発表年:1973年
ez的ジャンル:スピリチュアル/フリー・ジャズ系アルゼンチン・ジャズ
気分は... :これぞ南米ジャズ!
今回はアルゼンチンを代表するジャズ・ミュージシャンGato Barbieriを代表する1枚、『Chapter One: Latin America』(1973年)です。
Gato Barbieriは1932年、アルゼンチン、サンタフェ州ロサリオ生まれのテナー・サックス奏者/コンポーザー。
1950年代後半に後にTV/映画音楽の巨匠となるアルゼンチン人ピアニストLalo Schifrinのオーケストラに参加します。その後はヨーロッパを拠点に活動し、Don Cherryとグループを組んでいた時期もありました。
1967年には初リーダー作『In Search of the Mystery』をリリース。南米のエッセンスを取り入れたサウンドで徐々に注目されるようになり、1972年にはBernardo Bertolucci監督、Marlon Brando主演の映画『Last Tango in Paris』の音楽を手掛けてグラミー賞を獲得し、その名を一躍広めました。
その後は今回紹介する『Chapter One: Latin America』(1973年)を初めとする南米をテーマにしたChapterシリーズなど70年代に数多くのリーダー作を残しています。
独特の存在感を持つジャズ・ミュージシャンですよね。
本作『Chapter One: Latin America』(1973年)は、故郷ブエノスアイレスで母国のミュージシャン達と創り上げた作品であり、タイトルの通り、南米をテーマにした壮大な作品です。
その後、Chapterシリーズとして以下の続編をリリースしています。
『Chapter Two: Hasta Siempre』(1973年)
『Chapter Three: Viva Emiliano Zapata 』(1974年)
『Chapter Four: Alive in New York』(1975年)
本作に話を戻すと、母国アルゼンチンのみならず、南米全体としてのアイデンティティを意識した作品に仕上がっています。効果的に民族楽器を取り入れた南米録音ならではのサウンドに、Gatoのスピリチュアル・ジャズ/フリー・ジャズ的なテナー・サックスが加わり、素晴らしい南米ジャズ/アルゼンチン・ジャズ作品へと帰結させています。
レコーディングにはGato Barbieri(ts)以下、Raul Mercado(quena)、Amadeo Monges(Indian harp)、Ricardo Lew(g)、Quelo Palacios(g)、Isoca Fumero(charango)、Antonio Pantoja(anapa、erke、siku、quena、erkencho)、Adalberto Cevasco(b)、Dino Saluzzi(bandoneon)、Domingo Cura(bombo indio)、Pocho Lapouble(ds)、 Jorge Padin(per)、El Zurdo Roizner(per)、Osvaldo Bellingieri(p)といったミュージシャンが参加しています。
南米版のPharoah Sandersな「Encuentros」、フォルクローレ色の強い「India」、壮大なスケールの組曲「La China Leoncia Arreo La Correntinada Trajo Entre La Muchachada La Flor De La Juventud」、ブエノスアイレスの風情たっぷりの「Nunca Mas」、ブラジリアンな「To Be Continued」と聴き応え十分の全5曲です。
僕の場合、音も聴かずジャケに写るGatoの格好良さに惹かれてジャケ買いした作品だったのですが、思っていた以上の壮大で濃厚な演奏に圧倒されてしまいました。
ジャズ好きは勿論のこと、ラテン音楽好きの人が聴いても楽しめる1枚だと思います。
全曲紹介しときやす。
「Encuentros」
本作のハイライト。この1曲のみでも本作を聴く価値があると思います。哀愁ギターにインディアン・ハープ、 南米の縦笛ケーナ、チャランゴなどの民族楽器が絡むスピリチュアル・ジャズは、まさに本作のテーマに相応しいオープニングだと思います。よく言われるように、演奏全体やGatoのテナーのブロウは南米版のPharoah Sandersといった趣です。Pharoah Sanders大好きな僕は、この演奏を初めて聴いたときには鳥肌が立ちました。スピリチュアル・ジャズ名演だと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=jDQkAQed3Xw
Sangue Mostro feat. Jovine「Non Ci Sono Se」のサンプリング・ソースになっています。
Sangue Mostro feat. Jovine「Non Ci Sono Se」
http://www.youtube.com/watch?v=TbL4_NfUuUA
「India」
J. Asuncion Flores/M. Ortiz Guerrero作。「Encuentros」同様に、様々な民族楽器が絡む、よりフォルクローレ色が強い演奏になっています。しかしながら、Gatoのテナーはしっかりジャズしています。南米録音ならではのジャズが楽しめる1曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=TkFTSoUTcm4
「La China Leoncia Arreo La Correntinada Trajo Entre La Muchachada La Flor De La Juventud」
長いタイトルですが、Part 1からPart 4までの4部構成となった13分半超の組曲です。南米音楽とフリージャズが出会った壮大なスケール感のある演奏は聴き応え十分です。南米人としての誇りのようなものを感じるGatoの自信に満ちたプレイを存分に堪能しましょう。「Encuentros」と並ぶ本作のハイライトだと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=mcqbgVB-U5o
「Nunca Mas」
それまでの汎南米的な演奏に対して、ここではバンドネオンを配したブエノスアイレスの小粋な夜といった風情の演奏を聴かせてくれます。バンドネオン、ピアノ、Gatoのテナーの絡みが絶妙です。この演奏も大好き!
http://www.youtube.com/watch?v=6eSBjLi4rDU
「To Be Continued」
ラストはGato本人のナレーション入りの小曲。バトゥカーダ調のブラジリアン・モードの演奏で締め括るのは興味深いですね。
http://www.youtube.com/watch?v=UFmnoS0cDSA
Gato Barbieriの他作品もチェックを!
『In Search of the Mystery』(1967年)
『The Third World』(1969年)
『El Pampero』(1971年)
『Fenix』(1971年)
『Last Tango in Paris』(1972年)
『Bolivia』(1973年)
『Under Fire』(1973年)
『Chapter Two: Hasta Siempre』(1973年)
『Chapter Three: Viva Emiliano Zapata 』(1974年)
『Yesterdays』(1974年)
『Chapter Four: Alive in New York』(1975年)
Gato Barbieri & Dollar Brand『Confluence』(1975年)
『Caliente!』(1976年)
『Ruby Ruby』(1977年)
『Tropico』(1978年)
『Bahia』(1982年)
『Apasionado』(1983年)
『Para Los Amigos』(1984年)
『Passion And Fire』(1988年)