2014年10月30日

Savath & Savalas『Apropa't』

Prefuse 73の別プロジェクト。美しい音像が印象的な1枚☆Savath & Savalas『Apropa't』
Apropa’t
発表年:2004年
ez的ジャンル:音響系フォーキー
気分は... :音の美学・・・

Prefuse 73ことGuillermo Scott HerrenのプロジェクトSavath & Savalasの2ndアルバム『Apropa't』(2004年)です。

Guillermo Scott Herrenはマイアミ生まれ、アトランタ育ちのアメリカ人プロデューサー/クリエイター。

Prefuse 73名義をはじめ、Delarosa & AsoraAhmad SzaboPiano Overlordといった名義での活動や、Savath & SavalasDiamond Watch WristsSons of the Morning等のユニットで活動しています。

こうした様々な顔を持つScott Herrenですが、Savath & Savalasはアコースティック志向のユニットです。エレクトリック、オルタナティヴ・ヒップホップ色の強いPrefuse 73とは対照的なユニットです。

これまでSavath & Savalas名義では『Folk Songs for Trains, Trees and Honey』(2000年)、『Apropa't』(2004年)、『Golden Pollen』(2007年)、『La Llama』(2009年)といったアルバムをリリースしています。

2nd『Apropa't』ではEva Puyuelo Muns、4th『La Llama』(2009年)ではRoberto Carlos Langeをパートナーに迎えています。

本作『Apropa't』(2004年)は、拠点をアトランタから彼の父のルーツであるスペイン、バルセロナに拠点を移して制作されたアルバムです。そして、前述のように本作ではEva Puyuelo Munsをパートナーに迎えています。カタルーニャ人のEvaはバルセロナでのルームメイトであり、本職はグラフィックデザイナーだったようです。

また、本作ではScottとEvaがレコーディングした音源を、シカゴにあるJohn McEntireGastr Del SolThe Sea And Cake、Tortoise)所有のSomaスタジオへ持ち込み、友人のミュージシャンをゲストに迎え、McEntireと共にミックスを行い完成に漕ぎ着けています。

ゲストに迎えられたのはJohn McEntire(b、ds)以下、Town & CountryのJosh Abrams(b)、TortoiseのJohn Herndon(ds)、Poi Dog PonderingのPaul Mertens(bcla、flh、hrca)とDave Max Crawford(tp)という4名。

ScottとEvaのヴォーカルとギターによる音源を素材に、新たにサウンドを加えながらScottとJohn McEntireが拡がりと奥行のある音空間を創り上げた感じです。アコースティック志向のユニットといっても、アコースティック・サウンドが全面に出るというよりは、一音一音の響きを生かした音像のようなものを重視したサウンドが印象的です。

バルセロナでの刺激とシカゴ音響派との合体がSavath & Savalasサウンドを新たなステージへ引き上げています。

「Um Girassol Da Cor De Seu Cabelo」以外はGuillermo Scott HerrenEva Puyuelo Munsのオリジナルです。

美しい音像の数々を満喫しましょう。

全曲紹介しときやす。

「Introduccion」
アルバムのイントロ。

「Te Quiero Pero Por Otro Lado....」
アコースティックの響きと淡々としたEvaとScottのヴォーカルが印象的な美しい序盤から、サウンドが厚みを増し神秘的な音世界が展開されます。
http://www.youtube.com/watch?v=RRrx93Feb9Y

「Colores Sin Nombre」
フォーキー・サウンドとエレクトロニカな質感の融合したクール・サウンドとスパニッシュ・ヴォーカルの語感がよくマッチしています。
https://www.youtube.com/watch?v=Kd1HahuT6hg

「Balcon Sin Flores」
Evaのヴォーカルによるシンプルで美しい前半と郷愁感を誘うサウンドが重なり合う中盤以降のコントラストが印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=hlW2QIXg5KY

「A La Nit」
Evaのヴォーカル、ギターとハンドクラップによる前半から徐々にサウンドの厚みと奥行が増していきます。このあたりはJohn McEntireの手腕が光るのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=IcsrumMRBRc

「Zltimo Tren」
淡々としたEvaのヴォーカルはStereolabあたりにも通じるかもしれませんね。上手く表現できませんが、この雰囲気大好きです。
http://www.youtube.com/watch?v=KwbrsYgqWo0

「Sol De Media Tarde」
ヨーロピアンな香りとコズミック感のあるフォーキー・サウンドによる音の広がりが魅力です。

「Um Girassol Da Cor De Seu Cabelo」
Lo Borges/Maricio Borges作。オリジナルは名盤Milton Nascimento & Lo Borges『Clube Da Esquina』(1972年)に収録されています。オリジナルの雰囲気を受け継ぎつつ、本作らしい奥行のあるサウンドで聴かせてくれます。

「Radio Llocs Espacials」
美しい音像が印象的な小曲。

「Dejame」
美しくも物悲しい雰囲気の音世界に惹かれます。メリハリのある構成で余韻のある終盤もいい感じです。

「?Por Que Ella Vino?」
ミステリアスなフォーキー・チューン。一筋縄ではいかない後半の展開がいいですね。

「Victima Belleza」
美しいヴォーカル・ワークを楽しむ前半と音像の拡がりを楽しむ後半とから構成されます。

「Interludio 44」
近未来的なインタールード。

「Sigue Tu Camino (No Sabes Amar...)」
Azita Youssefiのヴォーカルをフィーチャー。ゆったりと動く音像が印象的です。

国内盤にはボーナス・トラックとして「Cosmetics Pt.1」が追加収録されています。

Savath & Savalasの他作品もチェックを!

『Folk Songs for Trains, Trees and Honey』(2000年)
フォーク・ソングス・フォー・トレインズ、トゥリーズ&ハニー

『Golden Pollen』(2007年)
Golden Pollen [帯解説・ボーナストラック3曲収録 / 国内盤] (BRC180)

『La Llama』(2009年)
La Llama
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2014年10月29日

Leon Ware『Leon Ware』

人気曲「Why I Came to California」収録☆Leon Ware『Leon Ware』
夜の恋人たち
発表年:1982年
ez的ジャンル:ミスター・メロウネス系アーバン・ソウル
気分は... :今日は何の日?鴨の日・・・

"ミスター・メロウネス"Leon Wareの人気作『Leon Ware』(1982年)です。

これまで当ブログで紹介したLeon Ware作品は以下の3枚。

 『Musical Massage』(1976年)
 『Inside Is Love』(1979年)
 『Rockin' You Eternally』(1981年)

僕の中では既に紹介済みのアルバムだと思っていたのですが、未紹介であったことが判明したので取り上げることにしました。

これまで紹介した3枚に本作『Leon Ware』を加えた4枚は、Leon Wareが"ミスター・メロウネス"であることを証明してくれる作品ですね。

本作『Leon Ware』にはフリーソウル・クラシックとしてお馴染みの人気曲「Why I Came to California」が収録されています。

プロデュースはLeon WareMarty PaichJerry Heyがホーン・アレンジを手掛けています。

レコーディングにはDavid Foster(el-p、p)、TotoDavid Paich(p)とJeff Porcaro(ds)、Dean Parks(g)、Nathan East(b)、Lenny Castro(per)、David T. Walker(g)、Bill Champlin(p、vo)、Rita Coolidge(vo)、Janis Siegel(vo)、Bonnie Bramlett(vo)、 James Gadson(ds)、Chuck Rainey(b)、Laudir De Oliveira(per)、Geoff Leib(key)、Gato Barbieri(sax)、Reginald Burke(el-p、p)、Airto Moreira(per、vo)、Flora Purim(vo)等の豪華ミュージシャンが参加しています。

「Why I Came to California」以外にも、"ミスター・メロウネス"の本領発揮の楽曲が満載です。また、前作『Rockin' You Eternally』に引き続き、Marcos Valleとの共作曲が2曲収録されています。

それ以外にも「Slippin' Away」「Lost In Love with You」「Can I Touch You There」「Miracles」あたりがオススメです。

アーバンな魅力に溢れたメロウ・サウンドとセクシーなLeonのヴォーカルを存分に堪能できる1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Slippin' Away」
オススメその1。David Foster/David Paich/Leon Ware作。"ミスター・メロウネス"らしいセクシーなAORチューンでアルバムは幕を開けます。David Foster、David Paich、Jeff Porcaro、Nathan East、David T. Walker、Bill Champlin等の豪華なバックに惹かれる方も多いのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=PUaG452Rs0M

「Lost In Love with You」
オススメその2。Geoffrey Leib作。西海岸のセッション・ミュージシャンが結成したグループPiecesのメンバーとしても知られるGeoffrey Leibの作品です。軽快なファンキー感と大人のアーバン感のバランスが絶妙のメロウ・ダンサー。大好きです!
http://www.youtube.com/watch?v=Drh_SuEvVHo

「Shelter」
Leon Ware/Allee Willis作。しっとりとしたバラードをLeonが見事に歌い上げます。

「Why I Came to California」
オススメその3。Janis Siegel/Leon Ware作。問答無用のフリーソウル・クラシック。Manhattan TransferのJanis Siegelとのデュエットによるクリスタルなアーバン・ソウル。Zuma、Venice、San Diegoといったカリフォルニアのリゾート地の地名が登場するのも印象的ですね。開放的な気分にさせてくれる永遠の名曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=0xBXnXzjirc

「Deeper Than Love」
Marcos Valle/Leon Ware作。Marcos Valleとの共作1曲目。Gato Barbieriのサックスがアーバン・ムードを盛り上げてくれるメロウ・バラードです。
http://www.youtube.com/watch?v=7NM91g0Ch4U

「Can I Touch You There」
オススメその4。William Beck/Leon Ware/James Williams/Clarence Willis作。この曲も"ミスター・メロウネス"らしいですね。Leonのセクシー・ヴォーカルと共に疾走するメロウ・グルーヴには快活な心地好さがあります。Jeff Porcaro、Dean Parksあたりのプレイも目立っています。
http://www.youtube.com/watch?v=zHF1dzIHtVI

「Words of Love」
Zenobia Conkerite/Marti Sharron作。David T. Walkerの素敵なギターと共に始まるメロウ・チューン。全体的に抑えた雰囲気のメロウネスがたまりません。
http://www.youtube.com/watch?v=zMPjqxhY6zg

「Miracles」
オススメその5。Bill Champlin/Leon Ware作。Leonのセクシーな魅力を堪能できるファンキー・メロウ。Nathan Eastのベースをはじめとするバッキングの素晴らしさも忘れてはいけませんね。
http://www.youtube.com/watch?v=_jf_3FZNgYE

「Somewhere」
オススメその6。Laudir De Oliveira/Marcos Valle/Leon Ware作。Marcos Valleとの共作2曲目。Airto MoreiraFlora Purimの夫婦コンビも参加したブラジリアン・メロウです。ブラジル大好きな僕としては、こういう曲は大歓迎です。
http://www.youtube.com/watch?v=H5fjHeoRyeQ

「Where Are They Now」
John Betis/Richard Kerr作。Barry Manilowがアルバム『One Voice』(1979年)で歌っていた楽曲をカヴァー。ドラマティックなバラードですが、あまり仰々しくしすぎないところがいいですね。

Leon Ware作品の過去記事もご参照下さい。

『Musical Massage』(1976年)
Musical Massage

『Inside Is Love』(1979年)
Inside Is Love

『Rockin' You Eternally』(1981年)
Rockin' You Eternally
posted by ez at 01:23| Comment(2) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月27日

Quarteto Forma『Quarteto Forma』

ブラジリアン・コーラス・グループの魅力が詰まった1枚☆Quarteto Forma『Quarteto Forma』
クアルテート・フォルマ
発表年:1970年
ez的ジャンル:ブラジリアン・コーラス・グループ
気分は... :ボートラも凄い!

今回はブラジルの男女コーラス・グループQuarteto Forma唯一のアルバム『Quarteto Forma』(1970年)です。

Quarteto Formaは60年代後半から70年代前半に活躍した男性3名、女性1名のコーラス・グループ。Osmar Milito作品への参加でも知られていますね。

グループ唯一のアルバムとなる本作『Quarteto Forma』(1970年)では、ヨーロッパのジャズ・コーラス・グループのようなダバダバ・スキャット、ハーモニーの変化をしっとりと聴かせる曲、ポップな楽曲での爽快ドリーミー・コーラス、ボッサ・ジャズをバックにした軽快なコーラスといったように、バリエーション豊かなコーラス・ワークで楽しませてくれます。

さらにCDには1971年のEP『Mau』からの4曲がボーナス・トラックとして追加収録されています。この4曲が本編に劣らないほど素晴らしい出来です。本編にはないソフトロック調、ロック調の楽曲もあり、結果として全体のバリエーションはさらに広がっています。

本編ならば「Forma」「Rapaz D Bem」、ボートラならば「Rua Cheia」「A Ilha」あたりはかなり重宝するはず!

ブラジリアン・コーラスの魅力を存分に堪能できる1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Forma」
オススメその1。Eduardo Lages作。タイトルからしてグループのテーマ曲のようです。ダバダバ・スキャットの4ビート・ジャズですが、ヨーロッパのジャズ・コーラス・グループのような品の良さが漂います。本編では「Rapaz D Bem」と並ぶ僕のお気に入り。
https://www.youtube.com/watch?v=V0JsN8x2kaY

「Raindrops Keep Fallin' on My Head」
映画『明日に向って撃て!』の挿入歌としてお馴染みB.J.Thomasによる全米No.1ヒット「雨にぬれても」のカヴァー(Hal David/Burt Bacharach作)。当ブログではFree DesignClaude Ciari, Bernard Gerard And The Batucada's SevenTrio Mocotoのカヴァーも紹介済みです。女性のリード・ヴォーカルを中心に、このポピュラー名曲の魅力を素直に表現しているのが好感持てます。

「Teletema」
オススメその2。Antonio Adolfo/Tiberio Gaspar作。ノヴェラ『Veu De Novia』収録曲。当ブログではAntonio Adolfo & A BrazucaHeraldo Do Monteのヴァージョンも紹介済みです。コーラス・グループとしての素晴らしいハーモニーを堪能できるドラマティックで美しい仕上がりです。
https://www.youtube.com/watch?v=BWTMQ3tJR_k

「Tem Pena」
Marcio Proenca作。ムーディーなサウンドをバックに、憂いを帯びたヴォーカル、しっとりとしたハーモニーを聴かせてくれます。

「Agua Clara」
Eduardo Lages/Paulo Barros作。素晴らしいオーケストレーションをバックに、澄み切ったハーモニーを聴かせてくれます。

「Manha de Carnaval」
Antonio Maria/Luiz Bonfa作の名曲「カーニバルの朝」のカヴァー。お馴染みの名曲を落ち着いたコーラス・ワークでしっとりと聴かせてくれます。この曲らしい物寂しさがよく伝わってきていいですね。

本曲について、当ブログではDexter GordonGerry MulliganBalancoAstrud GilbertoJack Marshall & Shelly ManneSteen Rasmussen Feat. Josefine CronholmOscar PetersonAkua AllrichClaude Ciari, Bernard Gerard And The Batucada's SevenDiana PantonCountry ComfortIsabelle AubretO Quartetoのカヴァーも紹介済みです。ご興味がある方はそちらの記事もご参照を。

「De Onde Vens」
Dori Caymmi/Nelson Motta作。当ブログではElis Reginaのヴァージョンも紹介済みです。女性ヴォーカルがリードをとる大人の哀愁チューンに仕上がっています。

「E Nos... Aonde Vamos?」
オススメその3。Sergio Bittencourt/Eduardo Souto Neto作。同タイトルのノヴェラのテーマ曲。爽快でドリーミーなコーラスに魅了されます。

「Rapaz D Bem」
オススメその4。Johnny Alf作。軽快なボッサ・ジャズ・サウンドにのって、小粋なコーラスワークを聴かせてくれます。本編では「Forma」と並ぶ僕のお気に入り。

「Moon River」
映画『ティファニーで朝食を』の主題歌としてお馴染みのJohnny Mercer/Henry Mancini作品。アカデミー歌曲賞およびグラミーを受賞した大名曲をカヴァー。当ブログではRoman AndrenOs Tres Brasileirosのカヴァーを紹介済みです。ドラマティックなオーケストレーションをバックに、オリジナルの雰囲気そのままで美しいヴォーカル&ハーモニーを聴かせてくれます。

「Mariana」
Claudio Huthmacher/Mario Wellington Louzada作。ドリーミーな雰囲気が漂います。

「All the Things You Are」
ラストはOscar Hammerstein II作詞、Jerome Kern作曲のスタンダードをカヴァー。1939年のミュージカル『Very Warm for May』のために書かれた楽曲です。当ブログではJohn Lewis & Sacha DistelAkua AllrichDon GlaserLarry Nozeroのカヴァーを紹介済みです。ここでは美しいオーケストレーションをバックに、エレガントなスキャット・コーラスを聴かせてくれます。

ここから4曲はボーナス・トラック。いずれもEP『Mau』収録曲です。この4曲が本作の目玉だったりします(笑)

「Boa」
オススメその5。Aldir Blanc/Marcio Proenca作。男性ヴォーカルがリードをとるメロウなボッサ・チューンです。

「A Ilha」
オススメその6。Aldir Blanc/Cesar Costa Filho作。パーカッシヴなリズムが格好良い軽快なMPBチューン。
https://www.youtube.com/watch?v=3SfPF0DdoWA

「Rua Cheia」
オススメその7。Eduardo Lages/Marcio Proenca作。僕の一番のお気に入り。ポップなグルーヴィー・サウンドに爽快コーラスが絡む至極のソフトロック。女性コーラスの♪パパパパパ〜ヤ♪がたまりません(笑)
https://www.youtube.com/watch?v=jjO1s_rE83I

「Antiga Voz」
オススメその8。Flavio Farla/Sidney Matos/Marco Aurelio作。壮大なスケール感を持ったロック調のサウンドが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=pOERsoAlk5w

NFLは早くも第8週。
我がドルフィンズはアウェーでジャガーズと対戦!
白星先行で波に乗る絶好の機会なので、ぜひ快勝して欲しいです。
posted by ez at 01:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月26日

Becca Stevens Band『Perfect Animal』

インディー・ロック寄りに舵を切った話題の女性SSWの新作☆Becca Stevens Band『Perfect Animal』
パーフェクト・アニマル
発表年:2014年
ez的ジャンル:女性SSW系インディー・ロック/ハイブリッド・フォーキー
気分は... :「静」から「動」へ!

今回は今年最も注目されている女性シンガー・ソングライターの一人、Becca Stevens待望の新作Becca Stevens Band『Perfect Animal』です。

ノースカロライナ出身、N.Y.のニュースクール大学でジャズ・ヴォーカルを専攻し、現在もN.Y.を拠点に活動する女性シンガー・ソングライターBecca Stevensの紹介は、Becca Stevens Band名義の2ndアルバム『Weightless』(2011年)に続き2回目となります。

今年話題の音楽ムック本『Jazz The New Chapter』および『Jazz The New Chapter 2』で大きくクローズ・アップされ、一躍注目の女性シンガー・ソングライターとなったBecca Stevens

当ブログでも、この数ヵ月で前述のBecca Stevens Band『Weightless』(2011年)をはじめ、Jose James『While You Were Sleeping』 (2014年)、Gideon Van Gelder『Lighthouse』(2014年)、Taylor Eigsti『Daylight at Midnight』(2010年)とBecca Stevens関連作品を紹介しています。

そして、周囲の期待が大きく高まった中でリリースされた待望の新作が『Perfect Animal』です。『Perfect Animal』は『Tea Bye Sea』(2008年)、『Weightless』(2011年)に続くBecca Stevens Band名義の3rdアルバムとなります。

Becca Stevens Bandのメンバーは、Becca Stevens(vo、g、charango、ukulele、n'goni)、Liam Robinson(p、el-p、org、p、syn、accordion、vo)、Chris Tordini(b、org、vo)、Jordan Perlson(ds、per)という前作『Weightless』と同じ4名。

さらにゲストとして、Keith Ganz(g)、Colin Killalea(g)、Tom Korkidis(sax)が参加しています。

プロデュースはScott Solter。Superchunk、The Mountain Goats、St. Vincent、Okkervil River、Spoon等インディー・ロック系の作品を数多く手掛けている人です。

前作『Weightless』は、『Jazz The New Chapter』の中で"『Black Radio』級の重要作"と大絶賛されていました。ただし、実際に作品を聴くと、ジャズというよりはフォーク/カントリー系の女性SSW作品という印象が強いものでした。

そして、本作『Perfect Animal』は、インディー・ロック系プロデューサーScott Solterの起用からもイメージできるように、ロック色を強めた重厚なサウンドへ大きくシフトした作品です。前作『Weightless』がバンドの「静」ならば、本作は「動」のBecca Stevens Bandを聴くことができます。

アルバム全体を通して、Beccaやバンド・メンバーの力強い演奏を聴くことができ、ずっしりとした重量感のあるアルバムに仕上がっています。本作におけるサウンドの拡がりは、「Thinking Bout You」(Frank Ocean)、「You Make Me Wanna」(Usher)、「Higher Love」Steve Winwood)というカヴァー3曲やタイトル曲的な役割を果たす「Imperfect Animals」に顕著です。

