象的ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=01yUzXQctcM

「Speed Law」
88-Keysプロデュース。Big Brother & the Holding Company「Promise Her Anything but Give Her Arpeggio」、Christine McVie「And That's Saying a Lot」をサンプリングした哀愁トラックが印象的です。Beastie Boys feat. Q-Tip「Get It Together」をサンプリングした声ネタも効果的です。
https://www.youtube.com/watch?v=res0plzZk0w

「Do It Now」
Busta Rhymesをフィーチャー。Mr. Khaliylプロデュース。Mos DefとBusta Rhymesによる掛け合いは迫力十分です。Burning Spear「Marcus Garvey」をサンプリング。
https://www.youtube.com/watch?v=dGRLHdwN_kc

「Got」
Ali Shaheed Muhammadプロデュース。♪エゴなんか抜きにして頭を冷やせ・・・と知的リリシストらしいリリックを聴くことができます。
https://www.youtube.com/watch?v=8y9r98iEvjk

「Umi Says」
Mos Def/David Kennedyプロデュース。シングルにもなりました。『Jazz The New Chapter』の本アルバムの紹介の中で注目曲として挙げられていたのが本曲。確かにアルバムの中で最もジャズを感じる仕上がりです。ここでのMos Defはラップというよりもヴォーカルに近いですね。Weldon Irvineが参加しています。ただし、クレジットを見るとメロウなフェンダーローズをプレイしているのがwill.i.am(Black Eyed Peas)となっています。本当なのかな?
https://www.youtube.com/watch?v=CsihHoyqwWY

「New World Water」
Psycho Les(The Beatnuts)プロデュース。飲料水の汚染問題に鋭くメスを入れたリリックに注目です。Psycho Lesによるトラックは彼らしさが出ていますね。
https://www.youtube.com/watch?v=IxvQKZPb6Wo

「Rock N Roll」
Psycho Les/Mos Defプロデュース。Bar-Kays「Memphis at Sunrise」をサンプリング。♪ロックを始めたのは黒人であり、ロックはブラックミュージックだ♪と高らかに声を上げます。終盤いきなりハードコア・パンク調となり、♪Who Am I? Rock N Roll !!を連呼します。
https://www.youtube.com/watch?v=b8epyQ5MnFY

「Know That」
Black Starの盟友Talib Kweliをフィーチャー。硬派な雰囲気の中でDionne Warwick「Anyone Who Had a Heart」のサンプリングがキュートでいいアクセントになっています。Ayatollahプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=WN-xwf9mKr8

「Climb」
Vinia Mojicaをフィーチャー。Mos Defとのデュエットは実に幻想的です。DJ Etch-A-Sketch/Mos Def/Weldon Irvineプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=AU0hbjJ6vVE

「Brooklyn」
Ge-ology/Mos Def/David Kennedyプロデュース。タイトルの通り、地元ブルックリンを語った聴き応え十分の3部構成。Milt Jackson「What Are You Doing the Rest of Your Life?」Roy Ayers Ubiquity「We Live in Brooklyn, Baby」Stetsasonic「Go Stetsa I」、The Notorious B.I.G. feat. Puff Daddy「Who Shot Ya?」、Red Hot Chili Peppers「Under the Bridge」がサンプリングされています。
https://www.youtube.com/watch?v=GCuTYVulOzY

「Habitat」
DJ Etch-A-Sketchプロデュース。Weldon Irvineも参加したコズミックなジャズ・ファンク調のサウンドが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=BXdOF3GvI7k

「Mr. Nigga」
Q-Tipをフィーチャー。Gil Scott-Heron「A Legend in His Own Mind」ネタのトラックにのって、黒人に対する偏見を皮肉った曲です。A Tribe Called Quest「Sucka Nigga」の声ネタが効果的に使われています。D-Prosper/Mos Defプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=XjDK-N1A-wI

「Mathematics」
DJ Premierプロデュース。プリモ先生とのタッグとなったHip-Hopクラシック。The Fatback Band「Baby I'm-a Want You」をサンプリングしたトラックにのって、数字に関連づけてリリックを重ねていくという知的リリシストの本領発揮といった1曲です。また、プリモ先生によって、James Brown「Funky Drummer」、Wu-Tang Clan「C.R.E.A.M.」、Erykah Badu「On & On」、Cutty Ranks「A Who Seh Me Dun」等の声ネタが散りばめられています。
https://www.youtube.com/watch?v=m5vw4ajnWGA

「May–December」
88-Keys/Mos Defプロデュース。ラストはWeldon Irvineのピアノに、Mos Def自身のヴィヴラフォン等も加わったインストで幕を閉じます。
https://www.youtube.com/watch?v=b9sRod2J2PI

ご興味がある方はMos Def関連の他作品もチェックを!

Black Star『Mos Def & Talib Kweli are Black Star』(1998年)
Black Star

『New Danger』(2004年)
New Danger

『True Magic』(2006年)
True Magic

『Ecstatic』(2009年)
Ecstatic
posted by ez at 14:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする