発表年:2004年
ez的ジャンル:L.A.スピリチュアル・ジャズ・プロジェクト
気分は... :どこを切り取っても素晴らしい!
今回はL.A.のスピリチュアル・ジャズ・プロジェクトBuild An Arkの1stアルバム『Peace With Every Step』(2004年)です。
クラブジャズ/クロスオーヴァー方面から評価が高く、『Jazz The New Chapter』でも紹介されていた作品です。
Build An Arkは、US西海岸の奇才ミュージシャン/プロデューサーCarlos NinoやヴォーカリストのDwight Tribleを中心としたスピリチュアル・ジャズ・プロジェクト。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロがプロジェクト結成のきっかけとなったようです。
これまで『Peace With Every Step』(2004年)、『Dawn』(2007年)、『Love Part 1』(2009年)、『Love Part 2』(2010年)、『The Stars Are Singing Too』(2011年)といったアルバムをリリースしています。
1stアルバムとなる『Peace With Every Step』(2004年)には、Carlos Nino(prod)、Dwight Trible(vo)のほかに、70年代にTribeレコードを創設したトロンボーン奏者Phil Ranelin、70年代から活躍するキーボード奏者Nate Morgan、シカゴのジャズ・ファンク・バンドThe Pharaohsのオリジナル・メンバーDerf Reklaw(ds、per)、それ以外にDamon Aaron(g)、B+(photo)、Aran Lightner(ds、per)、Lesa Terry(violin)、Joshua Spiegelman(bamboo fl、fl)、Peter Harris(poetry)、Baba Alade(vo、g、b)、Andres Renteria(vo)、Trancey Hart(vo)、Gaby Hernandez(vo)、Bob Wisdom(vo)、Mark & Miles Maxwell(vo)、Debra Pill、James Richards(prod)、Adam Rudolph(ds、per)という総勢20名のメンバーが参加しています。
アルバムにはPharoah Sandersのカヴァー2曲、Stanley Cowellのカヴァー、ヴァイオリン奏者Michael Whiteのカヴァーといったようにスピリチュアル・ジャズ好きには興味深いカヴァー演奏が収録されています。
それ以外にもジャズ/ジャズ・ファンクにインスパイアされた楽曲などもあり、興味が尽きない1枚に仕上がっています。
スピリチュアル・ジャズといっても、ソウルフルなヴォーカルやメロウなエレピの効いたキャッチーな演奏が多く、リズムもアフリカ、ラテン、ブラジルと多彩で、フォーキーな楽曲なども織り交ぜられており、1枚の中にかなりバラエティに富んだ音が詰まっていると思います。
国内盤ボーナス・トラックも含めて全20曲という大作なので、紹介するのを何度も躊躇してきたアルバムですが、3,000回を達成して気が緩まぬよう、気合いを入れて今回取り上げました。
聴き重ねるほど発見が多く、きっと10年後も名盤としてさらに評価が高まっているアルバムだと思います。
全曲紹介しときやす。
「You've Gotta Have Freedom」
オススメその1。クラブジャズ人気曲でもあるPharoah Sanders「You've Got To Have Freedom」のカヴァー。オリジナルは当ブログでも紹介した『Journey To The One』(1980年)に収録されている。オリジナルとは一味違った疾走感が心地好いカヴァーです。Nate Morganのローズの音色がグッド!Joshua Spiegelmanのバス・クラリネットが効いています。
http://www.youtube.com/watch?v=IA190_qVcmQ
「Vibes From The Tribe」
オススメその2。Phil Ranelin作。Phil Ranelinが自身の楽曲を取り上げています。オリジナルは『Vibes From The Tribe』(1976年)に収録されています。トライバルでミステリアスでメロウ・・・僕の好きなエッセンスが詰まった演奏はサイコーです!Phil Ranelin自身のトロンボーンにも注目しましょう。
「Conversations」
Adam Rudolph作。浮遊するスピリチュアル感に支配されていきます。ハンド・ドラムとバンブー・フルートの神秘的なサウンドが印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=HVLu20_8vRg
「Precious, Priceless」
Horace Silver「Que Pasa」にインスパイアされた楽曲にDwight Tribleが詞をつけています。僕の場合、「Que Pasa」のフレーズを聴くとどうしてもSteely Dan「Rikki Don't Lose That Number(リキの電話番号)」のイントロを思いだしてしまいますが(笑)。Dwight Tribleの哀愁ヴォーカルがジワジワと響いてくるスピリチュアル・ジャズです。
http://www.youtube.com/watch?v=ZXlysqUAQmA
「Love Is Our Nationality」
オススメその3。Funk Inc.「Let's Make Peace And Stop The War」にインスパイアされた楽曲。 Damon Aaronのギターが印象的なフォーキー・サウンドにのってFunk Inc.「Let's Make Peace And Stop The War」のあのフレーズがリフレインされます。それに続きPeter Harrisのポエトリーが歌われます。僕自身Funk Inc.「Let's Make Peace And Stop The War」が大好きなので、本曲もお気に入りです。
http://www.youtube.com/watch?v=3LbC3UP-6Wo
「Pure Imagination/Tortoise And The Hare」
Anthony Newley/Leslie Briousse作「Pure Imagination」(1971年)とBaba Alade作「Tortoise And The Hare」のメドレー。Baba Aladeのヴォーカル&ギターをフィーチャーしたフォーキー・ジャズといった趣です。
http://www.youtube.com/watch?v=8108YI8E_ug
「Drumprovise (Interlude)」
Build An Ark作。トライバル・リズムのインタールード。
「Japan (Interlude)」
再びPharoah Sandersのカヴァー。オリジナルは『Tauhid』(1967年)に収録されています。Nate Morganのローズ・ソロによる短い演奏ですが、いいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=AcVWJNGTg5w
「Peace With Every Step」
「Equipoise」
「Collective」
オススメその4。これら3曲はStanley Cowellのカヴァー。当ブログでも紹介した名盤『Musa・Ancestral Streams』(1973年)に収録されているスピリチュアル・ジャズ名曲「Equipoise」を組曲風にリメイクしています。Nate Morganのローズをバックに、Dwight Tribleが素晴らしいヴォーカルを聴かせてくれるスピリチュアル・ジャズ好きにはたまらない感動的な仕上がりです。Lesa TerryのヴァイオリンやJoshua Spiegelmanのフルートも美しく盛り上げてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=O2tno7-pP4Q
「Peace And Love」
オススメその5。歌詞はGary Bartz NTU Troop「Peace And Love」にインスパイアされたもの。ソウルフルな仕上がりのヴォーカル・チューンは2分半足らずですが、もっと長尺で聴きたいピースフル・ソングですね。
http://www.youtube.com/watch?v=czFS4daX1bc
「The Stars Are Singing Too (Interlude)」
Build An Ark作。ブラジリアン・フレイヴァーのインタールード。
「Nu Baya Roots」
Derf Reklaw作。ハンド・ドラムの応酬によるトライバルなリズム・シャワーがいい感じです。
「Village Soft」
Joshua Spiegelman作。前曲「Nu Baya Roots」の流れを受け継いだトライバルな仕上がり。バンブー・フルートの音色とトライバルなリズムはアフリカの大地にいる気分ですね。
「The Blessing Song」
オススメその6。Michael Whiteのカヴァー。オリジナルは『Pneuma』(1972年)に収録されています。ラテン・リズムとローズのメロウな音色とLesa Terryのヴァイオリンの組み合わせが抜群です。一味違ったスピリチュアル・ジャズといった趣です。
http://www.youtube.com/watch?v=P4PSpgjlRNk
「Guidance」
「The Blessing Song」をレゲエ調やブラジリアン・リズム調にアレンジした応用編といった仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=OidrM3bLu5c
「Always There」
オススメその7。Ronnie Lawsのカヴァー。オリジナルは『Pressure Sensitive』(1975年)に収録されています。Side EffectやWillie Boboもカヴァーしている楽曲です。ピースフルなヴァイヴスに包まれた心地好い演奏は思わず一緒にハンドクラップしてしまいます。
http://www.youtube.com/watch?v=mk73Z0EtY7k
国内盤CDには「Mother」、「You've Gotta Have Freedom (Two Banks Of Four Remix)」の2曲がボーナス・トラックとして追加収録されています。
Build An Arkの他作品もチェックを!
『Dawn』(2007年)
『Love Part 1』(2009年)
『Love Part 2』(2010年)
『The Stars Are Singing Too』(2011年)