前述のカヴァー3曲以外はBeccaのオリジナルですが、「105」「Tillery」の2曲では女流詩人Jane Tyson Clement(1917-2000年)の作品を引用しています。

前作『Weightless』のジャケでは、南米フォルクローレで使われる弦楽器チャランゴを手にしていたBeccaですが、本作ではギター、ウクレレ、チャランゴに加え、西アフリカの弦楽器ンゴーニも演奏しています。こういった点にも様々なジャンルを貪欲に採り込んでいく、彼女のハイブリッド感覚にさらに磨きがかかったことが窺えます。

また、本作はクラウドファンディングで自主制作したアルバムです。レーベルからの制約を受けず、自分たちがやりたい音を素直に創り上げた作品であるといえます。

Becca StevensはJazz The New Chapter(JTNC)の流れで注目が高まったアーティストであり、Robert Glasperをはじめとする進化形ジャズ・アーティスト達こぞって絶賛するアーティストであり、ジャズ・ヴォーカルを専攻してきた人ですが、本作を聴くと、もはや無理に「ジャズ」視点で語らなくてもいい気がします。『Jazz The New Chapter 2』のインタビューでBecca本人が「自分をジャズ・ミュージシャンだとは思っていない」と語ってしましたし・・・

『Perfect Animal』 EPK
 http://www.youtube.com/watch?v=PniHJByXPSU
Becca Stevens Band 『Perfect Animal』 PledgeMusic Video
 http://www.youtube.com/watch?v=pPJ65nZrUCs

「動」に転じた力強いBecca Stevensを堪能しましょう。ジャズだ、フォークだ、ロックだというジャンルの話は抜きにして、素晴らしい歌、サウンドが詰まった素晴らしいアルバムだと思います。

全曲紹介しときやす。

「I Asked」
Becca Stevens作。フォーキーな味わいながらもズシリと重みのあるサウンドに、本作におけるバンドの進化を感じます。

「Imperfect Animals」
Becca Stevens作。アルバム・タイトルを逆にしたタイトル曲的な役割の楽曲。本作のロック路線を象徴する楽曲です。Jordan Perlsonによる力強いビートをバックにBeccaのメッセージ発信にもパワーを感じます。

「Thinking Bout You」
注目のR&BシンガーFrank Oceanの2013年のグラミーRecord of the Yearにもノミネートされた人気曲をカヴァー(Frank Ocean/Shea Taylor作)。オリジナルはアルバム『Channel Orange』(2012年)に収録されています。オリジナルがシンプルなサウンドの楽曲なので、カヴァー・センスが問われる曲ですが、エレクトリックなエッセンスも加えた深みのあるサウンドとBeccaの切々としたヴォーカルによる絶品カヴァーに仕上がっています。

「Be Still」
Becca Stevens作。前作『Weightless』で聴かれたBeccaとバンド・メンバーによる美しいハーモニーが聴けます。ただし、バックのサウンドの躍動感や厚みが前作までとは桁違いです。

「105」
Becca Stevens作。前述のようにJane Tyson Clementの詞を引用した楽曲です。最初はシンプルなフォーキー・チューンですが、その後本作らしいエレクトリック/インディー・ロックのエッセンスが加わっていきます。

「Tillery」
Becca Stevens作。この曲もJane Tyson Clementの詞を引用しています。本曲は『Home - Gift of Music (Japan Earthquake Relief) 』(2012年)の中でChris Tordini, Gretchen Parlato & Becca Stevens名義で歌われた楽曲の再録です。本作の中では一番『Weightless』の雰囲気を受け継いでいる仕上がりです。フォーキーな中にエスニックなエッセンスが自然なかたちで散りばめられています。

本曲タイトルは、その後結成されたGretchen ParlatoRebecca Martinとの女性ヴォーカル・トリオTilleryのグループ名にもなっています。

「You Make Me Wanna」
人気R&BシンガーUsherの大ヒット曲をカヴァー(Jermaine Dupri/Manuel Lonnie Seal/Usher作)。オリジナルはアルバム『My Way』(1997年)に収録されています。バンドの素晴らしいコーラス力を押し出しつつ、ずっしり重量感のあるカヴァーに仕上がっています。この楽曲に新たな魅力を植え付けた好カヴァーだと思います。終盤のギターがメチャ格好良いです!

