2014年09月27日

Mark Guiliana『My Life Starts Now』

新進ジャズ・ドラマーによるミニマル/ビート・ミュージック作品☆Mark Guiliana『My Life Starts Now』
My Life Starts Now[日本語解説付]
発表年:2014年
ez的ジャンル:新進ジャズ・ドラマー系ミニマル/ビート・ミュージック
気分は... :聴き手も進化せよ!

今回はJazz The New Chapter(JTNC)強化月間の第11弾、新進ジャズ・ドラマーMark Guilianaの最新作『My Life Starts Now』(2014年)です。彼にとっては初のCD化作品となります。

Mark Guilianaは1980年ニュージャージー生まれ。

高校時代からジャズを演奏するようになり、大学で本格的にジャズを学び、卒業後はイスラエル出身のベーシストAvishai Cohenのグループに加入し、彼のリーダー作6枚のレコーディングに参加しています。また、並行して自身のグループHeerntを結成し、2006年にはアルバム『Locked in a Basement』をリリースしています。

その後もサイドメンとして数々のコンテンポラリー・ジャズ作品のレコーディングに参加すると同時に、2012年には自身のレーベルBeat Music Productionsを設立し、これまで『A Form of Truth』『Beat Music』といったミニマル/ビート・ミュージック的な作品をデジタル配信しています。

今年に入り、Brad MehldauとのユニットMehlianaの新作『Taming The Dragon』でも話題になったMark Guilianaですが、ここに来て本作『My Life Starts Now』と来月リリースの『Beat Music:The Los Angels Improvisations』という2枚同時の新作リリースとなり、さらに注目度が増しています。

『Beat Music:The Los Angels Improvisations』(2014年)
Beat Music : The Los Angels Improvisations[日本語解説付]

『Beat Music:The Los Angels Improvisations』はタイトルの通り、LAで行われた3時間分のセッション音源を30曲にまとめた即興演奏集、『My Life Starts Now』は曲に重点を置き、計画的にレコーディングを行ったミニマル・アプローチ的な作品という位置付けのようです。

本作『My Life Starts Now』のレコーディング・メンバーは、Mark Guiliana(ds, electronics)、Stu Brooks(e-b)、Michael Severson(g)、Yuki Hirano(key)、Jeff Taylor(vo)、Gretchen Parlato(vo)、Meshell Ndegeocello(spoken word)です。

Stu Brooksはダビー・バンドDub Trioでも活躍するベーシスト、Michael SeversonYuki Hirano(Masayuki Hirano)は数日前にエントリーしたBilal『Airtight's Revenge』にも参加していました。N.Y.コンテンポラリー・ジャズの歌姫Gretchen Parlatoに関しては、彼女のライブ作品『Live In NYC』(2013年)でMarkがドラムを叩いています。また、Meshell Ndegeocelloは前述の『A Form of Truth』をプロデュースしていました。

アルバム全体の印象としては、エクスペリメンタルなミニマル/ビート・ミュージック作品であり、決して聴きやすい作品ではありません。しかしながら、ミニマル/ビート・ミュージックと進化形ジャズの接点というJTNCの文脈で聴くと興味深い作品です。

人力テクノと呼ぶべき、クールなビートが印象的なMark Guilianaのドラムですが、本作ではあくまでもトータルな音創りに重きを置き、必要以上にドラムを叩いていません。そんな中でもMark Guilianaが進化形ジャズの重要ドラマーであることを実感できるプレイを随所で聴くことができます。

ジャズ好きというより、Flying Lotus等のビート・ミュージック好きの人向けのアルバムですね。

1〜2分程度の短い楽曲が30曲並ぶ『Beat Music:The Los Angels Improvisations』よりは、とっつき易いのでは?

Mark Guiliana - Beat Music Productions ※アルバム2作の紹介PV
https://www.youtube.com/watch?v=p-kwpORSUno

聴き手にも進化を求める、進化形ジャズ作品だと思います。

全曲紹介しときやす。

「The Beginning」
ビート・ミュージック的なサウンドによるアルバムのプロローグといったところでしょうか。。

「My Life Starts Now」
タイトル曲は、幻想的な雰囲気の中でMarkの"第二次ドラムンベース"的なドラミングを堪能できます。Squarepusherあたりからの影響も感じます。

「Strive」
Meshell Ndegeocelloのスポークン・ワードをフィーチャー。ミニマル的なサウンド・アプローチに本作におけるMarkのスタンスが窺えます。

「I'm Ready」
2分に満たない曲ですが、Stu Brooksのベース、Markのドラムが織り成すグルーヴに惹き込まれます。

「This One Is For You」
Gretchen Parlato参加曲。トイピアノによるイントロに続き、幻想的なメロウ・サウンドをバックにGretchenのスキャットが浮遊するサウンドスケープ的な仕上がり。

「Manhattan Nights (Part 1)」
1分半強のビート・ミュージック的な仕上がり。こういうサウンドを人力ドラムでやってしまうところが進化形ジャズらしいですね。

「My Name Is Not Important」
匿名性を強調する曲タイトルからしてミニマル的ですよね。人力ドラムンベース的な演奏を楽しめます。

「It Will Come Back To You」
ドラムが主張しすぎない引き算の演奏が多い中で、この曲のMarkは少しダウナーなサウンドを従え叩きまくります。

「The Result Of A Ring」
Stu Brooksのベース、Markのドラム、Yuki Hiranoのキーボードが織り成すアンサンブルが見事にハマっている感じですね。さらにはMichael Seversonのギター・ソロも盛り上げてくれます。

「Move Over Old Guy」
ノイジーな小曲。ここまでエクスペリメンタルになってくると凡人の僕には理解できません(笑)

「Dream. Come. True.」
ビート・ミュージックと進化形ジャズの融合を感じる仕上がり。この曲もMichael Seversonのギターがいいアクセントになっています。

「B.Y.O.B.」
レゲエ/ダブ調の仕上がり。レゲエ/ダブとなればStu Brooksのベースが先導します。ただし、ビート・ミュージック的なエッセンスを忘れないところがMark Guilianaらしいのでは。

「Manhattan Nights (Part 2)」
「Manhattan Nights」のパート2。パート1の演奏からエレクトロニクス部分を除き、生音演奏のみ残した感じです。

「Let Go」
ラストは幻想的なサウンドで締め括ってくれます。

ご興味がある方は、Mark Guilianaの参加アルバムもチェックを!

Avishai Cohen Trio『Gently Disturbed』(2008年)
Gently Disturbed

Avishai Cohen Trio『Night of Magic』(2013年)
ナイト・オブ・マジック

Jason Lindner『Now Vs Now』(2009年)
Now Vs Now

Now VS Now『Earth Analog』(2013年)
Earth Analog

Donny McCaslin『Casting for Gravity』(2012年)
Casting for Gravity

Lionel Loueke『Heritage』(2012年)
ヘリテッジ

Gretchen Parlato『Live In NYC』(2013年)
ライヴ・イン・ニューヨーク・シティ【CD+DVD】(仮)

Mehliana『Taming The Dragon』(2014年)
Mehliana: Taming the Dragon
posted by ez at 09:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする