2014年12月31日

ezが選ぶ2014年の10枚

年末最後のエントリーは、毎年恒例の年末特別編『ezが選ぶ2014年の10枚』です。今年購入した新譜CDからお気に入りの10枚を紹介します(順不同)。一部、2013年発売のものも含まれますが、ご了承ください。
※全て当ブログで紹介した作品です。作品の詳細は各エントリーをご参照下さい。

Maria Rita『Coracao a Batucar』
Coracao a Batucar
「Rumo Ao Infinito」
 https://www.youtube.com/watch?v=Zot9mvURZD4

Fernando Silva『Miro Por La Ventana』
Miro por la ventana 〜 窓の外を眺めて
「Miro por la Ventana」 etc
 https://www.youtube.com/watch?v=V92BD8Z5Q04

Lord Echo『Curiosities』
CURIOSITIES
「Put It In My Head」
 https://www.youtube.com/watch?v=IrZy6qkM8_0

Tarrus Riley『Love Situation』
Love Situation
「Sail Away (Stepping Out)」
 https://www.youtube.com/watch?v=5WeyTqenDzw

Taylor McFerrin『Early Riser』
Early Risr [帯解説・ボーナストラック収録 / デジパック仕様 / 国内盤] (BRC418)
「Already There」
 http://www.youtube.com/watch?v=vY-MZ0bL1Gc

Ruth Koleva『Ruth』
ルス
「Freak And Fly」
 http://www.youtube.com/watch?v=HnzKbTy6rp0

Gideon Van Gelder『Lighthouse』
ライトハウス
「Victory Joy Dance」
 https://www.youtube.com/watch?v=sVFAFMZMBIU

Theophilus London『Vibes』
Vibes
「Get Me Right」
 http://www.youtube.com/watch?v=6RtNLXGKhzU

The Internet『Feel Good』
Feel Good
「Runnin'」
 https://www.youtube.com/watch?v=vsYVmXalykU

Kindred The Family Soul『A Couple Friends』
Couple Friends
「Everybody's Hustling」
 http://www.youtube.com/watch?v=UpdKrknL1i8

例年と同じく単純に良く聴いた新作アルバム、好きだった新作アルバムを上から10枚セレクトしました。

ブラジルものからはMaria Ritaをセレクト。『Samba Meu』(2007年)以来のサンバ回帰は実に感動的です。ブラジルものではBebel Gilberto『Tudo』もよく聴きました。

アルゼンチン・コンテンポラリー・フォルクローレからはFernando Silvaをセレクト。聴いているだけで心が澄み切る、心の平静を保つ特効薬の1枚です。

レゲエ/ダビーなNZ産クロスオーヴァー作品のLord Echoは2013年末の発売ですが、今年かなり聴いたのでセレクト。Electric Wire Hustleも含めて、NZのアーティストの才能を実感できました。

レゲエからはもう1枚、モダンでメロウなロックステディで楽しませてもらったTarrus Rileyをセレクト。今年は例年になくレゲエを聴いた1年でした。

Taylor McFerrinは進化形ジャズとLAビート・ミュージックの架け橋的作品として、大いに刺激を受けた1枚です。Brainfeederといえば、総帥Flying Lotusの新作をセレクトすべきだったかもしれませんが、個人的にはTaylor McFerrinの方が聴いた回数が多かったのでコチラにしました。

ブルガリア人女性シンガーRuth Kolevaは、売れっ子のイギリス人ドラマーRichard Spavenの全面参加も手伝い、クロスオーヴァー・ジャズ/ソウルと進化形ジャズを繋ぐ作品としても興味深いです。

Taylor McFerrin、Ruth Kolevaは後述する『Jazz The New Chapter 2』掲載盤ですが、Jazz The New Chapter(JTNC)の盛り上がりに関係なく購入した2枚です。それに対して、Gideon Van GelderJTNCで進化形ジャズに興味を持たなければ、購入していなかったであろう1枚です。10枚の中に、こうした作品をセレクトしたことで、自分の音楽嗜好の幅が拡がったことを実感できます。

Hip-HopからはTheophilus Londonをセレクト。次世代ラッパーのスタイリッシュでフューチャリスティックなHip-Hopに魅了されました。

そして、そのTheophilus LondonやJesse Boykins IIIも参加していたのが注目の男女R&BデュオThe InternetのOdd Futureからリリースされた2nd。僕好みのインディ作品です。

大人R&Bとして選んだKindred The Family Soulは、Tony MomrelleAngela Johnsonの3枚で悩んで末、セレクト。やはり、こうした大人のR&B作品は僕の音楽ライフには欠かせません。

今年は上記10枚以外に特別賞として以下の5枚をセレクトしてみました。
10枚に収まらなかった特例措置です(笑)

話題賞『Jazz The New Chapter』
『Jazz The New Chapter』(左)
『Jazz The New Chapter 2』(右)
Jazz The New Chapter~ロバート・グラスパーから広がる現代ジャズの地平 (シンコー・ミュージックMOOK)Jazz The New Chapter 2 (シンコー・ミュージックMOOK)
今年発売された上記の音楽ムック本2冊は、僕の音楽ライフを大いに刺激してくれました。9月には『Jazz The New Chapter(JTNC)強化月間』を設けたほどでした。音楽の世界を拡げてくれたJTNCに感謝です。

前述の10枚にも『JTNC2』掲載盤をセレクトしましたが、加えて以下の2枚を話題賞関連でセレクトしておきます。
GoGo Penguin『V2.0』
V2.0
Becca Stevens Band『Perfect Animal』
パーフェクト・アニマル

インパクト賞Flying Lotus『You're Dead!』
You're Dead! [帯解説・ボーナストラック1曲収録 / 初回盤のみ特殊パッケージ仕様 / 国内盤] 特典マグネット付 (BRC438)
そのコンセプト、ジャケ、サウンドすべてにおいてインパクト大の傑作でした!

カムバック賞D'Angelo & The Vanguard『Black Messiah』
Black Messiah
年末に届いたR&Bのカリスマの復活作!やはり彼の存在感はスゴイ!

【ブラジルW杯】賞Gilles Peterson presents:Sonzeira『Brasil Bam Bam Bam』
Brasil Bam Bam Bam
今年はサッカーのブラジルW杯が開催されましたが、Gilles Petersonによるブラジル新プロジェクトSonzeiraはW杯イヤーに相応しい1枚でした。

今年は記事3,000本も達成でき、当ブログに対する思いを再確認できた年でした。

素晴らしい音楽の数々に感謝!
当ブログを閲覧下さる皆様に感謝!
では皆さん良いお年を!
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2014年12月30日

Gary McFarland/Peter Smith『Butterscotch Rum』

名アレンジャーが☆Gary McFarland/Peter Smith『Butterscotch Rum』
バタースコッチ・ラム
発表年:1971年
ez的ジャンル:名アレンジャー系SSW/ソフトロック
気分は... :今年最後の1枚は・・・

明日の大晦日は年末恒例『ezが選ぶ2014年の10枚』をエントリーする予定ですので、通常の作品紹介は今日がラストです。

2014年最後の1枚に選んだのは、名アレンジャー/ヴァイヴ奏者Gary McFarlandが画家/詩人のPeter Smithとの共作でリリースした『Butterscotch Rum』(1971年)です。

これまで当ブログで紹介したGary McFarland作品は以下の3枚。

 『Soft Samba』(1964年)
 『Does the Sun Really Shine on the Moon』(1968年)
 『Today』(1969年)

結果として、本作『Butterscotch Rum』がリリースされた1971年にMcFarlandは心臓発作で急死してしまいます。

全曲McFarlandとPeter Smithによる歌入り、しかも全曲二人のオリジナルというMcFarland作品の中でも異色の1枚です。そのせいか、アルバム全体としてはシンガー・ソングライター/ソフトロック的な雰囲気が漂います。

King Crimsonでも活躍したTony Levin(b)、Chet Amsterdam(b)、Sammy K. Brown(ds)、元Paul McCartney & WingsDenny Seiwell(ds)、Stuart Scharf(g)、Russell Georg(fiddle)、Warren Bernhardt(key)等がレコーディングに参加しています。プロデュースはGary McFarland

正直、McFarlandとPeter Smithのソフト・ヴォーカルはお世辞にも上手いとは言えませんが、雰囲気はSSW風でいい感じです。それを引き立てるのがMcFarlandの絶妙なアレンジ・センスです。特に、さまざまな音楽のエッセンスを巧みに融合させて、独自のポップ・ワールドへ昇華させています。

画家/詩人のPeter Smithは本作のジャケも手掛けています。ちなみに『Today』(1969年)のジャケもPeter Smithです

ぜひソフトロック好きの人にチェックして欲しい1枚です。

全曲紹介しときやす。

「All My Better Days」
オススメその1。ヘタウマ・ヴォーカルと素晴らしいアレンジで内省的な歌世界を見事に表現しています。美しくも何処となく切ないポップ・ワールドがたまりません。この時代のSSW/ソフトロックがお好きな人であれば、間違いなく気に入るはず!
https://www.youtube.com/watch?v=1igWLbuvnz0

「Poor Daniel」
オススメその2。ライナーノーツにも書いてありますが、バーバンク系に通じる小粋なポップ・センスを楽しめる1曲です。

「Salvation Army Rags」
本作らしいソフトロックなポップ感で弾けています。ヘタウマ・ヴォーカルのコーラスワークが案外良かったりします(笑)

「Miami Here We Come」
オススメその3。マイアミのビーチが似合いそうなソフト&メロウな仕上がり。

「Straight Arrow」
フィドルが印象的なトラッド感覚のソフトロックはなかなかユニークです。

「Dance With Me」
オススメその2。美しいポップ・バラード。Harry Nilssonあたりがお好きな人は気に入るのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=XU3H3Q6xk4Q

「Rain On The Ocean」
名アレンジャーMcFarlandの手腕が光る、ストリングスに木管楽器も駆使したドラマティックなサウンドを堪能できます。少しプログレっぽい終盤も印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=y7R0FuKNcFo

「Jenny's Path」
アーシーな雰囲気の幻想的なソフトロックが融合した、これまたユニークなポップワールド。

「Patricia」
オススメその2。オルガンを巧みに駆使したソフトロック的なポップワールドが実に素晴らしいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=0-HZRli_qkc

Gary McFarlandの過去記事もご参照下さい。

『Soft Samba』(1964年)
ソフト・サンバ

『Does the Sun Really Shine on the Moon』(1968年)
ダズ・ザ・サン・リアリー・シャイン・オン・ザ・ムーン?(紙ジャケット仕様)

『Today』(1969年)
トゥデイ  (紙ジャケット仕様)
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2014年12月29日

Joyce『Agua e Luz』

Joyceの透明感を存分に楽しめる1枚☆Joyce『Agua e Luz』
水と光
発表年:1981年
ez的ジャンル:ブラジル人女性SSW
気分は... :今日で決着・・・

人気ブラジル人女性シンガー・ソングライターJoyce(Joyce Moreno)が1981年にリリースした『Agua e Luz』です。

これまで当ブログで紹介したJoyce作品は以下の6枚。

 『Feminina』(1980年)
 『Tardes Cariocas』(1983年)
 『Hard Bossa』(1999年)
 Joyce & Banda Maluca『Just A Little Bit Crazy』(2003年)
 『Bossa Duets』(2003年)
 『Tudo』(2012年)

本作『Agua e Luz』『Feminina』(1980年)に続きEMIからリリースされたアルバムです。

『Feminina』との2in1CDでお持ちの方も多いのでは?