「Reminder」
Becca Stevens作。アルバムの中でもロック路線が最も色濃いサウンドを聴ける楽曲がコレ。単に激しいのみならず、メリハリのつけ方が絶妙でキレのある格好良さに惹かれます。

「Higher Love」
Steve Winwood、1986年の大ヒット曲をカヴァー(Steve Winwood/Will Jenings作)。オリジナルはアルバム『Back in the High Life』(1986年)に収録されています。Beccaが(多分)ンゴーニを奏で、エレクトロなエッセンスも加わったハイブリッド・サウンドが実に新鮮です。今聴くとWinwoodのオリジナルは少し野暮ったさがありますが、その弱点を見事に補った秀逸カヴァーだと思います。

「JAC」
Becca Stevens作。ラストは少しミステリアスなアコースティック・チューンで余韻を残して締め括ってくれます。

「I Asked (Acoustic Demo Version)」
国内盤ボーナス・トラック。「I Asked」のアコースティック・デモです。『Weightless』の頃のバンドであれば、こんな雰囲気だったのかもしれませんね。

未聴の方は2nd『Weightless』(2011年)もチェックを!

『Weightless』(2011年)
Weightless

只今、「レアル・マドリード対バルセロナ」のクラシコをTV観戦中!
遂にメッシ、ネイマール、スアレスが揃い組となりましたね。
しかしながら勝負はレアル・マドリードの完勝!
後半のマドリードのカウンターは凄すぎ!ですね。
posted by ez at 02:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月25日

Jesse Boykins III『Love Apparatus』

カリスマR&B/Soulシンガーと奇才Machinedrumの強力コラボ☆Jesse Boykins III『Love Apparatus』
LOVE APPARATUS [国内盤/解説付/ボーナス・トラック3曲収録]
発表年:2014年
ez的ジャンル:カリスマ系R&B/Soulシンガー
気分は... :瞑想するカリスマ・・・

今回は最新R&B/Soulアルバムからカリスマ的存在感を放つ男性アーティストJesse Boykins IIIの2ndアルバム『Love Apparatus』です。

Jesse Boykins IIIは1985年生まれのR&B/Soulシンガー/ソングライター。

シカゴで生まれ、ジャマイカ〜マイアミで育ち、高校卒業後はN.Y.のニュースクール大学に進学し、それ以降ブルックリンを拠点に活動しているようです。

ニュースクール大学で大学の先輩であるBilalと出会い、Bilalから多くのことを学んだようです。また、Bilalを介してRobert Glasperも紹介されたそうです。またもやJazz The New Chapterか?という感じもしますが、今回は少し違うかな(笑)

2008年にデビューEP『Dopamine: My Life On My Back EP』およびデビュー・アルバム『The Beauty Created』をリリースします。それらの作品のジャジー・サウンドやそれまでの経歴から"ネオソウルの新星"として扱われましたが、Jesse本人はそうした位置づけを嫌がっていたようです。

その後はエレクトリック・サウンドのEP『Way Of A Wayfarer』(2011年)をリリースしたり、N.Y.出身のDJ/プロデューサー/ラッパーMelo-Xと共同名義のアルバム『Zulu Guru』をリリースしています。また、US以外も含めて様々なアーティストとコラボしています。

当ブログで紹介した作品でいえば、Various Artists『LTYS-Listen To Your Soul』(2010年)、The Foreign Exchange『Authenticity』(2010年)、Zo!『SunStorm』(2010年)、The Internet『Feel Good』(2013年)でJesse Boykins IIIがフィーチャーされています。特にOdd Futureの注目ユニットThe Internet『Feel Good』(2013年)への参加は記憶に新しいですね。

『The Beauty Created』以来の2ndアルバムとなる本作『Love Apparatus』の話題は、エレクトロの奇才Machinedrum(本名Travis Stewart)が殆どのプロデュースを手掛けている点です。レコーディングの大半は2010年頃までに終えていましたが、Machinedrumが拠点をベルリンに移したことでミックスに時間を要し、リリースまでさらに4年の歳月を要したようです。

アルバムには、Kanye Westがエグゼクティヴ・プロデューサーを務める新作が話題のラッパーTheophilus Londonや、The Foreign ExchangePhonteがゲスト参加しています。