基本的には『Feminina』の流れを受け継いだ1枚ですが、透明感あふれるサウンド創りにさらに磨きがかかった印象を受けます。

レコーディングには、公私のパートナーTuti Moreno(ds、per)をはじめ、Fernando Leporace(b)、Haroldo Mauro Jr.(p)、Mauro Senise(ss)、Sivuca(accordion、vo)、Paulo Guimaraes(fl)、Ceu Da Boca(vo)、Lizzie Bravo(voice)、Danilo Caymmi(fl)Raimundo Nicioli(g)、Edson Lobo(b)、Alfredo Cardin(p)等のミュージシャンが参加しています。プロデュースはRenato Correa

ブラジリアン・ジャズダンサー「Samba De Gago」、メロウな「Moreno」「Meio A Meio」、透明感のある「Monsieur Binot」「Mais Uma Vez, Mais Uma Voz」、素晴らしいコーラスワークに聴き惚れる「Docura Forte/Agua E Luz」などJoyce好きには聴きどころ満載の1枚です。

Luli & Lucinha作の「Docura Forte」以外はJoyceのオリジナルです(共作含む)。

ジャケに写るJoyceの幸せそうな笑顔が本作の充実ぶりを物語っていると思います。

全曲紹介しときやす。

「Monsieur Binot」
オススメその1。昔から僕の一番のお気に入り。本作らしい瑞々しさが伝わってくるオープニング。透明感のあるJoyceの歌声とJoyce、Tuti Moreno、Fernando Leporace、Haroldo Mauro Jr.が織り成す息の合ったアンサンブルが実に清々しいです。
https://www.youtube.com/watch?v=fb_q6crATYc

「Muito Prazer」
何処かミステリアスな雰囲気も漂うアコースティック・チューン。夢心地気分です。
https://www.youtube.com/watch?v=yAjJrDCKlZI

「Moreno」
オススメその2。この曲も昔から大好き!彼女の運命を切り開いた公私のパートナーTuti Morenoのことを歌ったメロウ・ブラジリアン・グルーヴ。Mauro Seniseのサックスも加わった中盤の幻想的な雰囲気もいい感じです。本作を代表する名曲ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=7xRItfCXnqk

「Beira Rio」
Cacaso/Joyce作。弾き語りですがJoyceの歌力を実感できます。
https://www.youtube.com/watch?v=ohu0Q6g8uVU

「Samba De Gago」
オススメその3。クラブ系の音を求めるのであれば、JoyceのスキャットがSivucaのアコーディオンと共に疾走するブラジリアン・ジャズダンサーな本曲がハイライトなのでは?Sivucaの起用が見事にハマっています。
https://www.youtube.com/watch?v=K-rWklUcrPE

「Meio A Meio」
オススメその4。この曲も本作のハイライトの1つかもしれませんね。Joyceのソングライティングの素晴らしさを実感できるブラジリアン・メロウ・グルーヴです。Paulo Guimaraesのフルートも盛り上げてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=e5Q6WLQEh6Q

「Banho-Maria」
Ana Terra/Joyce作。素晴らしいコーラス・アレンジに惹かれます。しっとりと歌い上げるジャズ・ヴォーカル調の仕上がり。Joyceと共にリード・ヴォーカルをとるCeu Da Bocaの歌もいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=6pZ8OWvh0u8

「Mais Uma Vez, Mais Uma Voz」
オススメその5。Ana Terra/Joyce作。今回久々に聴き直して、いいなぁと思ったのが本曲。Joyceのピュアな魅力を存分に堪能できる素敵な1曲です。Danilo Caymmiのフルートが曲調に実にマッチしています。
https://www.youtube.com/watch?v=gdVoTFi7X2s

「Eternamente Gravida」
ジャジーな雰囲気でしっとりと歌い上げます。本作らしいジャジー・サウンドが光ります。
https://www.youtube.com/watch?v=Ab3tE7RjKNw

「Docura Forte/Agua E Luz」
オススメその6。ラストはLuli & Lucinha作の「Docura Forte」とオリジナル「Agua E Luz」のメドレー。水と光という本作のタイトルに相応しい、自然の神秘を感じる美しい音世界で締め括ってくれます。バックの素晴らしいコーラスワークも見事としか言いようがありません。
https://www.youtube.com/watch?v=kgK4MD4_duY

Joyceの過去記事もご参照下さい。

『Feminina』(1980年)
フェミニーナ、そして水と光

『Tardes Cariocas』(1983年)
Tardes Cariocas

『Hard Bossa』(1999年)
Hard Bossa

Joyce & Banda Maluca『Just A Little Bit Crazy』(2003年)
ジャスト・ア・リトル・ビット・クレイジー(2003年作)

『Bossa Duets』(2003年)
ボッサ・デュエッツ

『Tudo』(2012年)
トゥード
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2014年12月28日

D'Angelo & The Vanguard『Black Messiah』

R&Bのカリスマ、14年ぶりの新作でシーンを震撼させる!☆D'Angelo & The Vanguard『Black Messiah』
Black Messiah
発表年:2014年
ez的ジャンル:カリスマ系男性R&B
気分は... :年末の衝撃!

金曜は年忘れで知人と夕方から翌朝まではしご酒、昨日は二日酔い、睡眠不足のままお世話になっている事務所の大掃除の手伝い・・・気持ち悪くて飯も食えない状態で、昨晩から体調最悪です。

そんな感じで、とても記事を書ける体調ではないのですが、今日はこの衝撃の1枚を紹介せずにはいられず、懸命にエントリーします。

ということで、R&Bのカリスマ14年ぶりの新作D'Angelo & The Vanguard『Black Messiah』です。

R&BのカリスマD'Angeloについて、これまで当ブログで紹介したのは以下の3枚。

 『Brown Sugar』(1995年)
 『Live At The Jazz Cafe, London』(1996年)
 『Voodoo』(2000年)

『Voodoo』以来の新作スタジオ作品が遂に出ちゃいましたね!きっと僕に限らず、R&B系の作品を扱っている音楽ブロガーの人たちが挙って本作の記事をエントリーしていることでしょう。

ここ数年の彼の活動から新作の予感はありましたが、正直それほど期待はしていませんでした。仮に新作が出たところで、ファンの期待値が高すぎて、その要求に応えられるようなレベルのものは出てこないだろうなぁ・・・くらいに思っていました。

ところが、そんな思いを裏切るような素晴らしい作品で復活を遂げたD'Angelo。さすがカリスマはやることが違いますな。

『Black Messiah(=黒い救世主)』というタイトル自体がインパクトありますよね。Afropunkが手掛けた民衆パワーを象徴するようなジャケも含め、政治・社会メッセージ色を感じるはずです。D'Angelo自身は"俺自身が黒い救世主という意味ではなく、俺たちみんなが黒い救世主を志すべきだ"と語っているようです。

当初、2015年リリース予定であった本作のリリースが早まったのは、ミズーリ州セントルイス、ファーガソンでの黒人少年射殺事件(2014年8月に警察官が丸腰の黒人少年を射殺)がきっかけとなったようです。

ただし、アルバムには普通のラブソングも収録されており、あまりに政治・社会メッセージ色を強調しすぎるのは、アルバムの内容を歪曲させてしまうかもしれません。個人的にはそれよりもサウンドを重視して本作を聴きたいですね。

D'Angeloの復帰を後押しするため、Q-Tip(元A Tribe Called Quest)、?uestloveThe Roots)、Pino PalladinoRoy Hargroveといった、かつてのThe Soulquariansのメンバーが集っています。

また、George ClintonのP-Funk All Stars一派の女性シンガーKendra Fosterが約2/3の楽曲の作詞をD'Angeloと一緒に手掛けています。

レコーディングにはD'Angelo(vo、p、org、key、syn、g、b、sitar)、Spanky Alford(g)、Isaiah Sharkey(g、sitar)、元The Time(現Original 7ven)のJesse Johnson(g)、Mark Hammond(g)、Pino Palladino(b、sitar)、Ahmir "?uestlove" Thompson(ds)、元Robert Glasper ExperimentChris Dave(ds)、James Gadson(ds)、Roy Hargrove(tp、cornet、flh、horn arr)、Gina Loring(spoken vo)、Ahrell Lumzy(back vo)、Jermaine Holmes(back vo)、Kendra Foster(back vo)等が参加しており、名義もD'Angelo & The Vanguardとしています。プロデュースはD'Angelo

また、本作ではヴィンテージ機材を使用し、レコーディングからミキシングに至るまで完全なアナログ手法で制作されています。CDにも関わらず、Side AとSide Bに分けているのも、そうしたアナログ手法へのこだわりの証でしょう。

1曲1曲がよく練られており、聴き込むほどにいろいろな発見があるアルバムだと思います。Side Aの冒頭3曲ではSly & The Family StoneParliament/FunkadelicPrince殿下あたりの影響を感じますが、その後はジャズ・フィーリングを取り入れた曲が印象的です。

派手さはありませんが、その分凄みと貫録を感じます。
進化して戻ってきたD'Angelo恐るべし!

全曲紹介しときやす。

「Ain't That Easy」
D'Angelo/Kendra Foster/Q-Tip作。重く引きずるようなグルーヴ&高揚感と共にD'Angeloの歌声が戻ってきました。Sly & The Family StoneParliament/Funkadelicあたりの流れも感じられます。
https://www.youtube.com/watch?v=lZoxdPGu_4E

「1000 Deaths」
D'Angelo,/Kendra Foster作。不穏なタイトル、不穏な空気に包まれた本作を象徴する1曲です。煽動的なグルーヴに脳内が刺激されます。映画『The Murder of Fred Hampton』からのネタもあります。
https://www.youtube.com/watch?v=t2r5yqjlVrI

「The Charade」
D'Angelo/Kendra Foster/?uestlove作。80年代初め頃のPrince殿下あたりの影響も感じられるロッキン・フィーリングの仕上がり。
https://www.youtube.com/watch?v=T3CunfPYkME

「Sugah Daddy」
D'Angelo/Kendra Foster/Q-Tip/James Gadson/Pino Palladino作。このイントロはQ-Tipっぽいですね。勝手にQちゃんのラップを妄想してしまいます(笑)。小粋なジャズ・フィーリングを上手く取り入れています。
https://www.youtube.com/watch?v=vo3RAH0zLlU

「Really Love」
D'Angelo/Kendra Foster作。アルバムからの先行シングルとしてリリースされた曲。スパニッシュ・ギターの響きが印象的なジャジー・テイストのラブソング。Curtis Mayfield「We The People Who Are Darker Than Blue」をサンプリング。
https://www.youtube.com/watch?v=mVsQwJfWzoI

ここまでがSide Aです。

アナログ感を出すために、Side Bの前にはレコード盤に針を落とした時のノイズが入っています。

「Back To The Future (Part I)」
D'Angelo作。美しいストリングスと重心の低いグルーヴがジャズ・フィーリングと相俟って独自の音世界を構築しています。
https://www.youtube.com/watch?v=ISCFeQ7963A

「Till It's Done (Tutu)」
D'Angelo/Kendra Foster作。環境問題に言及した曲ですが、曲調自体は哀愁ポップって雰囲気で案外聴きやすいです。
https://www.youtube.com/watch?v=P4MQRMK6YO4

「Prayer」
D'Angelo作。D'Angeloらしいグルーヴ感を楽しめるカリスマらしい1曲。何故かこの曲を聴いていたら、故J Dillaのことを思い出してしまいました・・・彼が本作に参加していないのは実に残念ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=pQ6ADCTmaNA

「Betray My Heart」
D'Angelo作。本作の特徴であるジャズ・フィーリングが最も顕著な仕上がり。気負わずさりげない感じが逆にいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=rejA6QRtrAI

「The Door」
D'Angelo/Kendra Foster作。口笛と共に始まるアーシーな味わいの仕上がり。D'Angeloのソウル魂を実感できます。
https://www.youtube.com/watch?v=kQwBKmYj5WI

「Back To The Future (Part II)」
D'Angelo作。Part Iの続きで、セッションを楽しんでいる様子が伝わってきます。
https://www.youtube.com/watch?v=_UHe7pscl-c

「Another Life」
D'Angelo/Kendra Foster作。ラストは美しいバラードで締め括ってくれます。シタールの音色が全体を引き締めてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=MTAnBM0ZdVI

D'Angeloの過去記事もご参照下さい。

『Brown Sugar』(1995年)
Brown Sugar

『Live At The Jazz Cafe, London』(1996年)
Live at the Jazz Cafe London

『Voodoo』(2000年)
Voodoo
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2014年12月26日

Mose Davis『The Coming Of Moses』

レア・グルーヴ人気作。デトロイト産ファンク/ディスコ☆Mose Davis『The Coming Of Moses』
Coming of Moses
発表年:1978年
ez的ジャンル:デトロイト・ファンク+メロウ・ディスコ
気分は... :いざ年末モードへ・・・

今回はデトロイトのファンク・グループThe CountsThe Fabulous Counts)のキーボード奏者であったMose Davisのソロ・アルバム『The Coming Of Moses』(1978年)です。

The Countsについては、アルバム『What's Up Front That Counts』(1971年)を紹介済みです。

本作『The Coming Of Moses』(1978年)はレア・グルーヴ方面で再評価の高い1枚です。

一応、Mose Davis名義にしておきましたが、某ガイド本にはThe Coming Of Moses名義、有名ディスク検索サイトではMoses名義になっています。このあたりはジャケやインナーを見てもよくわかりません。

アルバムはThe Countsの流れを汲むデトロイト・ファンクと、この時代らしいメロウなディスコ・サウンドが融合したものになっています。

ディスコ・サウンドを採り入れたからといって、妙にチープにならず、ファンキー&グルーヴィーな味わいを失っていないのがいいですね。「Strivin' For Tomorrow」「Something About You」「Love To Live」あたりがその典型です。

また、The Counts時代を彷彿させるファンキー・ソウル「Been Thinkin' Bout You」、スウィート・バラード「The Sweetest Love」もオススメです。

レア・グルーヴ好きの方はぜひチェックを!

全曲紹介しときやす。

「Love To Live」
グルーヴィーなオルガンが鳴り響くディスコ・ファンクなオープニングを飾ります。ディスコといってもファンク・グルーヴの部分がしっかりあるのがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=-5bZV8QEVgc

「Been Thinkin' Bout You」
The Beatlesの名曲「Come Together」のベースラインを使ったファンキー・ソウル。The Counts好きの方はグッとくるであろうファンク・グルーヴです。
https://www.youtube.com/watch?v=QQ9_VDyGoWg

「The Sweetest Love」
ファルセット・ヴォイスによるメロウ・ソウル。エレピのメロウな響きも手伝い、なかなかの甘茶ぶり。
https://www.youtube.com/watch?v=lEk3So5rLeA

「Strivin' For Tomorrow」
僕の一番のお気に入り。ソウルフル&メロウな味わいとダンサブルなディスコ・サウンドが程良く調和した仕上がり。文句ナシで格好良いと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=EG8jFHL_q6Q

「The Coming Of Moses」
タイトル曲はアッパーなインスト・チューン。ハーモニカとコンガが牽引するパーカッシヴな躍動感が印象的です。

「Take It Slow」
ヴィヴィッドなギター・カッティングがいい感じのメロウ・ディスコなインスト。
https://www.youtube.com/watch?v=ZefDyuu9CxA

「Sunday Afternoon/Spanish Sunset」
まさにスパニッシュ・サンセットな雰囲気のインスト。壮大なロマンを感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=e1E-8gnVOek

「Something About You」
ジャズ/ソウル分野のプロデューサーTommy Stewartがソングライティングを手掛けています。さすがTommy Stewartといった雰囲気の華やかなメロウ・ディスコに仕上がっています。後半のファンキーな盛り上がりが格別です。
https://www.youtube.com/watch?v=9RgAPcY6KHk

CDにはボーナス・トラックとして、「Love To Live (12" Extended)」「Something About You (12" Extended)」の2曲が追加収録されています。

The CountsThe Fabulous Countsの過去作品や本作と同じくレア・グルーヴ方面で評価の高いComing of Mosesもチェックを!

The Fabulous Counts『Jan Jan』(1969年)
Jan Jan

The Counts『What's Up Front That Counts』(1971年)
Whats Up Front That Counts

The Counts『Love Sign』(1973年)
LOVE SIGN
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