ここまで挙げてきたJesse Boykins IIIMelo-XMachinedrumTheophilus LondonPhonteといったアーティストがまとめて紹介されていたコンピが前述の『LTYS-Listen To Your Soul』(2010年)です。

"次世代Hip-Hopをコンパイルした超強力コンピ"として当ブログで紹介したアルバムでしたが、これら次世代アーティストたちの存在感は着実に増していますね。

本作『Love Apparatus』に話を戻すと、Machinedrumの起用でエレクトリック色が強まっていますが、そこにヒューマンな温もりも上手く織り交ぜているのが、「愛」と「装置」を意味するアルバム・タイトルに相応しいですね。

ダウンテンポの曲が多く、ジワジワと変化する音像が印象的です。そこに内省的で繊細なJesseのヴォーカルが加わると、独特の世界が展開されます。多少、アルバムのメリハリに欠ける部分はありますが、ミックスに時間を掛けた美しい音空間に魅了されます。

Jesse Boykins III、今後も要注目のアーティストです。

全曲紹介しときやす。

「Greyscale」
浮遊するエレクトリック・サウンドに、Jesseの憂いを帯びたヴォーカルが溶け込んでいくダウンテンポなオープニング。

「B4 The Night Is Thru」
アルバムのリード曲。メロウ・ブギー調のミディアム・グルーヴ。シンセベースのうえに幾層にもシンセ、ヴォーカルが重なっていく感じがいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=4JHZvzeH0lA

「Created Beauty」
ゆったりとエレクトリック・サウンドの中にJesseのヴォーカルが溶け込み、美しい音世界が展開されます。温もりのエレクトリック・ソウルといった感じがいいですね。

「I Wish」
この曲はJesse Boykins III/J.Mostによるプロデュース。生ギター、ピアノも入った美しいサウンドをバックに、Jesseが切なる声で歌い上げます。
http://www.youtube.com/watch?v=x98tjjcKrPE

「Tell Me」
Theophilus Londonをフィーチャー。MachinedrumによるフューチャリスティックなトラックとJesseのヴォーカル、Theophilus Londonのラップがよく調和しています。
http://www.youtube.com/watch?v=juy6SnANaAY

「Show Me Who You Are」
壮大なエレクトリック・サウンドな中にローズやトランペットの音色で温かみを加えているのが印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=CSeKTygVFWQ

「Live In Me」
ダブステップ調のサウンドがMachinedrumとのコラボらしくていいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=cEJZaggkF4c

「4 U 2 B Free」
巧みな音空間の創りに魅了されるビューティフル・バラード。美しい音世界の中へ吸い込まれそうです。
http://www.youtube.com/watch?v=eGEN0kvC6pg

「The Wonder Years」
メロウな味わいを重視した1曲。タイプ的には僕好みの仕上がりです。

「Plain」
ハウス調のキャッチーなアッパー・チューン。キャッチーですが、他の曲ほど刺激はないかも?
http://www.youtube.com/watch?v=9AtLOG_1Ojk

「A Matter Of The Heart」
Phonteをフィーチャー。じんわりと広がる美しい音世界をバックに、Phonteが彼らしいフロウを披露してくれます。Jesse Boykins III/Phantom Lover/S.Wyremanによるプロデュース。

「4 Ever No More」
フューチャリスティックでダンサブルなエレクトリック・ソウル。Jesseのセクシー・ヴォーカルが引き出されていて個人的にはかなり好きな1曲。

「Make Believe」
ジャケのような神秘的なムードに包まれた1曲。瞑想の世界へ・・・

「Heavenly Eyes」
ラストはJesse自身のプロデュースによるアンビエントな雰囲気の仕上がり。
http://www.youtube.com/watch?v=2Ce_Nx-ZJ4Y

国内盤には「Molly’s Refuge」「Our Tonight Is Mine」「Show Me Who You Are (starRo Remix)」の3曲がボーナス・トラックとして追加収録されています。日本人プロデューサーstarRoによるリミックスは要チェックです。

1st『The Beauty Created』(2008年)やMeLo-Xとのコラボ作『Zulu Guru』(2012年)もチェックを!

『The Beauty Created』(2008年)
The Beauty Created

Jesse Boykins III & MeLo-X『Zulu Guru』(2012年)
Zulu Guru [帯・解説付き・国内盤仕様 / 輸入盤] (BRZN191)
posted by ez at 12:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする